中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

ヨルダン

シリア・ヨルダン関係

先日、ヒズボッラーの副書記長が、ヨルダンに対する警告をしたとの記事を報告しましたが、どうやら背景にはシリアとヨルダンの関係悪化がある模様です。
これまでのところでは詳しい背景や真相は不明ですが、アサド大統領がロシアのスプートニクに対して、「ヨルダンはシリア内戦の初めから米国のシリアに対する陰謀の一部分であり、ヨルダンがどう考えようとも、ヨルダンは独立した国家ではなく、米国がヨルダン北部からシリアに介入しようと考えれば、介入することになる」と語ったことに対して、ヨルダン政府の公式報道官である情報相が、アラビア語メディアに対して、「アサドの発言は現実離れした宣伝であり、ヨルダンが中東においてバランスの取れた政策を追求してきたことはよく知られており、シリア問題についてはシリアの領土的保存と政治的解決を追求してきた」として、「自分の国の大半の領域さえ支配していない政権がヨルダンの独立云々を語ることは皮肉である」と反論したとのことです。

http://www.alquds.co.uk/?p=707878
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/4/21/الأردن-الأسد-منسلخ-عن-الواقع-وتقديراته-خاطئة
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/syria/2017/04/22/الأردن-يرد-على-الأسد-أنت-منسلخ-عن-الواقع.html

ヨルダンはこれまで、有志連合の一員として対IS空爆等に参加してきたものの(そのため墜落して捕虜になったパイロットがISにより焼殺されたことは日本でも広く報じられた)、アサド政権とは、、それほど敵対的な関係ではなく、微妙な距離を保ってきたという印象を受けていました。
それがここにきて、アサドがロシアのスプートニクにかなり激しい反ヨルダン発言を行い、ヨルダン政府もまたかなり厳しい非難で応じたことは、やはりトランプ政権登場後の米国の政策の変更と関係しているのでしょうか?
詳しい背後関係は不明ですが、とりあえず。

ISの人質事件(ヨルダンでの反応)

我が国では、イラク人女性死刑囚と引き換えに、邦人人質とヨルダン人操縦士の釈放を求める期待が表明されていますが、ヨルダンでは同操縦士の属する同国南部の部族が27日首都アンマンに多数来て、同操縦士の救出が遅れていることは政府、特に国王及び情報機関の責任であるとして、その釈放のために全力を尽くすことを要求し、首相府への道路を閉鎖し、要求が入れられるまでは、解除しないと宣言しているとのことです。

彼らはとにかく、ヨルダンの操縦士の釈放が第1の課題であるとして、ヨルダンの対IS連合軍からの脱退及び空爆参加取りやめも要求している由。
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2015/1/28/عشيرة-الكساسبة-تطالب-بإنقاذ-الطيار-الأردني-الأسير

おそらくこの報道もに日本のマスコミが既に伝えているとは思うもとりあえず。

自由シリア軍に対するサウディの武器援助

17日付のal qods al arabi net は、最近南部戦線の自由シリア軍はサウディの資金による対戦車ミサイルの供与を受け、アサド軍相手の戦闘で、バランスに変化が生じつつあると報じています。

記事によれば、このミサイルはロシア製のコンクルス対戦車ミサイルで、先週ダラアでの戦闘で使用された由。
消息筋によれば、このサウディによるミサイルの供与は、サウディが自由シリア軍の進展の遅さに焦りを感じ、またアルカイダ系列のイスラム主義勢力の進展に脅威を感じた結果である由。

サウディの危惧の要因の一つは、政府軍が最近中部シリアで地歩を広め、また南部においてもいくつかの町で成功を収めたことにある由にて、自由シリア軍の今後数か月の進展ぶりは、このコンクルスのような高性能兵器を入手できるか否かにかかっているという。

ヨルダン軍の退役軍人は、このコンクルスのような兵器が十分な量で供給されれば、現地の力のバランスを変えるだろうという。
このミサイルはヨルダン経由で、過去数週間内にシリアに供給されたが、そのためには数か月間にわたるサウディ政府のヨルダン政府に対する圧力があったという。ヨルダン消息筋によれば、ヨルダンはサウディの怒りと、アサド報復の脅しのはざまに置かれているという。

http://www.alquds.co.uk/?p=75176

シリア副大統領の離反?

また不思議な事件が起きました。
18日付のアラビア語メディアのネットはいずれも、シリアの副大統領 farouq al sharaa が離反してヨルダンに亡命したというニュースと、シリアTVがこのニュースを否定して、副大統領は政務の第一線で職務を遂行中で、シリアを離れたことはないと報じていると伝えています。(もっともニュアンスには若干の差があり、al jazeera net やal qods al arabiya net が中立的に両方の事実を伝えているのに対して、al arabiya net は両方の報道を伝えつつも、見出しも sharaa の離反という書き出しで、また彼は数日前からダマスから姿を消していたが、ヨルダンに到着するまでは離反は表明しなかったと報じています)。

いずれにしても、ヨルダンも秘密警察の強力な国ではありますが、昔のソ連やイラクやシリアのような完全な秘密国家ではないので、おそらく読者の方がこのブログをお読みになる明日の朝には、どちらが正しいのか、決着がついているかと思われます。

彼の亡命が事実であれば、副大統領という地位から(実権の有無は別にして)政権にとっては重大な打撃と思われるが、この報道が事実無根であれば、おそらく彼がスンニ派出身で必ずしも政権で実権には預かっておらず、その向背(こうはい)が疑問視されていたことを利用した disinformation ではないかと思われます。

そういえば数日前に、仏外相が近くシリア政権の大物が離反する可能性がある、と発言していましたが、彼の発言は sharaa の離反の計画を知っての発言だったのでしょうか?
取り敢えず

http://www.alarabiya.net/articles/2012/08/18/232865.html
http://www.aljazeera.net/news/pages/30f3d33f-4da2-4925-8417-0dafc0656625?GoogleStatID=1
http://www.alquds.co.uk/index.asp?fname=latest/data/2012-08-18-06-59-58.htm

エジプト情勢(中東への影響)

先ほどエジプトの今後に関して取りあえずの考えをまとめてみました。甚だ杜撰ですが、その都度考えをまとめて置くのも大事でしょう。

と言うことであのアラブ諸国、中東への波及問題、影響について、取りあえず考えられるところを自分なりにまとめてみました。請うご批判。コメント期待しています。

先ず第1に、エジプトの影響は避けられないでしょうね。アラブ世界、中東におけるエジプトの地位、影響力は(彼ら自身が思っているほど、と言うか昔ほどではないと思うが。何しろ今では中東中に大学はあるし、情報はむしろal jazeerah やロンドン発行の新聞の方が影響力もある。カイロ大学と「アラブの声」時代のアラブ民族主義のように中東全体を鼓舞するイデオロギーもない)はチュニジアとは比較にならないと思います。
そのエジプトで3週間前には難攻不落と思われていたムバラク体制が、カードの城のように潰れた影響は大きいと思う。

第2に、その影響はアラブ世界に留まらずイランにまで及ぶ可能性もあると思う。イランから最近聞こえてくる声は、先の大統領選挙の不正に対する非難に加えて、物価高騰の生活に対する影響、アハマディネジャードの警察国家に対する批判等エジプトの旧体制に対する非難と基本的に変わらない。
おそらくイラン・イスラム共和国の正当性が、宗教的にはグランド・アヤトラでもなかった権威の無いハメネイの指導下の硬直した独裁体制下で失われてしまった点で、ムバラク政権の正当性が失われてしまっていた点と共通していると思う。
しかし、矢張りイランはシーア派だし、民族的にもイラン人で、地理的にも遠く、直接の影響と言う点では、先ず周辺のアラブ諸国であろう。

第3に、これまでチュニジアの抗議運動に影響されたかで、抗議運動、民主化要求の起こっているのは、報道された限りでは、ヨルダン、アルジェリア、イエメン、スーダン、バハレン等であるが、その他でも抗議運動が起きていた可能性はあります。
これらのうち最も弱いところは、国民の貧しさ、政府の不安定なことそれから個人の独裁長期政権と言う観点からはイエメンであろう(ふと考えてみたら、ムバラクにしろ、スレイマンにしろ、ベンアリにしろ、サーレハにしろ相当の老人です。その昔、ソ連、東欧圏の崩壊直前に老害と言う意味で gerontocratie と言う言葉が良く使われました。チュニジア、エジプトの抗議運動の主力が facebook などで集まる青年たちであったことを考えると、正しく今回の政変も gerontocratie に対する若者の反抗と言う側面もあるかと思われる)
勿論、イエメンの場合11日の抗議デモの主力は旧南イエメンの分離を主張する者たちと言う意味で、他の国とは異なる側面もあるが、この問題にしても90年に統合して、94年に内戦が発生し、完全に鎮圧された後、現在に至るまで殆ど20年近くも分離主義運動の力が衰えないとすれば、統合を強制維持する正当性も失われつつあるかもしれない。

第4に、先ほどの gerontocratie 老害の話からすれば、アルジェリア、リビアなどが第1の候補になるが、老害と言う点ではサウディアラビアもトップランナーの資格ありです。
シリアは若い大統領だが、世襲の個人独裁者と言うことで、ある意味では同じ問題を抱えているかもしれない。
アルジェリアでの抗議運動は時々伝えられるが、リビアは全く伝えられない。ここは余りに秘密警察が強過ぎて、昔のチュニジアやエジプトほどの自由もないと言うことなのでしょうか?
若い連中があのカッダーフィのエクセントリックな治世に満足しているとは到底思えないのだが。

第5に、ヨルダンでも抗議運動が広がっているが、あそこは王制がパレスチナ人と東岸の部族民をつなぐ役割を果たしており、国王も若いし、上手くやっていけば、王様の権限を徐々に制限して英国風の議会制王制として生き残る可能性は強いと思われる。
モロッコも現在の国王は若いが、ヨルダンに比せば、はるかに国民の貧富の差が大きく、王室周辺の腐敗と蓄財がはるかにひどく、これらの点を如何に改善していけるかが生き残りの鍵ではないかと思われます。

第6に、余り話題にはなっていないが、一番影響を受ける可能性があるのがアッバス率いるパレスチナではないか。
なにしろPLOについてはアラファト時代から腐敗と蓄財の噂が絶えず(現に私の知っていた男も娘の壮大な結婚式で有名になった)、また最近はイスラエルに一方的に妥協していると言う情報が al jazeerah に流れたり、ネタニアフとムバラクに従属しているという批判も強く、また選挙もほとんどしてこなかったという意味で、民主化と言う点からも甚だその得点は低い。
そのアッバスが後ろ盾のムバラクを失い、特にムスリム同胞団などが政治的な力を発揮してくると、ハマスとの関係でも立場は不利になる可能性が強いと思われます。
もしかするとネタニアフがムバラクの失墜を恐れていた最大の理由はここにあるかもしれません。

第7に、湾岸でもカブース・オマン国王はまさしく老人だがその後継問題も出てくる可能性も想像され、その他の国は民主主義など聞いたこともない、というような国ばかりだから、いずれこれらの国に民主化の動きが波及しきても、それほど驚くことではないかもしれません。

第8に、スーダンも既に民主化の要求が起きており、南部が独立し、経済的に打撃を受けたりしたら、ここも大きな影響を受ける可能性の強い国でしょうね。

と言うことで殆どの国がエジプトの影響を受ける可能性を多かれ少なかれ有していると思われます。

名前を上げなかったのはレバノンくらいですが、ここは流石に独裁政権はないが、自分たちが言うほどの民主主義がある訳ではなく、仏から独立当時の宗派に基礎をおいた制度が、これまた制度的疲労を起こして長いのに、アラブ政治の波間にゆすぶられてると言うこともあり、根本的な制度の近代化を怠って来たところで(尤もそんなことをすると、それこそ国中が血の海になる可能性もないわけではない)、ここでも若い人たちから老人支配に対する拒否の動きが起きてくる可能性も低くはないと思います。

以上、特段の情報もなしに思いつくままに書いてみましたが、多分1月も経って読み返したら、赤面するのでしょうね。

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