中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

ヨルダン

ヨルダン新政府の成立

ヨルダンでは、特に所得税法改正(増税)に対する反対運動が1週間以上続き、政府が辞任しましたが、サウディ、UAE、クウェイトが25億ドルの支援を表明し、所得税法も撤回されることとなり、取りあえず政治危機は終息し、新しい政府が発足しました。

新しい首相は先に報告した通り(確か経済専門家の)omar razzazで、同内閣は14日午後、国王の前で宣誓式を行って正式に発足しました。
閣僚は首相の他28名からなり、女性閣僚も7名いて、前内閣からの閣僚が14名も居る由。
またカギともなる内相と外相は留任した由。

http://www.alquds.co.uk/?p=954876

とりあえずヨルダンは政治危機を脱しましたが、最大のアキレス腱の経済に対し、サウディ等から巨額の支援を得たことで辛うじて脱したという側面が強いだけに、今後パレスチナ問題等に対するその政策に大きな変化があるのか否か注目されるところです。

ヨルダン抗議運動の鎮静化?

1週間も続いたヨルダンの抗議運動も、どうやら沈静化の方向にある模様です。
アラビア語メディアの報道から取りまとめたところ次の通りです

  • 新首相に任命されたrazzaz 氏は、両院議長等と精力的に協議を続け、抗議活動の背景となった、新所得税法については取り下げる意向を表明した。新閣僚名簿は来週早々にも発表される見込み。
  • 国王はこの問題についてすべての関係者が協議することを求めてきた。また皇太子も負傷者を病院に見舞う等の鎮静化の努力をしている。
  • 国際通貨基金報道官は、国王の対話の呼びかけは正しい方向であるとこれを評価し、国際社会に対してヨルダンの支援方呼びかけた。また現在滞っている7000万ドル(の借款か?)を早期に動かすことを呼びかけた。(IMFとか世界銀行は、従来米国等の意向で動くことが多かったが、今回のヨルダンの騒擾の背後には、ヨルダンが米、サウディ、UAEの中東和平問題に対する政策に反対したからとの見方があり、その辺の関係がどうなっているかは不明。おそらくは、非常に機微な位置にあり、その安定が地域全体の安定にもかかわってくるヨルダンが動揺していることで、流石に懸念を持ってきたのかもしれない。また、これだけ教訓を与えておけば、既にのその目的は達したと考えているかも知れない)
  • ヨルダン情報局al amn al am は、首都での抗議活動は終焉し、特に首相府の周囲は平静化し、交通も元通りに動いていると発表した。
http://www.alquds.co.uk/?p=950465
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2018/06/07/الأمن-الأردني-يعلن-انتهاء-الاحتجاجات-في-العاصمة.html
http://www.aljazeera.net/news/reportsandinterviews/2018/6/7/بعد-سحب-قانون-الأزمة-هل-سيغادر-الأردنيون-الشارع
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2018/06/07/الأردن-رئيس-الوزراء-المكلف-يتعهد-سحب-قانون-الضريبة.html

ヨルダン情勢

ヨルダンで、確か先月30日から政府の緊縮政策(燃料の値上げと所得税の値上げ)、に反対する抗議活動が続いていることは何度かお伝えしましたが、国王による燃料価格の値上げ中止の後、政府が労働組合と協議をしてきたが、不調で抗議が拡大する状況で(アラビア語メディアは「昼は交渉、夜は抗議デモ」と書いている)、労働組合は全国的なゼネストを呼びかけている模様です。

そのような中で、アラビア語メディアは国王が4日首相を招致していて、政府の罷免もあり得ると報じています。
また、長老会議は国王に対し、2つの対策案を提示し、国王が適当と考えるものを選択するようにアドバイスしている由。

  • 政府が税制法案を撤回し、国民対話評議会を設立する。
  • 勅令で緊急国会の開催。

いずれにしても、ヨルダン情勢は、まさに現在進行形で、何か書いても、結局は事件の後追いになりそうです。

それはともかく、ヨルダンの置かれている極めて機微な地政学的地位と、ヨルダンの安定が地域全体の安定にも重大な影響があるとの観点から見ると、al qods al arabi net はイスラエルのイディオット・アハロノート紙(以下YA紙)が、今回の騒動の裏にはパレスチナ問題、特に米大使館のエルサレム移転問題に関するヨルダンの立場に対する、米、サウディ、イスラエル等の怒りがあると報じています。

ヨルダンの様な機微な立場にある国に関しては、十分あり得る話ではありますが、少なくともイスラエルに関しては、ヨルダンの安定の重大性に鑑み、イスラエルとしては何らかの手だしなどせずに、息をのんで動きを注視しているというhaaretz net の記事の方が説得力があるような気はしますが、どうでしょうか?
とりあえずal qods al arabi netの関連記事の要点のみ。

YA紙は、今回のヨルダンの騒擾の裏には、サウディ、アラブ首長国連邦(UAE),エジプト、米、イスラエルがあるという。
YA紙は、最近ヨルダンに関連して2つの大きな事件があったという。
一つはヨルダンが米大使館のエルサレム移転に関し、これらの国と異なった立場をとったことで、もう一つは経済困難に伴う緊縮財政問題である。
これらは一つは政治問題で、もう一つは経済問題で、相互に関連しない問題のように見えるが、実は密接につながっている。
その関連というのは、ヨルダンが非産油国の貧しい国でありながら、湾岸の富裕な国や外国(米国)の援助で豊かな生活を享受してきたことにある。
これが米大使館問題をめぐるヨルダンの立場で断ち切られた。

ヨルダンの安定を懸念するイスラエルの働きかけで、米国の反応は当初比較的冷静だったが、サウディの強硬姿勢で、エジプトとUAEが追随した。
YA紙は、しかし移転に反対するイスタンブールのイスラム諸国会議にヨルダン国王が出席したことで、米、イスラル、サウディの怒りが爆発したという。

http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/6/3/الأردن-توجه-لاستقالة-الملقي-اليوم-والمظاهرات-مستمرة
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2018/06/04/مصادر-ملك-الأردن-يستدعي-رئيس-الوزراء-للمثول-أمامه.html
https://www.haaretz.com/israel-news/.premium-israel-warily-watches-at-jordan-rocked-by-biggest-protests-in-years-1.6139659
http://www.alquds.co.uk/?p=947263

ヨルダン抗議行動の継続(2日)

ヨルダンで、経済緊縮政策を進める政府の政策(特に燃料の値上げ、所得税の値上げを伴う税制改革案)に対する職業組合等の反対が拡大し、首都アンマンのみならず各地に抗議行動が広がっていることは昨日報告しました。

このため外遊中のアブダッラー国王も急遽帰国し、勅令で燃料の値上げを中止するとともに、所得税問題については政府と労働組合が話し合うことになりました。

その結果、政府は税制改革案を一部手直しして、議会に再提出したようですが、組合の方は法案を取り下げるように要求し、話し合いはまとまらなかった模様です。
そのため、2日夜から抗議行動はアンマンや主要都市で継続され、特にアンマンでは首相府のある地域を、警官等が封鎖し、近づこうとするデモ隊に催涙ガスで対抗している模様です。

事件の背景としてal jazeera net は、その他の中東の多くの国と同じように、ヨルダンも経済的な危機に直面しており、特に3年前に公的債務が350億ドルに達したために、IMFの支援を要請し、その見返りとしてIMFから緊縮財政を求められ、各種物品の値上げ、税の値上げ新規税の導入等を進めてきたと解説しています。

因みに消費税にあたる税は16%(我が国は現在8%で、来年だったかに10%に値上げされる予定ですね?)とのことです。

http://www.alquds.co.uk/?p=947156
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2018/06/03/تجدد-الاحتجاجات-الأردن-والمحتجون-يؤكدون-سلمية-.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/6/3/اتساع-الاحتجاجات-بالأردن-إلى-أين-تتجه-الأمور

政府と組合との交渉は今後も続けられる予定で、幸い現在のところ死傷者が出るような事態には立ち至っていませんが、東アラブの中で、その安定が周囲の安定にも大きく関係するヨルダンのことですので、今後どのように進展するのか注目されます。

ヨルダンの抗議デモ

昨年末にはイランの各地で、物価騰貴、失業等に抗議するデモが広がり、治安部隊とも衝突などしましたが、今度はヨルダンです。

al qods al arabi net とal jazeera net は、ヨルダンでは、このところ諸物価の値上げ、税金の引き上げ等があって、民衆の不満が高まっていたところ、首都アンマンを含め6都市で、物価騰貴抗議、値上げの撤回等を要求する抗議デモがあったが、同時に政府及び議会の辞任を要求していると報じています。
それによると、抗議を組織したのは、左翼政党と民族政党だが、イスラム勢力も首都アンマンではこれに加わった由。

他方、al qods al arabi net は、首相のhani al malakiが、難しい手術のために急きょ米国に向けて出発し、当面は副首相が首相代理を務めると報じています。
双方とも、経済的不満が政治的不満に結びついたので、状況は緊張していて、アンマン知事は公共の治安を害する行為を禁止し、首相府周辺の交通を規制したとのことです。

http://www.alquds.co.uk/?p=872720
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2018/2/2/مسيرة-في-عمان-احتجاجا-على-رفع-الأسعار

ヨルダンは中東諸国の中では、比較的行政もしっかりし、民主的自由もある国ですが、その反面これまでもイスラム主義者(確かムスリム同胞団の勢力が強い)のデモがあったり、経済も産油国のように富裕なわけではないので国王は難しいかじ取りを迫られてきました。

それに加えて、エルサレムに関するトランプ宣言があり、何しろ67年戦争後も、エルサレムの聖地(岩のモスク)の守護者であり続けてきた、ヨルダン王国としては、おいそれとそんな一方的行為を支持するわけにはいかず、そちらの方からも難しい立場に立たされてきました。
今回の抗議がどの程度拡大するかは、勿論不明ですが、要注意の状況でしょうか。

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