中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

レバノン

アラブ連盟外相会議(イランとレバノンの反応)

先日イランとヒズボッラーを厳しく非難したアラブ連盟外相会議については報告した通りですが、これに対するイランとレバノンの反応次の通りです。

このうちイランの反応については、(気が付いた範囲では)イスラエルのy net newsだけが報じていますが、レバノンについては、アラビア語メディアもアウン大統領と連盟事務局長(彼は会議直後にレバノンを訪れ、大統領と会談している。ヒズボッラーに対する非難声明にも鑑み、大統領への直接の説明の必要を感じたものと思います)との会談での大統領の発言を報じています。
記事の要点のみ

・イラン外務省報道官は、連盟の声明は嘘に満ちていて、サウディの宣伝と圧力のたまものであるとして、これを拒否した。
また、サウディに対してイエメンに対する野蛮な介入及びカタールに対するボイコットを止めるように呼びかけた(イエメンはともかく、カタールを持ち出したところが面白い)
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5045784,00.html

・アラブ外相会議のヒズボッラー批判を受けて、アウン大統領は、レバノンはアラブ諸国の対立抗争の場になってはならないとして、ヒズボッラーの参加しているレバノン政府がテロ支援に参加しているとの指摘を拒否した。
またヒズボッラーが武器を非合法に集めているとの批判については、イスラエルの脅威を受けているレバノンとしては、自衛の権利があるとして、これを擁護した由。

・これに対して、連盟事務局長は、誰もレバノンを傷つけてはならず、その属性を尊重すべきとしながらも、外相会議の状況を説明し、ヒズボッラーに関する表現は新しいものではないとし、連盟の批判はヒズボッラーの参加している政府に対するもので、レバノン国家に対するものではないと釈明した由。
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/11/20/عون-لبنان-يجب-ألا-يدفع-ثمن-الصراعات-العربية-والإقليمية
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/11/20/عون-يتحدّى-الجامعة-العربية-ويدافع-عن-سلاح-حزب-الله.html

以上、特に目新しいことはないが、これを伝えるal jazeera のレバノン特派員は、レバノンではアラブ対立で、レバノンがサウディとイランの闘争場になりつつあるとの、危惧の念が広がっていると伝えています。
今後、レバノン情勢も要注意ですね。

イランに対抗する必要性に関する米仏首脳の合意

al qods al arabi net とal arabiya net は、18日イランとヒズボッラーの策動に対抗する必要があることで、米仏首脳が一致したと報じています。

記事によると、マクロン大統領は、ハリリ首相と会談後、複数の外国首脳と電話で、レバノン問題等について協議をしたが、その中でトランプ大統領との間では、ヒズボッラーとイランの中東不安定化の活動に対して、対抗する必要があることで一致した由。
仏大統領府によると、マクロンが電話で話したのはトランプの他、レバノン大統領、エジプト大統領、サウディ皇太子及び国連事務総長の由で、今後さらにほかの首脳とも協議する予定の由。

http://www.alquds.co.uk/?p=829159
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/11/19/ترمب-وماكرون-متفقان-على-ضرورة-مواجهة-حزب-الله-وإيران-.html

取りあえずのところ以上で、両首脳が具体的にどのような話をしたのかは不明ですが(想像するにハリリの辞職の経緯や背景、レバノンでのヒズボッラーの行動、サウディにおけるハリリの行動等を踏まえたものかと思われる)、仏大統領府が、レバノン支援国会議を開こうとしていることとあわせて、ここにきて急にレバノンの情勢が正面に出でてきました。

ハリリの仏大統領との会談

レバノンのハリリ首相は18日パリに到着し、マクロン大統領と会談し、その後の声明で、22日のレバノンの独立記念日(仏の植民地からの独立)出席のために、ベイルートに戻ると声明しました。
また、彼自身の立場(要するに首相からの辞任を撤回するか否か)は、ベイルートで大統領と協議の後に、決定するとした由。
(したがって、なぜ彼がサウディで辞任を表明したのか、またサウディでは自由を拘束されていなかったのか?等については依然として不明です。しかし、彼はパリのホテルからアウン大統領、ベッリ国会議長等と電話をしたということで、彼がサウディから彼らと電話で話したか否かは判明していないが、仮にパリにでてきてようやく電話をした、としたら彼がサウディでは自由を拘束されていたことを物語るのかもしれない)

他方仏大統領府は、ハリリのパリ招待は、中東地域の緊張緩和のためであったとして、必要があれば仏でレバノン支援国会議を開く用意があると表明した由。
会議が開かれれば、参加国には英米仏独とロシア、中国が含まれる由。

その他の動きとしては、
・レバノン外相は、サウディとの対立を避けるために19日カイロで開かれる、アラブ外相会議に欠席するかもしれないとのこと。出席の有無は19日午前中に決める由。
・仏政府はイランとの対話は重要と考えるとして、外相は予定通りテヘランを訪問する由。
・ハリリの子供2人は未だリヤドにとどまっている由だが、仏大統領府は、彼らがサウディに居ることは、ハリリの自由行動をさまたげることにはならないと考えると表明した由。

http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/11/18/-فرنسا-تبحث-استضافة-اجتماع-دولي-حول-أزمة-لبنان.html
http://www.alquds.co.uk/?p=829015
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/11/18/فرنسا-تعتبر-استقبالها-الحريري-تخفيفا-للتوتر

まだよくわけのわからないところもあるハリリの辞任劇だが、取りあえず。

ハリリ事件(風刺画)

aa09a88c-3bac-4a57-996f-2ffc61f271aa[1]ハリリ事件に関する風刺画です。
サウディと思しき人物が、レバノンの象徴であるレバノン杉(レバノンの主権と書いてある)を抱えて離さず、レバノン人が困惑している図です。
因みにこれはサウディと喧嘩しているカタール系のal jazeera netの風刺画です
http://www.aljazeera.net/news/caricature/2017/11/13/كاريكاتير-السعودية-ولبنان

マロン派大司教のサウディ訪問

このところ中東というか、サウディでは驚くようなことが立て続けに起きていますが、今度はレバノンのマロン派(カソリックの一派)の大司教がサウディを訪問しています。

アラビア語メディアは」、この訪問はサウディ国王の招待によるものだとして、マロン派(カソリック)の指導者のサウディ訪問は、これが初めてであり、歴史的な訪問であるとしています。
大司教はリヤドで国王の他、皇太子やハリリ・レバノン首相とも会談するとのことですが、またハリリの帰国のために尽力してほしいとのレバノン大統領から皇太子あての書簡もあずかっている由。
訪問は12〜14日までの3日間の予定の由。

http://www.alarabiya.net/ar/saudi-today/2017/11/13/بزيارة-تاريخية-للسعودية-أول-بطريرك-ماروني-في-المملكة.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/11/13/الراعي-في-الرياض-وارتياح-لبناني-لتصريحات-الحريري

最近でこそ、マロン派カソリック教徒は、親シリアに代わっていますが、これまでは伝統的にシリアのレバノン支配に反対する勢力の中心であったものですが、何しろ国王が「2つの聖地(メッカとメディナ)の守護者」とのタイトルを有するサウディに、(レバノンの)キリスト教の代表である彼らが、その国王に招待されて訪問するというのは正しく前代未聞のこと(歴史的!)なことで、ハリリの辞任表明に関連しての、サウディのレバノン情勢に対するなみなみなら関心とサウディの変化を示すものとして重要な意味があると思います。
また、通常サウディに対しては批判的なトーンの多いal jazeera net (何しろカタール系!)も、大司教の訪問については、極めて好意的な取り扱いで、ハリリの帰国の意思の表明で、レバノンでは安堵感が広がっているとも報じています。
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