中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

レバノン

ヒズボッラの影響力拡大に対する米国の懸念

アラビア語メディアは、米政府がヒズボッラーに対する制裁強化を検討していると報じているところ、al sharqal awsat net は、駐レバノンの米大使が19日、ハリリ首相と会談し、ヒズボッラーの影響拡大に対する米国の懸念を伝えたと報じています。

米大使は、ヒズボッラーの政府内における影響力の拡大に関し、ヒズボッラーは地域の安定を阻害する政策を追求してきて、レバノンの安全を阻害するような政策をとっているとしたうえで、ヒズボッラーは3国で内政に干渉している(シリアとイラクとイエメンか?)として、ハリリにその影響力拡大を抑えるように伝えた由。
但し、米国としては、従来からの正統なレバノン政府支援という政策に変更はないと伝えた由。

そもそもハリリ首相にヒズボッラーを抑えるような力も権限もない所で、米大使がいくらヒズボッラーの危険性を指摘しても(ハリリは分かりすぎるほどわかってはいると思う)詮無いことではあるが、取りあえずハリリにくぎを刺しておきながら、政府支援に対しては続行すると伝えたところが味噌か?

なお、サウディ政府のより直接の息のかかっているal arabiya net も、トランプ政権の対ヒズボッラ強硬意見は漏れ出てくるが、少なくとも米政府の公的立場は、今のところオバマ政権のそれと大きく変わってはいないとコメントしています。

 効果はともかく、米政府としては、取りあえず釘をさしておいたというところが味噌でしょうかね。

レバノン人の入国禁止(モロッコ)

もう一つアラブ諸国間の入国制限の例です。

こちらの方は、al qods al arabi net が報じるところで、モロッコは最近ヒズボッラーが西サハラの(独立を目指す)ポリサリオと密接な関係を有していることが判明したとして、レバノンに対するすべての査証の発給を禁止したとのことです。

同ネットはレバノンのal akhbar紙によれば、モロッコ政府は、この5月以来ヒズボッラーのポリサリオに対する支援が明らかとなったとして、レバノン人に対する査証発給をさし控えてきた由。

また、モロッコ政府は、レバノン政府がヒズボッラーのアラブ諸国、特にモロッコへの干渉を非難する声明を要求している由。

http://www.alquds.co.uk/?p=1028838

日本ではなじみ薄いが、西サハラと言うのはスペインが領有していた、文字通りサハラの西、大西洋に面したところに位置した世界で最後の西欧の植民地と言われたところですが、スペインがその領有権を放棄したところ、モロッコがその領有権を主張し、ポリサリオと言う勢力が独立を求めて活動し、それをアルジェリアが支援して、現在でも、両国間の関係改善を妨げる最大の棘となっています(このためマグレブ連合…モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビアからなる…の首脳会議はこの20年以上開かれていない)。

確か西サハラの大部分はモロッコ軍が制圧して、住民の多くが未だテント生活をしているとか聞きますが、紛争が拡大するのを防止するために、国連PKOが駐在し、確か事務局長が最近そのマンデートの1年延長を提案したはずです。

それにしても、ヒズボッラーの活動(ということはイランの影響)がこんな遠くまで及んでいるとは、知りませんでした。イランの「長い手」とでも言うべきなのでしょうか?

西サハラ沖合はタコの漁場として、あそこでとれたタコは、日本にもずいぶん入っているはずですが、イランがタコに興味があるという話は知らないし、おそらくは地政学的な観点から、北アフリカ諸国、サヘル諸国に足場を固めておこうということなのでしょうか?

イランの核ミサイル開発努力(ネタニアフの国連演説)

トランプ大統領は、その国連演説で自己宣伝する以外にはイラン等に対する激しい攻撃を行い(イランは腐敗した独裁体制だとし)、イランに対する制裁を妨害する国は許さないと発言したと伝えられるが、イスラエルのネタニアフもこれに応じる形?で写真を利用したりして、イランが核開発を続けていて、またベイルート(レバノン首都)で、ヒズボッラーがミサイルを精密誘導システムに変更することを助けていると非難したとのことです。

イランの核開発に関しては、写真を示しながら、イランはテヘランに核開発関連物資300トンを隠匿する秘密の貯蔵所を作ったとして、国連のIAEAに、この施設の査察を求めた由。

ベイルートのミサイルを精密誘導システムに返還する施設については、ネタニアフが国連で、イランがヒズボッラーがイスラエルのどこでも正確に攻撃できるシステムをミサイルに積み込む秘密の拠点(空港の近くとか球戯場の近くとかの由)を作った証拠を有していると演説した直後にイスラエル国防軍(IDF)が写真とビデオを公開した由。

ベイルートのミサイル拠点の話などは、モサドを有するイスラエルのことだから、かなり信頼性の高い話かと思うも、11月にはトランプのイラン原油禁輸と制裁が始まることに鑑みれば、来年にかけて中東はイランのミサイル、核開発とこれに対する米イスラエルの対応を巡り緊張を高めることが危惧されますね。

ハリリのヒズボッラー批判

ハリリの辞任表明とその後のサウディ滞在の真相は未だに謎ですが(いろいろと解説や意見はあるが、本人の口または信頼できる筋からの説明はない)、25日、同氏事務所から出された声明で、ヒズボッラーに関して(いかなるヒズボッラーの動きでも、アラブ諸国に影響を与えたり、その安定を損なうようなものは、受け入れられない」と表明しました。

http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/11/25/الحريري-لحزب-الله-نرفض-ما-يمس-الأشقاء-العرب
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/11/25/الحريري-نرفض-أي-موقف-لحزب-الله-يضر-بالدول-العربية.html
http://www.alquds.co.uk/?p=833126

どうにもわかりにくい話で、この声明も(アラビアメディがほぼ同内容の報道をしているので、上記の声明が出されたこと自体は間違いないが)、その本当の狙いが何なのか良く分かりません。
一見したところでは、これまでも対立してきたヒズボッラーとの関係をはっきりさせることが主眼(確か彼の辞任の扱いを今後の大統領等との話し合いで、納得できるまで凍結しているはず)だろうと思われますが、ヒズボッラー(イラン)がおいそれと、その様な意見に耳を傾けるはずもない…傾ける格好はするかもしれない。
もしかするとサウディが彼の帰国を認める(サウディが拘束していたとしての話だが…)条件として、このような声明を出すことをつけていたという可能性も完全にない訳ではないかもしれません。
彼の本心が前者であれば、レバノンはアラブの問題から中立であるべきだとの彼の主張に反して、レバノン内政が緊張することもありうるかもしれません。

いずれにしても、al qods al arabi net の別の記事は、ハリリが父親の暗殺後にサウディから帰ってきて、政治に参加した時にはその人気は極めて高かった(シーア派を除くと思うが)、そん後ヒズボッラーと妥協して、ヒズボッラーを入れた政府を作ったりしたために、スンニ派およびレバノン一般で、その人気が下がっていたが、今回の事件でハリリの人気は急上昇していると報じています。
まあ、国民の人気などは水物ですから、何時まで続くかは分かりませんが、少なくとも当面は彼にとっては強い味方でしょうね。

http://www.alquds.co.uk/?p=833363

アラブ連盟外相会議(イランとレバノンの反応)

先日イランとヒズボッラーを厳しく非難したアラブ連盟外相会議については報告した通りですが、これに対するイランとレバノンの反応次の通りです。

このうちイランの反応については、(気が付いた範囲では)イスラエルのy net newsだけが報じていますが、レバノンについては、アラビア語メディアもアウン大統領と連盟事務局長(彼は会議直後にレバノンを訪れ、大統領と会談している。ヒズボッラーに対する非難声明にも鑑み、大統領への直接の説明の必要を感じたものと思います)との会談での大統領の発言を報じています。
記事の要点のみ

・イラン外務省報道官は、連盟の声明は嘘に満ちていて、サウディの宣伝と圧力のたまものであるとして、これを拒否した。
また、サウディに対してイエメンに対する野蛮な介入及びカタールに対するボイコットを止めるように呼びかけた(イエメンはともかく、カタールを持ち出したところが面白い)
https://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5045784,00.html

・アラブ外相会議のヒズボッラー批判を受けて、アウン大統領は、レバノンはアラブ諸国の対立抗争の場になってはならないとして、ヒズボッラーの参加しているレバノン政府がテロ支援に参加しているとの指摘を拒否した。
またヒズボッラーが武器を非合法に集めているとの批判については、イスラエルの脅威を受けているレバノンとしては、自衛の権利があるとして、これを擁護した由。

・これに対して、連盟事務局長は、誰もレバノンを傷つけてはならず、その属性を尊重すべきとしながらも、外相会議の状況を説明し、ヒズボッラーに関する表現は新しいものではないとし、連盟の批判はヒズボッラーの参加している政府に対するもので、レバノン国家に対するものではないと釈明した由。
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2017/11/20/عون-لبنان-يجب-ألا-يدفع-ثمن-الصراعات-العربية-والإقليمية
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/11/20/عون-يتحدّى-الجامعة-العربية-ويدافع-عن-سلاح-حزب-الله.html

以上、特に目新しいことはないが、これを伝えるal jazeera のレバノン特派員は、レバノンではアラブ対立で、レバノンがサウディとイランの闘争場になりつつあるとの、危惧の念が広がっていると伝えています。
今後、レバノン情勢も要注意ですね。
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