中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

中東和平

イスラエルの戦略的必要性と題するJP紙論文

5日付のJerusalem Post紙は表記の題でNY大の国際関係論教授Ben-Meir(ユダヤ人ですよね)の論文を載せています。、若干長くなりますが、現在のイスラエル良識派(おそらく世論的にも多数派と言えるのではないか?)の意見を代弁していると思われるので、下記紹介します。
但し同じ日のal Jazeerag電子版では、ムバラクがエジプトは外国基地は認めないと語ったこと及び同じエジプトの外相がエジプトは米国の中東における防衛的傘の下には入らないと語ったことを報じており、彼らの発言の趣旨は解らないが、早くも中東でこの問題が現実化してきた(したがってアラブの国は建前上は米国から距離を置く姿勢をとる)ことを示しているのか、興味のあるところです。
中東ではオバマ政権が包括的中東和平を推進する断固たる方針を示した(最近のミッチェル特使、ゲイツ国防長官その他高官の相次ぐ訪問、特にミッチェルのイスラエル、パレスチナ、シリア、エジプト訪問が包括的和平を推進するとの固い決意の表れと評価)が、この米政権の方針とイランの核開発疑惑が相まって、イスラエル、および中東諸国にとって、中東和平実現のみならず、イスラエルとアラブの戦略的同盟と言う新たな可能性が生じてきた。
中央和平のためにはイスラエルはアラブ占領地から撤退しなければならないが、占領を安全保障と結びゆける議論は、新しい戦略的現実の前に、信ぴょう性を失っており、イスラエルにとって米国からの断固たる安全保障確約があれば領土に固執する理由はなくなる。いずれにしてもオバマが真剣にこの問題に取り組もうとしている時に、イスラエルにとって協力しないという選択はありえない。
中東の安全保障という観点からは米・イスラエルの安全保障協定とより広いアラブ諸国への米国の安全保障の傘はイランの核への欲求に水をかけるものである。
サウディ、エジプト、ヨルダン、モロッコはイランの核の可能性から大きな脅威を感じているが、イスラエルがアラブ領土を占領している間は、イスラエルと安全保障面で協力することには否定的で、その意味からもイスラエルは占領地から撤退する必要がある。
また国際的にも、イスラエルの強硬姿勢に嫌気がさす国が増えており、特に欧州連合はそうで、最近欧州連合はイスラエルーEU 関係をassocoation agreement に格上げすることを棚上げした。
今やイランの核と言う可能性に直面して、新しい戦略的現実が生じてきており、長年的であったイスラエルがアラブの戦略的同盟国となる可能性が生まれている。
オバマ政権が包括的和平に最大の外交的重点を置いて努力している時に、イスラエルがこれと協力しないという選択は最大の誤りであろう。

ファタハのcongress開催

現在ベツレヘムでファタハのcongress(日本語で言えば代議員大会か全人代表会議かその辺でしょう)が開かれていますが、ガザ在住の代議員200名(BBCによる、JPに依れば50名)がハマスに依り会議への出席を差し止められた由。
前に書いた通り、米国が中東和平交渉の再開に当たり、最大の障害と考えているのがイスラエル政府の強硬政策と、パレスチナ側のファタハとハマスの分裂で、その修復にはエジプト大統領の力が必要として、特使のミッチェル氏がムバラク大統領と会談したことは前に書いた通りですが、どうも両者の関係はしかく簡単なものではなさそうです。
この辺の事は本日の日本の朝刊が、ファタハの中で若い世代の台頭が目立つという点とともに詳しく報じていますが、また今朝の新聞はイランの体制側の分裂と言うか混迷ぶりもかなり詳しく報道していました。
なぜ、このような日本の新聞を読めばもっと詳しく書いてあることをわざわざ取り上げたかと言うと、その昔は中東に関して余りまともな報道もなかった日本の新聞も、流石に中東和平、イラン情勢、イラク情勢等については相当詳しくかつかなり立ち入って報道するようになってきたことについて大きな感慨を覚えたからです。
但し、次の2点に鑑みても、日本の報道はまだまだ問題があり、このようなささやかなブログも少しは皆様のお役にたてるかなと思っているところです。
第1点は中東の場合、上に挙げた3つの問題以外の事はほとんど報じられない、という点です。東はイラン、アフガニスタンから西はモロッコまで、北はトルコから南はスーダンまでと言うこの広い中東は、この3点だけの地域ではありません。他にも色々と知るべき事柄、面白いことが沢山あります。
第2点は、筆者の僻み目の所為か、例えば中東紛争については、はじめからイスラエル悪、パレスチナ善、イラクに関しては米国悪という図式があるようで(イランに関しては割かし中立公平な感じがします)、その辺若干の偏りを感ぜずにはいれないからです。
基本的にこの2〜30年大体和平を妨害して来たのがイスラエルと言う図式は、若干の例外を除けばそう間違いではないと思いますが、国際政治は道徳の競争ではなく、国益をかけた真剣勝負の世界です。報道する際に初めから、どちらが良いの悪いのと言う予断を持って報道することが、客観的で公正な報道に資するとは思えません。
そんな理由で、今しばらくは「中東の窓」と言うことで、細々と中東に関する話をお伝えしていきたいと思っています。

中東和平   米国は本気?

米特使のミッチェル氏がシリアでアサド大統領と会談した話は前にも書いたが、その彼はイスラエルで首脳連中と会談し、イスラエルの安全保障に強くコミットするとともに和平を早期開始するように強くプッシュしたとのことです。彼はその後エジプトも訪問し、ムバラク大統領とも会談しましたが、同時にゲイツ国防長官もイスラエルを訪問したとかで、BBC等は米国が中東和平交渉をkick startさせようとイスラエルに強烈な圧力を加えている等の観測記事を流しています。
確かに米政府大物の相次ぐ現地訪問はオバマ政権のやる気を十分に伝えるもので、前にも書いた通りシリアを引き込み、パレスチナ問題のみならずイスラエル・アラブ対立の中東問題包括的解決を図ることは、極めて論理的だし、また米国のやる気満々の意欲を示し、オバマ政権の壮大な中東和平構想がついに動き出したとの希望を与えるものです。
他方、前にも書いた通り、中東紛争については、現在登場人物から見た現地事情は理想的とはほど遠く、先ずイスラエル首相が和平ボイコットの常習犯ネタニアフだし、またパレスチナ側もいまだハマスとPLOの修復はできていないと思われます。
(この点に関してモサドに関するネットサイトでは、ネタニアヤフの首相時代、クリントン大統領のモニカ嬢とのセックススキャンダルで、米国の対イスラエル圧力が胡散霧消したことがあったが、実はモサドはモニカ嬢の自宅の電話を盗聴して、大統領との電話セックスを録音しており、それが影響を与えた可能性大と言っているところがあるが、真相は不明です)
今回ミッチェル特使がカイロを訪問したのは、明らかにパレスチナ両当事者に影響力を有し、その仲介にあたってきたムバラク大統領に実情を聞くとともに今後のさらなる努力を求めるためと思われます。
歴代米国大統領にとってパレスチナ問題、シリア問題のどれ一つをとっても、政権にとってpolitical assetsをかなり使い尽くすほどの大事業であったものを、双方同時に手掛けようかというオバマの試みは、意図や正しく壮大なるも力不足、ということにならないように願っております。

米特使のシリア訪問

確か前にも米オバマ政権がシリアとイスラエルの和平に大きな関心を有し、その特使ミッチェルをダマスカスに送ったと書いたことがあったかと思うが、本日のBBC放送もミッチェル特使が再度ダマスカスを訪問し、アサド大統領にイスラエルとの和平交渉を強く勧めたと報じていました。
さらに注目されるのが、同じところでBBCが最近イスラエルとオバマ政権の関係が緊張していて、それは東エルサレムにおける、ユダヤ人の入植地の拡大問題だと報じています。
中東紛争そのものの包括的解決が進まない場合に、米政権がよくやってきた手法が、とりあえず周辺問題で前進を実現し、それを梃子に中心課題も動かそうということですが(もう少し冷めた目でみれば、本質が動かないので周辺問題で若干の動きを見せて、マスコミ等の目くらませをする、という所か)、その場合、米国と言わずイスラエルの労働党にとっても格好の相手がシリアでした。
シリアとの関係で言えば、基本的な差異はないので、後はどこまで双方が和平合意への政治的な意思を維持できるか・・要するにそのために場合に依っては反対派は力づくで押さえつける、という所までコミットできるか否かということ・・と言うことで、これは双方さえその気になれば実現可能です。
ただ、オバマ政権がこれまでの米政権とは違うかと思われるのは、この問題をそのような政治的問題として使わずに、あくまでも真面目に中東問題解決の中の一つの輪として考えているらしいことです。
だから、片やアサドとの会談、片やイスラエルの東エルサレムに対する入植に対する反対姿勢という原則を貫いた立場に表れています。
願わくばオバマ政権は今後ともこのような生真面目な姿勢を貫いてほしいと思うが、何せ中東紛争は米国内では極めて政治的な問題(と言うことはユダヤロビーの暗躍の場と言うこと)であることで、余り安心してはいけないと思っています。
livedoor プロフィール
最新コメント
記事検索
  • ライブドアブログ