中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

国連

米国のUNRWA向け拠出金凍結

先に、米国がパキスタンへの安全保障関連援助を凍結したというニュースが流れていましたが、今度は国連のパレスチナ難民向け援助への拠出金の凍結です。

al qods al arabi net は、ロイターが複数の外交官等の証言から、米国がUNRWA(パレスチナ難民に対して食料、教育、就職教育等をする機関。国連の援助機関でも最も古いものの一つで、米国が最大の拠出国だが、一時は日本も第2位の拠出国であった。現在はどうなっているでしょうか?)に対して、1億2500万ドルの拠出を凍結したと報じています。
(イスラエル放送も年末に同じことを報じた由)

米国は現在毎年3億ドルをUNRWAに拠出していて、上記1億2500万ドルはその3分の1近くに相当し、支払期限がこの1月の由。
米国のパレスチナ向け援助削減のお脅しに対して、アッバス議長は、エルサレムはパレスチナにとって神聖な場所で、金貨や銀貨のために売買するものではないと語っている。

http://www.alquds.co.uk/?p=855985

トランプの露骨なドル外交ですが、百歩譲って、トランプとしてはパレスチナ政府のやり方が我慢ができずに、何らかの報復をするとしても、UNRWAというのは、パレスチナ政府の下部組織ではなく、れっきとした国連機関で、独自の職員をもって、学校を維持し、食糧援助をしているもので、これに対する拠出金を凍結することは、パレスチナ政府ではなく、パレスチナの子供たちを罰することを意味し、国際社会に大きな不信感を残し、将来の米国の外交にとっては大きな負担となる可能性があるかと思います。
もっとも彼はそんなことには無頓着でしょうが・・・・・

イラン情勢(安保理等)

イランでの抗議デモに関する安保理会合は5日開かれ、当然のことながら、イランと米国が激しく相互非難をしましたが(イラン代表はこの騒擾は、米CIAとイスラエルとサウディが引き起こしたものだと非難)、その他では、ロシア、中国、仏が、この問題はイランの国内問題で、「国際の平和と安全を脅かす」問題ではないとして、安保理での審議の当否について疑問を呈した由。
その他ではスウェーデン、オランダ、英国が、デモの自由と人権の重要性を指摘したようですが、イラン政府非難の発言はなかった模様です。
(アラビア語メディアの報道からですので、内容は正確とは限らず、彼らの目から見て重要でないことは抜けている可能性がある。)

どうも、アラビア語メディアの反応から見る限り、、米国が安保理開催で何を求めたのか不明。安保理で、国際社会のイラン政府非難の声を結集して、イランに対する国際社会の非難を印象付けたかったとしたら、、成功はしなかったと思われる。

さらに今後の問題として、イラン政府非難決議案を提出すれば、ロシア等の拒否権は必至で、精々議長声明の発出位でしょうがそれでさえ、イラン政府非難に全会一致の支持が得られるとは思われない。
どうも、今回の安保理開催は、米外交が統一的な指導部を欠いて、大統領の思い付きで、振り回されている米国の実態を示したような気がします。

その他の関連情報としては
・イラン各地で散発的な抗議デモはあっても、大きなものはなさそうで、、むしろテヘラン等の大都市では、(政府の組織したと思われる)政府支持のデモが行われている。
・米国は、今回のデモに関連して、ミサイル製造関連等のイラン企業5社を、制裁の対象に加えた。

http://www.alquds.co.uk/?p=856008
http://www.alarabiya.net/ar/iran/2018/01/06/مجلس-الأمن-يعقد-جلسة-مفتوحة-لمناقشة-التظاهرات-في-إيران.html
http://www.aljazeera.net/news/international/2018/1/5/رفض-بمجلس-الأمن-لمساعي-واشنطن-تدويل-احتجاجات-إيران

シリアの化学兵器問題(安保理の状況)

シリアの化学兵器問題に関し、安保理は米英仏提出の決議案の採決を延期したところ、米国の巡航ミサイル攻撃を受けてロシアは、安保理の緊急会合を求める意向の由。
また、ボリビアは安保理の緊急非公式協議を要請したよし。

なお、これを報じるal jazeera net は、3国決議案とこれに対するロシア決議案と、双方の相違を埋めようとした非常任理事国決議案の3本の決議案が安保理に提出されているとして、3国案とロシア案の内容を紹介しているところ、次の通りです
なお、安保理マターであれば、おそらくは米英等のメディアのほうが詳しい可能性が強いので、関心の向きは、どこか適当なところをお探しください。

米英仏の3国決議案の主要点は
・khan sheikhan に対する化学兵器による攻撃を、最も強く非難する。
・シリアが化学兵器を保持していたり、それを使用したことが明らかになった場合には、憲章第7章(制裁措置。もっとも、この制裁措置には、非軍事的措置…通常経済制裁と呼ばれる…と軍事的措置の2つがある)に基づく措置をとる必要性を確認する。
・化学兵器禁止条約機構の計画を支持する。
・すべての関係者にこの調査団の早期到着を支援するように要請し、シリア政府に対し当日のシリア軍機のすべての飛行記録の提出と責任者の名前の提出を要求する。
・調査団の空軍基地へのアクセスとか、事情を聴取したい者全てへのアクセスの保証。
の由ですが、3国はロシアの要求で、若干の細部の手直しには応じたが、大部分の修正要求は拒否した由。

他方ロシア案については
・化学兵器禁止条約機構と国連の関連機関に対して、調査団の攻勢に関する提案を求める。
・調査団の構成にあたっては、地理的配分の公正さを保つ必要がある。
(ここのところはわかりにくい表現かと思うが、国連での選挙でよく使われる表現で、要するに地理的にどこかに偏るのではなく、すべての加盟国から平等に選出すべしということ。調査委員会というのは各国の代表ではなく、専門家の集まりのはずで、この表現を入れるということは、例えばロシアの息のかかった委員を入れて、調査委員会の報告を無意味なものとする可能性がある、というよりはそれを狙ったものでしょう)
だが、ロシア案は安保理で十分な支持を集められなかったよし。

非常任理事国案の内容は不明。

http://www.aljazeera.net/news/international/2017/4/7/روسيا-وبوليفيا-تدعوان-لاجتماع-عاجل-لمجلس-الأمن
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/04/07/بوليفيا-تطلب-عقد-محادثات-لمجلس-الأمن-بعد-ضربة-أميركا.html

スーダン大統領の国連出席問題

スーダン大統領が国連総会出席のため米国への査証を求めた件は先に報告しましたが、確か昨日だったかのアラビア語メディアのネットは、この件の取り扱いで国連は板挟みになっていると報じていたかに思います。
案の定、19日付al arabiya net は国際刑事裁判所ICCは米国政府に対して、バシャール大統領が米国に脚を踏み入れたら、これを逮捕するように要請したと報じています。
記事はなお、米国務省はこの査証要請を「遺憾だ」としているが(国連と米国との取り決めで国連の会議への出席者の査証はこれを出すことを義務付けられている)、他方米国はICCの加盟国ではないので、仮にバシャールが訪米しても逮捕する義務はないとコメントしています。

記事の要点は以上で、確かに米国に逮捕の義務はありませんが、ダルフールでの大量虐殺に責任があるとされるバシールが米国に堂々と乗り込んできて、それを逮捕もせずに見逃したら、米国内のオバマ批判は相当強くなるでしょうね。
オバマとロウハニの会談の可能性と言い、毎年国連総会の舞台は、色々なドラマを提供してくれます。

http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2013/09/19/-الجنائية-الدولية-تطلب-من-واشنطن-القبض-على-البشير.html

シリア情勢(国連総会決議採択)

国連総会は16日シリアに関する決議案を採決し、全加盟国193国中137国の賛成(反対12票、棄権17票)で可決しました。
確か先日国連では、この決議案に対する支持が前回の総会決議支持の133を超えるか否かが注目されている(要するにその後安保理等でロシア、中国が強硬にアラブ連盟案に反対したのでその影響等が注目されていたと思う)と書いたと思いますが、今回の賛成137は前回を若干上回り、国際社会のシリア批判が強まっていることを物語っていると思います。

反対したのはロシア、中国の他、イラン、北朝鮮、ベネズエラ、ニカラグア、ボリビア、エクアドル、白ロシア、キューバ、ジンバブウェ、シリアとのことです。
これで見ると札付きの人権無視国(イラン、北朝鮮、ジンバブウェ、キューバ、白ロシア)のほかはラ米のいわゆる左派系国家だけです。

確か昨日、安保理の拒否権で、イスラエル非難が否決されたあと、強制力と権威には欠けるが、拒否権が無く、圧倒的多数の支持を期待できる総会に行くのが、アラブ諸国の常套手段で、今回はイスラエルとの関係での米国と同じ孤立をロシアと中国が味わっているはずだと書きましたが、総会の反対票がラ米の友好国に偏る点でも、全く同じ状況です。

更に、ロシア代表は、決議案がバランスが取れていないので修正案を提案したが、拒否されたので反対したと投票説明をしたと言うことですが、これも米国が常にイスラエルの攻撃だけを非難するのはバランスを欠く、として拒否権行使や反対の理由としていることと、全く同じ理由付です。
こうして見ると、米国やロシアなどの大国が、国際社会で孤立して、わがままを通そうとするときの総会決議と言うのは、国際的正義が何処にあるかを示す象徴的意義があると言えるかもしれませんが、問題は矢張りそれが象徴に留まり、実効性はないことでしょうね。

http://www.aljazeera.net/NR/exeres/C3E1C45C-8724-4680-9E6F-7A615771BCA9.htm?GoogleStatID=1
http://www.alarabiya.net/articles/2012/02/17/195151.html
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