中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

国連

シリアの化学兵器問題(安保理の状況)

シリアの化学兵器問題に関し、安保理は米英仏提出の決議案の採決を延期したところ、米国の巡航ミサイル攻撃を受けてロシアは、安保理の緊急会合を求める意向の由。
また、ボリビアは安保理の緊急非公式協議を要請したよし。

なお、これを報じるal jazeera net は、3国決議案とこれに対するロシア決議案と、双方の相違を埋めようとした非常任理事国決議案の3本の決議案が安保理に提出されているとして、3国案とロシア案の内容を紹介しているところ、次の通りです
なお、安保理マターであれば、おそらくは米英等のメディアのほうが詳しい可能性が強いので、関心の向きは、どこか適当なところをお探しください。

米英仏の3国決議案の主要点は
・khan sheikhan に対する化学兵器による攻撃を、最も強く非難する。
・シリアが化学兵器を保持していたり、それを使用したことが明らかになった場合には、憲章第7章(制裁措置。もっとも、この制裁措置には、非軍事的措置…通常経済制裁と呼ばれる…と軍事的措置の2つがある)に基づく措置をとる必要性を確認する。
・化学兵器禁止条約機構の計画を支持する。
・すべての関係者にこの調査団の早期到着を支援するように要請し、シリア政府に対し当日のシリア軍機のすべての飛行記録の提出と責任者の名前の提出を要求する。
・調査団の空軍基地へのアクセスとか、事情を聴取したい者全てへのアクセスの保証。
の由ですが、3国はロシアの要求で、若干の細部の手直しには応じたが、大部分の修正要求は拒否した由。

他方ロシア案については
・化学兵器禁止条約機構と国連の関連機関に対して、調査団の攻勢に関する提案を求める。
・調査団の構成にあたっては、地理的配分の公正さを保つ必要がある。
(ここのところはわかりにくい表現かと思うが、国連での選挙でよく使われる表現で、要するに地理的にどこかに偏るのではなく、すべての加盟国から平等に選出すべしということ。調査委員会というのは各国の代表ではなく、専門家の集まりのはずで、この表現を入れるということは、例えばロシアの息のかかった委員を入れて、調査委員会の報告を無意味なものとする可能性がある、というよりはそれを狙ったものでしょう)
だが、ロシア案は安保理で十分な支持を集められなかったよし。

非常任理事国案の内容は不明。

http://www.aljazeera.net/news/international/2017/4/7/روسيا-وبوليفيا-تدعوان-لاجتماع-عاجل-لمجلس-الأمن
https://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2017/04/07/بوليفيا-تطلب-عقد-محادثات-لمجلس-الأمن-بعد-ضربة-أميركا.html

スーダン大統領の国連出席問題

スーダン大統領が国連総会出席のため米国への査証を求めた件は先に報告しましたが、確か昨日だったかのアラビア語メディアのネットは、この件の取り扱いで国連は板挟みになっていると報じていたかに思います。
案の定、19日付al arabiya net は国際刑事裁判所ICCは米国政府に対して、バシャール大統領が米国に脚を踏み入れたら、これを逮捕するように要請したと報じています。
記事はなお、米国務省はこの査証要請を「遺憾だ」としているが(国連と米国との取り決めで国連の会議への出席者の査証はこれを出すことを義務付けられている)、他方米国はICCの加盟国ではないので、仮にバシャールが訪米しても逮捕する義務はないとコメントしています。

記事の要点は以上で、確かに米国に逮捕の義務はありませんが、ダルフールでの大量虐殺に責任があるとされるバシールが米国に堂々と乗り込んできて、それを逮捕もせずに見逃したら、米国内のオバマ批判は相当強くなるでしょうね。
オバマとロウハニの会談の可能性と言い、毎年国連総会の舞台は、色々なドラマを提供してくれます。

http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/2013/09/19/-الجنائية-الدولية-تطلب-من-واشنطن-القبض-على-البشير.html

シリア情勢(国連総会決議採択)

国連総会は16日シリアに関する決議案を採決し、全加盟国193国中137国の賛成(反対12票、棄権17票)で可決しました。
確か先日国連では、この決議案に対する支持が前回の総会決議支持の133を超えるか否かが注目されている(要するにその後安保理等でロシア、中国が強硬にアラブ連盟案に反対したのでその影響等が注目されていたと思う)と書いたと思いますが、今回の賛成137は前回を若干上回り、国際社会のシリア批判が強まっていることを物語っていると思います。

反対したのはロシア、中国の他、イラン、北朝鮮、ベネズエラ、ニカラグア、ボリビア、エクアドル、白ロシア、キューバ、ジンバブウェ、シリアとのことです。
これで見ると札付きの人権無視国(イラン、北朝鮮、ジンバブウェ、キューバ、白ロシア)のほかはラ米のいわゆる左派系国家だけです。

確か昨日、安保理の拒否権で、イスラエル非難が否決されたあと、強制力と権威には欠けるが、拒否権が無く、圧倒的多数の支持を期待できる総会に行くのが、アラブ諸国の常套手段で、今回はイスラエルとの関係での米国と同じ孤立をロシアと中国が味わっているはずだと書きましたが、総会の反対票がラ米の友好国に偏る点でも、全く同じ状況です。

更に、ロシア代表は、決議案がバランスが取れていないので修正案を提案したが、拒否されたので反対したと投票説明をしたと言うことですが、これも米国が常にイスラエルの攻撃だけを非難するのはバランスを欠く、として拒否権行使や反対の理由としていることと、全く同じ理由付です。
こうして見ると、米国やロシアなどの大国が、国際社会で孤立して、わがままを通そうとするときの総会決議と言うのは、国際的正義が何処にあるかを示す象徴的意義があると言えるかもしれませんが、問題は矢張りそれが象徴に留まり、実効性はないことでしょうね。

http://www.aljazeera.net/NR/exeres/C3E1C45C-8724-4680-9E6F-7A615771BCA9.htm?GoogleStatID=1
http://www.alarabiya.net/articles/2012/02/17/195151.html

国連総会とパレスチナ情勢

イスラエルでは9月の国連総会でのパレスチナ独立国家承認に合わせて、占領地のパレスチナ人の間で、抗議運動等の大衆動員が起こり、西岸の治安が大きく影響されるとして、特に軍隊を中心に、対策の研究、部隊の訓練等が進んでいるとの報道がこれまでも何度もありましたが、30日付の haaretz net の記事は、IDFが入植地の治安担当員をも巻き込んで、治安維持に当たろうとしていること、現場指揮官へのマニュアルなどを具体的に報じていますので、記事の要点のみ次の通り。


なお、イスラエル軍は9月19日から、事態の悪化に備えて、スタンドバイをするとのことで、この9月はパレスチナにおいても熱い夏になりそうです。

イスラエル軍はパレスチナ人の抗議運動に備えて、入植地に対する訓練及び装備の配備を始めた。
装備としては催涙ガスとスタングリネード(手りゅう弾だが、人員殺傷を目的とせずに、閃光と爆発音で戦闘力を奪うもの)が挙げられている。


IDFは各地の入植地治安責任者とその使用法や使用の具体的な時期の判断法、軍との協議等について、ブリーフをしている。
また入植地については、その周辺に2つの線が想定され、最初の線を越えてパレスチナ群衆が侵入した場合には、催涙弾の発射、第2の線、即ち red line を超えた場合には,脚への銃撃をすることになっている。このマニュアルはゴラン高原の場合と同じである。

また、パレスチナ人の抗議の形態には、種々のものが考えられ、入植地の閉鎖から侵入、道路障害物の設置、さらにはテロまでが考えられるので、入植地に責任を有するIDF指揮官は常に入植地の治安責任者と連絡を保つことになる。

また入植地が孤立化させられる可能性も考えられるので、その中の店は必要物資の貯蔵を命じられている。

http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/idf-arming-and-training-israeli-settlers-as-mass-disorder-expected-in-september-1.381421

パレスチナ問題(PA大統領府の声明)

パレスチナとイスラエルの関係は、ガザを巡る緊張に加えて、29日にはテルアビブで(確かナブルス出身の)パレスチナの男が刃物でイスラエル人7名を負傷させた事件がありましたが、29日付の al qods al arabi net の記事によると、PA大統領府が声明を発して、PAとしては(このテルアビブの事件を含めて)民間人に対するすべての暴力行為に反対であるとの従来からの立場を表明したとのことです。

声明は同時にガザに対するイスラエル軍の度重なる攻撃も非難しているとのことですが、やはりタイミングから見ても、PAの関心から見ても、パレスチナ人にテロ行為の自制を訴えることが主眼であったと思われます。

PAとしてはこの9月からの国連総会で独立国家承認を勝ち取ることが、当面の戦略であるので、それが相互の暴力の交換がエスカレートして、事態が制御不可能な状況になることを危惧しているのだと思います。
とりあえず。

http://www.alquds.co.uk/index.asp?fname=latest\data\2011-08-29-12-24-10.htm
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