中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

外交

アラブ革命に対する米国の新戦略(エジプト紙の報道)

中東の動向に大きな影響を有する米国の政策については昨日もCNNの報道に非常に驚いたので、若干先走りの感じもあることを書きましたが、6日付のエジプトの al ahram net の記事は、Wall Street Journal を引用しながら、オバマ政権はアラブの革命で、革命勢力を先ず支持するという戦略を改め、改革の意思のある政権には時間を貸すと言う新しい戦力に転換したと報じています。

元は米紙の報道ですが、ahram という有力紙が報道したということは、今後アラブ世界ではこれが米国の戦略と見られる可能性も強いので、記事の要点のみ次の通り。

「米紙によれば、オバマ政権はアラブの革命に対して新しい戦略をとることを決定した。

その戦略は、改革を進める意思のある同盟国の政府を維持しようというものである。

この戦略はオバマがムバラクを見捨てたというアラブ友好国からの圧力もあって、採択されたもので、今後米国はエジプト革命やリビア革命に対してとった政策はとらない。というのはこの政策が友好国を失うことになったと感じているからである。

このため、改革を求める民衆にとっては、改革までの時間がかかろうとも止むを得ないと考えている。

現在米国はバハレンからモロッコまでの抗議運動に対して、体制の転換を図るのではなく、これら政府が改革を勧められるように協力することを求めている。

米政府は中東の多くの国で、政治的、経済的、社会的改革が必要なことは認めているが、地域全体で一挙に行うのではなく一つ、一つの国ごとに行われるべきと考えている」

http://www.ahram.org.eg/463/2011/03/06/26/65897.aspx

リビア情勢と米国

先ほどny times のサイトをご覧になるようにお勧めする記事を書きましたが、その時に最近リビアの情勢についても米国の出方がカギを握っていると感じたと書きました。

その背景等については下に説明しますが、個人的な経験ですが、若干長い間中東に居たり、外から中東を見ていて、常に心のどこかで、中東がどうなっていくかは、米国の政策に大きくかかっていると感じていました。

イランのクーデター(1953年)を始め冷戦時代の米国の中東に対する関与から始まって、中東和平、湾岸の状況等極言すれば中東の問題で米国の息のかかっていない問題は無いくらいに感じていました。その極端な例がブッシュのイラク戦争とアフガニスタン戦争ですが。

それはオバマに代わっても同じこと、むしろ彼がイスラム、中東重視を打ち出してからは更にこの関係が強くなると考えていました。

ところが彼が最重要視した中東和平問題で、ネタニアフにあしらわれて、アラブ、ムスリムの信頼を失ってから、米国の影が薄くなって行くのを感じ、特に先日の安保理での拒否権(何しろ欧州諸国は総て賛成)行使で、こと中東の問題に関しては米国は国際社会で完全に孤立したと思われ、今回の一連の事件でも、例えばエジプトに関するオバマの対応は非常に切れが悪く、慎重だなと感じていました。

今回のリビアに対する対応ぶりでも、例えばクリントン長官の発言が対カッダーフィ強硬から慎重に変わったり、オバマもつい最近カッダーフィの即時退陣を求めるようになりましたが、その前はかなり慎重で発言にもぶれがあったような気がしました。

それよりも何よりも、かっての米国であればそのような外交的な発言と合わせて、国際会議の開催や、調査団の派遣から始まって、最終的には米軍または第3国軍の派遣、はては軍事力の行使等、米国の眼から見てあるべき姿にするには何をすればよいかを検討し、同盟国と協議し、そう言ったニュースを背景に圧力をかけつつ、米国の考える方向に誘導して行ったと思います。

それが gun boat diplomacy と言われて、多くの途上国(カッダーフィなどは一番)から反発を買ったものですが、世界秩序に責任のある立場の国としては、米国であろうが無かろうが多かれ少なかれ、「実効力のある政策を」をとるのは当たり前だし、それが所謂大国と言うものだろうと思っていました(勿論各国と協議して物事を進めるか、かってのソ連や現在の中国のように国際社会の声を無視するかで、反応に大きな差が出るのは当然です。それがブッシュの父と息子の対イラク政策で、国際社会の反応が大きく違った理由でしょう)

ところが今回のリビアに関しては、反政府運動が激しくなってから、カッダーフィが空軍、治安部隊、アフリカ傭兵を使って反政府側の民衆を激しく弾圧しようが、リビアの元閣僚が大挙して離反しカッダーフィの暴挙を非難しようが、キレナイカが反政府側の手に落ちようが、トリポリの近くで戦闘が行われようが、オバマ政権は具体的に動こうとはしませんでした。

国際的に最も注目を浴びた飛行禁止区域の設定に関しても、大きな軍事作戦を要するとの名目で、非常に慎重な立場を貫いてきました。

それが良いか悪いかについてはいろいろと議論があり得るところでしょう。何しろ中東での米国の軍事介入は大きな議論を巻き起こすし、カッダーフィのこれまでの反米ぶりに鑑みれば、躊躇するのも理解できないところではありません。

しかし、最近このまま国際社会が何もしなければ、リビアは反政府のキレナイカ、政府側のトリポリタニアと2つにわかれて、長い血生臭い戦闘が続く可能性が強くなってきました。また軍事力からすれば政府側が最終的に勝つ可能性が高く、その場合にはカッダーフィが反政府にたった者たちに対して如何なる報復をするかも略見当がつこうというものです。

と言う状況を反映したのか、この2〜3日毎日何回か見ているBBCとCNNの放送態度に最初は微妙な、そして昨日くらいからは明らかな差が見られるように感じられてきました。

要するにBBCもカッダーフィに対する批判的報道と言う点では同じなのですが、同じトーンでもCNNの方がより強く、それが更にますます強まりつつある印象を受けて、本日の放送、特にリチャードソンとかいう北朝鮮問題で活躍してきたどこかの知事とtime magazineの編集長を入れた討論では、米国は介入すべしという意見を米政権につきつけている感じさえ受けました。

その議論で最も驚いたのは、飛行禁止区域事態では、軍事的バランスを崩せないので、CIA等を使っての秘密工作、武器供与、アラブ、アフリカ諸国を使っての介入とう所謂 covert operation をやるべきだと、2人とも力説しているところでした。

またその他の知識人も大体が米国は人道的見地から介入すべきだとの意見の持ち主が多いように見受けられました。

最近のCNNの米国内における影響力がどの程度のものか解りませんし、またこのような意見が特殊CNN的意見なのか、米国民、または議会などでの有力意見なのかどうかも不明です。

しかし、いくらCNNが外国ニュース専門とは言っても、米国民の常識からかけ離れた意見に固執するとは思われません。またそれとは別にCNNやBBCの放送するカダーフィ部隊の弾圧の映像は、米欧市民に対してカッダーフィに対する反発と国際社会の介入を求める声を増大させるのではないかとの気がしてなりません。

以上長々と書いてきましたが、特に何らかの具体的な証拠や情報がある訳ではありませんが、どうも米国をはじめとした国際社会が、飛行禁止区域の設定を含めてリビアに対して何らかの具体的措置をとる時期が近付いている気がして仕方がありません。

全くの個人的な感じでものを言うのは良く無いのですが、是非厳しいコメントをいただけたら有難いと思っております。
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