中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

拒否権

シリア情勢(国連総会決議採択)

国連総会は16日シリアに関する決議案を採決し、全加盟国193国中137国の賛成(反対12票、棄権17票)で可決しました。
確か先日国連では、この決議案に対する支持が前回の総会決議支持の133を超えるか否かが注目されている(要するにその後安保理等でロシア、中国が強硬にアラブ連盟案に反対したのでその影響等が注目されていたと思う)と書いたと思いますが、今回の賛成137は前回を若干上回り、国際社会のシリア批判が強まっていることを物語っていると思います。

反対したのはロシア、中国の他、イラン、北朝鮮、ベネズエラ、ニカラグア、ボリビア、エクアドル、白ロシア、キューバ、ジンバブウェ、シリアとのことです。
これで見ると札付きの人権無視国(イラン、北朝鮮、ジンバブウェ、キューバ、白ロシア)のほかはラ米のいわゆる左派系国家だけです。

確か昨日、安保理の拒否権で、イスラエル非難が否決されたあと、強制力と権威には欠けるが、拒否権が無く、圧倒的多数の支持を期待できる総会に行くのが、アラブ諸国の常套手段で、今回はイスラエルとの関係での米国と同じ孤立をロシアと中国が味わっているはずだと書きましたが、総会の反対票がラ米の友好国に偏る点でも、全く同じ状況です。

更に、ロシア代表は、決議案がバランスが取れていないので修正案を提案したが、拒否されたので反対したと投票説明をしたと言うことですが、これも米国が常にイスラエルの攻撃だけを非難するのはバランスを欠く、として拒否権行使や反対の理由としていることと、全く同じ理由付です。
こうして見ると、米国やロシアなどの大国が、国際社会で孤立して、わがままを通そうとするときの総会決議と言うのは、国際的正義が何処にあるかを示す象徴的意義があると言えるかもしれませんが、問題は矢張りそれが象徴に留まり、実効性はないことでしょうね。

http://www.aljazeera.net/NR/exeres/C3E1C45C-8724-4680-9E6F-7A615771BCA9.htm?GoogleStatID=1
http://www.alarabiya.net/articles/2012/02/17/195151.html

米国の拒否権(米議会の圧力)

先日の国連安保理での入植地建設非難決議に対する米国の拒否権行使は、改めて中東紛争に関する米国の孤立振りを印象付けました(英独仏を含めたの安保理理事国14カ国が総て支持、棄権さえ無かった)。

この問題について、28日付の y net news は、米国の拒否権行使は、オバマ政権の国連でのこれまでの政策及びイデオロギーに拒否権を使わせることになったと評価したうえで、それは米国議会の力であったと主張しています(確かに、その時の投票後・・だったと思うが・・の投票説明をした、米国常駐代表の演説は完全な弁解に終始し、オバマ政権の不本意さが見え見えのスピーチでした)

同記事は、この拒否権行使の裏には、共和党、民主党を問わず、外交委員会のメンバー、その中東小委員会のメンバー等が一致して率先して精力的に、オバマ政権に働きかけたことがあったと指摘しています。

そして、同記事は外交問題に関する大統領と議会の複雑な関係、憲法上の check and balance 制度を解説するとともに、ベトナム戦争以来の両者の関係の歴史を解説しています。

そして、中東に関しては、米議会はイスラエルが尖鋭に対立する現在の議会でも、両党がともに支持しうる共通の数少ない問題であることを示すとともに、イスラエルの問題は純粋な外交問題ではなく、議会にとってはキリスト教・ユダヤ教と言う基盤に立つ国内問題であると論じています。

そして同記事はイスラエルとしては、米議会の力を認め、議会の力を利用していくと言う、従来からの政策を今後とも推進すべきであると強調しています。

記事の要点は以上の通りで、こと中東問題になると議会の関心と影響力が殊の外、強いことは周知の事実ですが、先日の拒否権行使についてここまであからさまに、イスラエル紙に米国議会の力とそのイスラエル一辺倒ぶりを謳歌されてしまうと、今後のオバマ政権下での米国の中東和平に対する力の無いであろうことを改めて予告されたようなものです。

先日も書いた通り、米国の中東における影響力には大きな陰りが見えており、その米国がおそらく世界中の大部分が正義と感じることを正義と感じない様であれば、その影響力のさらなる低下は必然ではないかと思われ、半ば暗澹たる感じがしないでもありません。

http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4034927,00.html

入植地に関する安保理決議(総会へ?)

イスラエルの入植地建設非難決議に対する米国の拒否権行使については先にご紹介しましたが、パレスチナ側としてはその代替として緊急総会を開いて、同様の決議案の採択(総会では米国の拒否権がないので、大差での採択は確実)を検討中の模様です。

そのニュースを報じたhaaretz netの20日付の記事が、先日の拒否権行使に至る若干の経緯などを解説していますので、要点のみ次の通り。

「米国の拒否権に伴いパレスチナは今週、国連総会の緊急総会を開催し、イスラエル非難の決議案を採択する予定である。

米国の拒否権は、そもそも米国の入植地政策に反するが、これに対するアラブの反応は中東和平をより危機的にするであろう。

ネタニアフの要請でぺレス大統領がアッバスに電話をして(と言うことはネタニアフはアッバスと電話もできない間になっている訳ですな!)交渉に戻ることを要請したが、アッバスは入植地の凍結が先決とこれを拒否した。

オバマは18日アッバスと50分電話で話して、決議案が米国の中東での利益を害する可能性があり、また米議員がパレスチナへの援助を停止する可能性があると警告した。その日の午後クリントン長官が更に強い調子で警告した。

拒否権行使後、米大使は米国の立場と拒否権との間の矛盾を説明する難しい仕事を負わされた。他方英国大使は英、仏、独を代表して入植地の建設は国際法違反であると声明した。

拒否権行使は米国議員からは評判が良いが、イスラエルの国連大使は決議案は通過しなかったが、イスラエルはこれまで以上に国連で孤立したと報告した。

オバマ政権は拒否権はアラブ世界における米国の立場を更に悪化させると危惧している。他方アッバスの立場は、米国の圧力に屈しなかったということで強化された。」

http://www.haaretz.com/print-edition/news/pa-to-call-urgent-un-session-over-settlement-resolution-veto-1.344479
livedoor プロフィール
最新コメント
記事検索
  • ライブドアブログ