中東の窓

長年、日本の外交官として中東に深く関与。中東から見た国際関係を日々発信するブログ。

IS

後藤さんの殺害

441[1]今朝は朝から誠に残念なニュースが流れていますが、アラビア語メディアでも画像入りでこのニュースを報じています。
事件については、できれば総括などもしたいと思っていますが、取り敢えずのコメントだけ、次の通り

・このような事件があると、日本では必ず、政府の責任とか自己責任とかの方に議論が行きますが、とにかく悪い、というか悪逆非道なのはISであって、本人はもちろん、日本政府、日本も被害者であることを忘れない対応が先ず肝心だと思います。

・テロの事件後の各国の反応を見ても、米国の9:11事件後の反応はもちろん、本年初の仏のテロ事件後の反応を見ても、米仏国民は一致結束して、政府の後ろに立って、テロに対する反対と抗議を表明しました。
これがまともな国の反応だと思いますが、日本国民も是非そうあって欲しいと思っています。

・安倍総理は繰り返して、テロには断じて屈しない、と発言してきましたが、殺害の報道を受けて、中東、イスラム諸国への人道援助等の協力は今後とも続けるし、増大すると発言したように記憶しますが、取り敢えず日本としてテロに屈しないという意思表示としては、極めて適切なもので、国際社会の一員としての立場に立つものでしょう。

・また事件解決のために政府はヨルダンとも密接に協力してきましたが、ISにはこのような両国の関係を分断しようとする思惑もありそうで、この際我が国としてはヨルダンとの密接な関係を維持、強化し、それを妨げるような言動は断じて排すべきでしょう。
勿論トルコその他の中東の友好国との関係を一層密にすることも重要です。

・ISは今後世界中日本人を標的とするという気違いじみた脅迫を行いましたが、こういう時には、日本もさらに一層の情報収集に努めるとともに、世界各国、特に欧米諸国やヨルダン、トルコ等中東地域の情報機関をはじめとする政府機関との情報交換、情報分析を強化することが肝要だと思います。
正直に言えば、我が国が有するIS等の過激派に関する情報は、極めて限定されていると思われるからです。
これはわが国にはまともな情報機関も無いことからのある意味での宿命ですが、その意味では国内でとかくの批判もある、国家安全保障会議及び国家安全保障局の設立は、遅かったとはいえ、極めて時宜にかなったものだったと思います。
それらがいまこそ、その存在価値を示すときです。

・安倍総理は、テロリストを絶対に許さないと発言しましたが、具体的にどうするつもりか?
と言うのは、戦後の日本は一貫してある意味で通常の国家なら保有している手段を自己の意思で放棄してきました。許さないと言っても、どうしてそれを担保するかが実質的な問題です。
今回の事件はそのような日本の立ち位置についてあらためて考える機会をくれたものと思います。
因みに、これを報じたal arabiya net は表題の中で、「東京は反応の用意がある」と報じていますが、これが通常の国際的な感覚でしょう。

具体的なことも不明なうちに余計なことを言うのは、まさしく百害になるので、取り敢えず
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/iraq/2015/02/01/داعش-يعدم-الرهينة-الياباني-الثاني.html
http://www.aljazeera.net/news/arabic/2015/1/31/تنظيم-الدولة-يبث-تسجيلا-لإعدام-الرهينة-الياباني-غوتو

邦人人質事件に思う

後藤さんの消息は依然不明ですが、彼の無事釈放を祈りつつ、これまで感じていた人質事件と日本の反応に関する、完全な個人的意見を書いておきます。

このような個人的意見にどのような意味があるのか、若干疑問ですが、今後似たような日本人を対象にした事件が起こらないように、又起きた場合でも対処を誤らないように、との願いをこめたものです。

1、この事件はあらためて、如何に日本がテロに弱い国で、テロが起きた場合の反応が欧米のそれと違っているかを教えてくれたと思います。

2、このような人質事件が生じた場合の最重要なことは、国民、というよりはマスコミや野党等が、直接交渉している政府の背後に結束して、不用意な発言を慎み、ましてテロリストを利したり、交渉を妨げるような不必要な発言をしないことだが、その点で今回も日本は極めてテロに弱いことを見せつけたと思います。

3、TVや新聞等のマスコミの取り扱いに問題があることは、その一部について先日、私の違和感を書いたところですが、それよりも問題なのは一部国会議員の発言ではないでしょうか?
国家議員となれば、国民から選出され、国政を託された人物たちですが、そのような人物がテロリストと交渉している最中の政府の政策に反対を唱えたり、まして身代金の支払いなど言い出すようでは、交渉中の政府は背後から鉄砲を撃たれたようなものです。
その点で自分の党の議員の発言をたしなめた、共産党委員長の采配は、共産党ながら立派だったというか、当然の行動だったとおもいます。

4、当然イデオロギーが違ったり、利害が違えば、政府とは異なる、場合によっては反対の意見をもつことは当然ですが、そのような意見を披露するのは、このような時期ではなく、事件が無事解決した後で行うべき事です。
そのような意見が出てくることは、テロリストから見れば、まさしく思うつぼで、その政治的目的を達しつつあることとなり、彼らが計算を間違えば、要求を更に上乗せしたりして、折角の交渉を頓挫させかねません。
特にことが身代金の問題になれば、場合によっては折角何処かで折り合いがつきそうになっていたものを、先方が急に要求を上乗せして、交渉がとん挫して、人命にかかわることにもなりかねません。
もちろん、私にはどういう交渉、接触が行われていたのかいるのかは、一切判りませんが、いくら秘密保持の苦手な我が政府といえども、野党の議員やマスコミに手の内を見せているとは思われず、彼らも接触の中身を知らずに批判していることは間違いないと思います。
交渉している当時者は全責任を負って交渉いているので、交渉が失敗したときの責任を負うのも彼らですが、それを責任ももたない外野が、がやがや言いたてることは百害以外の何ものでもないと思います。
政府の中東政策や外交政策に異論があったり、交渉の方針及びやり方に文句があるのであれば、それは事件が無事解決した後で、厳しく追及すべき問題であって、現在のような最高に機微な時期に発言する問題ではありません。

5、マスコミの対応にも大きな問題があるように思われます。
TVでも新聞でも、大体いわゆる中東専門家と危機管理専門家と称する人たちから意見を聞いたり、発言させており、事件の性質からしたら、それは当然のことですが、彼らもまたマスコミからの期待に応えてか、その発言には問題のあるものが少なくないように思います。
中東専門家については、先日彼らが具体的な根拠もなしに中東と日本の関係について発言する問題について指摘しましたが、そりよりも問題なのが、彼らの中には危機管理問題、要するに交渉の中身等についてまで発言する者がいることです。
彼らはあくまでも中東についての専門家、研究家であって、切ったはったの危機管理に関係したこともなければ、その研究家でもないと思います(そのような人もいるのかもしれないが)。そのような人が、具体的交渉の中身などについて注文をつけることは、専門外のことについて口を出すというだけではなく、国民を惑わせたり、交渉にさえ悪影響を与えることになりかねないと思います。
また危機管理専門家と称する人たちの発言にも問題があるような気がします。
彼らが一番承知していることだと思いますが、こういう時期には交渉に予断を与えたり、テロリストを利する言動を慎むことが危機管理の要梯であることは言うまでもありません。
従って、彼らの役割は危機管理の心得や、一般的な危機管理についての説明が主となるべきで、現在行われている交渉については
  テロには屈しないという原則と人命第1の原則の中で最大限の努力をすべきこと
  政府の交渉が成功して人質は一日も早く解放されるべきであること
等の原則論にとどまり、交渉の中身を詮索したり、示唆したりすることではないはずです。
それは正しく交渉に悪影響を与えかねない内容です。

6、このような議論をすると、マスコミとしてはそれでは事情を知りたがっている国民の期待にこたえる事にはならないので、とにかく事情通からできる限りの情報を出してもらっている、という反論をするに決まっています。
しかし、交渉に悪影響を与えかねない議論を紹介しなくとも、現在日本のマスコミが(こういう時になると突然中東に関する知識と能力を示しだすが)やっているように、ISがなにをやってきたか、如何なる組織であるか等の情報や、世界中のテロの情報やら、シリア、イラク情勢から始まって、エジプト情勢、リビア情勢、イエメン情勢等等、国民の期待にこたえる情報提供はいくらでもできるし、事件に関しても、なにも交渉の内幕を詮索したり、その内容について示唆したり、主張したりするような非常識な報道をしなくとも、これまでも二人の軌跡や、彼らと関連した現地人のフォロー等、いくらでも重要な情報は提供できると思われます。
また、取材の経緯から、今回の事件には政府が相当の責任があるという結果になっているのであれば、それは事件解決後、いくらでも気のすむまで追求したら良いと思いますが、そのような議論は(自らしなくとも専門家に語らせる手法でやっても)現在展開すべき時期でないことは明らかでしょう。

7、今回の事件を通じても、ISが相当日本の体質を熟知しており、何処をつけば日本社会のやわさが出るのか知っていた上で、事件を起こした気がしてなりません。
また、彼らは国内で、例えば政府の中東政策に反対する議論を起こしたことで、既にかなりの成功を収めており、さらには、中東でこれまで日本と最も関係の深かった国の一つであるヨルダンとの関係にまでひび割れを起こさせ様としていると思います。
(そんなことはあり得なかったでしょうが)仮に日本が言われるままに,2億ドルもの身代金を支払っていたら、米国との間のひび割れの可能性もあったと思います。
後藤さんが無事釈放された後で、日本がなすべきことは、今回の事件を包括的に総括し、テロに弱くない国家になるにはどうすべきか、真剣に考えるべきではないかと思っています。
そうでないと、既に払った一人の人の命も無になる気がしてなりません。

イラク情勢(8日)

8日オバマ大統領の空爆許可の直後(ただし、地上軍の介入はないとした)、米軍が早速イラク北部の空爆を行った模様です。
空爆は空母からのF18戦闘爆撃機及び無人機から行われたとのことで、目標はISの車両、対空砲、大砲等の軍事目標とのことです。
この米国の空爆に対して、英首相は早速これを支持するとしましたが、英国自身は介入はしないとした由。

他方イラク軍参謀長は、この米軍の介入により、数時間内にもイラクの状況は大きく変化するであろうとの、極めて楽観的なコメントをしたとのことです。
おそらくは米軍の空爆がバグダッド近辺にも迫っているIS軍に対しても近く行われるとの見方によるものでしょうか?
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/iraq/2014/08/08/طائرات-أميركية-تغير-على-مواقع-لداعش-شمال-العراق.html
http://www.alquds.co.uk/?p=204011

取り敢えずの状況は上の通りですが、al arabiya net はなぜISがかくも迅速にイラクの大きな部分を支配下に置くことができたかという5つの理由を書いています。
中身自体は、まあ、誰もが思いつくようなことで、特段目新しいことはないようですが、取り敢えず下記書いておきます、

「ISはその戦闘員が比較的少ないにもかかわらず(数千人と推定されている)、過去数週間でISはイラクの大きな部分を支配に収め、ペッシュメルガの支配地域の町のいくつかも支配した。
その原因は下記の5であろう。

1、多数の兵器の入手
ISはこれまでその弱点であった武器不足を政府軍等からの武器獲得で大きくカバーした。特に装甲車両、大砲ロケットその他の米製近代兵器を獲得したことは大きい。

2、シリアでの経験
ISはもともとイラクが発祥地だが、シリアの内戦に介入することで、多くの戦闘訓練を積んだ

3、相手と場所の賢明な選択
ISは防護が困難で、住民の支持を取り付けられそうなスンニ派地域を主な作戦地域とし、その軍事インフラを整備し、損害を少なくした。

4、宣伝戦
ISが作戦する地域では、その前からISの野蛮な戦術に対する噂が広く広まり、これがISが地域全体を速やかに掌握することを助けた。
ISの戦略では人民を降伏させることが大きな要素になっている(その点、その昔の蒙古のジンギスカンの戦略とよく似ている)

5、反対側の弱体
イラク政府軍はイラク戦争後、その再建に成功しなかったが、これまで強力と思われていたクルドのペッシュメルガも武器に不足し、その軍事能力は限られたものであった
http://www.alarabiya.net/ar/arab-and-world/iraq/2014/08/08/تحليل-اخباري-لماذا-تمدد-داعش-بسرعة-قياسية؟.html
livedoor プロフィール
最新コメント
記事検索
  • ライブドアブログ