ジャイアント・ステップ号関連

2006年12月08日

銚子で油汚染カモメ(続報)

大変遅くなってしまったが、seichoudoku氏によるブログ『鴎舞時』とujimichi氏によるブログ『MU's Diary』に、11月26日と30日の銚子漁港での油が付着したカモメに関する記事が掲載されていた。
快くリンク等を許可して頂いたのでここでご紹介させて頂く。

【11月26日銚子漁港】
ウミネコ 1710羽(油汚染個体2羽)
セグロカモメ 1920羽(油汚染個体6羽)

【11月30日銚子漁港】
セグロカモメ※ 994羽(油汚染個体1羽)
オオセグロカモメ 31羽
シロカモメ 2羽
ワシカモメ 1羽
カナダカモメ 1羽
アメリカセグロカモメ 1羽
ウミネコ 293羽(油汚染個体1羽)
カモメ 5羽
ユリカモメ 280羽
※‘taimyrensis’及びモンゴルカモメの可能性のある個体含む

MU's Diary↓
http://ujimichi.exblog.jp/
鴎舞時↓
http://seichoudoku.at.webry.info/200611/article_41.html

abura060303 at 18:46|この記事のURLTrackBack(0)

2006年11月18日

鹿島港で座礁の貨物船のうち1隻を撤去

先月24日に茨城県の鹿島港付近で悪天候のために座礁したパナマ船籍の貨物船「エリ−ダ・エース号」が撤去された。海上保安庁では、残る2隻のうち1隻は1ヶ月以内に撤去できるということだが、残る1隻については船体の破損がひどいため、メドが立っていないとのこと。―――BIGLOBEニュースより引用

船体の損傷が激しい1隻とはジャイアントステップ号のことだろうか。どれだけの燃料油が流出したのか懸念される。

関連記事↓
BIGLOBEニュース「鹿島港で座礁の貨物船うち1隻を撤去」

abura060303 at 21:24|この記事のURLTrackBack(0)

2006年11月02日

油汚染情報について

環境省水鳥救護研修センターのサイトから油汚染情報が入手できるようになった。
これまでも情報の公開はされていたのだが、古いものが多く、残念に感じていた。
つい先ほど気づいたのだが、コンテンツが整理されつつある状況のようだ。
今回のジャイアント・ステップ号関連の情報として、11月1日付けで以下がアップされていた。引用させて頂く。

(引用はじめ)・・・・・

10日6日13時45分頃、「ジャイアント・ステップ号」(パナマ船籍、98,587トン)が座礁し、10月22日現在、船体は船首部分、船体中央部分、船尾部分に分かれて点在しています。
10月28日現在、残った船体から重油が流出しており、事故現場近くの鹿島地域では、油に汚染された海鳥約10羽が保護され、茨城県下の動物病院に搬送後、茨城県鳥獣センターに収容されています。

・・・・・(引用終わり)

サイトにはまだ若干の不備もあるようだが、修正も時間の問題だろう。
情報は、TOPページの「緊急情報」から入手できる。
こういった「情報公開」に関する前向きな動きは本当に有り難いと思うし、評価したい。
しかるべき機関が公に情報を発信していくことは非常に重要なことだと思う。
情報を発信することの大切さは、私どもも知床の事件を通じて痛感した。
今、現場で何が起きているのか。
ただそれだけのことが、容易に入手できない。
この情報化社会にあって信じられないような事だが、事実なのである。
ナホトカ号事故や知床の事件の結果、幸か不幸か「油汚染」に関する認知度は確実に高まったと言えるだろう。
だからこそ、今、情報発信には力を入れて欲しい。
リアルタイムは無理としても、なるべく頻繁に更新して頂きたいと願う。

また、情報発信と同時に、一般バーダーから汚染鳥の情報を吸い上げるシステムの構築を検討すべきではないだろうか。
汚染鳥は当然ながらバーダーが第一発見者となる可能性が高い。
場合によっては油の漂流・漂着情報が流れる前に、汚染鳥が発見されることも考えられる。
速やかに情報を吸い上げるシステムがあれば、汚染源の特定や防除・救護体制の確立など、あらゆる点で迅速に事が進む。
そういったノウハウを持っている民間団体等を交えた上で、鋭意検討して頂きたいと願う。

abura060303 at 23:30|この記事のURLTrackBack(2)

銚子で油汚染カモメ(続報)

ujimichi氏によるブログ『MU's Diary』に、11月1日の銚子の記事が掲載されていた。
快くリンク等を許可して頂いたのでここでご紹介させて頂く。
ujimichi氏にお礼申し上げる。

きっちりカウントして下さったデータを以下に引用させて頂く。
()内は汚染鳥の数、「油」は油による汚染、「鉄」は鉄鉱石由来と思われる汚染である。

●ウミネコ      1092羽(1油)
●カモメ          2羽(0)
●ユリカモメ      402羽(1鉄?)
●セグロカモメ※    220羽(1油)
●オオセグロカモメ   61羽(0)
※‘taimyrensis’他を含む.

計:カモメ類1,777羽中、汚染鳥3羽 = 0.2%弱

なお、Ujimichi氏によると「主に防波堤上に止まっているものをカウントしたため、飛翔中のものその他などを入れると、各種もう少し多くなるはず。」とのこと。

汚染鳥の数がまだこの程度で済んでいるのは不幸中の幸いと言って良いのではないだろうか。
ただ、まだ予断は許さない状況であり、周辺にお住まいの方や現地へ行かれる方は引き続き汚染鳥に注意して頂きたい。

abura060303 at 10:39|この記事のURLTrackBack(0)

2006年10月31日

銚子にて油汚染ウミネコ確認される

先日当ブログでもご紹介した、seichoudoku氏のブログ『鴎舞時』に、新たな汚染鳥の情報が掲載されていた。
カウントのデータや周辺海岸の画像も掲載して下さっており、とても参考になった。

30日の銚子漁港では、1610羽のウミネコ中、3羽の油汚染個体がいたとのことである。
割合としては0.2%に満たない数ではあるが、これだけでも十分に異常であると言える。
本来ならば「0」になる筈であり、原因不明の油汚染鳥が増える冬でも「数千羽に1羽いるかいないか=0.1%未満」といったところだろう。

時化が収まり、一刻も早く油の抜き取り作業が開始されることを祈るばかりである。

なお、これから銚子港へ行かれるバーダーが多くなってくると思われるが、もし油汚染鳥を保護されたりした場合は、千葉県庁の担当部署に一報を入れることをお勧めする。

千葉県環境生活部自然保護課(TEL:043-223-2107) 
メールは hogo7@mz.pref.chiba.lg.jp


abura060303 at 10:29|この記事のURLTrackBack(1)

2006年10月30日

油が再流出、汚染鳥救護(ジャイアント・ステップ号座礁事故)

10月6日に茨城県鹿島沖にて座礁したジャイアント・ステップ号。
船体に残った燃料油(重油)の抜き取り作業までもう少しという状況になって天候が悪化、燃料油が再流出し、海岸への漂着も確認される結果となってしまっているようだ。
地元のはまぐり祭りも無期延期となり、今度は重油の再流出/漂着である。
周辺の漁業関係者の方々のお気持ちを考えると、本当にやり切れない。
商船三井には誠意ある対応をして頂きたいと思う。

http://news.tbs.co.jp/headline/tbs_headline3413317.html

行政側や船会社等からの情報発信が滞ったままであり、報道も少ない。
現場で今何が起こっているのかは断片的な情報から推測するしかない状況である。

確かな情報によると、現在までに少なくとも7羽の油汚染鳥が保護され、内1羽は死亡したようである。
クロガモが被害に遭っているようだ。

周辺海岸でのセンサスは実施されているのだろうか。
救護ももちろん大切だが、被害を受けていない鳥がどれだけいるのかを把握することも大切なことである。

ただし、センサスが組織立って行われていれば良いが、そうでなければせっかく得た情報が活かされない可能性が高くなる。
ご自身でブログなどをやっておられる方はそこでとりあえず結果を公開しておくのも良いだろうし、そうでなければ私どもへ一報頂いても良い。
この場で公開していくことも検討したい。
とにかく、データの活用法は後から考えることが出来るが、今この時のデータは今しかとれない。
そしてとったデータは眠らせずに公開していくことが大切である。
センサスは、基本的には海岸に漂着鳥がいるかどうか、いた場合はその生死はもちろん油汚染の有無/程度を調べる。判断が難しい場合も多いため、写真をあらゆる角度から撮影しておく方が良い。
また漂着調査と同時に、周辺海上も含めた鳥の生息状況も調べる。
「いつ・どこに・何が・何羽いた」をしっかり記録するが、「大型カモメ類」というようなグループで一括りにしても良い。
多くのボランティアが参加して4月9日に実施された「オホーツク海岸調査」の報告書を参考にして頂きたい。
48〜49ページに二通りの調査用紙があるので、使いやすい方を使って頂いても良い。

http://www.wbsj-okhotsk.org/060409pdf.htm

なお、センサスに限らず海岸へ行かれた際にもし油汚染鳥を発見した場合は、以下に通報して頂きたい。

茨城県鹿行(ろっこう)地方総合事務所環境保全課(0291-33-4111内線255)

また新たに重油が大量に漂流・漂着したと思われる場合は、海上保安庁(118)への通報が適切かも知れない。
いずれにしても、どこか行政機関へ通報すれば担当部署に情報が伝達される筈である。緊急時にはあれこれ考える前にまず一報を入れることが大切だ。

地元の方には苦難が続くが、是非頑張って頂きたい。

abura060303 at 18:10|この記事のURLTrackBack(0)

2006年10月25日

相次ぐ海難事故

NHK等のニュース報道によると、24日午後、またもや茨城県鹿島港周辺にて大型貨物船2隻が相次いで座礁したとのこと。

韓国沖ではロシアの貨物船が沈没し、大量の木材が流出とのこと。

いずれも油の流出等、詳細については不明。
取り急ぎ一報まで。



abura060303 at 06:34|この記事のURLTrackBack(0)

2006年10月22日

ジャイアント・ステップ号:その後

ジャイアント・ステップ号の事故が起きてから2週間余が経過した。
前回の関連記事アップの直後、ブログ『海洋汚染情報』を書いておられる元・海の男氏よりお電話を頂き、貴重なご意見を伺った。
その内容については『海洋汚染情報』10月18日付け記事のとおりである。当ブログでご紹介しようと思いつつ、記事作成にもたついている間に氏が自ら書かれ、公開してくださった。いつもながら、氏の鋭い視点と深い洞察力には恐れ入るばかりである。真のプロフェッショナルとはこういう人のことを言うのだろう。感謝、の一言である。

さて、座礁船のその後、つまり油の抜き取り作業の進展状況等については、茨城海上保安部商船三井のサイトを注目していたのだが、これらは残念ながら更新が滞っており、必要な情報が得られないでいた。
今日になって、「油の抜き取り作業が21日にも開始されるらしい・・・」という報道がなされているとの情報を得、Web上で調べてみた。
一部の報道はすでに最新ニュースへの更新のため消失してしまっていたが、asahi.comSankei Webで関連記事を見つけた。
いずれも周辺の漁業関係者の苦悩なども採り上げたリポートであり、海難事故の後始末の難しさが伝わってくる内容となっている。漁業者の方々の心中を察すると本当に辛い。

これらの記事により、前述の油抜き取り作業に関する情報についての裏付けがとれたわけだが、残念ながらSankei Webの記事には「重油の流出は続いている」との記述があり、またasahi.comの記事を読んでも、私どもが前述の2つのサイトを参考にして抱いていた印象よりもはるかに深刻な状況であることが分かり、この「差」について憤りを感じている状況である。
重油の流出が続いているのが事実であれば、茨城海上保安部は流出の状況を定期的にWebへアップして頂きたい。また、当該船の船会社である商船三井のサイトでは、13日のプレスリリースを最後にジャイアント・ステップ号に関する更新が止まっているが、当然ながらこの間も様々な調査や作業がなされているはずである。それらの進捗具合をしっかりとWeb上で公開していって頂きたい。
周辺の漁業への影響等を考えて情報を制限しているのかも知れないが、だとすればいらぬ憶測を呼び、むしろ逆効果となってしまうように思えてならない。

汚染鳥等に関しては、ブログ『風の色を探しに・・・』に先週14日時点での情報が掲載されていた(10月15日の記事「黒いミユビシギ」)。
汚染されたミユビシギや周辺海岸の様子等の画像もさることながら、汚染鳥の程度や数などもしっかり記されており、事故後の状況を知る意味で非常に参考になった。
ブログ管理者のkoichi_78氏より承諾を得られたため、ここでご紹介しておきたい。ご快諾頂いた氏にはこの場を借りてお礼申し上げる。

氏のブログには、「海岸線に薄茶色のラインが出来ていた」との記述があり、その光景の写真が掲載されている。この薄茶色の漂着物からはオイル様の鼻を突く臭いが感じられたようである。
写真を拝見する限りでは、泡状のものが波打ち際に沿って筋状に残ったように見える。同様のものはオホーツクの海岸でも大時化の後などにしばしば見られるが、そういったものはいわゆる「油(ムース状になったものも含めて)」ではないと考えている。
海中の生物の体表についているヌルヌルの物質等が強い攪拌作用によって泡状になったものという話も聞いたことがあるが、不勉強のため確かとは言えない。ただ、もしかするとこういった「泡」が海中にある他の様々なものを取り込んで海岸に打ち寄せたのかも知れず、だとすると今回のものは周辺海域に浮遊していた粉状の鉄鉱石や若干の潤滑油等を含んでいるのかも知れない。
一見して、やや赤みが強いように感じられる(自然に発生する「泡」は普通白〜もっと薄い褐色)こと、またkoichi_78氏が「オイル様の臭いがした」旨の証言をされていることはこの推測を裏付けるものとも言える。

ただ、私どもの経験では、海岸に帯状に漂着した砂鉄や重鉱物系の漂着物(黒っぽく若干の光沢もあり一見して油様)を匂った際に若干「オイル様の臭い」が感じられることがあるため、油を含んでいるかどうかの見極めは慎重を期す必要があると思われる。
2004年11月に北海道石狩市で起きたマリンオオサカ号事故の際には、こうしたものが油と誤解され、ちょっとした騒ぎにもなったようである。
こういった漂着物を発見した際には、以下の手順で油かどうかの簡易検査が可能である(北海道立地質研究所H氏より伺った方法)。

<必要な材料>
・灯油(少量)
・密封でき油に溶けにくい透明な使い捨て容器(フィルムケース等)
<検査方法>
・容器に試料(漂着物)をひとつまみ入れ、スポイト等で試料が浸る程度の灯油を加える。
<判断基準>
・透明な灯油が黒変した → 油の可能性あり
・黒変しない(透明のまま) → 油の可能性は低い
※実験で使用した灯油は自宅で新聞紙に吸い取らせるなどして処分。重油等の黒い油ではない場合はこの方法では判断できないと思われるが、重油の流出が起きている際には野外でも実施可能の非常に有効な検査方法と思われるため、以上、紹介しておく。

さて、14日、日川海岸から波崎海岸(海水浴場)の約3.5kmの間で確認されたミユビシギ約250羽(+ハマシギ・トウネン)中、汚染鳥は5個体(いずれもミユビシギ)のみであったとのことである。
汚染の程度としては、全身油まみれのものが2個体、尻のみが2個体、胸に少しだけ付着していたのが1個体とのことである。
全身汚染(油+鉄鉱石)の個体は前回の関連記事で推測したとおり、周辺海上を飛行中に汚染された可能性が高いと思われる。
それ以外の個体に関しては、次のように推測する。
尻のみが汚染されていた個体については、尻に外側から油が付着した可能性のほか、油を摂食・排泄したことによる肛門周辺の汚れの可能性も考えられる。
カモメ類などのスカベンジャー(掃除屋)でよく起こる現象だが、油に汚染された何かを食べることで油も一緒に摂食してしまう・・・といったものである。この場合、体表に油は付かず、付いても嘴付近に限定される傾向が強い。ただし、油は胃や腸で分解されずにそのまま排泄されるため、肛門付近の羽毛は油で汚染されることになる。
これが鳥に対してどの程度のダメージを生むかについては、摂取した油の量や、その鳥の耐性によって変わってくると思われるが、知床でのオオワシの死亡原因が正しくこれであり、非常に心配である。
もう一つ、胸に少しだけ付着していた個体については、油がべっとりと付着した個体との接触による二次汚染である可能性がまず考えられる。
当地方にある濤沸湖の白鳥公園や根室地方では、春先に複数の油汚染カモメが出現した。これらの大半は油がベッタリと付着していたが、中にはほんのわずか、点状に付着しているだけのものもいた。こうしたものはカモメ類だけに限らず、オオハクチョウでも見られ、その状況から、こうした鳥の汚染原因は上記のようなものであろうと推測された。恐らく、このミユビシギについてもこれらと同様、接触による二次汚染と思われる。
汚染の程度にもよるが、わずかな量であればミユビシギのような鳥(水に浮かんで生活しない鳥)に関しては深刻化しない可能性が高いと思われるため、見守りたいところである。




abura060303 at 23:34|この記事のURLTrackBack(0)

2006年10月12日

神栖・波崎・銚子にて油汚染鳥確認される(ジャイアント・ステップ号事故関連)

10月6日、茨城県神栖市鹿島港沖でパナマ船籍の鉄鉱石専用の貨物船「ジャイアント・ステップ号(GIANTSTEP/総トン数:98,587トン)が座礁、横転し、積み荷の鉄鋼石と燃料油等が流出した。

このほど、ChusanのHP『Chusanの野鳥ワールド』、またseichoudokuさんによるブログ『鴎舞時』を拝見し、7日以降、神栖市の海岸や波崎・銚子等で油に汚染されたカモメ類やシギ・チドリ類が確認されていることが分かった。
様々な状況から考えてジャイアント・ステップ号から流出した油による汚染である可能性が高いが、流出油はおおむね沖合方向へ流れ、徐々に拡散消滅してきており、海岸への漂着は確認されていない。
両氏よりいくつかの画像を拝借したので、ここでこれらの汚染個体(特にミユビシギ)について、付着している汚染物質やその状況等について考察してみたいと思う。
今回は知床などのケースとは異なっているため、経験不足の我々には判断に迷う面もあるが、少しずつ整理しながら進めていきたい。
貴重な写真を快くお貸し下さった両氏にこの場を借りてお礼申し上げる。

オオセグロカモメ(波崎)ウミネコ(波崎)







まず、Chusanが撮影されたカモメ類の写真をご覧いただきたい。
撮影日は10月8日、場所は茨城県神栖市波崎の海岸とのことである。
浅い海に立つオオセグロカモメと、座り込んで休んでいるウミネコが撮影されているが、双方ともに体下面が黒っぽく粘度の高そうな物質によって汚染されている。
このような状態はC重油や原油による汚染に酷似しており、事故現場との位置関係やタイミング、また海上に降りて採餌することもしばしばあるカモメ類の生態等の状況から考えて、現時点では「ジャイアント・ステップ号」から流出した燃料油(C重油と思われる)によって汚染されたものと考えるのが妥当であろう。
ただし、ウミネコの腹部以下を染めている赤褐色のものについては、羽の状態や色調等から、油ではなく、周辺海上を広範に染めた鉄鉱石由来のものである可能性も考えられる。
どちらの個体についても、全身を油が覆っているような極めて重度の油汚染ではなく、また陸上でも生活ができるカモメ類の特性から考えると、急激な体温低下等が起きてすぐに死亡するといった最悪の状況になる可能性はそれほど高いものではないと思われる。
しかしながら、たとえ一部分であってもここまでベッタリと粘度の高い油が付着してしまうと、羽づくろいの際に油を飲み込んでしまうことで内臓が深刻なダメージを受け、結果的に死に至る可能性も十分考えられる(知床におけるオオワシのケースに近い)。
また、生死に関わるダメージを受けないまでも、生殖機能低下等、人の目に見えない深刻な影響を受けてしまうことも考えられる。

今後、銚子や波崎などのカモメ類が集中する地域では、こういった油に汚染されたカモメ類の観察例が増えることも考えられるが、油による汚染は付着の程度に関わらず、鳥に対して深刻なダメージを与える可能性が高いことを十分認識された上で、衰弱の程度を見極めながら場合によっては保護収容等の措置を講じて頂きたい。

ナホトカ号事故や今年の知床での大量死事件、あるいはサハリンの油田開発に絡む諸問題等によって、バーダーの中で油汚染に対する認識が少しずつ高まっていく一方で、命を軽視するかのような不適切な表現が随所に見受けられる書籍も世に出ている。私たちを含めて、少しでも油汚染の問題に関わったことのある者は皆心を痛め、憤りすら感じ、一部の者によって即時抗議を行ったものの話がまったくかみ合わず、出版中止や回収、あるいは訂正文の公表といった誠実な対応が一切講じられずに現在に至っている。非常に残念であり、極めて遺憾に思う。
この件に関してこれ以上の記述は差し控えるが、油汚染というものは非常に深刻な問題であり、単純なものでもない。状況を慎重に見極め、適切な判断を行って頂ければと切に願う次第である。


ミユビシギ(1)ミユビシギ(2)ミユビシギ群れ






さて、話を戻す。少々蛇足が過ぎてしまったことをお許し頂きたい。
次に、seichoudoku氏が撮影されたミユビシギの写真をご覧いただきたい。
撮影日は10月7日、場所は神栖市の海岸とのことである。
被写体の鳥は、ミユビシギ(Sanderling/Calidris alba)という小型のシギ類である。
日本へは旅鳥もしくは冬鳥として渡来し、主として群れで行動し、砂浜の波打ち際を歩きながら餌を摂る性質の鳥であり、ウミスズメ類やカモメ類のように海面に降りるようなことはまずない。
群れの写真もご覧いただきたい。左奥と右奥に褐色の鳥が写っており、その周りに数羽の白っぽい鳥がいる。どちらも同じミユビシギである。本来は白っぽい鳥なのだ。その鳥が全身褐色の何かに汚染され、見るも無惨な酷い状態となっている。残念と言うより他にない。
通常であれば、ミユビシギの生態から考えて海岸に漂着した油によって汚染されたのだと考えるところだが、これまでのところ油の漂着は確認されていないようである。では、このミユビシギは一体いつ、どこで、何にこれほどまでに汚染されたのだろうか。

知床に大量漂着したエトロフウミスズメやハシブトウミガラスは、海洋上で生きる鳥である。
海に潜ってオキアミ類や小魚などを採餌し、海の上で休息をとる。知床のケースでは、この性質が多くの鳥を死に追いやった原因の一つと考えられる。
つまり、海中に油が浮遊している場合、それを餌動物の群れと見誤った鳥たちが突っ込むことで全身が汚染され、急激な体温低下や鼻孔が油で塞がれることによる窒息等が起こり死亡する。この場合はほぼ即死に近い。
また運良くそれを免れたとしても、今度は海面上で油が付着し、それがたとえ1cm四方というわずかな量であっても徐々に衰弱して最終的には死に至ってしまう。
知床のケースでは、前者のように「油に突っ込んだ」と思われる全身油にまみれた状態の死体が多く見られた。
今回のケースもほぼ全身が褐色の何かに汚染されているが、ミユビシギの場合は「突っ込む」という事例は考えにくい。
もし仮に海岸にミユビシギの体を覆ってしまうほどの大量の油(汚染物質)が漂着していたとして、そこに自ら突っ込んで行くだろうか。その可能性は極めて低い。
これは恐らく、突っ込んだのではなく、「(汚染物質を)頭から被った」のだろう。

「汚染物質を頭から被る」という状況にどんなものがあるかを考えると、以下の3つが思い当たった。

1:「海岸付近にいる際に汚染された波しぶきを被る」という状況。
2:「汚染物質が漂う海上を飛行している際にしぶきを被る」という状況。
3:「陸上で水浴びする際、水溜まり自体が汚染されていた」という状況。

詳しくは後述するが、現時点で得られている情報を整理する限りでは、汚染物質はやはりジャイアント・ステップ号から流出した油であると考えられる。
今回のジャイアント・ステップ号の事故が起きたのは6日の13:45。
茨城海保の情報によると、7日の午前8:30の時点では座礁船から南東方向に2海里(4km弱)、15:30の時点では同方向に11.1kmにおよぶ油膜の帯が広がっていたとのことである。
8日以降は東南東方向へ流れ、9日の時点では油膜の先端部の拡散消滅が確認されている。
事故発生後、7日の午前8:30までの間に流出した油の一部が神栖〜銚子波崎方面に漂着した可能性も完全には否定できないかも知れない。
ただ、事故発生後しばらくの間は海保や地元自治体などの機関が周辺海岸を必ずパトロールしているはずであり、にも関わらず油の漂着は確認されていない。
工業都市で船舶の往来も激しい地域のため、各機関の油防除に対する知識や経験は並以上と思われるため、油の形状に関わらず、人の目で分かる程度であれば軒並み発見されていることだろう。
ミユビシギがもし海岸で汚染されたのであれば、間違いなく原因となった汚染物質が周辺に多少なりとも漂着しているはずである。
ごく少量の拡散が進んだ微細粒子ともなると見た目にはお手上げだが、砂や海水を採取して、しかるべき機関で分析を行えば検出できるかも知れない。
ただ、そこまで細かくなった場合は鳥などへの影響はほとんど出ないと思われ、ましてや写真のミユビシギのような状況にはなり得ないのでは、と考えられる。
よって、少なくともこのミユビシギに関しては海岸で汚染されたものではないと思われる。

ジャイアント・ステップ号からは鉄鉱石が約20万トン、それ以外に燃料油と潤滑油の流出が認められている。
燃料油はこの規模の貨物船だと粘度が高く黒みの強いC重油と考えて良いかと思われる。
潤滑油については車のエンジンオイルみたいなものであり、比較的サラサラとしていて、色については製品によって差があるがおおむね褐色系、今回のものも褐色だったようである。
非常に気になる油の流出量については、ブログ『海洋汚染情報』などによると、燃料タンクには約400キロリットルの油が入っていたが、実際に流出した量は比較的少量で済んでいるようである。
具体的な数字は不明だが、タンクがある船尾部分の損傷は少なく、座礁後の損傷も認められていないとのことであるため、ほとんどの燃料はまだ船尾部分の燃料タンク内に残っていると考えられている。
潤滑油についても同様に比較的少量の流出で済んでいるようである。
これが冬だったら周辺にウミスズメ類もいたであろうから、少量の油でも甚大な被害につながったかも知れず、その意味では不幸中の幸いと言って良いかと思う。

なお、報道等で現場の状況の映像・画像を見た方は分かると思うが、座礁船の周辺から非常に広い範囲に赤褐色の濁りが広がっている。
当初は不十分な報道の影響もあってか、この濁りを「流出油」と誤解し、非常に大規模な油流出が起こっていると思った方もおられたようだ。
だが、この赤褐色の濁りはジャイアント・ステップ号の積荷である鉄鉱石由来の濁りであり、油ではない。
油は、この赤褐色の濁りの中に細く伸びた黒(C重油)および褐色(潤滑油)の帯がそれであり、遠くから漠然と見て分かるほどの流出量ではない。
現時点の状況は不明だが、もうほとんどこの帯も消失してしまったのではなかろうか。
もちろん若干量と言えども油が流出し、それが原因と思われる被害も出ているため楽観視はできない。
だが、こうした場合、わずかな誤解が大きな風評被害を招いてしまう例が実に多い。その点はどうか十分にご注意いただきたい。

さて、一般に羽毛に油が付着すると、仮に無色透明な油であってもそれと分かることが多い。
重油や原油などの場合は粘度が高いため油同士がくっつき、人間でいえばヘアムースやポマードなどで「固めた」状態となってしまう。
潤滑油やガソリンなどの粘度が低い油の場合は一見して酷い状態には見えないものの、よく見ると羽の羽縁がガサガサとささくれ立っていたり、あるいはやはり数枚の羽がくっつくように乱れていたりするなどの異常が生じる。
問題のミユビシギ(1と2は同一個体)だが、全体が褐色に染まっているため、一見して重度の油汚染に見える。
しかしながら、よく見てみると少なくともC重油系の油が付着したと考えられるのは下腹部や胸・頭部などに限られている。
これらの部位は全体の状況とは異なり、黒褐色の粘度の高い油が付着したことにより油同士がくっついて結果的に羽毛が数本ずつまとまってしまった感じに見える。
C重油や原油、それも拡散が進んで微小粒子化したものではなく、まだ明らかにそれらの油と分かるような状態のものによる汚染に酷似している。
ただ、それ以外の、全体を褐色に染めているものが何かとなると非常に難しい。
C重油が付着したとすれば、もっと全体にドロドロと黒褐色のものがへばりついているような状態になって羽毛の乱れも著しくなると思われるが、そこまで酷い状態ではないようである。
色は全体に満遍なく付いているものの、形が整った比較的綺麗な羽もあれば、羽縁がガサガサになってしまっている羽もある。
後者は羽毛の構造が崩れているため、やはり何らかの油の被害を疑った方が良いと思われる。考えられるのは潤滑油系の油を浴びたという線である。
前者の比較的綺麗な羽については、潤滑油系の油をわずかに浴びた程度であったか、あるいは羽づくろいの際に引き延ばされたことで付着したものか・・・と考えられるが、筆者(K)個人としては鉄鉱石由来の赤褐色の汚れが強く関係しているような印象を受けている。
こんなことが起こりうるのかどうかは分からないが、全身満遍なく褐色に染まっていることを考えると、潤滑油などが触媒的な役割を果たして鉄鉱石由来の錆色が短時間で沈着してしまったか、それに近いような現象が起こったのかも知れない。あるいは、写真が撮られた時点では十分な水浴びが出来ずに鉄鉱石の錆色を洗い落とすことが出来ていなかっただけなのかも知れない。
いずれにせよ、全身が油に汚染された場合は油の種類に関わらず、より惨い状態となるのではないかと思う。

ここまで考えると、前述の「汚染物質を頭から被る状況」で挙げた内の2つめである可能性が高いように思われる。
こんなシナリオである。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大荒れの天候の中、数羽のミユビシギが海上を低く飛んでいた。
座礁船から流出した多量の鉄鉱石によって海は錆色に濁り、その中には漏れだしたC重油の黒い帯と潤滑油の褐色の帯があった。
ミユビシギは荒れ狂う波の飛沫を浴びながら海岸へ向けて一生懸命に飛んでいたが、そのうちに赤く濁った泥水のような海水と、ツンと鼻につく油の飛沫を浴び始めた。
やっとの思いで海岸にいる仲間の元へ辿り着いた時、すでに彼らの体は褐色の海水と2種類の油にまみれていた。
疲れた体を休めながら必死に羽づくろいを続けたが、ドロドロとした鼻につく臭いの液体は広がる一方でまったくとれず、ようやく形が整った羽も錆色に染まったままだった・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

これはあくまで推測である。
今回のように、原因と考えられる座礁船が近くにあっても、明らかに船から出た油が漂着したという状況ではない以上、原因の特定には慎重を期す必要がある。
ミユビシギの汚染が今回の事故によるものかどうかは、羽などのサンプルを入手して(これは最悪の結末を意味するのだが・・・)、船から流出した油類と比較してみない限り、はっきりとした答えは出ないだろう。
各地で海難事故が相次ぐような大荒れの天候であったことは確かである。
恐らく、この貨物船による大事故以外にも油が多少なりとも流出するような小規模の事故が近辺であったのではないだろうか。
港の中で不運にも破壊されてしまった漁船などから少量ずつ油が漏れてしまったというような可能性もあるだろうし、原因は何も船(海域)に限ったものではない。近くの施設のボイラー燃料(C重油)が多少漏れ出し、海まで雨水などとともに流れたということも考えられなくはない。
注目がジャイアント・ステップ号に集まる中、実はこうしたまるで別の些細な事故が原因だったということもあり得るため、周辺の被害状況など、あらゆる情報を広範に集めながら検討する必要もあるだろう。
やはりこういった際には鳥の被害状況把握とともに汚染原因となりうる大小の異変にも気をつけながら海岸線を念入りにセンサスすることが必要と思われる。
それができるのは地元の人であり、近郊在住の方々の動きに期待している。

昨日の時点では、12日に座礁船から油を抜き取る作業が行われるという発表がなされていたが、この作業に関する情報は現時点で入手できておらず、実施されたかどうかは不明である。
作業までの間に再び大時化となり、現在の安定した状況が一変するという危惧が杞憂に終わることを期待していたのだが、まだ心配は晴れない。
また当然ながら、抜き取り作業の間に何らかの事故が起きてしまえば再び油が流出する可能性もある。
今後何事もなく速やかに作業が実施され、無事に終わることを期待したい。
抜き取り作業が終われば、大量の油流出という最悪のシナリオはなくなり、一安心といったところである。ただし、少なくとも座礁船が現場海域から撤去されるまでの間は汚染鳥の動向を見極める意味でも沿岸センサスを行った方が良いと思われる。
北海道内であれば我々も現地へ赴き、調査や汚染鳥の保護等、何らかの作業を行うところだが、遠方につきそれも叶わない。本ブログを通じての情報提供など、何らかの形でバックアップしていければと考えている。

最後になってしまったが、今回のジャイアント・ステップ号の事故で命を落とされた船員の方々とご遺族には心よりお悔やみ申し上げる。
また同時に、現在もなお行方不明となっている船員の方々が無事であることを祈りたい。
今回のような不幸な事故が一つでも減ってくれればと願わずにはいられない。



abura060303 at 23:01|この記事のURLTrackBack(0)

2006年10月09日

茨城県神栖市鹿島港沖貨物船座礁事故

10月6日、茨城県神栖市鹿島港沖でパナマ船籍の貨物船が座礁、横転し、積み荷の鉄鋼石と燃料油(積載量約400トン)が流出した。
乗組員26名中、4名が海岸に漂着し、うち1名が死亡、3名が重軽傷を負った。ブリッジにとどまっていた13名は海上保安庁により救助された。8日朝、さらに1名が遺体で発見され、座礁事故による死者は2名となり、残り8名の捜索が続けられている。

鹿島海上保安署によると、9日現在、燃料油は貨物船から海岸へ約300m流れ、南南東方向に長さ約5.5km、幅100〜150mの帯状の油膜が点在している。全体的に薄い油膜であり、末端部は拡散消滅している。貨物船座礁位置から波崎漁港にいたる海岸線は、9日早朝から現在(13:45)まで、漂着油は認めていないとのことである。

座礁した貨物船を撤去するための調査や、残った燃料油の抜き取り作業などは12日ごろからサルベージ会社によって始められる予定とのことである。

関連情報↓
茨城海上保安部・海難発生情報

商船三井・プレスリリース「鉄鉱石専用船"GIANT ATEP"海難事故の件」

asahi.com MY TOWN 茨城・座礁した貨物船 荒れる海上で何が

abura060303 at 22:40|この記事のURLTrackBack(0)