千と千尋の経済学のblog

今まで、『千と千尋の経済学』シリーズをキンドル(電子書籍)で出版したり、YouTubeで動画を作成してきました。 このブログでは、もう少し自分の好きなように金融や経済の意見や解説を書きたいと思います。 特にアメリカの株式市場の動向とオプション取引について、役に立つ情報を発信していくつもりです。 ちなみに私の投資手法:Be contrarian and be lucky than good d(^_^o).

大学で担当している「経済学と株式投資」のテーマの中で、株式の「買い(long)」に比べて株式の「売り(short)」の概念と具体例(成功例)を教えるのはとても難しいものです。

その理由は、買いポジションと売りポジションは対称ではないからです。

まず買いポジションの最大投資損失は0円ですが、空売りの最大損失は無限大でリスク管理がたいへんです。

次に売りポジションを取るためには、対象企業の詳細な研究と撤退のタイミングを図ることが必要になり、時間も情報も乏しい個人投資家には向いていません。

しかし株式市場は常に右肩上がりの上昇相場とは限らず、利益の出ている株式のヘッジや下降相場で利益を出すためには、株式の売りは必要不可欠になります。

そこで今回のブログでは、具体的に売りポジションの事例を考えてみたいと思います。

そのために、私が参加しているK-zone主催のバーチャル株投資ゲーム「トレダビ」を使います。

トレダビの現在のポートフォリオは、アベノミクスによる円安を前提に、パナソニックやデンソー、HOYAなどの輸出関連銘柄が主力になっています。

そのため円安になると利益が大幅に上昇してトレダビ大会順位が5000番台になり、その逆に円高の112日は27,761 位と急降下します(^^;)

従ってこの為替変動をヘッジするために、輸出関連銘柄で空売りの対象となる会社を見つける必要があります。

この目的のために、空売り銘柄ランキングのホームページを参考にさせてもらいました。

「空売り銘柄ランキング」

http://karauri.net/ranking/

このホームページの空売り比率ランキングによると、6767ミツミ電機や6952カシオ計算機が空売りの対象になりそうです。

今回は誰でも知っているカシオ計算機を空売りの対象とします。

データによると、カシオ計算機の空売り比率は6.83%から8.58%と増加傾向にあります。

カシオ計算機空売り比率
次に20173月期の決算短信を見ると、「連結業績予想などの将来予測情報に関する説明」2016112日)の中で、予想為替水準を1US$103円、1ユーロ=114円として、「急激な円高の影響と・・・生産・販売調整等」のため20173月期の通期連結業績予想を、売上高は400億円、営業利益は175億円、経常利益は205億円、純利益は150億円に減額修正しています。

決算発表で社長が「急激な円高」とか「調整」と言った言葉を頻繁に使うときは、だいたい「失敗しました、すみません」の言い訳として捉えることができます(^^;)

http://disclose.ifis.co.jp/data/disclose/9a/20160907/140120160907490322.pdf

そこでこれから空売りが可能かどうか、次にカシオ計算機の株価チャートを見ることにします。
カシオ計算機チャート
チャートから判断して、フィボナッチ・リトレースメントの38.2%が抵抗線になっていることと、OBVOn Balance Volume)が決算短信後にマイナス方向になっていることから、1800円を上限(撤退価格)にして空売りを行う判断をしました。

トレダビでは取りあえず、成行で800株(約160万円)の信用売りのオーダーを出しました。

さて、このように株式を対象にしたヘッジはなかなか難しいですし、一番の問題は損失額を限定することができないと言う問題があります。

しかしオプション取引の場合、売りポジションは、プットオプションを使うことで安全・簡単に行うことができます。

具体的に、前のブログでも失敗した事例として書いたBMYBristol-Myers Squibb)のオプション取引を紹介します。

年末から利益の出ていたBMY Jan20'17 60 Callを少しでも高めに売ろうと「欲を出した」ため、またまた大失敗してしまいました(^^;)

それは、トランプ次期大統領が111日の記者会見で次のような発言をしたからです。

Our drug industry has been disastrous; they're leaving left and right. They supply our drugs but they don't make them here, to a large extent….

And the other thing we have to do is create new bidding procedures for the drug industry, because they're getting away with murder(^^;)

まあトランプの表現方法の可否は別にして、オバマケア(アメリカの医療保険制度改革)の変更・撤回とともに、薬価の引き下げも行うと言っているわけです。

その結果、BioPharma系のETFが大量に売られ、ただでさえBMYの競争相手のMerckcancer immunotherapy(癌の免疫療法薬)のKeytrudaBMYの先を行きそうな状態だったため、BMY5%以上暴落したのでした。

実はトランプの発言内容に対しては私も反対ではないのですが、BMYを売った後にしてくれたら良かったのになぁ~とか愚痴ったのでした(あはは・・・

さてこのような想定外のイベントが起こったとき、BMYの株式を持っていたら悲惨なことになります。

例えば、150ドルで買ったBMY60ドルに値上がっているとき、トランプの発言で4ドル下落しましたから100株保有していたら1000ドルの利益のうち400ドルが消えてしまいます。

そして更に株価の下落が予想されるので、通常の株式の場合は、数日様子を見てから売ろうとかできません。

ところがオプションの場合はレバレッジがかかっていて損失の割合は株式よりもっと高くなりますが、パニック売りを避ける方法がいくつかあります。

私の場合は、今まで持っていたBMY Callの保険のプットオプションやコール売りを処分して損失の一部を相殺し、新規に短期のプットオプションBMY Jan27'17 56 Putを売りました。

プットオプションの売りとは、BMYの株価が上がる方に賭けた取引になります。またオプションは短期の場合、時間価値が急速に小さくなります(time decay)。

つまり私の対処法は、トランプショックのような一過性のショックで跳ね上がった満期の近いオプション価格は、高い確率で低下すること前提にしています。

いずれにしてもオプションがない日本株式のリスクヘッジは、日経平均などの先物を売るか、日経平均やTOPIXのベアETFを買うくらいしか方法がないように思われます。

2016年は、大統領選挙を計算に入れなかった「大失敗」のオプション取引の年でした(^^;)

まず2016年前半は上海の株式が不安定になり1月から株価は下落を続け、Fedの金利上げを予想して2015年末から継続していた銀行系が予想外の失速。

そのため5月までに銀行セクターは縮小してBio-Pharma系(バイオ医薬)にシフトしていきました。

ヘッジをかけてはいますが、AGN, CELG, GILD, BMYなどに集中しています(^^;)

実は2015年からM&Aと価格つり上げ(price gouging)のビジネスモデルが激しく批判されていた時期に、医薬系に一点集中するのはかなりリスクの高い投資でした。

Price gougingモデルは、例えばHIV患者のためのDaraprimという一粒$13.50の薬を$750 につり上げた起業家Martin Shkreliなどによって行われていました。

また同様のビジネスモデルを使って利益を上げていたのがVARValeant Pharmaceuticals)でした。

しかしShkreliは訴追され、VARの株価は2016年の始めには暴落していたので、price gougingの問題はある程度解決したと考えていました。

VRX
Martin Shkreli wants new lawyers for criminal caseCNBC, 20 Jan 2016

http://www.cnbc.com/2016/01/19/martin-shkreli-wants-new-lawyers-for-pharma-criminal-case.html

Statement of Howard B. Schiller Interim Chief Executive Officer and Director, Valeant Pharmaceuticals International, Inc. before the Committee on Oversight and Government Reform U.S. House of Representatives February 4, 2016

https://oversight.house.gov/wp-content/uploads/2016/02/Schiller-Valeant-Statement-1-26-Prescription-Drugs.pdf

実際このポートフォリオは、8月まで順調に利益をあげていました。

ところが大統領選挙が始まると、「庶民の味方」をアピールしたい候補者にとって最高の攻撃対象となったのが医薬会社でした。

そのため8月後半から、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)やバーニー・サンダース(Bernie Snaders)らの「恐怖のツイッター攻撃」が医薬会社に対して始まります。

そのたびにVARM&AのターゲットにもなったAGNや医薬系のETFが大量に売られるので、私の一点集中の医薬系ポートフォリオは壊滅状態となったのでした~(^^;)

Documents Open Curtain on Boardroom Drama at ValeantCNBC, 30 Dec 2016

http://www.cnbc.com/2016/12/30/documents-open-curtain-on-boardroom-drama-at-valeant.html

2016パフォーマンス
以上の影響により、2016年の医薬系のパフォーマンスは惨憺たるものになりました。

例えばベンチマークのS&Pが年率10%の上昇を記録したのに対して、BiotechPharmaのパフォーマンスは-19%、-4%、-9%です。

2016バイオファーマ
しかし選挙が終われば戻るだろうと、10月には更に買いを入れて平均単価を落とすことにしました。

ところが「あらまぁビックリ」、ヒラリー圧倒的優勢の予想に反してトランプの勝利になってしまいました。

この時のポートフォリオの暴騰は、一瞬だけでしたが、今まで見たことのないような上げ方をしていました。

後で同僚と話をしていて教えてもらったことは、要するに私のポートフォリオは「ヒラリーShort」だったのでした・・・知らなかった(^^;)

つまり私のようなContrarianの投資は、結局「運」が良くないと大失敗することをまた認識したのでした。

いずれにしてもトランプショックによる医薬系の株価の上昇は一時的なもので、一点集中のポートフォリオはリスクが高すぎたと反省しました。

その後はBMYを除いて医薬系を売り、BACKEYGOOGCOSTLVSSKWSなど、分散投資に変更しています。

またトランプは何をするかわからないので、彼が大統領に就任する120日までに投資金額を減らす予定です。

以上、2016年のオプション取引の反省会でした。 

株式でも何でも売買は「Buy Low, Sell High」でなければ損をするのですが、株式市場の場合、人間のSentimentsのために多くの場合「Sell Low, Buy High」の売買をしてしまいます。

実はオプション取引の経験からわかることは、「Buy Low」は比較的容易に実現できるのですが、オプションを売るタイミングを予想することは非常に難しいです。

特に米株式市場は日本時間の夜中に始まるので、前もって売りオーダーを出しておく必要がしばしばあります。

そこで私は次のようなテクニカル指標と、インタラクティブ・ブローカーズ(IB)証券のオプション価格を計算してくれるiPhoneアプリ(Options Calculator)を使って対処しています。

今回のブログではAGNAllergan)を使って具体的に見てみます。

まずAGN2年間の株価は次のチャートのように動いています。

アメリカ大統領選挙でトランプが勝利した後、一時的に上昇しましたがその後は12月半ばまで下げ続け、ようやく後半になって上昇に転じています。

AGN

この場合の売りのタイミングは、フィボナッチ・リトレースメントから221ドルが上値、またMoney Flow Indexも売りシグナルになっています。

そこで株価は221ドルまでが限界と予測して、IBアプリを使ってオプション価格を計算します。

難しいことを考えず、以下のように該当する数値を入れて(例えば満期日までの日数や金利は適当です)ボタンを押します。

オプション価格計算AGN
すると結果は、だいたい35ドルがオプション価格になることを教えてくれます。

オプション価格計算AGN結果
そこで就寝前に、34ドルと35ドルの売りのリミットオーダーを出しておきます。

Sell:  AGN May19'17 190 CALL @ 34

Sell:  AGN May19'17 190 CALL @ 35

次の日の朝に確認すると、幸運なことに、株価は最初の15分ほどで最高値の217.86ドルをつけて、AGN May19'17 190 CALL34ドルも35ドルも売ることができていました。

この例からわかるとおり、株価は221ドルまで行きませんでしたが、オプションはIBアプリ(ブラック・ショールズの改善版?)の価格で売りが成立しています。

その理由はいろいろと考えられますが、原資産の株価が上昇トレンドを示すとオプション価格はレバレッジが高いのでもっと大きく上がることになり、それなら多少割高であっても今のうちに買ってしまうという投資家の傾向があります。

その他にもショートサイドの買い戻しやマージンコールによる売り、自社株買い、サプライズ情報やフラッシュクラッシュなどなど、理論どおりにはいきません。

また私の場合、売買高が少ないオプションの場合、買い気配と売り気配の乖離が大きくてなかなか売買が成立しないので、さっさと確定する価格を出してしまいます(そのため損をすることも多いですが・・・(^^;)

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