千と千尋の経済学のblog

今まで、『千と千尋の経済学』シリーズをキンドル(電子書籍)で出版したり、YouTubeで動画を作成してきました。 このブログでは、もう少し自分の好きなように金融や経済の意見や解説を書きたいと思います。 特にアメリカの株式市場の動向とオプション取引について、役に立つ情報を発信していくつもりです。 ちなみに私の投資手法:Be contrarian and be lucky than good d(^_^o).

今までやっていなかったのですが、知人や娘に「ふるさと納税」をしろと言われて、今年初めてやってみました。すると驚くべきことに、所得が高いほどふるさと納税の「お礼品」を多く「もらえる?」ことがわかりました(^^;)

学生さんに金融リテラシーとか「お金儲け」の講義をしている経済学者が、「何を今更とぼけたことを言っているのか」と言われるかもしれませんが、「ふるさと納税の逆進的な課税措置?」にビックリしたわけです。

最初この仕組みがどうなっているのか全くわからなかったので、ネットで調べると次のような解説がありました。(さとふる納税サイト

「ふるさと納税は、納税とはいいますが、地方自治体への寄付を通じて地域創生に参加できる制度のことをいいます。・・・そして、そのお礼として、その土地のお米やお肉といった特産品や名産品が「お礼品」として貰えることから人気を集めています。はじめに、寄付を地方自治体に行います。すると、ふるさと納税先団体からお礼品が届き、しばらくすると、寄付を証明する「受領書(寄附金受領証明書)」が送付されてきます。寄付後、「確定申告」の手続きをすると、寄付者の収入等により寄付の上限額(控除上限額)が定まるといった条件がありますが、所得税の還付や個人住民税の控除が受けられ、実質的な自己負担額を2,000円にすることができます。所得税の場合は当年分から、個人住民税の場合、翌年6月以降分から減額されます。」

この控除の上限額の計算は「給与所得」と「家族構成」で簡単なシミュレーションができるようになっていて、ここに数値を入れてビックリしたのでした。

1

    給与所得=300万円、独身⇒  27,000

    給与所得=1,000万円、独身⇒ 172,000

なんと300万円と1000万円の年収では15万円もの違いがあります。この172千円分でどんな「お礼品」がもらえるか見てみると、①【特選飛騨牛】サーロインステーキ&ローススライス&ロース焼肉用セット[岐阜県八百津町]寄付金額120,000円、②国産うなぎ蒲焼(大サイズ) 5本セット[和歌山県湯浅町]寄付金額20,000円、③フルーツソムリエが選んだ完熟マンゴー3玉※ギフト箱入り[福岡県春日市]寄付金額15,000円、④【平成28年産米】茨城県稲敷市産コシヒカリ20kg(5kg×4)[茨城県稲敷市]寄付金額12,000円、⑤季節の野菜詰め合わせ[長崎県松浦市]寄付金額5,000円などなど、しばらくはスーパーに買い物に行く必要がなくなります。なお、これらお礼品の実際の価値は寄付金額の30%前後のようですので、実質の控除額は5万円前後の感じになります。

この寄付金除の上限額の計算は、ふるさとぷらすによると次のようになっています。

控除限度額={(住民税所得割額×20%)÷(90%-所得税率×1.021)】+2,000

ただし、住民税所得割額={(前年の総所得金額等-所得控除額)}× 税率(10%)- 税額控除額

また、株式譲渡益や配当金、オプションやFXによる利益の税率は、所得税15.315%と住民税5%の計20.315%なので、住民税所得割額は、{所得(利益)額×住民税率(5%)}で計算します。

2-1:給与所得700万円、独身、所得税率20%、住民税所得割額が367千円の場合

    控除限度額=【367,000×20%÷(90%20%×1.021)】+2,000107,490

2-2:給与所得700万円、株利益300万円、独身、所得税率20%、住民税所得割額が367千円の場合

    住民税所得割額=367,000円+(300万円×5%)=517,000

    控除限度額=【517,000×20%÷(90%20%×1.021)】+2,000150,606

1の給与所得1000万円の場合と比べると、株式等の利益分の寄付控除率は5%のため控除額は2万円ほど少なくなりますが、譲渡所得の課税分から4万円程度の「お礼品」(実際の価値は1万程度)がもらえるのは投資家には嬉しいですね。

私は毎年、国境なき医師団やユニセフなどの認定NPO法人と公益社団法人の寄附をしているので、その特別控除によって寄付金額の結構な割合が控除の対象になります。つまりふるさと納税は金額による税控除の代わりに「商品」で還元されるシステムだと言うことがわかりました。

さてもう一度「ビックリ」の理由に戻ります。大学の講義ではピケティ先生の『21世紀の資本』なども使いながら、貧困問題や経済格差の話をします。日本の場合、欧米や中国と比べて所得格差や資産格差の拡大はあまりひどくはありませんが、それでも厚生労働省が発表する「所得再分配調査報告書」や国税庁の「民間給与実態統計調査」などを使って、貧困の拡大や母子家庭の貧窮などが議論されています。私も97日のブログ記事「貧乏と貧困の定義2」でこの問題を考えてみました。

そしてふるさと納税に対しても「金持ちが優遇される逆進的寄付金控除措置」と言う批判があります。そこで、ふるさと納税は「お金持ち優遇の税制措置」なのかどうかデータを使って検証してみました。まず総務省の資料を見ると、平成21年度に導入(3万人、税額控除額19億円)されて以来、平成27年度の寄附金税額控除の適用状況では約130万人、寄付金額は1471億円(一人あたり約11万円)、控除額は約1002億円(一人あたり約8万円)です。この130万人は日本の納税義務者数5,600万人に対して2.3%しかなく、お金持ちだけが参加しているように見えます。 

しかし「全国市区町村 所得(年収)ランキング 2016」を調べると、1741の市町村数の所得ランキングは、1位が東京港区の1110万円で最下位1741位の熊本県球磨村の198万円になります。年収換算にするとこの金額に100万円プラスで考えると良いとのことです。そこで、ふるさと納税の対象となる300万円以上の所得(実質は400万円前後の年収)の市町村を数えると約46026%)になります。

以上のデータから、ふるさと納税のメリットを享受できる人の総数は、少なく見積もって5600万人の20%として約1120万人と推測できます。

平成27年度の一人あたり平均の控除額は約8万円なので、この1120万人がふるさと納税を行った場合、推定控除額一人あたり5万円として計算すると、総額で5600億円という金額になります。つまり1000万人以上の納税者が納税額に応じて数万円のメリットを享受できるとすれば、金持ち優遇という批判はあまり妥当ではありません。ふるさと納税は、昔の「地域振興券」とか「定額給付金(プレミアム商品券)」の納税者限定措置と考えることもできます。

なお平成29年の地方税合計(予算)は約39兆円ですから、ふるさと納税の寄付控除総額はたいした額ではありません。そのため一部のマスコミが批判する「寄付金が住民サービスに使われない」とか「過疎地の税収が減る」とかのレベルの金額ではありません。その一方、人気の高いお礼品を提供する地方の市町村は地方自治を進める新規財源を確保でき、地元企業はお礼品需要によって成長することができます。こう考えると、ふるさと納税は経済合理的な税控除制度と言えそうですd(^_^o)

前回の724日「アマゾンの野望:シアーズ(SHLD)買収によるロジスティクスの改善?」と言うブログ記事の続きです。

アマゾンショック(英語ではAmazon Fear)は616日のアマゾンによるホールフーズ(WFM)買収が最初で、アマゾンはWHM買収ために160億ドル社債発行して社債市場で大歓迎されています。

次にホーム・デポに対するアマゾンショックは、720日にアマゾンがシアーズ(SHLD)のKenmoreブランドを扱うと言うニュースが出た時です。その結果、アマゾンがホーム・デポ(HD)とロウズ(LOW)によるホームセンター市場の寡占状態を打破すると市場が判断したため、両社の株価が暴落して1日で125億ドル(約13千億円)の時価総額が消滅しました。

私は626日にHDの株価が下げた時にJan19'18 150 CALLを買い始め(平均7.53)、アマゾンショック1の後の726日に更にJan19'18 145 CALL @ 9.22を購入しました。

その後Seeking Alphaなどの記事を参考に、アマゾンショックによるHDの株価下落は過剰反応と判断し、次の決算は好決算が予想されていましたので特にヘッジもかけずにそのまま保有していました。

実際ホーム・デポの株価チャートを見てわかるとおり、720日の「アマゾンショック1」から815日の決算に向けて株価は順調に戻っていました。ただしChiakin Money Flowはアマゾンショック1以前からプラス転換しないだけでなく、ショック以降の株価上昇局面でも売り圧力が継続されていてイヤな感じはしていました。
HD

さて815日のホーム・デポの決算は売上げも利益も最高の好決算であり、将来予測も上方修正するほどでしたが、株価は154ドルからあっという間に148ドル台まで暴落したのでした (^^;)

結果論ですが、チャートからHDの株価は高値圏で好決算の予想は織り込み済みのため、「好決算⇒株価の天井⇒利益確定の売り」と言えるかも知れません(もちろん決算内容が少しでも悪ければ暴落していたでしょうが・・・)。

しかしChiakin Money Flowの動きが示していたことは、6月のアマゾンによるホールフーズ(WFM)の買収や7月のシアーズ(SHLD)の実店舗活用などが、HDのロングポジションを取っていたヘッジファンドや機関投資家をパニック(震撼)させていたと判断すべきでした。

そのためHDだけでなく、816日のTargetTGT)の決算は予想に反してすばらしい内容でしたが株価は伸び悩み、次に817日のWal-MartWMT)の全体の決算もe-commerceのセグメントもとても良かったのですが株価は下落する有様でした。

つまり小売り企業の決算内容には関係なく、今の小売り企業の株価はアナリストやロボトレード(人工知能)の「アマゾンには誰も対抗できない」と言う「アマゾン神話」でもあるのでしょうか?

実際、このような「アマゾン神話」は、ホーム・デポの株主総会での様子から理解できます。ホーム・デポの経営者達が何を言おうと、「アマゾンに勝てない!」と言う執拗な質問がアナリストによって繰り返されています。

1.        Simeon Gutman - Morgan Stanley - Analyst

1. My follow-up is on e-commerce, and I'm sure this will be topical.

2.        Michael Lasser - UBS – Analyst

・・・the question is on e-commerce. The e-commerce channel within home improvement overall. Do you think that you're gaining share within that channel, within the category? And what rate of growth do you think the home improvement category is growing online?

3.        Dan Binder - Jefferies & Co. - Analyst

As you just mentioned different strategies for different categories online. Obviously, appliances have been in the news recently. I know you do some of your appliance business online. I was wondering if you could just talk a little bit about the complexity of that transaction. How the customer is shopping it in the store or even if they're ordering it online and where you think your competitive advantages are if you started to see that category become more available online at other competitors?

4.        Chris Horvers - JPMorgan - Analyst

You have companies like Wayfair spending a lot on advertising and Amazon's reported to be more interested in the category. So obviously, as you saw these companies get rewarded with sales growth and not necessarily profitability, clear in Amazon's last report. So do you think that given this increased interest and greater advertising spend, do you need to flex some muscles here and maybe deleverage advertising a little bit to the defend The Home Depot been in the home-related categories?

5.        Dennis McGill - Zelman and Associates - Analyst

One more question, just going back to appliances and online. I think you said 6% of sales online are for the total store. Can you just maybe just frame appliances relative to that number and just give a little more detail on how you mentioned, Craig, the buying experience in some cases starting digitally and ending digitally. What percentage of those big-ticket transactions in appliances are executed online? Just to kind of get some frame of reference to the category as a whole already being an online category.

さてHDWal-MartCostcoなど小売業界の雄がアマゾンと「ガチンコ勝負」するとどのような結果になるでしょうか?

ミクロ経済学では、「競争激化⇒価格競争(安値競争)⇒企業利益減少」と教えてくれています。つまり消費者を除いてすべての業界参加者は敗者になります。

はっきり言って、アマゾン神話を信じているアナリストやロボトレードにもかかわらず、本家のアマゾンの株価は「神話」とは無関係に動いているように見えます。

次のAMZNのチャートによると、616日のWFM買収は一時的な上げしかもたらさず、720日のKenmore活用も株価に影響を与えたのかどうかよくわかりません。それよりも726日に高値1052ドルを付けた後は大きく下落に転じて、現時点では960ドルでなかなか下げ止まりません。

つまり市場の評価はアマゾンの一人勝ちを予想するより、ガチンコ勝負の結果、アマゾンも含めた小売業界全体の利益率低下を予測していると考えた方が株価と整合的であることがわかります。
AMZN

「アマゾン(AMZN)対コストコ( COST)とタブロイド思考」と言う記事を7 10日に書きました。

その後、720()にシアーズ(SHLD)の Kenmoreブランドの家電 がアマゾンで販売されると言うニュースによって、ホーム・デポ(HD ロウズ(LOW などの株価が暴落して、1日で125億ドル(約13千億円)の時価総額が消滅しました(^^;)

日本ではシアーズなど見ませんが、アメリカにいたときよく聞いた「Attention Please, K-mart shoppers♪」の安売りK-mart倒産吸収した小売りデパート シアーズです。
シアーズの
CEOエドワード・ランパートはゴールドマン・サックス出身で、若くしてヘッジファンドを設立した投資家です。ただし彼の経営スタイル はあまり評判がよくないようです。

株価を見るとわかるのですが、シアーズ(SHLD経営状況は最悪です 。多くの店舗が閉鎖され、会社幹部や従業員が辞職し、今回のKenmore ブランドも売却先を探しているような状態です。

SHLD
従って、アマゾンがシアーズのKenmoreブランドの一部をネットで販売したからと言ってシアーズが復活するわけではありません。それにもかかわらず、この「 Amazoned!(アマゾンショック)」ニュースによって、シアーズよりはるかに経営力や財務力が高い大型ホームセンター(住宅リフォームや資材、ガーデニング用品など)のホーム・デポやロウズの株価が暴落したことです。

そこで今回のブログでは、市場の判断についてホーム・デポの株価(HD)を通して考えてみたいと思います。

HDの株価のグラフを見ると、623()に一度下げています。その理由は、住宅関連のマクロデータが予想より弱かったからと言われていますが、5 月のNew Home Sales2.9%増加、Housing Price Index0.7%上昇しています。また住宅着工のデータは5月の1122(千戸)を底に6月は1215(千戸)と増加しているので、なぜHDLOWが売られるのか不思議です。

次に、720日のアマゾンがシアーズのKenmore製品を扱うと言うニュースがHDの株価を暴落させます。

アマゾン対HD
さて、このようなホーム・デポの株価暴落を正当化させる唯一の理由は、アマゾンがシアーズを買収するかもしれないと市場が判断したからだと思います(たぶん)。シアーズは今年に入って倒産の可能性を示唆していますが、アマゾンにとってシアーズのメリットは現時点でまだ1400カ所ほど存在する店舗網とシアーズのKenmoreや工具、自動車パーツなどのブランド商品です。

従ってアマゾンがシアーズを買収すれば、大型家電や車バーツの実店舗経由のロジスティクスが手に入り、前回のブログで指摘した大型商品のデリバリー課題 が多少は改善されることになります。

このように考えると、家庭用電化製品を製造しているワールプール(Whirlpool)の株価WHRの動きも理解できます。

アマゾン対WHR
グラフから、WHR HDと同様、住宅関連のデータに影響を受けています。まあこれは、住宅着工の鈍化や在庫の増加⇒洗濯機や冷蔵庫などの家電需要低下⇒WHR 株価下落、と考えることができます。

しかしワールプールはシアーズが販売するKenmore食器洗い機洗濯乾燥機冷蔵庫 など 製造 しています。そのため、アマゾンのKenmoreブランドの扱い開始はワールプールの株価を上げなければなりません。しかし投資家はワールプールの株を売っています。その理由は、アマゾンによるシアーズの買収は家電製品の供給先であるワールプールにとって不利益になると判断したからだと考えることができます。

つまりアマゾンはKenmoreブランドを積極的に販売するのではなく、シアーズの実店舗が存在する大都市圏のウェアハウス(倉庫)と大型商品のピックアップ場所にすることが目的であると考えることができます。

もしこの推測が正しいと、アマゾンがホールフーズを買収したように、シアーズの買収が進行中であり、コストコやホーム・デポのようなビジネスモデルに穴が開くことになります。

 

 

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