千と千尋の経済学のblog

今まで、『千と千尋の経済学』シリーズをキンドル(電子書籍)で出版したり、YouTubeで動画を作成してきました。 このブログでは、もう少し自分の好きなように金融や経済の意見や解説を書きたいと思います。 特にアメリカの株式市場の動向とオプション取引について、役に立つ情報を発信していくつもりです。 ちなみに私の投資手法:Be contrarian and be lucky than good d(^_^o).

日経ヴェリタス212日号「投資の助っ人 株アプリ広がる」に、私の「経済学と株式投資」の講義の様子(東芝の空売りなど)が掲載されました(52頁)。

前のブログ「株式の空売りとプットオプション」(20170114)にも書いたとおり、空売りは難しいです。

しかし東芝(6502)のように巨額の損失や不祥事をくり返す会社は、世界中の機関投資家、ヘッジファンド、個人投資家の格好の空売り対象になります。

東芝の危機については、次の記事を参考にしてください。

l  日経電子版揺れる東芝株 巨額資金調達か 1部上場維持か… 2017/2/16)によると、東芝の取引銀行の貸出債権は8000億円規模、東芝の半導体事業の評価額は1.5兆円規模だそうです。

l  日経電子版みずほ銀、東芝を「要注意先」に下げ2017/1/28)(有料)によると、大手銀行が東芝向けの融資に貸倒引当金を積み立てることになったという記事です。

さて、授業の中でトレダビは次のような形で使います。

まず学生さんに私のトレダビの保有銘柄(第70回「投資のおまもり杯」)を見せながら、何故このようなポートフォリオを選んだのか理由を説明します。

l  1326 SPDR1963日揮、6418金銭機、6502東芝、6752パナソニック、6902デンソー、6988日東電、7741 HOYA8306三菱UFJ9766コナミHDなどです。

次にトランプ大統領の主要経済政策は次の4つであることを説明します。

1.       法人税と所得税の大幅減税⇒米企業の税引き後利益上昇+消費増加⇒米株式市場上昇

2.       規制緩和⇒①銀行系(ドッド・フランク法や大手銀行のストレステストの見直し等)株価上昇+②環境規制緩和⇒資源系(シェールガス)株価上昇

3.       海外利益の本国送還⇒アップル(海外資産26兆円)、マイクロソフト(約12兆円)やグーグル(8兆円以上)などの株価上昇

4.       大規模インフラ投資⇒建設・産業機器やレンタル会社(例えばURI)の株価上昇。

そして以上のような政策が実施されると次のような結果になります。

1.       米労働市場は雇用拡大とともに失業率も5%以下で完全雇用状態に近い⇒インフレ

2.       インフレ⇒早ければFed3月に利上げ、6月には必ず行う⇒米金利上昇

3.       その結果、トランプがツイートで何を言おうが、ドル高・円安

4.       ドル高・円安⇒日本の低金利政策の緩和+アベノミクスのインフレ施策

5.       その結果、日本株で買いの対象になるのは①輸出関連株、②メガバンク、③カジノ関連株、④ロボットやAI、ホログラムなどの株

これでK-zoneの空売りの説明の準備ができました。

このトランプ経済施策によってポートフォリオは輸出関連株が中心になるが、円安から円高に振れると一気に売られるのでヘッジが必要。しかし日本の株式の場合はオプションがないので、リスクは高いが空売りが必要になること。

前回のブログでは空売り比率からカシオを選んで1600株の空売りを行いました。今回は東芝株を使って空売りの事例とその根拠を教えます。

まず学生さんには、上場企業の不正会計は株主に対する最悪の背信行為で、100%空売りの対象となることを教えます。

東芝の場合、20157月に不正会計がばれた後も原発の投資失敗を隠しており、年度末まで400円以上まで持ち直していました。しかし20161227日に数千億円の巨額損失を計上することを公表し、株価は暴落しました(^^;)

この理由を説明するために、『千と千尋の経済学:資本主義の「化け物語」』の「半沢直樹」から引用します。

「半沢が勤めているメガバンクの東京中央銀行が巨額の「貸倒引当金」(かしだおれひきあてきん)を準備しなければならなくなります。その理由は、融資先の伊勢島ホテルが資金運用に失敗したため、銀行がホテルに融資した総額1500億円の回収ができなくなる(債務不履行のリスク)かも知れなくなったからです。」

つまり東芝に1000億円単位で融資しているメガバンクは巨額の貸倒引当金を積み立てなくてはならず、ただでさえ低金利政策で利益が減少している銀行が東芝救済に動く可能性は低いと予想できます。

以上のロジックに従ってトレダビでは、130日に10,000@249円で売り、授業があった23日に5000@239円で買い戻し、残りは210日に232円で信用返済買を行いました。

続いて215日に再度10,000@202円で売り、217日に5000@181円で買い戻しました。残りの5000株も近日中に処分する予定です。

さて、トレダビの利益率のグラフを見るとよくわかりますが、空売りのポジションを持たないときに円高に振れるとランキングが大幅に下がります。しかしカシオや東芝の空売りを持ったポートフォリオの場合、輸出銘柄の株価の損失を同じ輸出銘柄の東芝やカシオの利益が相殺してくれます。その結果、円高に振れても利益率とランキングは安定していることがわかります。

K-zone利益率
次にポートフォリオの他の銘柄について説明します。

1.       メガバンクへの投資(私の場合は三菱UFJ ):マスコミは日銀の低金利政策とかマイナス金利の問題とかを依然として問題視していますが、前のブログ「マイナス金利と財政政策と債券市場」(20170103日)に書いているとおり、主要国の長期金利は去年の7月の半ばに底を打っています。その理由は、

      大統領選でヒラリー・トランプ両候補とも大規模な財政出動を公約に掲げたこと。

      財政赤字の中の財政出動・インフラ投資⇒インフレ⇒Fedは金利を上げる。

      アメリカの金利が上昇すればECBと日銀のマイナス金利政策に対する圧力が弱まる⇒日本の金利も上がり始める⇒業績が落ち込んでいるメガバンクの利益率向上⇒東京三菱UFJ購入。また金のETFを少し買っているのは、インフレの動きをキャッチするため。

2.       日揮は世界を相手にしている日本商社の動きを理解するためです。

3.       コナミや金銭機などのカジノ株は、去年の12月にカジノ法案が成立したので購入。このきっかけは、マカオのカジノビジネスで損失を出しているアメリカのMGMLVSCEOが、日本のカジノ法案成立に「すごく期待している!!!」と発言していたからです(あはは、彼らは日本ですごく露骨なロビー活動しているよね~ということを学生さんに教えます)。

大学で担当している「経済学と株式投資」のテーマの中で、株式の「買い(long)」に比べて株式の「売り(short)」の概念と具体例(成功例)を教えるのはとても難しいものです。

その理由は、買いポジションと売りポジションは対称ではないからです。

まず買いポジションの最大投資損失は0円ですが、空売りの最大損失は無限大でリスク管理がたいへんです。

次に売りポジションを取るためには、対象企業の詳細な研究と撤退のタイミングを図ることが必要になり、時間も情報も乏しい個人投資家には向いていません。

しかし株式市場は常に右肩上がりの上昇相場とは限らず、利益の出ている株式のヘッジや下降相場で利益を出すためには、株式の売りは必要不可欠になります。

そこで今回のブログでは、具体的に売りポジションの事例を考えてみたいと思います。

そのために、私が参加しているK-zone主催のバーチャル株投資ゲーム「トレダビ」を使います。

トレダビの現在のポートフォリオは、アベノミクスによる円安を前提に、パナソニックやデンソー、HOYAなどの輸出関連銘柄が主力になっています。

そのため円安になると利益が大幅に上昇してトレダビ大会順位が5000番台になり、その逆に円高の112日は27,761 位と急降下します(^^;)

従ってこの為替変動をヘッジするために、輸出関連銘柄で空売りの対象となる会社を見つける必要があります。

この目的のために、空売り銘柄ランキングのホームページを参考にさせてもらいました。

「空売り銘柄ランキング」

http://karauri.net/ranking/

このホームページの空売り比率ランキングによると、6767ミツミ電機や6952カシオ計算機が空売りの対象になりそうです。

今回は誰でも知っているカシオ計算機を空売りの対象とします。

データによると、カシオ計算機の空売り比率は6.83%から8.58%と増加傾向にあります。

カシオ計算機空売り比率
次に20173月期の決算短信を見ると、「連結業績予想などの将来予測情報に関する説明」2016112日)の中で、予想為替水準を1US$103円、1ユーロ=114円として、「急激な円高の影響と・・・生産・販売調整等」のため20173月期の通期連結業績予想を、売上高は400億円、営業利益は175億円、経常利益は205億円、純利益は150億円に減額修正しています。

決算発表で社長が「急激な円高」とか「調整」と言った言葉を頻繁に使うときは、だいたい「失敗しました、すみません」の言い訳として捉えることができます(^^;)

http://disclose.ifis.co.jp/data/disclose/9a/20160907/140120160907490322.pdf

そこでこれから空売りが可能かどうか、次にカシオ計算機の株価チャートを見ることにします。
カシオ計算機チャート
チャートから判断して、フィボナッチ・リトレースメントの38.2%が抵抗線になっていることと、OBVOn Balance Volume)が決算短信後にマイナス方向になっていることから、1800円を上限(撤退価格)にして空売りを行う判断をしました。

トレダビでは取りあえず、成行で800株(約160万円)の信用売りのオーダーを出しました。

さて、このように株式を対象にしたヘッジはなかなか難しいですし、一番の問題は損失額を限定することができないと言う問題があります。

しかしオプション取引の場合、売りポジションは、プットオプションを使うことで安全・簡単に行うことができます。

具体的に、前のブログでも失敗した事例として書いたBMYBristol-Myers Squibb)のオプション取引を紹介します。

年末から利益の出ていたBMY Jan20'17 60 Callを少しでも高めに売ろうと「欲を出した」ため、またまた大失敗してしまいました(^^;)

それは、トランプ次期大統領が111日の記者会見で次のような発言をしたからです。

Our drug industry has been disastrous; they're leaving left and right. They supply our drugs but they don't make them here, to a large extent….

And the other thing we have to do is create new bidding procedures for the drug industry, because they're getting away with murder(^^;)

まあトランプの表現方法の可否は別にして、オバマケア(アメリカの医療保険制度改革)の変更・撤回とともに、薬価の引き下げも行うと言っているわけです。

その結果、BioPharma系のETFが大量に売られ、ただでさえBMYの競争相手のMerckcancer immunotherapy(癌の免疫療法薬)のKeytrudaBMYの先を行きそうな状態だったため、BMY5%以上暴落したのでした。

実はトランプの発言内容に対しては私も反対ではないのですが、BMYを売った後にしてくれたら良かったのになぁ~とか愚痴ったのでした(あはは・・・

さてこのような想定外のイベントが起こったとき、BMYの株式を持っていたら悲惨なことになります。

例えば、150ドルで買ったBMY60ドルに値上がっているとき、トランプの発言で4ドル下落しましたから100株保有していたら1000ドルの利益のうち400ドルが消えてしまいます。

そして更に株価の下落が予想されるので、通常の株式の場合は、数日様子を見てから売ろうとかできません。

ところがオプションの場合はレバレッジがかかっていて損失の割合は株式よりもっと高くなりますが、パニック売りを避ける方法がいくつかあります。

私の場合は、今まで持っていたBMY Callの保険のプットオプションやコール売りを処分して損失の一部を相殺し、新規に短期のプットオプションBMY Jan27'17 56 Putを売りました。

プットオプションの売りとは、BMYの株価が上がる方に賭けた取引になります。またオプションは短期の場合、時間価値が急速に小さくなります(time decay)。

つまり私の対処法は、トランプショックのような一過性のショックで跳ね上がった満期の近いオプション価格は、高い確率で低下すること前提にしています。

いずれにしてもオプションがない日本株式のリスクヘッジは、日経平均などの先物を売るか、日経平均やTOPIXのベアETFを買うくらいしか方法がないように思われます。

2016年は、大統領選挙を計算に入れなかった「大失敗」のオプション取引の年でした(^^;)

まず2016年前半は上海の株式が不安定になり1月から株価は下落を続け、Fedの金利上げを予想して2015年末から継続していた銀行系が予想外の失速。

そのため5月までに銀行セクターは縮小してBio-Pharma系(バイオ医薬)にシフトしていきました。

ヘッジをかけてはいますが、AGN, CELG, GILD, BMYなどに集中しています(^^;)

実は2015年からM&Aと価格つり上げ(price gouging)のビジネスモデルが激しく批判されていた時期に、医薬系に一点集中するのはかなりリスクの高い投資でした。

Price gougingモデルは、例えばHIV患者のためのDaraprimという一粒$13.50の薬を$750 につり上げた起業家Martin Shkreliなどによって行われていました。

また同様のビジネスモデルを使って利益を上げていたのがVARValeant Pharmaceuticals)でした。

しかしShkreliは訴追され、VARの株価は2016年の始めには暴落していたので、price gougingの問題はある程度解決したと考えていました。

VRX
Martin Shkreli wants new lawyers for criminal caseCNBC, 20 Jan 2016

http://www.cnbc.com/2016/01/19/martin-shkreli-wants-new-lawyers-for-pharma-criminal-case.html

Statement of Howard B. Schiller Interim Chief Executive Officer and Director, Valeant Pharmaceuticals International, Inc. before the Committee on Oversight and Government Reform U.S. House of Representatives February 4, 2016

https://oversight.house.gov/wp-content/uploads/2016/02/Schiller-Valeant-Statement-1-26-Prescription-Drugs.pdf

実際このポートフォリオは、8月まで順調に利益をあげていました。

ところが大統領選挙が始まると、「庶民の味方」をアピールしたい候補者にとって最高の攻撃対象となったのが医薬会社でした。

そのため8月後半から、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)やバーニー・サンダース(Bernie Snaders)らの「恐怖のツイッター攻撃」が医薬会社に対して始まります。

そのたびにVARM&AのターゲットにもなったAGNや医薬系のETFが大量に売られるので、私の一点集中の医薬系ポートフォリオは壊滅状態となったのでした~(^^;)

Documents Open Curtain on Boardroom Drama at ValeantCNBC, 30 Dec 2016

http://www.cnbc.com/2016/12/30/documents-open-curtain-on-boardroom-drama-at-valeant.html

2016パフォーマンス
以上の影響により、2016年の医薬系のパフォーマンスは惨憺たるものになりました。

例えばベンチマークのS&Pが年率10%の上昇を記録したのに対して、BiotechPharmaのパフォーマンスは-19%、-4%、-9%です。

2016バイオファーマ
しかし選挙が終われば戻るだろうと、10月には更に買いを入れて平均単価を落とすことにしました。

ところが「あらまぁビックリ」、ヒラリー圧倒的優勢の予想に反してトランプの勝利になってしまいました。

この時のポートフォリオの暴騰は、一瞬だけでしたが、今まで見たことのないような上げ方をしていました。

後で同僚と話をしていて教えてもらったことは、要するに私のポートフォリオは「ヒラリーShort」だったのでした・・・知らなかった(^^;)

つまり私のようなContrarianの投資は、結局「運」が良くないと大失敗することをまた認識したのでした。

いずれにしてもトランプショックによる医薬系の株価の上昇は一時的なもので、一点集中のポートフォリオはリスクが高すぎたと反省しました。

その後はBMYを除いて医薬系を売り、BACKEYGOOGCOSTLVSSKWSなど、分散投資に変更しています。

またトランプは何をするかわからないので、彼が大統領に就任する120日までに投資金額を減らす予定です。

以上、2016年のオプション取引の反省会でした。 

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