日経ヴェリタス2月12日号「投資の助っ人 株アプリ広がる」に、私の「経済学と株式投資」の講義の様子(東芝の空売りなど)が掲載されました(52頁)。
前のブログ「株式の空売りとプットオプション」(2017年01月14日)にも書いたとおり、空売りは難しいです。
しかし東芝(6502)のように巨額の損失や不祥事をくり返す会社は、世界中の機関投資家、ヘッジファンド、個人投資家の格好の空売り対象になります。
東芝の危機については、次の記事を参考にしてください。
l 日経電子版「揺れる東芝株 巨額資金調達か 1部上場維持か… 」(2017/2/16)によると、東芝の取引銀行の貸出債権は8000億円規模、東芝の半導体事業の評価額は1.5兆円規模だそうです。
l 日経電子版「みずほ銀、東芝を「要注意先」に下げ」(2017/1/28)(有料)によると、大手銀行が東芝向けの融資に貸倒引当金を積み立てることになったという記事です。
さて、授業の中でトレダビは次のような形で使います。
まず学生さんに私のトレダビの保有銘柄(第70回「投資のおまもり杯」)を見せながら、何故このようなポートフォリオを選んだのか理由を説明します。
l 1326 SPDR、1963日揮、6418金銭機、6502東芝、6752パナソニック、6902デンソー、6988日東電、7741 HOYA、8306三菱UFJ、9766コナミHDなどです。
次にトランプ大統領の主要経済政策は次の4つであることを説明します。
1. 法人税と所得税の大幅減税⇒米企業の税引き後利益上昇+消費増加⇒米株式市場上昇
2. 規制緩和⇒①銀行系(ドッド・フランク法や大手銀行のストレステストの見直し等)株価上昇+②環境規制緩和⇒資源系(シェールガス)株価上昇
3. 海外利益の本国送還⇒アップル(海外資産26兆円)、マイクロソフト(約12兆円)やグーグル(8兆円以上)などの株価上昇
4. 大規模インフラ投資⇒建設・産業機器やレンタル会社(例えばURI)の株価上昇。
そして以上のような政策が実施されると次のような結果になります。
1. 米労働市場は雇用拡大とともに失業率も5%以下で完全雇用状態に近い⇒インフレ
2. インフレ⇒早ければFedは3月に利上げ、6月には必ず行う⇒米金利上昇
3. その結果、トランプがツイートで何を言おうが、ドル高・円安
4. ドル高・円安⇒日本の低金利政策の緩和+アベノミクスのインフレ施策
5. その結果、日本株で買いの対象になるのは①輸出関連株、②メガバンク、③カジノ関連株、④ロボットやAI、ホログラムなどの株
これでK-zoneの空売りの説明の準備ができました。
このトランプ経済施策によってポートフォリオは輸出関連株が中心になるが、円安から円高に振れると一気に売られるのでヘッジが必要。しかし日本の株式の場合はオプションがないので、リスクは高いが空売りが必要になること。
前回のブログでは空売り比率からカシオを選んで1600株の空売りを行いました。今回は東芝株を使って空売りの事例とその根拠を教えます。
まず学生さんには、上場企業の不正会計は株主に対する最悪の背信行為で、100%空売りの対象となることを教えます。
東芝の場合、2015年7月に不正会計がばれた後も原発の投資失敗を隠しており、年度末まで400円以上まで持ち直していました。しかし2016年12月27日に数千億円の巨額損失を計上することを公表し、株価は暴落しました(^^;)。
この理由を説明するために、『千と千尋の経済学:資本主義の「化け物語」』の「半沢直樹」から引用します。
「半沢が勤めているメガバンクの東京中央銀行が巨額の「貸倒引当金」(かしだおれひきあてきん)を準備しなければならなくなります。その理由は、融資先の伊勢島ホテルが資金運用に失敗したため、銀行がホテルに融資した総額1500億円の回収ができなくなる(債務不履行のリスク)かも知れなくなったからです。」
つまり東芝に1000億円単位で融資しているメガバンクは巨額の貸倒引当金を積み立てなくてはならず、ただでさえ低金利政策で利益が減少している銀行が東芝救済に動く可能性は低いと予想できます。
以上のロジックに従ってトレダビでは、1月30日に10,000株@249円で売り、授業があった2月3日に5000株@239円で買い戻し、残りは2月10日に232円で信用返済買を行いました。
続いて2月15日に再度10,000株@202円で売り、2月17日に5000株@181円で買い戻しました。残りの5000株も近日中に処分する予定です。
さて、トレダビの利益率のグラフを見るとよくわかりますが、空売りのポジションを持たないときに円高に振れるとランキングが大幅に下がります。しかしカシオや東芝の空売りを持ったポートフォリオの場合、輸出銘柄の株価の損失を同じ輸出銘柄の東芝やカシオの利益が相殺してくれます。その結果、円高に振れても利益率とランキングは安定していることがわかります。
1. メガバンクへの投資(私の場合は三菱UFJ ):マスコミは日銀の低金利政策とかマイナス金利の問題とかを依然として問題視していますが、前のブログ「マイナス金利と財政政策と債券市場」(2017年01月03日)に書いているとおり、主要国の長期金利は去年の7月の半ばに底を打っています。
①
大統領選でヒラリー・トランプ両候補とも大規模な財政出動を公約に掲げたこと。
②
財政赤字の中の財政出動・インフラ投資⇒インフレ⇒Fedは金利を上げる。
③
アメリカの金利が上昇すればECBと日銀のマイナス金利政策に対する圧力が弱まる⇒日本の金利も上がり始める⇒業績が落ち込んでいるメガバンクの利益率向上⇒東京三菱UFJ購入。また金のETFを少し買っているのは、インフレの動きをキャッチするため。
2.
日揮は世界を相手にしている日本商社の動きを理解するためです。
3.
コナミや金銭機などのカジノ株は、去年の12月にカジノ法案が成立したので購入。このきっかけは、マカオのカジノビジネスで損失を出しているアメリカのMGMやLVSのCEOが、日本のカジノ法案成立に「すごく期待している!!!」と発言していたからです(あはは、彼らは日本ですごく露骨なロビー活動しているよね~ということを学生さんに教えます)。
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