butadonY氏
プロフィール
東北大学法科大学院既修コース修了。
ロースクール在学中に東日本大震災を経験し、勉強が手につかない中で本試験を迎え不合格。実力はあると言われながらも2回目の受験も不合格となってしまったが、3回目の受験で一念発起し上京。退路を断って学業に専念し、見事最終合格を果たす。
昨冬より弁護士を開業。




Y氏の法律入門 第4回
条文との付き合い方 その1~条文丸暗記はナンセンス~


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条文が全ての基本だとよく言われますが、条文の文言を覚えればよいのでしょうか。


1 条文が大事なのはわかっているけれど……

 初学者の皆さんが必ずと言っていいほど躓くのが、条文との付き合い方です。

 大学入試までの学習では、法律学の条文のように存在感があって異彩を放つものはなかったですよね。私もそうだったのですが、きっと皆さんは真新しい六法を手にして、先生に言われるがままに条文を引き、何となく印をつけるので精一杯だと思います。

 法律を学び始めると、「議論は条文からはじまり、条文を無視した議論は無意味だ。」とか、「教科書を忘れたとしても条文だけは忘れるな。」など、条文の重要性について耳にタコができるくらい聞くことになります。

 大事なのはわかったけれど、どうすればいいんだと迷っているあなたに、数回に分けて条文との付き合い方についてアドバイスしたいと思います。


2 条文は暗記する対象ではない

 皆さんにまず押さえていただきたいのは、条文は暗記する対象ではないということです

 よくいらっしゃるのが、大事なら暗記すればよいということで、条文の文言を読み続ける音声データを入手し、繰り返し聴いている人です。学習が進んで条文の内容について知識がある人が、復習する意図で文言の音声データを繰り返し聞くことには意味があると思います。

 でも、初学者で条文の文言が念仏のようにしか聞こえない段階で、ただ漫然と条文を暗記するのはあまりお薦めできません。なぜなら、法律学で修得すべきとされる能力とは違った方向への努力になってしまうからです。

 法律学は社会に密接に関連した学問と言われます。立法論を除外して考えると、既に存在する法を社会においてどのように運用していくべきか?ということが研究の主題となります。

 そのため、少なくとも学生の立場から法律学において修得すべきとされているのは、(1) その法律(又は法制度)がどうしてつくられたのか(制度趣旨、又は単に趣旨と呼ばれます)をしっかり理解すること、(2) (1)で理解した制度趣旨からすると、具体的な場合においてどのように法を運用していくべきなのかを思考すること、の2つとなります。

 この2つの修得目標からすれば、条文は暗記すべきものではなく、その都度参照して使いこなすものということになります。条文はあくまで道具であって、GOALではないのです


3 まずは、議論の出発点がどの条文のどの文言なのかを理解しよう

 初学者の皆さんとしては、教科書や授業で法律の議論に出会うたびに条文を引いて、どの条文のどの文言が問題になっているのかをきちんと理解する作業をするようにすれば、それで十分だと思います。

 特に「どの文言」というところまで理解するということが重要です

 どの文言が問題になっているかを一つ一つ押さえることができると、だんだん法律学を勉強するコツがわかってきます。

 初見の段階でも条文を見るだけで、「あ、この文言。論点になりそうだな。」とか、「このような説の対立がありそうだな。」ということまでわかってきます。つまり、初めて見る法律にも対応できるようになるのです。

 ですから、条文の文言を全て覚えようなんてことはしないでください。最初から暗記しようなんて欲張らずに、条文をこまめに引いて、問題となっている条文と文言を確認することだけを意識しましょう。


▼ 次回は、条文との付き合い方 その2 をお送りします。