2022年05月15日

『シン・ウルトラマン』

シン・ウルトラマンありがとう、ウルトラマン。私の好きな言葉です。
ウルトラマンを見たはずなのに、エヴァンゲリオンを見たような気がする。空想特撮映画を見たはずなのに、現実的CG映画を見たような気がする。面白かったはずなのに、物足りなさが強く残るような気がする。
やはりフルCGではゼットンの怖さは描けないのか…。

怪獣ではなく禍威獣と名付けられた巨大生命体と戦うべく結成された禍特隊の面々が早口での説明セリフからして、子供の頃に楽しんだ「ウルトラマン」を大人として楽しむための解釈でこの映画を見るべきだという雰囲気を感じつつも、その禍威獣といい、破壊される街並みといい、そして突如現れた知的巨人ことウルトラマンといい、全てがCG主体ではなく「特撮」主体で描かれている前半は、「久しぶりにウルトラマンを見た」というノスタルジーに浸りながら楽しく見ることが出来る。

しかもウルトラマンと禍威獣の戦いを俯瞰で見せてくれる「かつてのカメラアングル」に加え、当時のTVシリーズでは技術的に無理だった下方からや、ウルトラマンの首筋後ろからなどの「新しいカメラアングル」でも見せてくれるので、特に40代以上の方ならこの興奮たるや、凄まじかったはず。

ただこの映画で面白かったのはここまで。この先はエピソードを重ねるたびに、いや新しい外星人と戦うたびに、その面白味が減っていくだけでなく、特撮映像も減っていく。つまりノスタルジーに浸れる面白さが減ると同時に、エヴァンゲリオンを実写化するとこんな雰囲気になるのかなという新しい挑戦のための実験的な雰囲気が強くなっていく。

なので、中盤から後半に掛けては、禍特隊がネルフにしか見えなくなってくる。田村班長と浅見分析官で葛城ミサトに見えてくる。警視庁公安課の加賀美が加持リョウジにも見えてくる。

さらに特撮主体だった映像もCG主体にへとシフトし、宇宙空間で形成されるゼットンに至っては完全フルCGなので、あの不気味さも全然ない。あのウルトラマンが勝てない強敵なのに、その怖さも伝わってこない。当然、人類の英知とウルトラマンの勇気が融合したうえでの勝利にも興奮の2文字は存在しない。

また中盤で戦うザラブやメフィラスといった外星人が人間サイズで、しかも日本政府と条約や密約を結ぶといった小さな展開が繰り返されるので、映画全体のスケールもどんどん小さくなる。
もちろんウルトラマンシリーズには色々な怪獣や宇宙人が登場したので、こういう展開もあっていいと思うが、それを2体続けて描く必要はあったのだろうか。そこは脚本的にではなく映像的に物足りなさを感じずにはいられなかった。

しかしあくまでもこの作品は、庵野秀明総監督によるウルトラマンの新解釈。庵野秀明というクリエイターが描きたかったウルトラマン。そこにエヴァンゲリオンの要素が滲み込んでしまうのは、もはや仕方ないのかも知れないが、ただ本来ならウルトラマンはウルトラマンとして描いて欲しかったのは、子供の頃にウルトラマンを楽しんだ一人のファンとしての想いだ。

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2022年05月10日

『死刑にいたる病』

死刑にいたる病優しい顔の連続殺人犯。
虐待を受けた子供は自尊心が欠けたまま成長してしまう。間違った自己承認欲求を満たすために、世界でも自己肯定感が低いこの日本においてでも連続殺人を犯す悪魔へと変貌していく。
だがその悪魔が一人の青年に冤罪調査を依頼したとき、私たちは真実を探すのか、それとも真犯人を探すのか。

裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火先生も見守るなか、24人もの若き命を奪った榛村大和という男が語るのは、用水路に撒かれた花びらのようなものは被害者から剥ぎ取った爪だという、目を背けたくなるほどに残虐な犯行。

だが榛村は手紙を送った大学生の筧井雅也に語る。立件された9件のうち、20代の女性を殺めた最後の事件だけは冤罪だと。それを調べて証明してほしいと。そのシーンで白石和彌監督はガラス越しに向き合った2人の顔を半分重ね合わせるように見せながら、雅也が榛村に浸食されるのではないかという疑念を観客に植え付ける。

そして面会を重ねるたびに、時に2人の顔が完全に重なり、時に横並びになるなど、榛村が雅也の実父ではないかという疑念や雅也の大学での人付き合いの悪さも絡ませながら、徐々に刑務官すら手なずける「人たらし」な榛村の言葉に説得力を持たせると、つい我々も長髪で顔の痣を隠す金山一輝が真犯人ではないかと疑い始めてしまう。

しかし榛村は連続殺人犯。その言葉を真に受ける必要はないが、真に受けてしまいたくなる。それはもしかしたら自分の自己承認欲求が満たされていないからではないだろうか。

誰もが自分は特別だと思いたい現代社会において、小さなグループの中だけで声が大きくなる学生や、その小さなグループに自分の意思とは関係なく一緒に行動している加納灯里のような存在、雅也にぶつかってきた酔っ払いのサラリーマンに、前方不注意を他人のせいにするオッサンなど、小さな世界で小さな自己承認欲求を満したい小さな存在とは違うと、誰もが思いたい。真面目に生きている人ほど内面でその傾向が強かったりするのではないだろうか。

ただそういう想いを抱くと、心の隙間が生まれる。そこに榛村のような優しい顔の悪魔が入り込もうとしてくる。我々を操ろうとしてくる。雅也は事件を調査していきながら、榛村に操られまいと対峙する。そんな榛村の真意は何なのか。

恐らく榛村がしたいことは「殺人」ではない。真面目に生きる若者を「いたぶる」ことを楽しんでいる。「殺人」はその「いたぶり」の延長線上にあるものだろう。だから榛村は雅也を金山一輝や筧井衿子のようにずっと自分の呪縛に囚われて苦しむ存在に仕立て上げたかったのだろう。

だが雅也はそんな榛村に打ち勝った。調査を依頼した事件の真犯人も榛村だという真実に辿り着いた。ただ金山一輝はその事件に巻き込まれ、これからも一生苦しんでいくのだろう。榛村という一人の男に人生を狂わされたまま。

だからこそ残念なのは、原作とは違うというラスト。加納灯里もまた榛村から手紙をもらい、彼に共感していたというオチは不必要だったのではないかと。個人的には雅也と榛村の戦いだけで終わらせてほしかった。

TVドラマ「踊る大捜査線」第9話での犯人役でも印象的だった阿部サダヲという俳優の素晴らしさが存分に味わえるだけに、少々勿体ない。

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2022年05月04日

『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』

ドクター・ストレンジ2ワンダ・マキシモフ/マザー・オブ・マッドネス。
ドクター・ストレンジではなく、スカーレット・ウィッチことワンダ・マキシモフが主役の作品だ。魔術師が開けてしまったマルチバースよりも、魔女の悲しき愛がメインの作品だ。Disney+配信の「ワンダヴィジョン」を見ていなくても楽しめるが、期待していた面白さではなかったのは残念。

スパイダーマンの一件で別宇宙と繋がる扉を開けてしまったが故に、恐怖を感じるとマルチバースの扉を開けてしまう謎の少女アメリカ・チャベスを救うべく、アベンジャーズとして共に戦ったワンダを訪ねるドクター・ストレンジにとっての気掛かり。

それは愛しき女性クリスティーンが他の男性と結婚する際にドクターに尋ねた「今のあなたは幸せ?」という質問。世界を救うスーパーヒーローとしての幸せとはまた違う、一人の女性への想いに区切りがつけられない彼にとって「幸せ」とは何か。

そんな苦悩に苛まれているのは、サノスとの戦いで愛しき男性ヴィジョンを亡くしたワンダも同じ。だからつい考えてしまう。別宇宙にいるもう一人の私は幸せになっているのではないだろうか。愛しき女性と結ばれているのではないだろうか。愛しき男性との子供と一緒に過ごしているのではないだろうかと。

だからワンダは願う。そこに自分も行きたい。そのためにはマルチバースを往来出来るチャベスの能力が必要だ。でもそのチャベスは往来してきた72ものマルチバースで、時に信頼していたドクター・ストレンジに裏切られたりと、誰を信用していいのかも分からない。

けれどこの世界、マルチバース616でのドクター・ストレンジは決してチャベスを裏切らない。別宇宙に飛ばされても、そこで出来ることを見つけ出し、元の世界にいる別宇宙から来た死体のゾンビ・ストレンジを操っては、ワンダの野望を阻止しようとする。

ただこのマルチバースの設定というのが、とにかくややこしいうえに、スパイダーマンとは違い、ドクター・ストレンジはどのマルチバースでもベネディクト・カンバーバッチが演じているので、どうも視覚的によりも感覚的に差別化するのが難しい。

さらに別宇宙で出会ったヒーロー軍団がワンダ一人にあっさり壊滅されるなど、いくらそこにプロフェッサーXがいたといっても、どこかヒーロー過多にヒーローの無駄遣いが重なっているようで、何となく勿体ないという想いも生まれてしまう。

そして個人的に一番残念だったのは、サム・ライミ監督に音楽がダニー・エルフマンということで、ゾンビ・ストレンジが死霊を身に纏ってワンダと戦うシーンが最も演出と音楽が盛り上がっていたこと。マルチバースのため事情が事情でドクター・ストレンジが直接戦えないのは仕方ないとはいえ、離れた場所で戦うドクター・ストレンジ本人の激闘するシーンをもっと見たかった。

ドクター・ストレンジ同士で音符バトルなんて長々と見せずに、ワンダ撃退も結局はチャベスによるマルチバース開通でワンダ自身に別宇宙で幸せに生きている自分自身の邪魔は出来ないと悟らせるくらいなら、もっとドクター・ストレンジが世界の平和のためなら、かつての仲間でも倒すという冷静な決断を下すシーンが見たかった。

それでもラストでのドクター・ストレンジに第3の眼が開眼するシーンには驚きと共に、これもまたダークホールドを使用した代償であり、ゾンビ・ストレンジと通じてしまった代償。でもその代償のおかげで彼の魔術はさらに強くなるのだろう。その後に登場したシャーリーズ・セロン演じるクレアという女性は、マルチバース同士の衝突:インカージョンに対処すべく、ドクター・ストレンジを迎えにきたらしいので、物語はさらにややこしくなるかも知れないが、面白そうな展開は期待したい。

ちなみにこのクレアという女性。ドクター・ストレンジとの関係は、盟友であり、弟子であり、恋人だとか。第3の眼が開眼して女性の好みも変わった?

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2022年05月02日

『バブル』

バブル泡のように記憶から消えていく。
映像は驚くほどに美しい。パルクールのように飛び跳ねる躍動感も素晴らしい。でも人魚姫伝説を骨子とした物語は、驚く以上に何も印象に残らないどころか、見所という見所が何もない。虚淵玄、荒木哲郎、小畑健という素晴らしき才能が集まりながら、100分という上映時間が長く感じられるほど、何も記憶に残らない。

5年前に世界中に降り注いだ泡の影響で、東京タワーを中心とした東京の一部分だけが一つの大きな泡の中に取り込まれ、重力が崩壊し、ライフラインも絶たれて隔離状態になっている。そんなかつての面影を残さないほどに荒れた東京で親のいない若者たちが5人1チームとなってパルクール競技のようなバトルクールで生活物資を賭けて戦うという設定にも関わらず、YouTube配信などの外部との接触が普通にあるなど、世界観が曖昧というか中途半端で、とにかく随所に疑問が残ることが多い。

さらにクールな主人公ヒビキが、泡から人間化した謎の少女ウタと出会い、「ボーイ・ミーツ・ガール」の展開になっていくのに、その2人が乗り越えるべきはずの壁が薄くて低い。例えば葬儀屋と呼ばれる相手チームとのバトルクールに関しても、ウタがチームに入って何が変わったのかも特に描かれないので、ヒビキたちがちょっと本気出したら勝てたみたいな雰囲気しか残らない。チームみんなで一丸となって難敵を倒したという達成感が微塵もない。

また人魚姫のようにヒビキに恋したことで、自分が人間でないことを悟られまいと彼の元から去ったウタをヒビキたちが追いかけていくのもありきたりな展開。その一方で、急に赤い泡が意思を持ってヒビキたちの邪魔をしようとしたりなど、ご都合主義にも思える展開もとにかく多いうえに、突如登場したウタの姉なる存在がヒビキとの色恋沙汰を嫌うのも、その理由が何も説明されない。だからヒビキたちがウタを助け出すという壁が高く感じられることもなければ、謎の泡や姉が強敵にも感じない、最後に達成感を感じることもない、そして当然2人の別れに涙することもない。

結局、5年前に泡が降り注いだ時に泡という形をした知的生命体のウタが少年だったヒビキと出会い恋に落ち、数年後に溺れたヒビキを助けるというキッカケで人間化するも、最後は正体がバレたので「人魚姫」のように泡になる、いや元の形に戻るというのも、説明不足が甚だしいので、全てがご都合主義に見えてしまう。主人公たちが自分たちだけで盛り上がって、自分たちだけで涙しているという、いわばマスターベーションにしか見えない。

本来、こういう作品に関しては、我々が生きている世界とは違う世界を描くなら、そこには最低限の説明が必要だ。また「ボーイ・ミーツ・ガール」の展開にも、2人で心を重ねて乗り越えるべき高い壁が必要だ。
でもそれらが何もない。だから印象にも残らない。記憶にも残らない。

加えて残念だったのは、音楽の起用法。予告編やTVCMでは躍動感溢れるバトルクールに合わせるようにEveの「Bubble feat.Uta」が鮮やかに流れていたが、本編ではOPで流れるのみ。本編でも躍動感溢れるシーンでインストゥルメンタルだけでも流してくれよ!

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2022年04月30日

5月戦線映画あり!

地味に忙しくて映画を見る時間が取れずに、気が付けばGW突入。映画業界由来のゴールデンウィークだけに映画を見たいのですが、映画館は少年名探偵の新作が牛耳ってますからね。映画館へ行く足がより遠のきそうですよ。あぁ、これは映画ファンとしては大ピンチだ!
でも5月も見たい映画はやっぱり少なそうなのかな〜。いや大作は充実しているぞ!だからもっと映画館で映画を楽しみたいぞ!

てなそんな5月の注目作品をピックアップです。

【5/4〜】
●『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
これが見たくて見たくてたまらんのです。

【5/6〜】
●『オードリー・ヘプバーン』
永遠に色褪せない名女優のドキュメンタリー。

【5/13〜】
●『シン・ウルトラマン』
ゴジラ、エヴァ、チキンタツタの次はウルトラマンも「シン」だ。
●『バブル』
Netflixで見ますか。
●『流浪の月』
2020年本屋大賞受賞作品を李相日監督が映画化。

【5/20〜】
●『ハケンアニメ!』
何やら面白そうな雰囲気が…。

【5/27〜】
●『トップガン マーヴェリック』
やっと見れるよ!


てな訳で5月の注目作品は
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
『トップガン マーヴェリック』
『シン・ウルトラマン』

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2022年04月10日

『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』

ファンタスティック・ビースト3主役の影が薄い!
もはやアルバス・ダンブルドアが主役だ。ニュート・スキャマンダーの主役としての存在感が益々薄くなっていく。ストーリーテラーであって、魔法動物学者としての利点を活かすこともなければ、ジェイコブ・コワルスキーとの友情シーンも少なすぎる。
そして何よりもジョニー・デップの降板が残念でならない。

DV疑惑の判決が出たことにより、黒い魔法使いのリーダー:グリデンバルド役のジョニー・デップが降板し、マッツ・ミケルセンが代役として登場したこのシリーズ3作目。
デンマークの至宝とまで呼ばれ、『007』シリーズでも悪役をこなしたマッツ・ミケルセンだけに、このグリンデンバルド役も素晴らしい仕事ぶり。まるで前作からこの役を演じていたかのような存在感だ。

でも個人的にはジョニー・デップの何を考えているか分からない不気味な表情のグリンデンバルドが好きだっただけに、そのジョニー・デップ版を一度でも見てしまうと、いくら名優マッツ・ミケルセン版でもどこか物足りなさを感じてしまう。もちろんマッツ・ミケルセンの大人のセクシーさと渋さも魅力的だが、やはりダンブルドア役のジュード・ロウとの男前対決を考えた時、ジョニー・デップの方が希少価値があるように思えてしまうのは、映画ファンとしての悲しき性なのかも。

さらにこれも映画ファンとしての悲しき性なのか、やはり主役であるニュートの「魔法動物学者」としての実力がここ一番で発揮されてほしいと願ってしまうも、その願いが叶わずに物語が進んでしまうのも残念なところ。
この作品を振り返っても、多勢に無勢の中、魔法を使って活躍しているのは兄テセウスと呪文学教師ユーラリーだけで、名門魔法族の末裔ユフスの活躍はブータンでのクライマックスだけ。助手バンティは見事なサポートで活躍しているものの、未来が読めるグリンデンバルドに対抗するために無計画作戦のせいもあってか、全体的に運良く物事が進んでいるだけにも見えてしまう。少数精鋭で戦っているという戦い方ではないので、どこか盛り上がりにも欠ける。

加えて個人的に一番残念だったのは、ジェイコブとニュートの友情シーンが極端に少ないこと。ニュートの恋人であるティナの出演シーンが極端に少ないこともあって、恋愛下手の友人を励ますジェイコブの姿もなければ、グリンデンバルド派についたクイニーを取り戻したいジェイコブに親身になって協力するニュートの姿もないので、こちらも物足りなさを感じずにはいられない。

詰まるところ、魔法界の指導者選びでグリンデンバルドが不正を働こうとしているのをダンブルドア派が止めようとする物語で軸で、メインで描かれる人間関係もグリンデンバルドとダンブルドアの血の誓いを立ててまで戦うことを避けてきた2人なので、その他は例え主役や主役級であっても脇役扱い。『ハリー・ポッター』シリーズに通ずるシーンも描かなければならないことを考えると、時間的に描けないことも多々あったのだろうと推測するのだが、それでもラストのジェイコブとクイニーの結婚式はたっぷりと見せて欲しかった。ニュートのスピーチを聞くジェイコブの表情を見たかった。

見たいものが見れなかった。そんな想いが多く残ってしまったのが残念でならないが、次こそは既婚者ジェイコブと未婚者ニュートの新たなる友情を見せてくれい!

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2022年04月03日

『モービウス』

モービウスこれぞリアル・バットマン。
SSU:ソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの新たなるヴィラン。それは血液の難病を患った天才医師であり、コウモリの能力を得た狂暴な怪物:モービウス。
ヴェノム同様に善と悪が共存しているこのヴィランは、果たしてマルチユニバースの世界でどんな活躍を見せるのか。今から楽しみでならない。

ギリシャの難病を患う子供たちが暮らす病院で出会ったマイケル・モービウスとマイロことルシアン。同じ血液の難病を患う者同士、親友となった2人だが、理数系の才能を見出されたマイケルはアメリカで人工血液の開発に成功し、ノーベル賞まで受賞した天才医師に、マイロはそんな彼を金銭的にサポートする実業家へと成長していく。

そんな2人の目標は、自分たちが患っている難病の治癒法の発見。そのためにマイケルはコスタリカでコウモリを大量に捕獲し、血液を凝固させないコウモリの能力を治癒薬へと転用する。どこか『ドラキュラZERO』のような展開だが、もちろん最終実験である人体実験は自分自身が被験者になるという覚悟で。

ところが治癒薬を投与した途端、反響や身体能力などのコウモリの能力を得てしまうと、もはやそれは紳士的な吸血鬼とは比べ物にならないほどに野蛮な怪物になってしまう。本家本元のバットマン以上にコウモリに好かれる存在になってしまう。『ザ・フライ』のジェフ・ゴールドブラムほどではないが、見た目も少しブサイクになってしまう。そして細かった身体は筋肉質になるも、血を欲するという渇きには抗えなくなる。人工血液で事を済まそうとするも、それでは物足りなくなっていく。

でもそんな現状をマイロには何も伝えないので、当然マイロは「自分だけ治りやがって」という嫉妬に駆られてしまう。暴走する親友を止めないと。でも自制もしないと。そんなお約束の展開が連続していくので、作品としては少々物足りなさも感じるが、まぁ新キャラのデビュー戦。顔見世興行としては十分な出来だろう。

ただ同じ難病を患っていた黒人少女は?モービウス医師を容疑者として追っていたFBIは?落命したはずのマルティーヌは復活したの?といった投げっ放し要素も多いうえに、風に乗って飛ぶ様が全然格好良くないので、不満も多い。マイロがなぜ実業家として成功したのかも言及がなければ、マイケルの治癒薬開発に対する情熱も親友のためにもという想いが意外と薄いなど、人物の掘り下げもほとんど出来ていない。

だから宿敵や難敵を倒したという達成感もなければ、親友の命を奪ってしまったという悲しみもない。ひとまずデビュー戦、無事に終了といった感じしかない。

それでもこの映画を面白いと思えるのは、やはりマイケル・キートン演じるエイドリアン・トゥームスことヴァルチャー、そう『スパイダーマン:ホームカミング』のヴィランがマルチユニバースの影響で再登場するだけでなく、最後にはモービウスをスパイダーマン関連で勧誘するのだから、これはもう楽しみでならない。

そして『ノー・ウェイ・ホーム』で感動した身としては、また一人スパイダーマンのことを覚えてくれている存在が現れたことが少々嬉しくもあるのだから、やはりこれはもう楽しみでならない。

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2022年04月01日

『TITANE/チタン』

チタン新しい命が生まれる。新しい映画が生まれる。
訳が分からない。理解不能。そんな意見に同意する。怪物的映画を見た。言葉が見つからない感動に支配される。そんな意見にも同意する。
この作品の素晴らしさを的確に表現できる言葉など、この世の中に存在するのだろうか。少なくとも私の頭の中には存在していない。

実父が嫌がるほどに車のエンジン音に異様な執着を見せる少女アレクシア。その執着心のせいで、父親が運転する車が事故を起こし、大怪我を負った少女の頭蓋骨にチタンが埋め込まれる。その時の大きな傷跡を右耳付近に残しながら。

やがて成長したアレクシアは、車の展示会でコンパニオンとして働くようになるが、彼女がボンネットの上で踊る姿は、一言で言うと卑猥だ。しかしその卑猥さが向けられているのは展示会に来た男性客にではない。彼女がボンネットの上で踊っているその車にだ。

さらに彼女は髪留めに使っている串のような櫛で執拗な男性ファンをキスをしながら殺害する。その他にも恋仲になった女性も、その女性と逢瀬を重ねた家にいた他の住人も。でも彼女が自己防衛のために男性ファンを殺したようには見えない。恋仲の女性も快楽から命を奪ったようにも見えない。まるでキスやセックスをしているように、愛を伝えているかのように命を奪う。

ただ男性ファンを殺害した後、彼女は導かれるように一台の車とセックスをする。一見すると彼女が車の中で自慰行為をしているようにも見えたのだが、その後に彼女の陰部が血の色で赤く染まるのではなく、まるでオイルのように黒く染まっているのを見ると、そのまさかを疑わざるを得なくなってしまう。

けれど、もし車と性行為をしたとなれば、もはやそれはZ級映画の類。第74回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品とは思えない展開。でも彼女の腹部は徐々に膨らんでいく。10年前に息子が行方不明になってから孤独に暮らす消防隊長のヴィンセントと出会い、髪を切り、さらしを巻いて、彼の「息子」として共に暮らすようになっても、破水をしたかのように陰部からオイルのような黒い液体が流れ落ちてくる。

でもなぜだろうか、この奇妙な共同生活が疑似家族に見えてくる。アレクシアとヴィンセントがやっと辿り着いた場所ではないかとも思えてくる。

実父から変な娘扱いされ、愛情表現もマトモではないアレクシアは、本当は誰かに愛されたかったのではないだろうか。逆に息子が行方不明になって以降、10年間も孤独に苛まれていたヴィンセントは、本当は息子の代わりに誰かを愛したかったのではないだろうか。

そんな2人が出会う。アレクシアの秘密に介入しないヴィンセントと、ヴィンセントから「世話をするのは俺だ」と言われてしまうアレクシア。ヴィンセントの息子として生きようとするアレクシアと、現実を直視してアレクシアに息子役を押し付けないヴィンセント。

そして迎える出産の日。アレクシアの腹部は裂け、子宮から人間の子供のような新たな命が生まれる。オイルのような黒い液体に塗れながら。でもその出産でアレクシアは命を落とす。
それでもヴィンセントは新たな命を育てることを誓う。アレクシアのために、行方不明になった息子の代わりに。

だがその新しい命の表情は一切スクリーンには映らない。車と人間が交わり、生まれた子供。異形の存在。姿形は人間のままだが、果たしてその表情も人間のままなのかは分からない。

けれど新しい命はヴィンセントからの愛を注がれている。幸せな人生を送ることが出来るはず。

そんな奇天烈な映画を的確に表現できる言葉など、この世の中に存在するのだろうか。映画を見終わると同時に感想に戸惑う自分を感じながら、この作品は見終わってから時間が経つにつれ、徐々に心の奥底にまで響いてくるものだと確信している自分がいることにも驚く、新しい映画だった。

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2022年03月31日

4月戦線映画あり!

アカデミー賞授賞式がいろんな意味で話題になったのも束の間。ブルース・ウィリスが失語症のために俳優業を引退するというニュースに淋しさを感じずにはいられない4月。映画を見始めた時からのスターがまた一人スクリーンからいなくなるというのは切ないですね。日本では人事異動の時期とも重なりますから、お世話になった方が退職されたのと合わせて、春風がやけに冷たく感じちゃいますよ。
でも4月は出会いの季節。新たな出会いは人間関係だけでなく、映画との出会いも同じ。だからこそ、この春も変わらずに映画館へ行って、映画を見ましょう!

てなそんな4月の注目作品をピックアップです。

【4/1〜】
●『アネット』
レオス・カラックス監督最新作。
●『TITANE/チタン』
第74回カンヌ国際映画祭パルムドール作品。
●『モービウス』
新たなるダークヒーローは天才医師。ドクター・ストレンジと被ってる?

【4/8〜】
●『親愛なる同志たちへ』
ロシア映画は救いがない結末だからこそ、胸に刺さります。
●『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』
ジョニー・デップがマッツ・ミケルセンに変わりました。

【4/15〜】
●『ハッチング-孵化-』
予告編を見ているだけでも、何か怖い。

【4/22〜】
●『カモン カモン』
マイク・ミルズ監督最新作、ホアキン・フェニックス主演。

【4/29〜】
●『不都合な理想の夫婦』
理想の夫婦なんて、所詮は飾り物。自分たちらしくでいいんですよ。


てな訳で4月の注目作品は
『TITANE/チタン』
『モービウス』
『親愛なる同志たちへ』

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2022年03月29日

『ナイトメア・アリー』

ナイトメア・アリー悪魔小路から抜け出せない。
人間ほど、いや男ほどおかしな生き物はいない。それを改めて教えられるギレルモ・デル・トロ監督の世界観。越えてはいけない一線を越えてしまう愚かな男と、越えてはいけない一線を越えない女たち。それは戻る道を確保する女たちと、戻る道さえ考えずに突き進む男の姿なのだろうか。
やはりどの時代も女の方が賢い。

恨んでいた父親を死に追いやり、その遺体を燃やした男・スタントン。バスに乗り流れ着いた場所は、移動カーニバル。獣のような人間を見世物にしたり、電気を通しても無事な女性がいたり、予知能力を見せる占い師がいたりと、観客に優越感と興奮を与える場所だ。

そんな場所でスタントンは、獣人を見世物にしているクレムから仕事を手伝わないかと声を掛けられ、この奇妙な世界に身を置くのだが、ここで彼が学んだのは見世物の裏側。つまりはトリック。
特に読心術師のジーナとピートから教わったのは、事前によく使う言葉を暗号化し、助手から術師へと投げ掛けられる言葉で、例えば客の鞄の中身を当てるといったトリック。そして相手をよく観察して、そこからスピリチュアルな言葉を投げ掛けることで、相手の心の隙間に入り込んで信用を勝ち得るということ。

この技術でカーニバルへの強制捜査に来た保安官を丸め込むことに成功したスタントンは、恋仲になったモリーと共にカーニバルを出て、2人でショービジネスを始めるのだが、ここで彼が出会ってはいけなかったのに出会ってしまったのは心理学博士のリリス女史。

スタントンのトリックを見事に見破る彼女に対し、スタントンは彼女を敵視することなく、逆に手を組める相手だと考えてしまう。彼女の顧客リストは富豪ばかり。ならば、その富豪たちを丸め込むことが出来るショーがあればと考えて辿り着いたのは、ジーナやモリーが絶対に手を出してはいけないと忠告していた幽霊ショー。つまり死人と通じることが出来るという、絶対に越えてはいけない一線。

だが自分の実力に自惚れたスタントンは、彼女たちの忠告に一切耳を貸さない。愛妻を亡くして贖罪を求めている大富豪エズラさえ何とかできれば、自分たちは生活に苦しむこともない日々を送ることが出来ると考え、ついにはモリーをエズラの亡き妻の亡霊役に仮装させてまでという暴挙に出てしまう。

その結果、嘘がバレたスタントンはエズラを撲殺。モリーにも逃げられ、しかも大金を預けていたリリス女史には見事に嵌められ、大金をネコババされるどころか、リリス女史を襲おうとした自分勝手な患者として、警察に追われてしまう始末。

そして彼が最後に辿り着いた場所。そこはカーニバルの世界。かつてクレムから獣人の作り方を教えてもらった世界で、足元を見られたスタントンは新たな興行主から獣人にされてしまう。いやそういう道を彼が知らず知らずのうちに歩んでしまったのが正しい表現か。

もしスタントンが幽霊ショーにまで手を出さなければ、リリス女史に入れ込まなければ、自分の実力をきちんと弁えていたならば、こんなことにはならなかっただろう。けれど欲望という底なし沼に落ちてしまった者は、自分が悪魔小路:ナイトメア・アリーに迷い込んだということにも気付かずに、ひたすら奈落の底へと落ちていく。

その姿は哀れの一言。そんな男の姿は、これまでのギレルモ・デル・トロ監督作品に登場する半魚人などの非人間的生物を見ているような異様な存在だ。でもそんな異様な存在に誰もがなってしまう危険性があることを、本当に理解出来ている人間は意外と少ないのだろう。

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『KANO~1931海の向こうの甲子園〜』主題歌
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