2019年01月18日

『ミスター・ガラス』

ミスター・ガラスヒーローがいるからヴィランがいるのではない。ヴィランがいるからヒーローがいるのだ。
もしかして我々は『アンブレイカブル』の頃から19年間もM・ナイト・シャマラン監督に騙されていたのだろうか?ヒッチコックの再来または後継者と一時期だけでも称されたこのフィラデルフィアの恐妻家の不遇時代も全てこの映画のためのフリだったのだろうか?

『スプリット』のラストで「壊れない男」ダンが登場し、『アンブレイカブル』の後日譚であるこの作品のタイトルが「壊れやすい男」イライジャの異名であり、その後日譚に24人格のケヴィンがどう絡むのかと期待をしていたが、さすがは一度でもアルフレッド・ヒッチコックの後継者と称されたM・ナイト・シャマラン。

安易にダン、イライジャ、ケヴィンの3人の物語にはせず、そこに父親ダンをヒーローと思い込んでいるジョセフ、ケヴィンと同じ虐待の過去を持ちながらもビーストから逃げ延びたケイシー、そしてイライジャを優しく、時に厳しく育ててきた母親を含めた6人による3つの物語が精神科医エリーを主軸に交差するようで、でもそこに何かをずっと隠していることだけはきちんと匂わすテクニックが素晴らしいこと。

なので、ヒッチコック作品を彷彿とさせるような音楽で独自の世界観に引き込ませながらもネタふりを随所に散りばめる一方で、『アンブレイカブル』の記憶を徐々に蘇らせながら、今回はM・ナイト・シャマランの出演シーンは結構長いなぁ〜と思いつつ始まる物語は、単にダンがケヴィンと戦う勧善懲悪ストーリーではない。

キーパーソンのはずのイライジャが精神崩壊状態なのか全く反応を示さないが、だからと言ってこの精神科医エリーも善人には見えない、ダンもヒーローにしては少々描かれ方が薄いこともあってか、余計に随所に監視カメラ映像で見せてくるシーンが凄く気になる謎多きストーリーだ。

だから本当に彼らは自分をスーパーヒーローと思い込んでいるだけなのか?それで説明がつくものもあれば、つかないものもある。それらをM・ナイト・シャマランはどう処理するのか。また観客を裏切る形で映画を終わらせてしまうのか。そんな不安と期待が入り乱れる。

そして高度なIQを持つ94回骨折男イライジャが用意したラストは、ヒーローのダンが無念の死を迎え、ヴィランのケヴィンもケイシーの腕の中で死を迎え、そしてケヴィンの父親をもあの脱線事故に巻き込んだ黒幕イライジャも計画失敗の死を迎え、ヒーローの存在を否定する謎の集団が勝利する嫌な気持ちしか残らないもの…ではない。

ダンというヒーローがケヴィンというヴィランを倒し、特殊能力のない警察を始めとする人々を守った姿を、あの監視カメラ映像で見せたシーンを全世界に配信するという、イライジャがヒーローとヴィランの対決を隠れ蓑にしながら遂行したヒーローは実在するという事実の拡散。

ヒーローがいるからヴィランがいる。
多くの人々はそう考えてしまう。
けれどヴィランがいなければ、ヒーローは存在出来ない。
ヴィランが存在するからこそヒーローが存在出来る。

それこそがM・ナイト・シャマラン流のスーパーヒーロー論。

それを19年掛けてM・ナイト・シャマランが映画で証明した。
まるでこの19年間という不遇時代さえ、この映画のために用意されたネタふりかのように。

となると、我々は19年間もM・ナイト・シャマランに騙されてきたのだろうか。

深夜らじお@の映画館は懐かしさと面白さを同時に味わいながら、この映画を楽しませてもらいました。

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2019年01月17日

阪神大震災から24年

1995年1月17日午前5時46分から今日で24年。
平成が終わりを迎えようとしている2019年に、改めてこの平成30年間を振り返ってみると、実に自然災害の多い30年でもあったことが方々で語られています。

阪神以降では新潟、東北、熊本、鳥取、北海道などで地震が起き、福岡、広島、岡山などでも大雨による水害も多発。
日本のあらゆる場所で自然災害が起きるのがもはや当たり前になってしまった昨今。

私は毎年この時期になると、自分が経験した「あの日」をどう伝えていくかを考える一方で、「誰に」伝えるかを具体的に考えないと「どう」伝えるかも具体的にならないのではないかと考えるようになりました。

考えてみれば、不幸な体験をして、その体験談を語る場など普段の生活ではほぼあり得ないこと。
小学生や中学生などのお子様がいらっしゃる家庭では、学校教育の延長線上で家族内でそういった話をする機会もあるかも知れません。

私は現在未婚ですが、ただ2人の姪っ子ちゃんたちがいます。彼女たちが大きくなった時、私にもいつかはそんな話をする機会が訪れるかも知れません。

その時、
「経験したことのない揺れ」という個人の感覚に頼った抽象的な表現で伝わるのか。
聞き手の想像力を刺激したうえで具体的な例を出して伝えるか。

今からでもゆっくりと、でも確実に考えていこうと思います。
みなさんはどうでしょうか?

acideigakan at 05:46|PermalinkComments(0)clip!関西私事・バトン 

2019年01月13日

日本インターネット映画大賞2018

今年は洋邦まとめて日本インターネット映画大賞に参加します。本当は洋邦分けたいのですが…。

【日本映画作品賞】
1位『パンとバスと2度目のハツコイ』10点
2位『万引き家族』8点
3位『カメラを止めるな!』5点
4位『リズと青い鳥』3点
5位『若おかみは小学生!』2点
6位『教誨師』2点
【コメント】
大作に面白い作品が少ない現状を表すが如く、世間にあまり注目されない作品ばかりになりました。でも本当の面白さに知名度など関係ない!

【監督賞】
是枝裕和監督『万引き家族』
【コメント】
是枝裕和監督らしさが詰まった作品だったので。
【最優秀主演男優賞】
大杉漣『教誨師』
【コメント】
まだまだ早すぎる旅立ちです…。
【最優秀主演女優賞】
深川麻衣『パンとバスと2度目のハツコイ』
【コメント】
「お願いだから好きにならないで」と言われましても…。
【最優秀助演男優賞】
塚本晋也『斬、』
【コメント】
やっぱりヤツは「ヤツ」だ…。
【最優秀助演女優賞】
樹木希林『万引き家族』
【コメント】
浜辺での何か言いたげな演技が忘れられません…。
【ニューフェイスブレイク賞】
該当者なし
【音楽賞】
『リズと青い鳥』
【コメント】
「第3楽章:愛ゆえの決断」

【外国語映画作品賞】
1位『ぼくの名前はズッキーニ』5点
2位『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』5点
3位『判決、ふたつの希望』4点
4位『シェイプ・オブ・ウォーター』4点
5位『ナチュラルウーマン』2点
6位『エンジェル、見えない恋人』2点
7位『ブリグズビー・ベア』2点
8位『女は二度決断する』2点
9位『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』2点
10位『スリー・ビルボード』2点

【ベストインパクト賞】
該当者なし

【勝手に選ぶ男性必見作品賞】
『パッドマン 5億人の女性を救った男』
【コメント】
ずべこべ言わずに見なさい!


この内容(以下の投票を含む)をWEBに転載することに同意します。

深夜らじお@の映画館は基本洋画中心の映画ファンです。

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2019年01月11日

『クリード 炎の宿敵』

クリード炎の宿敵33年前の悪夢を振り払う時、42年に及ぶ伝説が終わりを告げる。
あぁ、ロッキー・バルボアの時代が終わる。アポロ・クリードと対戦し、友情を深め、イワン・ドラゴと対決した歴史がここに終わりを迎えようとしている。
けれどそれは新しい時代の幕開け。アドニス・クリードやヴィクター・ドラゴが担う新しい伝説の始まりでもあるのだ。

『ロッキー4/炎の友情』でアポロ・クリードを死に追いやるも、ソビエトの地でロッキー・バルボアに敗れたイワン・ドラゴはその後どうなったのか。それは誰も知る由もない、世間から忘れ去られた者が歩まざるを得ない道。
ドルフ・ラングレンが一言も話さずに描かれるだけでも十二分に伝わってくるドラゴ親子の現状はまさに哀愁の一言。

一方でアドニス・クリードはコンラン戦後に破竹の7連勝を飾り、見事にアポロ・クリードやロッキー・バルボアが手にしたヘビー級チャンプになるも、そこに至るまでの感動は全くない。
そう、この映画で重要なことは前作で我々が期待したアドニス・クリードがチャンプになることではない。さらにその先にあるドラゴ親子との因縁の対決でしかないのだ。

だからこそ、アドニスがチャンプになる姿で感動を覚えたかった身には少々不満も残る前半なうえに、当の新チャンプは自らの力量に溺れ、安易な選択をした結果、挑戦者ヴィクターに打ちのめされてしまう。
まるで『ロッキー3』のクラバー・ラングとの対戦で自信を喪失したロッキーのように、挑戦者が失格にならなければ王座を奪還されていたアドニスは、もうすぐ父親になる身にも関わらず、弱気なチャンプになってしまう。

だがかつて弱気になったロッキーを鼓舞したのがアポロだったように、今度はロッキーがアドニスを鼓舞する。新たな家族を築こうとする若者に、自らの家族関係を見つめ直した元チャンプが現チャンプに再戦の後押しをする。かつて親友が自分を鍛えてくれたカリフォルニアの地で。

ただ宿敵のヴィクターは、父親イワンを見捨てたロシア政府と、政府高官の妻に成り下がった母親ルドミラを憎む重量級のボクサー。これまで数々の敵を4ラウンド以内で倒してきた無敵の挑戦者。

そんな強敵に対し、アドニスは家族のために戦う。妻ビアンカや娘アマーラのために、母メアリー・アンのために、亡き父アポロのために、そして家族同然のロッキーのために。
だから彼は何度ダウンしても立ち上がる。再び肋骨を骨折しようとも立ち上がる。チャンプとして戦うのではなく、一人の男として、一人のボクサーとして、アポロ・クリードとロッキー・バルボアの魂を受け継ぐ者として。

対して予想を覆す接戦に戸惑うヴィクターに失望した母親ルドミラが会場から去って行く。その姿に元夫のイワンも心苦しさを隠せない。再び母親に見捨てられたヴィクターも動揺を隠せない。いったい俺たちは何のために戦ってきたのかと自問自答せざるを得ないが如くに。
そんなイワンがタオルを投げ込むシーンがとてつもなく切ない。母国と妻に裏切られた自分と同じ道を息子が歩もうとしている現実に、父親として精一杯の決断がとてつもなく切ない。

けれどそれはロッキーやイワンの時代が終わりを告げた証拠。ロッキーがアドニスに「お前の時代だ」と言ったように、老兵が去る時が来ただけのこと。

確かに帽子を被り直すロッキーの後ろ姿は凄く淋しい。イワンがヴィクターをなだめる姿も淋しい。

でも脚本をも担当したシルベスター・スタローンは分かっている。老兵は去って終わるのではない。若者の背中を押すために後ろに下がるだけだということを。

それが3つの家族の歩む道を描くことで示されている。
ヴィクターの隣でトレーニングのために走るイワン。難聴の娘を育てていくと決意したアドニスから報告を受けるアポロ。そして疎遠になった息子ロバートに会いに行ったロッキー。

もう『ロッキー』シリーズは見れない。けれど『クリード』シリーズはもう既に始まっている。
3人の老兵ボクサーが無言でそう語っているラストがずっと心に残る。

深夜らじお@の映画館は「アイ・オブ・ザ・タイガー」も劇中で聴きたかったです。

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2019年01月07日

第76回ゴールデングローブ賞

アカデミー最大の前哨戦と言われる、アメリカに住む外国人記者が選ぶ第76回ゴールデングローブ賞の授賞式が行われ、例年に比べると特に大きなサプライズもない結果に終わりました。
では受賞結果はイカの通りでゲソ。

【作品賞ドラマ部門】
『ボヘミアン・ラプソディ』

【作品賞ミュージカル・コメディ部門】
『グリーンブック』

【監督賞】
アルフォンソ・キュアロン『ROMA/ローマ』

【主演男優賞ドラマ部門】
ラミ・マレック『ボヘミアン・ラプソディ』

【主演女優賞ドラマ部門】
グレン・クローズ『天才作家の妻-40年目の真実-』

【主演男優賞ミュージカル部門】
クリスチャン・ベイル『バイス』

【主演女優賞ミュージカル部門】
オリヴィア・コールマン『女王陛下のお気に入り』

【助演男優賞】
マハーシャ・アリ『グリーンブック』

【助演女優賞】
レジーナ・キング『ビール・ストリートの恋人たち』

【脚本賞】
『グリーンブック』

【作曲賞】
『ファースト・マン』

【主題歌賞】
『アリー/スター誕生』

【アニメ作品賞】
『スパイダーマン:スパイダーバース』

【外国語映画賞】
『ROMA/ローマ』(メキシコ)

アメリカ国内の評価がどうであれ、外国人記者が選ぶ賞であることが授賞結果で強調されつつあるこのゴールデングローブ賞。
監督交代劇があっても作品賞を受賞する作品があれば、実力者監督が3度目のオスカー受賞に向けて準備を整えつつあるなど、まさかという結果が今回は特にないんですよね。

しかも『ROMA/ローマ』はNY批評家協会賞及びLA批評家協会賞で作品賞を、監督賞に至ってはこの2つの批評家協会賞に加え全米批評家協会賞でも受賞していることから、もはや3度目は確実かと。
個人的にはあのファレリー兄弟のお兄ちゃんに『ブラック・クランズマン』で受賞して欲しいんですけどね。

あと上記の3つの批評家協会賞で主演男優賞を受賞したイーサン・ホークがオスカーレースでノミネートされるかどうかで残り枠の関係から『ボヘミアン・ラプソディ』がどこまでオスカーレースでノミネートされるかも楽しみですね。

れたLA批評家協会賞でも作品賞を受賞していただけに、再びオスカーを獲るのでは?その前哨戦として、このゴールデングローブ賞でどう評価されるのかが楽しみです。

ただその前に『ROMA/ローマ』を映画館で見たいのですが、それは叶わぬ夢なのでしょうかね。やっぱりNetflixじゃなきゃダメ?

深夜らじお@の映画館は基本的に映画は映画館で見たいです。

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2019年01月04日

1月戦線映画あり!

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
正月3ヶ日は仕事ということもありまして、実は今日が唯一の正月休み。なのに、世間は今日から仕事始め。
まるで学生時代の文化祭で、委員会の仕事を急いで終わらせてクラスの打ち上げに参加しようと思ったら既に終わっており、気を利かせてくれた友人が残してくれた飲食物を打ち上げの残り香が消えていくなかで食べるような、本当に心が淋しくなる一日でした。
しかも初詣で引いたおみくじは半吉で「何事も待て」と書かれているにも関わらず、待ち人の項目だけは「来ず」ってどないやねん!ですよ。

てな訳でそんな2019年は前向きに生きてやる!待つところは待って、他は攻めにいってやる!と思えた1月の注目作をピックアップです。

【1/5〜】
●『迫り来る嵐』
1997年を舞台にした中国で連続殺人犯を捕まえようとする男のサスペンス。

【1/11〜】
●『クリード 炎の宿敵』
『ロッキー4』の続きが、まさか息子同士の対決で見れるなんて!
●『蜘蛛の巣を払う女』
「ミレニアム」シリーズ、まさかの第4作目を映画化!

【1/12〜】
●『未来を乗り換えた男』
クリスティアン・ペッツォルト監督、最新作。

【1/18〜】
●『ミスター・ガラス』
『アンブレイカブル』『スプリット』そしてM・ナイト・シャマランが復活するのか…。

【1/19〜】
●『バハールの涙』
イスラム国に抗った女性たちの物語。

【1/25〜】
●『サスペリア』
イタリアの傑作ホラーのリメイク。
●『二階堂家物語』
なら国際映画祭映画制作プロジェクト作品。
●『ナチス第三の男』
ラインハルト・ハイドリヒ。ナチスで最も危険な男に迫る。


てな訳で1月の注目作は
『クリード 炎の宿敵』
『ミスター・ガラス』
『蜘蛛の巣を払う女』

深夜らじお@の映画館は1月も見たい映画が少なすぎて困ってます。

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acideigakan at 23:40|PermalinkComments(2)clip!映画予告編 

2018年12月31日

2018年のベスト10です。

本当に世の中の映画は多すぎて全部見れない!でしょ?新聞の評論も多すぎて読めない!でも本当に面白い映画を見ると…世界は変わる。大きく成長しちゃうんです。
私も世界が変わりました♪凄い♪今ではしっかりホラーも見れる。そんなことを痛感した2018年。

世界の高度な才能たちが撮りました…何て広い視野なんだ…と驚く作品も多い一方で、ハーヴェイ・ワインスタインが訴追されてる…長時間掛けても進展がない…とばかりに、ハリウッドのセクハラ騒動が収まる様子もないものの、ちょっと見てきてくださいね♪きゃっ♪凄い!この面白さ、さすがメイド・イン・ジャパン!なアニメ作品も多く、改めて、凄いぜ!ハズキルーペ1本分で映画が5本以上見れる!映画、大好き♪と思った平成最後の年末でした。

さてそんな2018年を振り返り、樹木希林やスタン・リー、菅井きん、浅利慶太代表、高畑勲監督、左とん平、大杉漣、ミロシュ・フォアマン監督、加藤剛、バート・レイノルズ、ベルナルド・ベルトルッチ監督など様々な旅立たれた才能にも敬意を表し、総決算として年末最後の恒例企画であるベスト10を発表したいところなんですが、今年は面白い映画が多すぎたので、久しぶりにベスト20を発表させていただきます。


1位『パンとバスと2度目のハツコイ』
自分だけが知っているステキなことを誰かに伝えたい。それがどうしたらいいんだぁ〜!に対する答え。何も起こらないけれど、ごくありふれた日常風景に潜むステキな時間を丁寧に描いた可愛らしいラブストーリー。あぁ、何度でも見たくなる♪

2位『万引き家族』
安藤サクラと樹木希林。私生活でも母親でもある2人の女優を通して、家族が本来持つべき大切なものを描く。それこそがみんなで楽しんだ思い出と、相手を思い遣る慈しみの笑顔だ。

3位『カメラを止めるな!』
冒頭からの37分に及ぶ素人演出のゾンビ映画。でも視点を変えると、そこには映画に対する愛と映画界に対する皮肉が詰まっている。張りに張られた伏線が笑いと感動の涙を誘う。ぽん!

4位『ぼくの名前はズッキーニ』
これは大人が絶対に忘れてはならない愛が詰まったストップモーションアニメ。警官とヒーローが抱き合い、「俺たちのために」という言葉に涙が止まらない優しさに満ち溢れた物語。玄関先で撮った写真は間違いなく「家族写真」だ。

5位『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』
学歴はカネで買えるのか?という問いに天才少女がスリリングなカンニングビジネスで挑む。だがその危険なビジネスは割に合うのか?という問いには恐怖と罪悪感しか答えを出してくれない。本当の意味での勝ち組は、負け犬は誰だ?

6位『判決、ふたつの希望』
憎しみ合いの歴史から抜け出すために必要なふたつの希望。相手の痛みと気持ちを知った者だけが辿り着いたひとつの未来。謝罪が礼儀の一部になる社会を待つこのレバノン映画が世界に語り掛けている。

7位『リズと青い鳥』
明るく活発なフルートと物静かなオーボエが「愛ゆえの決断」をする。ずっとずっと一緒にはいられない現実を受け入れ、一方的な依存を解消するために。本当に大切だからこそ、その握った手を解くために。

8位『シェイプ・オブ・ウォーター』
忘れたくても忘れることが出来ない、甘美で切ない愛の物語。半魚人との愛を選んだ彼女は幸せになったと信じたい大人のラブストーリー。ビターなのにロマンティックなダークファンタジーこそ、ギレルモ・デル・トロの世界だ。

9位『若おかみは小学生!』
女子児童向けのタイトルに騙されるな!これは大人が見るべきマッドハウス作品だ!そして涙を流しながら見終わると、つい思ってしまう。このタイトル、何とかならなかったのかと…。

10位『教誨師』
大杉漣、最初のプロデュース作にて、最後の主演作が問い掛ける。なぜ生きるのか。なぜ死なないのか。5人の死刑囚と1人の牧師を通して問い掛ける。死を目の前にした者が最後に囁いた言葉は何だったのかと。

11位『ナチュラルウーマン』
私らしく、私を生きる。トランスジェンダーの物語を本当のトランスジェンダーが演じ切る。誰も彼を男としては見ない。間違いなく彼女は女優だ。オスカーに輝いたチリ映画がそう語っている。

12位『エンジェル、見えない恋人』
君の目が見えるようになったら、僕は消えてしまう。透明人間として生まれた男の視点と、盲目だった少女の恋心で描かれる、小さな恋のメロディー。愛は見えないけれど、様々な形で描くことで見ることが出来るのです。

13位『ブリグズビー・ベア』
好きを諦めるな!VHSテープで25巻・全736話からなるクマの冒険に詰められた愛に気付いた時、誰もが思うはずだ。ジェームズが作り上げた「劇場版ブリグズビー・ベア」を見たい!と。

14位『女は二度決断する』
法で裁けぬ現実に、小鳥と生理が一人の女性に、妻に、母親に自問自答を投げ掛ける。そして下した彼女の決断。それは見る人の価値観によって評価が分かれるが、それを受け入れる世界を彼女は求めていたことを忘れてはならない。

15位『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』
あの光州事件を世界に知らしめたのは、平凡で無力な市民たちの人間として持つべき勇気と使命感。あの日、人として選んだ道が海を越え、時を越え、世界に愛を語り掛けている。

16位『スリー・ビルボード』
ミズーリの片田舎に掲げられた3枚の看板がアメリカの理想を問い掛ける。憎しみ合うことがアメリカらしいのか、それとも愛し合うことがアメリカらしいのかと。サム・ロックウェルのオスカー受賞に改めて万歳!

17位『パッドマン 5億人の女性を救った男』
世界中の男性必見!本当に格好いい男とは、愛する女のためにここまで信念を貫くことだ!スーパーマンよりも、スパイダーマンよりも、実在するパッドマンこそが真のスーパーヒーローだ!

18位『ブラックパンサー』
ワカンダ王国のQ・助・格の活躍をもっと見たい!陛下の活躍よりも見たい!だからあえて私も言おう…。ワカンダ・フォーエバー!

19位『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』
続編『エンドゲーム』でホーク・アイが帰ってくるよ!アントマンも帰ってくるよ!みんな帰ってきてよ!私たちは2019年4月26日公開まで待てないよ!

20位『ランペイジ 巨獣大乱闘』
世界よ、これが新しいバカ映画だ!怪獣愛に溢れたバカ映画を撮りたいのなら、是非ザ・ロック様を主役に添えたまえ!

今年は本当に様々な国の映画を見た一年でした。フランス、タイ、レバノン、チリ、ドイツ、韓国、インド、そしてアメリカ、日本。
その他にもセネガル、ハンガリー、イギリス、キルギス、ロシア、スウェーデン。改めて振り返ってみると、文化が違うと映画もこうも面白く変化するものなのかと思わされた一年でした。

てな訳で今年も多くの方に支えていただき、本当にありがとうございました。来年もまた「本当に面白い映画を見ると…世界は変わる」と思える一年を過ごしましょう。

それではみなさん、良いお年を。

深夜らじお@の映画館は2019年、平成が終わり改元されると40代に突入してしまいます。

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2018年12月30日

2018年のワースト10です。

本当に世の中の文字は小さすぎて読めない!一方で、私は平成最後のワースト10が作れない!
あぁ、このままでは「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに叱られてしまう…。

もちろん「やらなきゃ意味ないよ」「自己責任です」「そだねー」など、様々なご意見はあると思います。

でも面白くない映画を避けてきた成果が出ちゃったんですもんと思いながらも選んでいくと、やっぱり10本ほど「ひょっこり」と出てくるんですよね。

てな訳でそんな2018年を振り返り、毎年恒例となっております今年のベスト10を発表する前に今年のワースト10を発表したいと思います。

1位『パシフィック・リム:アップライジング』
ヲタク魂を持たぬ「にわか」が作るべきではなかった。ギレルモ・デル・トロのような才能以外が作るべきではなかった。だからロボットと人型巨大兵器の違いも描かれていない。日本に対する敬意も描かれていないのだ。

2位『キングスマン:ゴールデン・サークル』
なぜマーリンを葬らねばならなかったのか?なぜウィスキーが当たり障りのない理由での裏切者になってしまったのか?詰め込みすぎの代償は、大切なことを描くことを忘れてしまうという悲しき結末。エルトン・ジョンにマーク・ストロングの代わりは務まりませんよ!

3位『イコライザー2』
デンゼル・ワシントン、アメリカのムコ殿をやめてしまう!必殺仕事人のような銃火器や刀剣を始めとする武器に頼らぬ面白さが、銃に頼りっぱなしの単なるアクション映画に成り下がってしまうとは…。

4位『未来のミライ』
未来の細田守監督は、我々が望む映像作家に戻ったお姿か、それとも構成下手な脚本に固執したお姿か。ミライちゃんの蛇足なナレーションなどいらない。我らが細田守監督なら、ここぞというシーンは映像だけで勝負してくれ!

5位『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
ドラマ向きのロン・ハワード監督にはやはり畑違いでしかなかったのか。もっと冒険譚を見たかったのに、なぜこんなにも大人しい映画に収まってしまったのか。もっと冒険しようぜ!

6位『マンマ・ミーア!ヒア・ウィ・ゴー』
10年ぶりの続編だったのに、やはりメリル・ストリープ姐さんがいないと映画が締まらない。盛り上がらない。楽しくもない。本当に女優メリル・ストリープって、存在感からして凄い!

7位『羊と鋼の森』
原作がそうなのか、それとも映画化したらそうなったのか。同じく本屋大賞を受賞した『舟を編む』と同じ展開で、同じ印象しか残らなかった。二番煎じで作られた訳ではなかったのに…。

8位『オンリー・ザ・ブレイブ』
感動的な史実をどう描くかは、映画を作るうえでの永遠の問題。時にベタに、時にネタバレ構成で描くのもいいのに、最後に観客を驚かせたかったのかなぁ。そこに拘らなくてもいいのに。

9位『空飛ぶタイヤ』
何でこの作品を120分で描こうとしますの?池井戸潤作品はもっと長い時間で描くか、もっとベタに熱い演出で描くかしないと、その面白さは伝わらないでしょう!せめて180分、もしくは前後編に分けて描くべき作品ですよ!

10位『アリー/スター誕生』
「This is Me」や「ボヘミアン・ラプソディ」と比べても「シャロウ」が映画音楽として印象に残らない。音楽映画としても恋愛映画としても立ち位置が微妙だったのか。もっとレディー・ガガの歌唱力に頼っても良かったのではないか?

毎年のことですが、やはり続編に不評多しなのが映画ファンあるある。今年もそんなあるあるが多かった一方で、上映時間をもう少し長くしたり、構成をちょっと変えれば、もっと面白い映画になっていたのに…と思える作品も多かったこと。私のレビューでも何度「勿体無い」というフレーズを使い回したことか。

改元される2019年はそんなことがない一年でありますように…。

深夜らじお@の映画館は今年のベスト10は明日発表です。

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2018年12月28日

『ブリグズビー・ベア』

ブリグズビー・ベアブリグズビー・ベアが教えてくれた。好きを諦めるな!
誰か、お願い!この劇中で上映された「ブリグズビー・ベア」を映画館で上映してくれ!私も是非見たい!是非感動したい!是非クマに魅了されたい!
これこそ、私たちの人生に必要な愛の詰まった物語と希望の象徴となるヒーローが映画賛歌と共に描かれた愛すべき作品だ!

クマが冒険をする教育番組「ブリグズビー・ベア」だけを見て育ったジェームズは、実は赤ん坊の頃に誘拐され、世間から隔離されながら偽両親にシェルターの中で育てられた25歳の青年。
本当の家族との再会も、社会復帰を目指す新たな生活もぎこちないが、だがジェームズにとって大事なことは心の拠り所であり、人生の教訓から生き方までを教えてくれた番組の続きを見ることだけ。

ところがこのVHSテープで25巻・全736話からなる「ブリグズビー・ベア」という教育番組は、実は偽父親のマーク・ハミルがジェームズのためだけに作り上げた偽番組。もちろんジェームズ以外に視聴者は誰もいない。存在も知らない。

けれど「ブリグズビー・ベア」最優先のジェームズにとって、偽番組であることよりも続きが見れないことが大問題だからこそ決意してしまう。その壮大なる「ブリグズビー・ベア」愛で決めてしまう。自分が続きを映画という形で作ろうと。

そこに映画製作を学ぶスペンサーが加わる。浮世離れしたジェームズを恥ずかしく思っていた妹のオーブリーが加わる。優しいヴォーゲル刑事が加わる。みんな「ブリグズビー・ベア」を見て、その面白さとジェームズの想いに共感して。

本来なら本当の両親が当初懸念していたように誘拐犯が作った番組など見たくもないし、また我が子にも見せたくない。
でも偽物ながらもジェームズへの愛が詰まったこの「ブリグズビー・ベア」は間違いなく子供に見せたい番組であり、大人になっても見ていたいと思える番組なのだろう。愛の意味をストレートに教えてくれる、ある意味本物の教育番組なのだろう。

だからこそ、誰もがジェームズの壮大なる夢に協力してくれる。「好きを諦めるなんて…」と言われたヴォーゲル刑事のように、もう一度自分の「好き」にとことん向き合ってくれる。我が子の活気溢れる表情を見た本物両親のように家族全員で助けてくれる。偽父親のマーク・ハミルも刑務所での面会でナレーションを担当してくれる。愛しのアリエルも悩んだ末に協力してくれる。

なぜなら誰だって「好きなこと」に向き合っている時間が一番楽しいということを知っているから。「好きなこと」に向き合っている時が一番いい顔をしていることを知っているから。「ブリグズビー・ベア」を見てそのことに気付かされたから。

そんな様々な愛が詰まった「劇場版ブリグズビー・ベア」は、映画ファンのみならず、この作品に感動した方なら誰もが見てみたくなる逸品だろう。

ジェームズが社会復帰することは大切だが、その方法に決まりなどない。セラピストの意に反したために精神病棟に入所させられる方法よりも、「好きなことに」打ち込むことがセラピーとして十二分に効果を発揮していることを映画という形で証明してくれた「ブリグズビー・ベア」。

劇場版がダメなら、736話全てとは言いませぬ。選ばれし数話だけでも、NHKあたりで放映してくれないかなぁ〜。

深夜らじお@の映画館が幼少の頃は「じゃじゃまる、ぴっころ、ぽろり」の「にこにこぷん」を見ていました。

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2018年12月25日

『弧狼の血』

弧狼の血正義とは何じゃい!
これぞ東映ヤクザ映画だ。これぞ広島ヤクザの映画だ。ヤクザの抗争と警察組織の腐敗、剛腕な叩き上げ刑事と法の正義を守ろうとする新米刑事、そして形だけの正義と本当の意味での正義。
正義とは何じゃい?という質問に当たり障りの答えなどいらない。己の信念が汗と血を流して出した答えが必要なのだ。

広島・呉原東署の刑事二課の大上は、「警察なら何やってもいいんじゃ」という言葉を楯に、まるでヤクザのような傍若無人な刑事だ。相談に来た若い女性とヨロシクやっちゃうわ、パチンコに興じるわ、チンピラを罠に嵌めて脅しては情報を引き出すわ、証拠確保のためボヤ騒ぎを起こすわ、ヤクザの手下から丁重に扱われたり、捜査費と銘打って金を懐に入れたりと、やりたい放題。

そんな大上と組まされた広島大出身のエリート新人刑事でもある日岡からすれば、この叩き上げ刑事の手法は違法でしかあらず、でも地元ヤクザ・尾谷組と新興勢力・五十子会系加古村組の抗争を寸止めしている手腕は認めざるを得ない、まさに何とも言えぬ存在。

広島県警の内偵でもある日岡にとって大上という違法刑事は処分すべき存在だが、証拠が集まらないから動くに動けない。
反対に大上は証拠がなければ作ればいいと、あらゆる方法で証拠を搔き集めるため、動くに動く。時に梨子ママでさえも美人局に使い、違法行為であってもチンピラの体内から真珠を取り出すことで証言を得るのだから、その行動力は凄まじいの一言。

けれど、なぜかそんな大上の人望は厚い。梨子ママだけでなく、五十子会系に属する銀次からも親友と認められるほどであり、尾谷組の若頭・一之瀬も五十子会系の親玉・五十子も大上に丸暴の刑事以上の理由で一目を置いている。

ただこの映画にはその「丸暴の刑事以上の理由」を観客に考えさせるだけの時間を与えてはくれていないのが勿体ないところだが、でも後半になってから判明する大上の真の姿を知ると、これが『トレーニング・デイ』のようでそうではない、我が身を犠牲にしてもヤクザの抗争から堅気を守ろうと手段を選ばぬ叩き上げ刑事の男気を描いた、まさに懐かしき東映ヤクザ映画らしさが息づいていることに気付く。

だからこそ、日岡が大上が遺したノートを見て変わっていく姿に不思議と「成長」を感じてしまう。法の正義を唱えていた若き刑事が、己が体験して辿り着いた正義に則って動く姿に、不思議と応援したくなる気持ちが湧いてくる。

銀次の協力を得て新年会の席で尾谷組・一之瀬を裏から招き入れて五十子を始末させるだけでなく、身代わりを用意した一之瀬自身を現行犯逮捕することでヤクザの抗争を最小限に抑える。ヤクザを撲滅させることは出来ないと分かったからこそ、飼い殺しにする。

もちろん殺された大上の弔いの意味もあっただろうが、それ以上に大上の正義を理解し、自分の正義へ変えた日岡が内偵上司の嵯峨をも脅しに掛かるその昭和な男前っぷりに、不思議と「久しぶりに東映映画を見た〜!」という気持ちにもさせてくれるのだから、この映画は素晴らしいとしか言い様がない。

そして昭和63年という暴対法施行直前の時代だからこそ存在出来たこの叩き上げになっていく新米刑事をもっと見たい、いや見続けたいとも思えた。もちろん白石和彌監督の手腕と、役所広司の面影付きで。

深夜らじお@の映画館は30代最後のクリスマスでこんな東映ヤクザ映画を見ました。

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