2016年05月28日

『エンド・オブ・キングダム』

エンド・オブ・キングダムシューティングゲームを映画化しただけやん!
前作の面白ささえも台無しにするほどに、何て酷い脚本なんだ!何て大雑把なアクションなんだ!だから何て酷い映画なんだ!
アントン・フークワ監督が携わらなくなった途端にこの酷さ。まるで違う企画を無理矢理このシリーズに嵌め込んだような酷さは今年のワースト級だ!

ツッコミところは多々あれど、アンチ・コリア精神と『ダイ・ハード』のような面白さが素晴らしかった前作での最大の功労者でもある、リアルなアクションシーンを撮らせれば右に出る者がいないアントン・フークワ監督が外れたことが大きな不安要素でもあったこの作品。

その不安要素が顔を見せ始めたのがイギリス首相の国葬に集まったG7の首脳たちの扱いの酷さ。
群衆を前にしてもドイツ首相と護衛の距離が離れている、小舟で職務に励むフランス大統領の後頭部はガラ空き、ベルルスコーニよろしく愛人とロンドン観光のイタリア首相はどうでもいいとして、カナダ首相はあり得ない警備で殺される、日本の首相に至っては護衛が運転手一人だけで渋滞に巻き込まれているという、別に伊勢志摩サミット直後だからという理由じゃなくても、こんな警備はありえへんやろうのオンパレード。

しかもアクションが始まれば、近衛兵が裏切者部隊ってありえへんやろ!どころか、どれだけロンドン警視庁の現場警備の中に裏切者がおるねん!というくらいに主人公たちが四面楚歌状態に陥れば、各国の首脳が集まるのに周辺の安全調査も全然してへんやん!とばかりにあちらこちらで連続爆破。
さらにアメリカ大統領が護衛車もなしに逃げても誰も助けに来なければ、アメリカ大統領専用ヘリが襲撃・墜落しても、それでも誰も助けに来ないって、イギリスの警察どころか軍隊も何してんねん!この国にはロンドン警視庁しかおらへんのか?状態。

これだけで終わればまだしも、次に記者会見でイギリスの後任首相が事件解決を約束しておきながら、ロンドン警視庁の特別捜査班はなぜかアメリカ副大統領の命令に従おうとする有り様。
イギリスの警察や軍隊だけでなく首相や政府要人まで事件が起こると全員揃って行方不明になるのか?という、あまりにもあり得ない状況に絶句もオンパレード。

加えてアメリカ政府が発見した首謀者バルカウィのミスが無人の建築現場で使われている電気代が膨大だって、そんなことも見抜けないロンドン警視庁って意味を為してないやん!
なのに、ここに来て特殊部隊を派遣するって、軍隊がおるならアメリカ大統領が拉致される前に派遣しなはれよ!危機管理能力ゼロどころではない、本当に夢想家の小学生が書いたような脚本がよく企画会議で通ったな!と怒りも爆発寸前。

そして肝心のアクションに関しても、いくら大統領を守るためとはいえ、マイク・バニングが敵を殺す手段、特にナイフで何度も刺すシーンが結構えげつないというか、そこまでやらんでええやろ…と思えるレベルまでやってしまっているんですよね。
しかもクライマックスの銃撃戦も何かシューティングゲームっぽい映像で、これはこれで面白いのかも知れませんが、前作を担当したアントン・フークワ監督のリアルさを感じさせるアクションと比べるとやはり見劣りしてしまうのは否めないこと。

結局、全く違う企画だった話を無理矢理このシリーズに嵌め込んだかのように、全く細部まで考えられていない幼稚な脚本と、リアルもゲームも同じアクションには違いないと思い込んでいる才能によって、見事にダメダメな作品として完成してしまったのがこの映画なのでしょう。
見終る前に今年のワースト10への選出が決定してしまいました。

深夜らじお@の映画館はこんな幼稚な企画が通る会議に参加している人たちの給与が知りたいです。大した仕事もせずにナンボもらってるねん!

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2016年05月21日

『海よりもまだ深く』

海よりもまだ深く家族の愛は海よりもまだ深く。
過去にしがみついてしまう男は決してダメ男なんかじゃない。大器晩成型なだけ。
ただいつも9回2アウト一発逆転のチャンスにネクストサークルで打順が回ってくるのを待っているのが男の人生観なら、チャンスが来るのを信じて応援席から離れようとしないのが女の人生観。
家族はそんな男と女の集まりだ。

男にとって過去の栄光とは何か。15年前に受賞した文学賞、惚れた女との結婚生活、可愛い息子との時間。
それらを失いたくないともがきながらも、きっと逆転するチャンスが来ると信じる姿は、婚歴の有無に関係なく、特に家族からの無言のプレッシャーを日々静かに感じながら生きる長男という立場にいる男性なら誰しも共感を覚えては愛おしくなるもの。

今を愛して生きる女性とは違い、男は常に夢を見る生き物。しかも次男や三男とは違い、長男は常に未経験が要領を得ない結果を招くという辛さを何度も味わっているのに両親の世話という未来の不安にも向き合わされる気楽とは無縁の立場。

そんな立場だからこそ誰かに甘えたくなる。でも甘えられるのは家族という近親者のみ。
一方で長男という経験が誰かにとって甘えてもらえる存在でいようと無意識に動く。だからこそ年下や後輩には慕われる。長男とはいつもそんな状況下に置かれているのだ。

だからこそ、とにかく「あれ」が随所に登場するのに意思疎通が行われている会話が、良多と話す相手との距離が凄く近いことの現れ、つまりは良多を嫌っている人がいないことの現れであるように、篠田家の長男である良多は誰からも認められ慕われている。

老いた母が「誰かの役には立っている」と息子を認め、小言の多い姉が弟の性格を読んで隠していた通帳をダンボールの切れ端に変え、別れた妻が新しい恋人にも元夫の書いた本の批評に期待を寄せる表情をちらりと見せ、興信所の後輩が嫌がらずに何度も付き合いに応じてくれ、ホームランを狙わない息子が常に父親の財布事情を心配する。
ただ金銭的事情、亡き父親との関係、長男としてのプレッシャーが良多から覚悟を決める場を奪い、大器晩成型にしているだけという現状が苦々しいだけ。それさえなければ、全て上手くいくのにと思ってしまう現状が悔しいだけ。

本来なら過去に上塗りして覚悟を決められる女性のようになれれば、長男という立場でさえなければ、どんな男も不安もプレッシャーもなく前に進めるはず。
でも立場上それが出来ない男たちが前に進むためには背中を押してくれる存在が必要なのに、それが家族でもじっくりと話す時間がないと理解してもらえないのが辛いところ。

だからこそ、テレサ・テンの「別れの予感」を聞きながら香炉の掃除をする良多が母親の話を聞くくだりは、覚悟を決められず生きている情けなさと親の期待通りではない申し訳なさという2つの無力感を、自分が味わった嫌な経験を若人にはさせたくないという優しさに変化させ、台風の夜に息子を公園のタコ型遊具に誘い出すくだりがとても愛おしい。

自分が元妻の足枷になっているのは男としてのプライドが許さない。けれど他の男に元妻を取られるのも男としてのプライドが許さない。
でも本当に覚悟を決めた時、男としてのプライドが許さないのはどちらの方だろうか。無論、前者だろう。ならば男として、父親として、元妻や息子に何を残してあげることが無力感を優しさに変換させることになるのか。

その答えが家族3人で暴風雨のなか、飛ばされた宝くじを拾い集めること。きっと何年後かには3人で「台風の日にあれしたよな、あれ」で会話が成立する、傍から見ればどうでもいいことでも家族にとっては大切な思い出を作るということ。
そんな不器用ながらも愛に満ち溢れた3人家族の姿に思わず涙がこぼれてしまう。自分も家族の思い出を振り返りながら涙を流してしまう。

台風が過ぎ去り、前を向く覚悟を決めた良多が元妻に養育費の支払いを、息子には来月の面会を約束して別れるラストでは、是枝裕和監督は良多の背中をいつまでも追いかけはしない。
ただ駅前を行き交う多くの人たちを映し出す。きっと良多と同じように悩み、覚悟を決められずにもがき、それでも一発逆転のチャンスを信じ、自分にとっての幸せを掴み取ろうという夢だけは諦めてはいないであろう、子供の頃夢見た大人にはなれなかった数多の人たちに愛を込めて。

深夜らじお@の映画館は雰囲気で死を感じさせ、映像で食という生を感じさせる是枝裕和監督の演出が大好きです。

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2016年05月15日

『ヘイル、シーザー!』

ヘイル、シーザー!往年のハリウッド映画へ愛を込めて。
これはいくらコーエン好きでも睡魔に襲われる作品です。理由は明確。往年のハリウッド映画に対する知識や愛がなければ楽しむことが難しいというハードルの高い作品なのですから。
出来ればそのような知識がなくても楽しめるブラックコメディに仕立て上げて欲しかった…。

コーエン兄弟作品での重要キーワードである「誘拐」が久しぶりに物語の中心に来るかと思いきや、「誘拐」はさほど重要キーワードですらなかったこの作品。
そもそも基本的にオムニバスタイプであるこの作品は、エディ・マニックスという何でも屋が物語の主軸にいるものの、それぞれのエピソードが見事な絡みも化学反応も見せてくれないので、どこか面白味に欠けるんですよね。

しかもそれぞれのエピソードが往年のハリウッド映画に対する知識や愛がないと理解出来ないという、いわゆる説明を端折った作品なだけに、多くの観客は終始蚊帳の外状態。赤狩りの時代とはいえ、急に旧ソ連の潜水艦が登場したりされてもねぇ〜とか、女優の隠し子騒動で暗躍する便利屋がいたとか言われてもねぇ〜になってしまうこと。

さらにコーエン兄弟ならではのブラックコメディとしての完成度も低いので、本来なら笑えるはずのシーンも、上記のように往年のハリウッド映画に対する知識や愛という下地がない者には笑うに笑えないシーンになってしまうのも事実。
特にレイフ・ファインズとオールデン・エアエンライクとのセリフ回しに関するやりとりなんて、いつものコーエン作品なら笑えたはずなのに…。

元々コーエン作品は見る人を選ぶ傾向が強い作品が多いのですが、今回ばかりは下地がない者には厳しい作品でした。もっと映画の勉強をして、もっと映画愛を深めてから臨むべき作品だったのかも知れないですね。

ただこの作品を見て、コーエン好きとして言わせていただくなら、やっぱりコーエン兄弟のブラックコメディは『赤ちゃん泥棒』とか『ビッグ・リボウスキ』の方が面白かった。「誘拐」繋がりなら他にも『ファーゴ』とかも。
それらを振り返ると思うことは一つ。最近のコーエン作品にはお馴染みのコーエンファミリーがほとんど登場していない。スティーブ・ブシェミ、ジョン・グッドマン、ジョン・タトゥーロ、ジョン・ポリト、ピーター・ストーメアが懐かしい…。

深夜らじお@の映画館はコーエン・ファミリーが多数登場していた時代のコーエン作品が好きです。

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2016年05月14日

『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』

HK2変態仮面世界からパンティが消えたなら。
これはもはや「変態仮面」ではない。いやそれ以前に変態でもなければ、バカ映画でもない。やはり続編が歩む道は決まっていたのだ…と言いたいところだが、あえて言おう!
この堂々としたパクリ魂、もといパロディ魂には敬意と愛を込める価値がある!なのに、清水富美加はなぜ同じ轍を2度踏むのだ!

「覚えておけ。変態こそが正義であると」という格好いいセリフもなければ、多くの人が行き交う街中でスリングショット型ブリーフ姿で現れては被ったパンティが風に靡く様も一切見せてくれないこの続編は、やはり危惧した通りにパワーダウンしてしまった残念な作品。

ところがOPから色丞狂介が変態仮面活動に勤しんでしまったためにピザ配達バイト先から大目玉を喰らう、心の葛藤が原因でヒーロー活動に支障が出る、身近な友人が触手型好敵手になってしまう、無理な体勢から指輪ではなくパンティを掴み取ろうとするなど、明らかに『スパイダーマン2』そのまんまなシーンが多数登場。
終いにはJUMP AIRLINEに乗っては本場NYで本家さながらのビル群を飛び回り、日本の大学では地下鉄車両の代わりに体育館の屋根破片を身体とロープを張って受け止め、ヒーローの雄姿に感動した大学生たちに助け出され、ついに「僕たち誰にも言わないよ」が来るかと思えば見事にスカされ、最後はダイナソンとの戦いでついに「スパイダー編」と言っちゃった!という有り様。

しかもパンティが無数に空を飛ぶシーンは恐らくTVアニメ「そらのおとしもの」伝説の第2話そのまんまやん!というツッコミもあれば、情報番組「キネ屋」のMCが木根尚登やん!という驚きもあれば、巨大化した大金玉男の体内に侵入する変態仮面はウルトラマンセブンではなく完全にアントマンやん!という時代の流れに敏感なところもあるシーンにも失笑が続く続く。

そして前作の宿敵が変態仙人と同じ役者だというところには一切触れず、新品を妄想により使用済みへと進化させた変態仮面の成長ぶりを見せた後は、ドロンジョ様よろしく去っていく彩田教授に続編を匂わせ、かつ嫉妬する姫野愛子を追う色丞狂介の背中にはヴェノム!?『スパイダーマン3』までいただいちゃいますか!ですよ。

「変態仮面」の実写化は既に前作で終わり。今度はパロディ魂全開という潔さは、新境地開拓とばかりに怪演を見せてくれた柳楽優弥さん同様、逆に気持ち良かったですよ。

ただあまりにも残念だったのは、やはり清水富美加さんの新品パンティを履けば云々のくだりでのパンティの履き方及び脱ぎ方の甘さ。あの最後まで履かずに中途半端なところで脱ぎ始める酷さたるや、本当に何なんだ!あんなことで新品に匂いがつくと思っているのか!
前作の2枚履いてます的脱ぎ方に続き、またしても同じ轍を踏んでしまったヒロイン。エクスタシーを一から勉強して出直して来い!!

深夜らじお@の映画館は鈴木亮平さんの「愛子ちゃぁん!」という叫び方が大好きです。

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2016年05月10日

『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』

アイヒマン・ショー埋もれてはいけない歴史を映し出す。
1961年に全世界で放映された、ホロコーストに関与した元ナチス・ドイツ親衛隊中佐アドルフ・アイヒマンへの裁判、いわゆるアイヒマン裁判。
この人類史上初の裁判放送を通して描かれる罪。それは決してナチスが犯したものだけではない。事実を知らぬこともまた罪である。

アルゼンチンへと逃亡していたアドルフ・アイヒマンをモサドが捕らえたのは、アウシュヴィッツ収容所が解放された15年後の1960年。
しかし日本のヒロシマやナガサキの被爆者と同様に、この15年間でホロコーストの生き残りが同胞から受けてきた仕打ちはあまりにも残酷だ。

ホロコーストの事実を語れば、誰も信じてくれない。誰もが嘘だと言う。だから生き残った方々は次第に口を閉ざしてしまう。そんな悲劇が日本でもイスラエルでも平然と行われていた史実。

もしアイヒマン裁判が開廷されなかったら、もしこの裁判が放映されなかったら、果たして我々はホロコーストの史実どころか、ホロコーストという言葉さえ知らないまま生きていたかも知れない。
それはイスラエルから撮影監督として依頼を受けたレオ・フルヴィッツが危惧していた、誰もが時と場合が不幸にも合致すればナチスと同じ愚行を犯すことと同じ。歴史は繰り返されるのだから、特に信じられないような悲劇という史実を知らぬは大きな罪でもあるのだ。

ホテルの女将、ミセス・ランドーがレオに感謝の言葉を重ねたように、このアイヒマン裁判を全世界へと放映することは、生き残ったユダヤ人の使命でもある。そして史実を知ることはユダヤ人全員の使命であり、人類全員の使命でもある。

ただその使命は現実の恐ろしさを突きつけられたうえで果たさなければならない。何人もの証言者の話を何時間も聞く。信じられないような悲劇の話を信じられないほどの犠牲者が出た事実を胸に刻みながら聞く。話を聞いているだけで吐き気を感じるほどの事実を知らなかった自分と向き合いながら。

アドルフ・アイヒマンは殺人モンスターだったのか。アイヒマン裁判はそれを決める場だけであったのだろうか。
そもそもアドルフ・アイヒマンは単に仕事熱心な男だと思われる。ただその仕事内容に疑念を持たなかったことが恐ろしいというだけで。

そんな事実も我々はあの裁判を見るまでは誰も知らなかっただろう。誰もがアドルフ・アイヒマンのようになってしまうということも考えたこともなかっただろう。

その無知の恐ろしさを全世界へと伝えたアイヒマン裁判を映し出した男たち。彼らの行為は人類の宝であるが、この映画はその宝の価値をきちんと理解出来ていないため、どうしてもインパクトが弱い。どこを強調すべきかという強弱もない。それが残念でならない。

埋もれてはいけない歴史が埋もれようとしている。
存在していない歴史が埋もれずに地上に残ろうとしている。

まだあの世界に大きな悲劇を残した戦争が終わって100年も経っていないのに…。

深夜らじお@の映画館は歴史好きなので記録映像と共に見せてくれるシーンには好印象を持ちますが、そのシーンが映画全体にもたらす影響力の小ささが少々残念でした。

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2016年05月09日

『64-ロクヨン-前編』

64前編そこに心はあるのか。
何とも日本的な重さが心にずしりと残る映画だ。しかし何とも日本的な感動がじわじわと心に響く映画だ。
まだ事件の核心に迫っている訳ではないのに、それでも一本の映画として十分に成立しているこのクオリティーの高さ。これなら前後編に分けず、一本の映画として最後まで見せて欲しかった!

昭和元年と同じく7日間で幕を閉じた昭和64年。その7日間に起きた少女誘拐及び殺害事件はなぜ時効まであと1年と迫った平成14年になっても解決しないのか。
警察が無能だからか。マスコミが陛下崩御のニュースばかりで事件を報道してこなかったからか。犯人が狡猾だからか。それとも忘却が日常茶飯事となっている日本人らしく、もはや誰も関心を寄せなくなったからか。

日本には「事なかれ主義」という考え方がある。臨機応変に対応するために玉虫色をあえて作るのも、組織を守るために隠蔽工作するのも、どちらも「事なかれ主義」の為す業。
だが「事なかれ主義」には大前提がある。それは守るべき誰かを想い、守るべきものを考える「心」があってこその「事なかれ主義」だ。

雨宮漬物の一人娘が誘拐されたあの日。刑事部の三上が雨宮家に到着するまでに自宅班が犯人の声を録音出来なかったという失態を隠蔽したこと。
記者クラブが実名報道されぬ現状に抗議文を作成したあの日。怒りに身を任せ、三上広報官の話をよく聞きもせず、「警察は信用できない」と記者たちが連呼したこと。
そこに果たして「心」はあったのだろうか。

もし「心」があったというならば、なぜ失態の隠蔽を決めた漆原だけが警察署長の椅子に座り、幸田は仕事に困り、日吉は引き籠り、柿沼は無精髭を生やしているのか。
もし「心」があったというならば、なぜ記者たちは被害者が色弱だったということさえ取材出来ず、警察の情報隠蔽だけに怒りを表したのか。

責任者とは何か。上司とは何か。それは部下を有能に導く存在。ゆえに無能とレッテルを張られた部下の上には無能な上司しかいない。
マスコミとは何か。報道とは何か。それは真実の追求と選択肢の増加を担う存在。ゆえに決して正義の代行者ではないことを忘れてはならない。

昭和64年のあの7日間に取り残されている者はいったい何人いる。被害者遺族、事件を追う広報官、事件を忘れられない元警察関係者。果たして彼らだけだろうか。
逆にあの7日間に取り残されている今の警察幹部はいったい何人いる。恐らく誰もいないだろう。犯人もまたあの7日間に取り残されているという事実を知るまでは。

人が人を信じる時。それは言葉ではなく心で語る時。
一人で何もかも背負い込もうとする三上広報官を諏訪、蔵前、三雲の3人が心で語る。
一方的に敵と決めつけていた相手を信じた三上が記者たちの前で心で本音を語る。
行方不明の娘の気持ちさえ気付かなかったダメ親父の三上が心で引き籠った日吉に「君のせいじゃない」という手紙を渡す。

三上が被害者の霊前で涙したあの日から、遺族の雨宮芳男が心を開く。三上の心が動く。記者たちの心が変わる。この映画にようやく人の心が映し出される。
頭を下げる理由が謝罪だけでなく、感謝や敬意に変わった時、広報室と記者クラブの間に取材ボイコット取り下げという結果と共に心と言葉の交流が生まれる。

しかしまだ肝心の事件にはほんとど足を踏み入れていない。そんな状況下での新たなる誘拐事件の発生。その手口が「64事件」と酷似している現実。
「64事件」を知る全ての人間が再び昭和64年へと引き戻されるその先に何が待っているのか。それを後編公開まで待たねばならぬとは何とも酷な事か。

深夜らじお@の映画館も「心」で語ります。6月11日まで待てぬ!!

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2016年05月05日

『追憶の森』

追憶の森「ありがとう」と伝えたくて…。
何とも地味な映画です。青木ヶ原樹海でのお話とはいえ、本当に舞台劇のような俳優の演技力がモノを言う映画です。それゆえに映画的演出も少なさと大きな展開のない物語が見終わった後にさほど深みを感じさせてくれないのが少々残念にも思える映画です。
やはりこれは舞台向きのお話なのかも…。

片道切符で飛行機や新幹線を乗り継ぎ青木ヶ原樹海へとやってきた、少々風貌が乱れたアメリカ人男性のアーサー。妻宛に送られてきた小包を手に睡眠薬らしき薬を2錠飲んだところで出逢ったのが、両手が血塗れでふらついている日本人男性ナカムラ・タクミ。

まずこのナカムラ・タクミを演じる渡辺謙さんが登場してきた時点で、彼がこの世の人間でないことは容易に推測出来ます。もちろん当初は現世の人間という選択肢もありましたが、日本人サラリーマンがあそこまで流暢に英語を話されると、そこに現実味が消えてしまいますからね。

加えて妻の名前がキイロ、娘がフユってありえへんわ!とか、樹海で花が咲く時は魂があの世へ行く時などの説明が丁寧すぎ!とか、どう見ても樹海を数日も彷徨っている割には空腹のはずなのに冷静すぎるなど、現世の人間にしてはご都合主義すぎな部分も多かったんですよね。

ならば彼はどういう存在なのかと考えると選択肢は2つ。アーサーが喧嘩ばかりしていたけど本当に心から愛していたが今はもう亡くなった妻ジョーンに関係ある存在か、それともこの樹海で彷徨っているも偶然にもアーサーの想いとリンクして出逢うべくして出逢った存在か。

結果から言うと、恐らくこの作品で描かれているナカムラ・タクミは前者でしょう。アーサーが手掛かりだと思って書き残した「KIIRO、FUYU」が「黄色い冬」ではなく「黄色、冬」という妻ジョーンの好きな季節と色だとアーサーが理解するラストからも、恐らくジョーンの魂がナカムラ・タクミという形になって現れたということでしょう。

でも個人的には後者であって欲しかったのが正直なところ。
というのも、この作品ではなぜアーサーがわざわざ自殺場所に他国である青木ヶ原樹海を選んだのかという理由付けが弱いため、脳腫瘍の手術が無事成功するも救急車が交通事故で妻が他界したというショックから立ち直れない一人の男の心を救うために、妻の魂も太平洋を越えなければならないというのも、何だかなぁ〜って思っちゃうんですよね。
それならアメリカ国内で青木ヶ原樹海に似たような場所はあるでしょ!って思っちゃうんですもん。

だからこそ、アーサーの心もタクミの魂も救われたということになれば、ジョーンの夫を愛する心がアーサーとタクミという2人を出逢わせた、つまりアーサーはタクミと出逢うために青木ヶ原樹海へとやってきたという理由付けが完成するんですから。

てな訳でどんなに喧嘩をしようとも、「ありがとう」という言葉を伝えることが出来るのは相手がこの世にいる間だけ。そんなシンプルなテーマを伝えるためだけの映画にはやはり演技力のある俳優にしか務まらない。その中に渡辺謙さんがいるのは、同じ虎党日本人として何とも誇らしく思えるものでした。

深夜らじお@の映画館もお世話になった方々へは感謝の気持ちを伝えていくようにします。

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2016年05月04日

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』

シビル・ウォーヒーロー業界も船頭多くして船山に上る。
休む暇を与えないほど次から次へと繰り出されるアクションはどれも凄い。ただそのアクションとアクションを繋ぐドラマが結構薄い。ゆえにキャプテン・アメリカもアイアンマンも独りよがりのワガママ野郎にしか見えない。
アベンジャーズもジャスティス・リーグと大して変わりませんな。

キャプテン・アメリカのシリーズというよりも、もはや『アベンジャーズ2』の続編という要素がかなり強いこの作品。
何せキャプテン・アメリカとアイアンマンのダブル主演に近い構成のうえに、行方をくらませているソーとハルクの代わりに次から次へと超人が増える増える。
ファルコン、ローディ、ウィンター・ソルジャー、ヴィジョン、ワンダ、アントマン、ブラックパンサー、スパイダーマンに加え、ブラック・ウィドウにホークアイ。
もう豪華を超えて超過状態。これでは一人一人の見せ場が減るだけでなく、一人一人の魅力もどうにも薄まってしまうのが残念なところ。

加えて今回はジャスティス・リーグ誕生物語と同様に、ヒーロー活動で一般市民に犠牲が出ることについてヒーローたちの間で意見が分かれるというストーリーも薄っぺらい。
周りの犠牲は仕方ないという自警団から国連監視下の特殊部隊として動くかどうかという判断に関しても、トニー・スタークは友のことも考えて理知的に動いているにも関わらず、キャップは「俺のところは旧友バッキーのことがあって、少々複雑なんや」という言い訳をするだけで、そのバッキー対策についてトニーなどの仲間を頼らない独りよがりぶりがとにかく子供染みていること。

なのでキャップ派とスターク派に分かれての空港での大喧嘩もとにかく傍迷惑。しかも両陣営とも助っ人としてスパイダーマンやアントマンを招集しては、アントマン必殺の超巨大化にスターク派も隠し技大募集を発令するなど、冷静に見ると何と子供染みた喧嘩を大の大人が、しかも世界の命運を握っているヒーローがしているんだと情けなくなること。

ですからヴィジョンのビームも命中率が悪いのか、ファルコンが素早いのか、ローディのアイアンスーツには危険予測機能がついていなかったのかで起きるべくして起きたローディ墜落事件も、ある意味自業自得。

そんな子供染みた考えしか出来ない、しかも意思決定機能のないヒーロー集団だから、黒幕ジモ大佐に「アイツらが互いに殺し合いをすればいい」という安易で全く手の込んでいない作戦にまんまと引っ掛かるんですよね。
正直こんな幼稚な作戦に引っ掛かるヒーロー軍団はやはり国連という大人の監視下にいるべきですよ。

てな訳でトニー・スタークに必要があればいつでも呼んでくれという手紙を出すキャップは法律上では犯罪者なのにちょっと上から目線過ぎないか?とか、やっと足を洗ったばかりのアントマンを再び投獄するなんて可哀想すぎるだろうとか、私怨でバッキーを追跡していたくせに容易にキャップの事情を汲むブラックパンサー国王は風見鶏か?とか、ピーター・パーカーのメイおばさんが美人すぎるだろう!とか、バッキーの洗脳が解けるまで冷凍保存するなら始めからそうすりゃ良かったのに…など、とにかくツッコミどころもアクション同様に多かったこの作品。

やっぱりアベンジャーズには理性的なソーとハルクことバナー博士、もしくはニック・フューリーががいなければロクにまとまらんのでしょうかね〜。
そりゃ、スタン・リー配達員も「トニー・スカンク」と間違えたくなりますわ。

深夜らじお@の映画館はもしかしてスパイダーマンもまた作り直すのか?と危惧してます…。

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2016年04月30日

5月戦線映画あり!

GWは映画界発祥の言葉ですよ♪と言っても、まだまだ世間には浸透していないことを毎年如実に感じる5月。最大10連休なんて無縁のお話の我々には少ない休みでいかに映画を多く見るかが大きな課題。特にハリウッドの大作でも字幕版の公開が少ないこの現状、いかがいたしましょうか?
てな訳で個人的にはまた一つ歳を重ねてしまう5月公開の注目作を早速ピックアップです。

【5/7〜】
●『64-ロクヨン-前編』
豪華な俳優陣、評価された原作、期待の監督。これは見なければ!
●『ヴィクトリア』
全編140分ワンカットだと!?

【5/13〜】
●『ヘイル、シーザー!』
コーエン兄弟最新作。コーエン好きは見なければ!

【5/14〜】
●『すれ違いのダイアリーズ』
タイ発、プラトニック・ラブストーリー。
●『世界から猫が消えたなら』
ネコミミアイテムも消えてしまうのは勘弁してください。
●『追撃者』
マイケル・ダグラスが狩るのか!それくらい元気で良かった…。
●『ひそひそ星』
園子温監督、構想25年作品。興味津々です。
●『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』
有名になってしまったら、作品の質は下がってしまうのか!?

【5/21〜】
●『海よりもまだ深く』
最近、是枝裕和監督作品の俳優陣の固定化が懸念されます。

【5/27〜】
●『神様メール』
ベルギー発、痛快コメディ?
●『スノーホワイト-氷の王国-』
三角関係女優は主演しないのかな?

【5/28〜】
●『エンド・オブ・キングダム』
ホワイトハウスの次はロンドンか…。
●『素敵なサプライズ』
ヨーロッパならではのオシャレな映画。
●『或る終焉』
第68回カンヌ映画祭脚本賞受賞作品。

てな訳で5月の注目作品は
『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』
『ヘイル、シーザー!』
『64-ロクヨン-前篇』
『海よりもまだ深く』
『ひそひそ星』

深夜らじお@の映画館はやっぱりGWもお仕事中心になりそうです。

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2016年04月29日

『ちはやふる-下の句-』

ちはやふる下の句個人戦こそ団体戦。その意味は「チームちはやふる」と「瑞沢高校かるた部」を見れば分かる。
さすが小泉徳宏監督と言わんばかりの、何と爽やかな映画だことか。競技かるたの説明は既に『上の句』で終えているとはいえ、かるたを続ける意味に苦悩する千早、太一、新がいいではないか!
そして松岡茉優さんの足の裏も…何と美しきことか!

テニスや卓球と同じく団体戦だけでなく個人戦も行う高校生の競技かるた。チームには戦略がいる、個人には不屈の闘志がいる…なんて熱きスポ根を描くことはしないのが、この実写版。

それよりも小泉徳宏監督が描きたいのは、やはり「チームちはやふる」の三角関係。ただし恋愛モードの敷居はまたぎませんという微妙なところで不満が出てもおかしくないところを、ここが小泉徳宏監督の実力。「かるたを続ける意味」を表に出しておきながら、実は「かるたの楽しさ」に特化しちゃうんですもん。

かるたを続ける意味。それは人それぞれ。でも一人は淋しいからとか、好きな人と一緒にいたいとかなど様々な理由はあれど、誰もが思っているのは「かるたは楽しい」から。
仲間が獲った一枚が自分が獲った一枚のように感じる。仲間の得意札がいつの間にか自分の得意札になっている。そんなステキな想いが並ぶ競技かるたを青春映画という味付けで見せたらどうなるか。その答えがこの実写版だと思うのです。

だからこそ、太一がA級に昇格したら原田先生からの特別昇段を断る格好良さも、来年の冨士崎高校戦での「これから上がってくるヤツだ!」という見せ処もなくなってしまったではないか!と原作を変更した箇所が凄く残念であっても、「知的な熊」こと原田先生が新に語る言葉の数々が心に響いてくるシーンがいいじゃないですか。
仲間のためにクイーンに善戦するもゆるキャラ「おおつ光ルくん」の隣でミンチになった肉まんくんの雄姿もいいじゃないですか。
「瑞沢一勝!」を言えたことを喜ぶ机くんも、所作が増々美しくなる奏ちゃんもいいじゃないですか。
一人一人がかるたを楽しむからこそ、そこに「チームちはやふる」の魂が「瑞沢高校かるた部」へと受け継げれているんですよね。

ただそうは言ってもやはり実写版はアニメ版には勝てないだろうと思っていたところで、アニメ版以上にその魅力を発揮していたのが、まさかまさかの若宮詩暢。
ダディベア原宿限定版タオルに声をあげて驚くこと2回に加え、念願の「スノー丸」も愛用し、「冬眠が終わったら夏休みか」を始めとする遠回し言葉とあの優しく冷たい笑顔を駆使する京女ぶりがたまらなくいい!
さらにこの若宮詩暢を演じる松岡茉優さんの足の裏も何と小さくキレイなことか!

熱き魂と汗で輝く千早に対し、冷静で優美な所作で輝く詩暢。その対比が際立てば際立つほど、汗もかかぬ松岡茉優さんの足の裏の美しさも際立つ。うぅ〜、小泉徳宏監督のええ仕事に感謝感激です!

てな訳で「ちはやふる」の本当の面白さは2年生になってから。肉まんくんの経験値、机くんのデータ、奏ちゃんの奮闘、太一の不運、千早のかるたバカぶり。それらを早く見たいので、是非「ちはやふる2」も製作していただきたい。
ただしその際は作品の世界観を台無しにするような曲をEDロールには使わないでいただきたい!

深夜らじお@の映画館はEDロールで確認しました。昨年度、第37回全国高校かるた選手権大会の兵庫県代表は龍野高校でした。

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