2007年01月21日

『マリー・アントワネット』

マリー・アントワネット生誕250周年を迎えたマリー・アントワネットの心の機微を描いたこの作品。時代劇なのにロックなど現代風な楽曲が多いことに違和感を感じた方も少なくなかったのではないでしょうか。
しかしフランシス・フォード・コッポラ監督がクラシック曲「ワルキューレの騎行」を用いて作り上げた戦争映画『地獄の黙示録』を意識したような、この一見アンバランスな楽曲の起用法に私は「やっぱりソフィア・コッポラ監督って天才!」と思いましたよ。

物語は14歳のマリー・アントワネットがフランスのルイ王太子に嫁ぐためウィーンを出立するシーンから始まります。慣れないフランス王室での生活と世継ぎを産まなければならないプレッシャー。夫のルイ王太子はボンクラで自分に女性としての魅力を感じてくれない鬱憤が貯まる日々。そんな孤独と不安が続くうちに彼女は次第におしゃれや遊びに夢中になり始め、贅沢三昧を繰り返していくというものです。

誰だって10代後半の多感な時期は不安と孤独に苛まれるものです。常に誰かと楽しい時間を送っていたいとか、異性にもっと注目されたいとか、周囲の期待に応えたいとか、自分自身を確立させたいとか、色んな願望と自分の力だけではどうにもならない環境の狭間で苦しむものです。それが王室という特殊な環境であればより尚更なことでしょう。儀式、建前、中傷などくだらないものばかりに囲まれては自分自身を見失うのも当たり前です。

そんな自分自身を見失いながらも同時に必死に自分というものを追い求めるマリー・アントワネットの姿を描いたこの映画はストーリー以上にその描き方の見事さに惚れ惚れしてしまいました。特に仮面舞踏会のシーンは自分自身を人込みの中から探そうとしているかのような演出。大勢の中にいれば寂しくない、でもそんな自分はいったい何者?という孤独感がより伝わるシーンでしたね。

また終始彼女に近づきすぎくらいな近距離での一見ドキュメンタリーのようなカメラワークはより彼女を一人の人間として描き、一方で際限なく登場する豪華なセットや衣装・食材の数々は大勢の中に埋もれていく様子を表現しているようで、彼女の寂しさから逃れようとする心をこんなにも間接的にうまく描くなんて、やっぱりソフィア・コッポラ監督ってすごいとしか言い様がない、そんな感動を味わいましたよ。
そしてラストはパリから逃れるシーン。ウィーンを離れるシーンから始まり、パリを離れるシーンで終るのもまた味があっていいですよね。

作品を追うごとにその演出力が冴え渡っているソフィア・コッポラ監督。彼女がオスカーを手にする日がそう遠くないことを祈るばかりです。

深夜らじお@の映画館は歴史好きでもあります。

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この記事へのコメント

1. Posted by かえる   2007年01月22日 12:49
こんにちは。
私も改めてソフィア・コッポラの才覚にうなりました!
2. Posted by にゃむばなな   2007年01月22日 20:37
かえるさん、コメントありがとうございます。

ソフィア・コッポラ監督って本当に才能あふれる人みたいですね。
今後の活躍に注目ですよ。
3. Posted by もくれん   2007年01月22日 22:02
こんにちは。
初日の初回に観て来ました。素敵な土曜の朝が過ごせそうだな〜と。でも・・・トウの経った乙女たる私には、感情移入できずに寂しく映画館を出ました。。お菓子が食べたくなって、カフェに寄ったけど。
私は何を期待して見にいったんだろうな。。ソフィアさんの作品は、男性目線で見ると興味深く見られるのでしょうか。しっかり分析的に見ている人は、ネットのレビューを見ても男性が多いです。ソフィア・コッポラ監督、気になる人ではあるのですが。。否、嫉妬しているだけかも。。スミマセン、独り言でしたm(_ _*)m
4. Posted by にゃむばなな   2007年01月22日 22:40
もくれんさん、コメントありがとうございます。

確かにソフィア監督は女性でありながら女性的な作品を撮る監督ではないですね。
でも中性的ではなく、男性的な要素と女性的な要素を見事に併せ持った方だと私は思うので、彼女に何を期待するかによっては評価も大きく変わるのではないでしょうか。
5. Posted by あっしゅ   2007年01月29日 01:13
こんばんわ!あっしゅです!

豪華絢爛なイメージが強かったんですけど、裏では胃が痛くなるような生活を余儀なくされていたんですねぇ〜。とても切ない気持ちになってしまいました。

さすが女性監督!色使いなど女性好みになってましたね。
6. Posted by にゃむばなな   2007年01月29日 20:12
あっしゅさん、コメントありがとうございます。

ベルサイユ宮殿でロケしたこともあって凄く豪華な映像でしたね。そしてその映像に対比するかのような淋しい彼女の心うち。本当にソフィア・コッポラ監督の才能に惚れ惚れする作品でしたよ。
7. Posted by YUKKO   2007年02月01日 12:24
ようやく見たんですが、とっても美しいけれど、ドラマを期待した身としては裏切られました。漫画の「ベルサイユのばら」の世界ではフェルゼンとのあんなに激しい愛があったのに・・・。ソフィア・コッポラのお嬢様趣味の映画のように感じられますが。このブログのコメント見ても男性と女性は感じ方が違うのだと痛感です。
8. Posted by にゃむばなな   2007年02月01日 20:26
YUKKOさん、コメントありがとうございます。

確かに女性と男性では評価にかなりの温度差がありますね。みなさんの感想を拝見すると様々な意見があって、とても楽しいですね。
9. Posted by ディープインパクト   2010年08月17日 21:50
 歴史劇を期待して見ると少しがっかりするかもしれません。
 確かにパステル調の映像は流石はソフィア・コッポラ監督ですが、男が見て喜ぶ映画でもないような気がしました。
 女性にはお勧めですけれどね。
10. Posted by にゃむばなな   2010年08月17日 22:08
ディープインパクトさんへ

この映画は予告編段階から従来型の歴史劇ではなく、新しい歴史絵巻として宣伝してましたからね。
あの予告編を見ていると見ていないのでは、この作品に対する接し方も違ってくると思いますよ。

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