2007年05月18日

『過去のない男』

過去のない男アキ・カウリスマキ監督の作品はどれも地味で独特の間を有する不思議なものばかりです。日本の小津安二郎監督の影響を多大に受けた一人とも言われるこの監督は、昨今ハリウッド化するヨーロッパ映画界にあって唯一ヨーロッパ映画らしい芸術性重視の映画を作り続けてくれる貴重な存在だと思います。

物語は暴漢に襲われ記憶を失った男がとあるコンテナ暮らしの一家に助けられるところから始まります。自分が誰かも分からないのに穏やかな暮らしをさせてくれるそんなある日、彼は金曜日なるとスープを支給してくれる救世軍の女性イルマと運命的な出会いをします。やがてイルマと親密になるも彼にも本当の家族がいることが分かり、家族が迎えにきてくれるのですが・・・という一見、過去に一度あったようでなかったお話です。

記憶を失くすということは悲しいことですが、それは同時に一度自分をリセットできることでもあるんですよね。私はこれまで見てきた映画の知識や愛犬との思い出を失いたくないので記憶喪失にはなりたくないのですが、それでも過去にばかり囚われずに常に前向きに物事を考えるこの主人公はすごいなぁ〜と感心してしまいます。

でももっとすごいと感心してしまうのはこの監督の映画監督としての力量です。
大の寿司好き、特にワサビが大好きだというこのアキ・カウリスマキ監督の映画に登場する人物はいつもみんな無表情なのに、なぜかすごく感情豊かなのが不思議でなりません。爆笑するユーモアもない、感情が大いに揺さぶられるシーンもない、時にはすごく眠たくなる・・・なのに、すごくこの監督の作品は気になってしまうのですよ。
あの会話と会話が一瞬途切れたかな?と思わせるような独特の間。映像の色彩や選曲の良さ。若い俳優や美形俳優を用いなくてもしっかりと観客を映画という世界に引っ張り込んでくれるその監督力は、今や世界中のどの映画界を見渡しても真似できる人はいないと思えるくらいです。

フィンランド人は日露戦争でロシアが敗れてから日本に対して好印象を持つようになったと言われていますが、小津安二郎の影響を多大に受けているあたり、この監督もどうやら日本がお好きなようですね。
日本映画界ではもはや小津安二郎の世界観を引き継ぐ者がいない昨今、是非このアキ・カウリスマキ監督にその小津ワールドをさらに極めてほしいと願うばかりです。

深夜らじお@の映画館の映画で世界一周も欧州編突入です。

acideigakan at 18:30│Comments(0)clip!映画レビュー【か行】 

この記事へのトラックバック

1. 過去のない男/マルック・ペルトラ  [ カノンな日々 ]   2008年08月15日 17:16
『それぞれのシネマ』にも参加しているフィンランドのアキ・カウリスマキの巨匠2002年カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作です。実はまだ観てなかった敗者三部作の最後の1つ。WOWOWで放送があったのを機に鑑賞しました。せっかくなので書き記しておきたいと思います。 出演...

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
昨日の訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

※オススメです♪※
『KANO~1931海の向こうの甲子園〜』主題歌
ぷろふぃ〜る

にゃむばなな

Twitter始めますた
nyamu_bananaをフォローしましょう
livedoor 天気
ちょいとした広告掲載