2008年02月15日

『ヘヴン』

ヘヴン『トリコロール』三部作でお馴染みのクシシュトフ・キエシロフスキー監督の遺稿脚本を『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ監督が映画化したこの作品。『パフュームある人殺しの物語』でのレビューでも表現した通り、無駄な音楽を極力排した『ラン・ローラ・ラン』とは真逆な静の映画。静寂であり寡黙でありながら、非常に濃厚に描かれる男女の心の交流と逃避行はそんじょそこらのい映画とは一味も二味も違う素晴らしいものだと思います。

とにかくこの映画を見て印象に残るのはまずトム・ティクヴァ監督の類稀なるその才能です。ゆっくりと、でもじっくりと観客の心に入ってくる映像と、言葉はなくても伝わってくる主人公たちの想い。製作に加わっているアンソニー・ミンゲラやシドニー・ポラックが惚れ込んだ脚本とはいえ、それを美しい映像と共にこんなに巧く味付けできる監督さんは世界中でもこの人しかいない!と思えるほどです。

特に驚いたのはケイト・ブランシェット演じるフィリッパが尋問中に突然気を失うシーンです。流れ的には唐突に思えるのですが、ジョバンニ・リビシがその状況で言葉を失い見入ってしまうように、観客も心のどこかにその強烈なインパクトを終始残したまま映画を最後まで見てしまうんですよね。私も途中からは完全に見入ってしまい、破滅へと向かう2人の逃避行なのになぜか応援すらしてしまう、凄く不思議な感覚を覚えましたね。

そしてこの映画で誰もが絶賛するのはやはりフィリッパを演じたケイト・ブランシェットの女優としての存在感と演技力。特に誰もが驚くのはまさかまさかのケイト・ブランシェットの坊主頭でしょう。あれも非常にインパクトのあるシーンでしたよね。
ケイト・ブランシェットの女優としての気合を感じるとともに、あの坊主頭でよりこの逃避行が破滅へと近づいていると同時に2人がそこから必死に逃れようともがいている様がすごく感じられました。

でも上記に挙げたこのインパクトある2つのシーンも全てこの作品が「静の映画」であるからこそ強烈に感じるのだと思います。静寂の中に響くものや輝くものがいかに人の心の奥底にまで届くものなのかをトム・ティクヴァ監督は非常に理解されているんだなと思います。
ケイト・ブランシェットを褒め称えようとしたはずなのに、結局はまたトム・ティクヴァ監督を絶賛してしまった今日のレビュー。明日から本公開を迎える『エリザベス:ゴールデン・エイジ』も楽しみですが、それよりもトム・ティクヴァ監督の新作が早く見たくなってしまいましたよ。

深夜らじお@の映画館は静の世界が大好きです。

acideigakan at 18:00│Comments(6)clip!映画レビュー【は行】 

この記事へのトラックバック

1. ヘヴン  [ 映画鑑賞★日記・・・ ]   2008年10月09日 12:35
【HEAVEN】2003/03/08公開製作国:ドイツ/イギリス/アメリカ/フランス監督:トム・ティクヴァ出演:ケイト・ブランシェット、ジョヴァンニ・リビシ、レモ・ジローネ、ステファニア・ロッカ、アレッサンドロ・スペルドゥーティ、マッティア・スブラジア 愛してるもっと強....
2. HEAVEN  [ 虎猫の気まぐれシネマ日記 ]   2012年03月15日 22:51
たとえすべてを失っても,あなたを愛す。 2002年の作品。監督は「ラン・ローラ・ラン」やパフュームある人殺しの物語のトム・ティクヴァ監督。ケイト・ブランシェットとジョヴァンニ・リビジの,犯罪者と刑務官の許されぬ愛の物語。とてもリアルには起こりそうにない,ま

この記事へのコメント

1. Posted by YUKKO   2008年02月20日 00:29
ずいぶん前にこの映画を見たので、(2003年でした)この映画がトム・ティクヴァ監督作って事を忘れていました。切ない映画でしたが、神というかキリスト教の素地がないと少しわかりにくい映画だと思いました。ケイト・ブランシェットも素晴らしいけれど、相手役のジョヴァンニ・リビシの演技力もたいしたものだと思いました。
2. Posted by にゃむばなな   2008年02月20日 21:37
YUKKOさんへ

ジョバンニ・リビシといえば『ギフト』や『プライベート・ライアン』『60セカンズ』などの脇役イメージが強かったのですが、この映画では輝いていましたね。
彼の今後も楽しみですよ。
3. Posted by ゆかりん   2008年10月09日 12:40
こんにちは♪
残念ながらクシシュトフ・キエシロフスキー監督はあまり知らないので変な感想になってしまいました。お恥ずかしい・・・
好きなタイプの作品ではありませんでしたが、映像はとても美しく不思議な雰囲気の作品でした。
4. Posted by にゃむばなな   2008年10月09日 18:04
ゆかりんさんへ

キエシロフスキー監督はフランス映画を語る上で外せない人ですから、一度『トリコロール』三部作をご覧になってみてください。
私は『青の愛』が一番好きでしたね。
5. Posted by なな   2012年03月15日 22:50
こんばんは!

大大好きな作品です!
DVD買いましたもん。
>静寂であり寡黙でありながら、非常に濃厚に描かれる男女の心の交流と逃避行・・・
おっしゃる通りです。その魅力にノックアウトされました。

ケイトの坊主頭は,横顔がまるでイコンのように
美しかったです。
6. Posted by にゃむばなな   2012年03月16日 14:20
ななさんへ

ドイツ時代のトム・ティクヴァ監督作品は素晴らしいですからね。
『ラン・ローラ・ラン』とは真逆の静寂で寡黙な映画。
本当に素晴らしい映画ですわ。

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