2008年09月02日

『秒速5センチメートル』

秒速5センチメートル秒速5センチメートル。それは桜の花が舞い落ちる速さだそうです。
劇場公開時からいい作品だと聞かされていたこの3話からなる連続短編アニメーション映画。丁寧に作られた映像の美しさ、少し淋しげなストーリー、そして観る者の心の奥に眠る「人を大切に思う感情」を優しく刺激する見事な間。『時をかける少女』同様にジャパニメーションの真髄を感じれる映画だと思います。

まず第一話「桜花抄」ですが、個人的にはこれが一番好きです。栃木に引越しした初恋の相手明里に会いに行く貴樹が雪の影響で待ち合わせ時間に大幅に遅れてしまう様を彼の視点から描いているのですが、これがまた切なくて胸キュンって感じなんですよ。
誰か大切な人を待たせている時の罪悪感、そこにたどり着く方法が他に見当たらない時の自分の無力感。そんな時に思い出すのはいつも「あの時もっと優しく接していれば」など、相手を想い過去の自分を責めることばかり。
そんな心の機微を本当に丁寧に描いているところが素敵で、特に貴樹が岩舟駅に着いてからはちょっとウルウルしちゃいましたよ。

秒速5センチメートル続いて第二話「コスモナウト」もこれまた素敵なんです。種子島に引越しした貴樹に恋した花苗の心の成長を描いているのですが、これこそ等身大の片想いというのでしょうか、花苗をゆっくりと見守ってあげたい気持ちにさせてくれるんです。
種子島ということで登場する、月より遥か彼方の宇宙に旅立つロケットのエピソードも主人公たちの孤独や恋愛感情と見事に結びついてきますし、何よりも前に進めない自分を置いて吹き抜ける風や空高くで輝く月を見た時に感じる自分の小ささ。これを凄く丁寧に描かれていたところが素敵でした。

そして第三話「秒速5センチメートル」は『月とキャベツ』の主題歌でもお馴染みの山崎まさよしさんの「One more time,One more chance」に乗せて見せてくれる、ちょっとほろ苦い大人のエピソード。
この映画の宣伝文句にもなっている「どれくらいの速さで生きれば、きみにまた会えるのか」。主人公貴樹が人生に迷う様をこの宣伝文句と山崎まさよしさんの曲に乗せて見せているだけなんですが、それが逆にいいんですよね。
生き急ぐべきなのか、秒速5センチメートルのようにゆっくりと生きるべきなのか。貴樹の明里への感情が恋から愛へ変わるその時、あの踏切でのエピソード。彼女を大切に想うがゆえに生まれる貴樹の笑顔。このちょっとほろ苦いところ、本当に素晴らしかったと思います。

で改めてこの3話を振り返ると「桜花抄」は雪、「コスモナウト」は月、「秒速5センチメートル」は花が一つのキーワードとなっているんです。そう、3話揃って日本の心の美しさの象徴でもある「雪月花」なんです。
映像だけではなく心の美しさまでこんなに美しく、そして切なく描けるのはやはりジャパニメーションだけでしょう。
是非未見の方はわずか63分の映画ですから、ちょっとした機会に一度見てみてください。自分が遠い過去に忘れてしまった何かを大切な思い出せるかも知れませんから。

深夜らじお@の映画館はできるならば秒速5センチメートルくらいの速さで生きてみたいです。

YouTubeで予告編を見つけました。


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この記事へのコメント

1. Posted by たいむ   2008年09月02日 23:08
こんにちは。
この作品は何度見ても泣くのですけど、桜の時期に観たくなります。おそらく来年も(^^)

「雪月花」ですかー。なるほど!
この美しさは新海監督の感性のなせる技って気がします。とても繊細ですよね。

「ほしのこえ」や「雲のむこう、約束の場所」はご覧になりましたか?
後者は長編でもあり、ややだるさもあるけれど、どちらもジワジワくる秀作です!まだならばお試しください!
2. Posted by にゃむばなな   2008年09月02日 23:36
たいむさんへ

そうですね、桜の季節に見るとまた格別でしょうね。
できればそんな時期に初恋の人と再会できたら、さらに嬉しいと思いますよ。

新海監督作品はこれが初めてなので、その2作品是非見てみたいです。
いや、見ます!
3. Posted by AKIRA   2008年09月03日 12:48
素晴らしい作品でしたね。
美しくて切なくて愛おしい!!

DVD欲しい・・・。

たいむさんも勧めてらっしゃる新海作品の2本もぜひ!
4. Posted by テクテク   2008年09月03日 12:50
こんにちは♪
TB&コメント、ありがとうございました!
私もこの映画には胸の奥をギュッ!と
鷲掴みにされてしまいました。

なんともせつない物語ですが、
アニメーションだからこそ、
ここまで上手く表現できた作品のように思います。

「One more time,One more chance」が、
ピッタリとハマった映画でしたよね。
5. Posted by にゃむばなな   2008年09月03日 21:33
AKIRAさんへ

みなさんがオススメされる新海監督の他の作品も是非見てみることにしますよ。
なんだか楽しいみになってきました♪
6. Posted by にゃむばなな   2008年09月03日 21:36
テクテクさんへ

『月とキャベツ』の時も素晴らしい楽曲だと思っていましたが、この映画ではそれを上回る素晴らしさを感じましたよ。
やはり映画は音楽を演出しますよね。
7. Posted by えめきん   2008年09月07日 07:16
こんにちは。コメントありがとうございました。

各話のキーワードが「雪月花」になっているというのを初めて知りました。深い作品ですね。
新海誠監督は作品を重ねるごとに面白くなっているので、次回作が楽しみです。演出の幅を広げるためにも、次は作風を変えて欲しいですね。SFアクションとか。
8. Posted by にゃむばなな   2008年09月07日 14:54
えめきんさんへ

私は新海監督作品はこれが初めてだったのですが、みなさんが高い評価をされる理由がよくわかりましたよ。
本当に次回作が楽しみでならない監督さんですよね。
9. Posted by あん   2008年09月07日 23:30
「人を大切に思う感情」を、叙情的に見せてくれましたね。
結構、ずきん!ときて、山崎まさよしさんの曲が流れるところ、何度も巻き戻し何度も泣いてしまいました。
私も、第一話「桜花抄」が一番好きです。
10. Posted by にゃむばなな   2008年09月07日 23:56
あんさんへ

私もこの映画を見て以降、何度も山崎まさよしさんの楽曲を聞いていますよ。

聞くたびにいろんなシーンが呼び起こされます。
あぁ〜素敵な曲ですわ〜。
11. Posted by まりっぺ   2009年06月15日 18:00
「どれくらいの速さで生きれば、きみにまた会えるのか」
過ぎ去った想い出を思い出しながら、心の中で反芻してしまう作品です。
12. Posted by にゃむばなな   2009年06月15日 21:15
まりっぺさんへ

ほんと、心が切なくなるも、でもどこか温かくなるいい映画ですよね。

何度も見たくなる、私も大好きな映画です。
13. Posted by カボチャ頭   2010年01月16日 02:24
TBどうもですー。これはマジで好きです。
日本の技術とセンチメンタリズムの結晶ですよね。
あと数ヶ月して、櫻の花が見られる時期になったら
もう一度鑑賞してみようかなー。
14. Posted by にゃむばなな   2010年01月16日 13:22
カボチャ頭さんへ

> 日本の技術とセンチメンタリズムの結晶ですよね。

ほんと、まさにその通りですよね。

> あと数ヶ月して、櫻の花が見られる時期になったらもう一度鑑賞してみようかなー。

そうですね〜。何だか春が楽しみになってきましたよ。
15. Posted by KLY   2011年05月22日 00:16
にゃむばななさんのお勧めに従って観て見ました。素晴らしいです。成程これを観たら『星を追う子ども』を叩きたくなる気持ちも解ります。(まあ叩くことはないと思いますけど^^;)
何て写実的で美しいアニメーション。ちょっと『カラフル』の町の様子の部分を思い出したりも。桜、やっぱり日本人には特別な花ですね。
特に第3話は何度も何度も見返してしまいました。セリフがなくとも音楽に乗せて見せるだけで何が起こったのか、その時どう感じたのかがダイレクトに伝わってくる。泣けました。

P.S.お勧めしてもらったので、ブログ内でリンクを張らせて頂きました。事後報告で申し訳ありません。
16. Posted by にゃむばなな   2011年05月22日 00:35
KLYさんへ

新海監督の名前を出すと誰もが即答でこの作品名を挙げるほどの素晴らしさですからね。
そりゃ『星を追う子ども』を見て叩きたくなるファンがいてもおかしくないですよね。

ちなみにあの第3話の素晴らしき楽曲シーン。
You Tubeでフルヴァージョンが見れますので、是非こちらもオススメです。

あと記事内でのリンクは全然なので、これからも遠慮なくやっちゃってください。
17. Posted by latifa   2013年06月02日 18:11
にゃむばななさん、こんにちは!
今更ですが、本作を見ました。
とっても良かったです!
センチメンタルで、切ない気持ちになる映画ですね・・・。
お家ではなく、映画館で見たら、さらに素晴らしく、更に感動しただろうな・・・と思いました。
18. Posted by にゃむばなな   2013年06月03日 09:42
latifaさんへ

この作品は新海監督の代表作ですし、熱狂的ファンも多いですからね。
アニメーション作品の素晴らしさを堪能できる映画だと思いますよ。

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