2008年12月16日

『クライング・フィスト』

クライング・フィスト異質なボクシング映画でした。不思議なボクシング映画でした。でも素晴らしき親子愛の映画でした。
ボクシングを扱っているのにこの作品は『ミリオンダラー・ベイビー』同様に「静」の映画。そして見終わる同時にまだ自分も何かできるんじゃないか?と少し勇気が沸いてくる気がする、そんな映画でした。

当初はアジア大会の元銀メダリストでダメ親父のテシクと、少年院に入所したサンファンがボクシングを通じて交流を深める映画なのかと思っていましたが、この映画はラストの試合までこの2人が出会うことは一切ないんですよね。
しかも彼らの家族や友人の中に共通の知り合いがいるとか、街のどこかですれ違っていたとかという共通点も一切なし。ただ社会から弾き出され、ボクシングに再起を賭けていることしか共通点のない2人なんです。

またこういう映画は普通はどちらかに肩入れする描き方がされるもの。でもこの映画は完全に平等に描ききっているんですよね。もちろんその弊害としてどちらの主人公にも感情移入することはありませんでした。
でもこの2人が拳を交えるたびに少しずつ、それまで全く関係のなかった2つのエピソードが絡み合い、そして共鳴し合うんですよ。しかも決勝戦最終ラウンドでの始めはテシク目線で、次にカット割をせずにサンファン目線で描く見事なカメラワークが素晴らしい!

お互いの事情なんて全く知らない、全く関係のないところで進んできた2つの話なのに、最終ラウンドでのリング上の2人はまさに拳を交える父と息子そのもの。
情けない自分と向き合い、それでも慕ってくれる息子の思いと向き合うテシク。弱い自分と向き合い、それでも自分を支えてくれる家族の思いと向き合うサンファン。
最終ラウンド終了のゴングが鳴ると同時に、もうこの試合に勝ち負けなんて必要ないと思ってしまうんですよ。だって明らかに2人ともが勝者なんですもん。どちらが試合に勝とうが負けようが関係ない。ただ失ってはいけないものを取り戻せたことを喜ぶ2人を見ていると自然にそう思えてくるんですよ。

一応試合はサンファンの勝利ということで結末を迎えますが、試合に勝ったサンファンが祖母に涙を見せ、試合に負けたテシクが息子に笑顔を見せる演出も味があって、凄くよかったです。なんか久しぶりに映画のマジックを見せられたような感じを受けましたよ。
やっぱり韓国映画っていうのは素晴らしいですね。

ちなみに私はこの映画を今月20日で閉館するシネカノン神戸の特別上映で見てきましたが、こういう素晴らしいミニシアター作品を上映してくれる映画館がまた一つ消えてしまうのは本当に淋しいです。特にシネカノン神戸は母体がシネカノンということもあって韓国映画をたくさん上映してくれましたからね。
最後にこういう素晴らしい韓国映画をシネカノン神戸で見れたことは本当に嬉しい限りです。
改めてシネカノン神戸のスタッフのみなさん、5年間ありがとうございました。そしてお疲れ様でした。12月20日の最後の上映まで頑張ってください。

深夜らじお@の映画館はシネカノン神戸を忘れません。

acideigakan at 21:14│Comments(4)clip!映画レビュー【か行】 

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1. 映画『クライング・フィスト』(お薦め度★★★)  [ erabu ]   2008年12月16日 21:31
監督・脚本、リュ=スンワン。2005年韓国。ヒューマンドラマ映画。出演、チェ=ミ
2. クライング・フィスト 泣拳  [ 映画鑑賞★日記・・・ ]   2008年12月19日 22:39
公開:2006/04/15製作国:韓国監督:リュ・スンワン出演:チェ・ミンシク、リュ・スンボム、イム・ウォニ、チョン・ホジン、ピョン・ヒボン、ソ・ヘリン、ナ・ムニ、キ・ジュボンボクシング映画は感動するなぁ・・・ ←こーくすくりゅうぱあーーんちッでポチっ♪

この記事へのコメント

1. Posted by erabu   2008年12月16日 22:20
TB&コメントありがとうございました。

>やっぱり韓国映画っていうのは素晴らしいですね。

おしゃる通りだと思います。
予想以上、予想すら出来ない多くの作品を提供してくれて、日本やアメリカなど他の国にはない夢を与えてくれると思います。
2. Posted by にゃむばなな   2008年12月16日 23:12
erabuさんへ

韓流ブームで何かと偏ったイメージが持たれていますが、本来幅広いジャンルに対応した韓国映画ですからね。
これからもまたいい映画を輩出してもらいたいです。
3. Posted by ゆかりん   2008年12月19日 22:43
映画館が無くなってしまうのは悲しいですね。
それに韓国映画をたくさん上映してくれる所はなかなかないですね。
うちの方は滅多に上映なんてしてくれませんし。なのでほとんどDVDです、、、
4. Posted by にゃむばなな   2008年12月20日 15:30
ゆかりんさんへ

一時代を築いた韓国映画。
それをたくさん上映してくれたシネカノン神戸。

神戸は基本的にミニシアターが少ないだけに、貴重な存在が失われるのは非常に淋しい限りですよ。

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