2009年01月29日

『楢山節考』

楢山節考1983年にカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したこの作品。日本人なら誰もが耳にしたことのある「お婆捨て山」という悲しい話を、単なる泣ける映画にするのではなく、逆に生命力溢れる力強い演出で描いているところが本当に凄いと思いました。昨今の日本映画ではあまり見受けられないこの生命力溢れる力強さ。まさにこれぞ日本映画の傑作だと思いました。

実は昨年末に「傑作映画は1980年代に集中している」ということを再認識してからというもの、ことあるごとに1980年代の傑作を見るようにしているのですが、本当にこの時代の映画は洋邦問わずにいい映画がたくさんありますよね。
私も長いこと映画ファンをやってますが、やっぱり1990年代や21世紀に入ってからの映画を中心に見てしまうため、1980年代ってどうしても疎かになってしまっていたんです。
でも改めて見ると、今の映画にはない力強さや実直さなどがあり、実に「映画として」面白い作品ばかり。TVドラマの延長みたいな映画が増えている最近の作品とは「映画としての」レベルが違うと思いましたよ。

そんな中で世界でも高い評価を受けたこの作品。
とにかく見ていて思うのは「死」というものを完全に「生」という視点で描いているということ。つまり飽食の現代であれば「死」は一人の人間の人生の終わりということで認識されていますが、食べるものを確保することで必死だった時代では「死」は他者を生かすための一手段としてしか考えられていないということなんですよね。

普段の私たちの便利な生活環境から考えれば分かりにくいことかも知れませんが、本来生き物というのは弱肉強食の世界で生きているもの。ならば子供が一人生まれれば働けなくなったお年寄りは口減らしのために消えていくのは決して不思議なことではない。そのあたりを今村昌平監督は蛙の交尾やネズミを丸呑みする蛇などのシーンを交えて描いているのが本当に素晴らしいかったです。

人間は理性と知識を持てば持つほど悲しみをより感じてしまうそうです。でも生きることで必死なあの時代。生まれた子供が売られていくのも不思議ではないそんな時代。子を想い、家のみんなを想い、自ら楢山へ捨てられに行くおりん婆さんに悲壮感などはなく、むしろこの「山へ捨てられる」ことも子を想う親の愛にも見えてしまう凄さ。そしてそれが何百年と続いていたということを表現したかのような山奥に散乱する白骨の多さ。

悲しみを悲しみとして受け入れる余裕さえなかったことを表現するかのように、おりん婆さんの着物を他の家族が着ているラストも、本当に「生きる」ということがいかに大変かを言い表していたのではないかと思いました。

100年来の大不況と言われている今の時代。TVを見ればセレブ気取りの人たちがワイドショーを賑わし、一方でニュースを見れば派遣切りにあった人が犯罪を犯し捕まっている。「生きる」ということに対する認識がおかしくなり始めている現代だからこそ、改めて見る価値のある映画であるように思えました。

深夜らじお@の映画館をこれからもどうか見捨てないでください。

acideigakan at 18:00│Comments(4)clip!映画レビュー【た行】 

この記事へのコメント

1. Posted by latifa   2009年02月07日 19:58
にゃむばななさん、こんばんは!
ベンジャミン〜の方にやってきたのですが、こちらの映画も、私にとっては、すごい印象に残る映画なので、こちらに書いちゃいます^^

にゃむばななさんは、ブラッド・ピットファンなのですね♪
>彼のこれまでの風貌とこれからの風貌を一気に見れたようで
 確かに!今後の風貌の想像がつきましたね(^^ゞ
>『リバー・ランズ・スルー・イット』の頃のブラピが帰ってきた!と感動してしまいましたもん。
 解るわぁ〜。凄く美しかったですよね。あのきらきらした感じが、よみがえってましたね☆

で、今度は、こちら『楢山節考』
これ、ほんっとに凄い作品ですよね・・・。辛過ぎる内容です・・・。あき竹城さん・・でしたっけ?あの人とのからみのシーンのすごさもびっくりでした。

PS ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア、TVで深夜に放送していたのを録画してるんです。近々私も見てみるんです〜☆
2. Posted by にゃむばなな   2009年02月07日 21:23
latifaさんへ

たくさんコメントいただき、ありがとうございます。

この『楢山節考』は本当に力強い作品でした。
今では考えられないような、あき竹城さんの絡みシーンも凄かったですしね。
3. Posted by さすらい日乗   2016年07月31日 22:04
5 これもすごいのですが、木下恵介が1958年に松竹で作った方がもっとすごいと思う。
これは全編が歌舞伎仕立ての芝居になっていて、最初義太夫が入ります。
この前衛性に今村昌平は、たぶんかなわないと思ったのだと私は思います。
ですから、今村版の『楢山節考』は、むしろ『東北の神武たち』の話を多く取り入れています。
この『東北の神武たち』も、面白い小説で、東宝で市川崑が、1957年に映画化しているのです。なかなか面白い映画でした。
4. Posted by にゃむばなな   2016年07月31日 22:45
さすらい日乗さんへ

『東北の神武たち』ですか。
全く知りませんでしたが、勉強になりました。
またレンタルDVDを見つけたら借りて見てみます。

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