2009年06月08日

『バッファロー’66』

バッファロー’66ヴィンセント・ギャロは唯一無二の独創性を持った鬼才とも天才とも表現し難い愛すべき才能。だから彼の撮る映画も他の映画とは感覚的に違う何かを持った独特の映画になっている。個人的にはそういう感想を抱いているほど、大好きなこの映画です。見る人によっては好き嫌いも大きく別れる作品ではありますが、自分はダメ人間じゃないかと思われている方には是非見ていただきたい、愛すべき優しい映画だと思います。

ミニシアター系のお洒落な映画なんてイメージがあるらしいこの映画ですが、私はこの映画に一般的な洒落気なんて全くないと思います。ただこれまでに見たことのない描き方をしているこの映画に対して、何らかの言葉を当てはめるとしたらそういう言葉しかなかったのだと思うんですよね。

というのもこの映画の主人公ビリーは本当にダメ人間。5年間も服役していたことさえ家族には秘密にしているどころか、自分は政府の仕事をしていたとか、彼女さえいないくせに妻を連れて実家に帰るなどと見栄を張ったりする、どこまでもダメダメな男。
しかもこともあろうにダンススクールでレッスン中の少女レイラを拉致して妻役を無理矢理演じさせようとするなど、本来なら好かれる要素などこれっぽちもないんですよね。

でもそのレイラが終始どこか姉のような、母親のような、もしくは幼馴染の女の子のような感じで優しくビリーに接している様子を見ていると、彼はダメな人間というよりも人一倍淋しがり屋なくせして素直になれない不器用な男なだけだと思えてくるんですよ。きっとレイラも母性本能から彼のそういうところに気付いたからこそ、彼に同行してくれたのだろう。誰かが近くにいてあげるだけで彼はきっと軌道修正できるはず。そういった思いをこの映画はセリフよりも沈黙や間を巧く用いて描いているところが凄くいいんですよね。

そしてこの映画で凄く素敵だと思えたのはビリーとレイラの距離感。普通の映画なら近くなっていく男女の想いはセリフやキスなどの分かりやすい表現方法で描かれるところを、この映画は2人がモーテルのベッドで向かい合いながら添い寝したり、一緒にボウリングしたり、そして2人でスピード写真を撮ったりするシーンを用いて描いているところが秀逸なんですよね。

手を繋げばいいだけ。抱きしめればいいだけ。キスをすればいいだけ。でもそれだけで本当にビリーが求めている優しさを描けるのだろうか?
そう思ったところでの不器用なビリーが最後に取った、復讐をあきらめてレイラの元に帰るという選択は、多分2人が体を近づけなくても感じることのできる思いやりという優しさであり愛でもあると思うんですよね。

言葉や映像だけでは表現できないものを間や空気を描くことができるのが、独創的な感覚を持ったヴィンセント・ギャロ。こういう才能はやはり映画界の至宝だと思いますよ。

深夜らじお@の映画館も本当は淋しがり屋のダメ人間です。

acideigakan at 20:01│Comments(8)clip!映画レビュー【は行】 

この記事へのトラックバック

1. 『バッファロー'66』  [ erabu ]   2009年06月09日 07:19
監督・主演、ヴィンセント=ギャロ。1998年米国。原題『Buffalo'66』。
2. 「バッファロー’66」  [ 心の栄養♪映画と英語のジョーク ]   2009年06月10日 08:31
ヴィンセント・ギャロを意識して見たのは、今回初めてでした
3. バッファロー'66  [ Addict allcinema 映画レビュー ]   2009年07月07日 13:10
最悪の俺に、とびっきりの天使がやってきた
4. バッファロー'66  [ むーびーふぁんたすてぃっく ]   2009年10月18日 05:53
「バッファロー'66」 感想 ダメ男に恋した天使 刑期を終え出所したビリー(ヴィンセント・ギャロ)は親に「妻を連れて帰る」と嘘をついて...
5. バッファロー'66  [ 映画鑑賞★日記・・・ ]   2010年10月28日 17:17
【BUFFALO '66】1999/07公開アメリカ118分監督:ヴィンセント・ギャロ出演:ヴィンセント・ギャロ、クリスティナ・リッチ、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・ギャザラ、ケヴィン・コリガン、ロザンナ・アークエット、ミッキー・ローク、ジャン=マイケル・ヴィンセント最悪...

この記事へのコメント

1. Posted by メル   2009年06月10日 08:38
ダメダメ人間ではあったけど、愛すべき人、というのが彼でしたね〜。
彼にしっかりお付き合いして、彼のそばにいることを選んだ彼女も、なんか好きでした。
仰るとおり、二人の距離感は新鮮で、とても良いなぁって思えるものでした。

ヴィンセント・ギャロが撮った映画は
これしか見てないし、彼が出てる作品も「グッドフェローズ」とこれのみ。
グッド・・のときは、全然意識してなかったので、ほぼ忘れてるし(^_^;)
この映画ともう一本だけ撮った「ブラウン・バニー」を見てみたいなぁって思っています。
この映画はすごく評判も良かったようですが(実際凄く良かったし♪)、ブラウン・・の方は散々だったようですが、でも、やっぱり一度は見てみたいです。
2. Posted by にゃむばなな   2009年06月10日 14:05
メルさんへ

ヴィンセント・ギャロの映画は例えこの映画だけが評価されていようとも、やっぱり素晴らしき才能だと思いますよ。

決して他の監督では真似できない、この独特の感性。私は大好きです。
3. Posted by mig   2009年06月12日 00:52
こんばんは★

これ好きですよ〜!
その年のベスト10に入れましたー^^

ギャロはその後「ブラウンバニー」で叩かれて、一発屋なんて言われたけど役者としては健在でカンヌで披露された
次の、コッポラ監督作品は期待です♪
4. Posted by あかひ   2009年06月12日 11:11
こんにちは にゃむばななさん!
「ビリーとレイラの距離感」そうですよね〜。これは絶妙だったと思います。ビリーのダメな所も全部受け入れていける。レイラがそういう余裕がある人でよかったですよね。
5. Posted by にゃむばなな   2009年06月12日 14:14
migさんへ

ボウリングといえば、どうしても『ビッグ・リボウスキ』とこの映画を思い出してしまうくらい、本当に印象に残る映画ですよね。
なんというか、男の私が見てもかわいいと思える映画でしたよ。
6. Posted by にゃむばなな   2009年06月12日 14:22
あかひさんへ

近すぎず離れすぎず。この2人の微妙な距離が2人の心境とダブって凄く素敵に見えましたよ。
こういう恋愛映画もいいですよね。
7. Posted by yukarin   2010年10月28日 17:20
他の作品とはちょっと違った感覚の作品ですね。
ダメ人間でもどこか憎めない所がありますね。
二人の微妙な距離感がなかなか良かったです。
8. Posted by にゃむばなな   2010年10月28日 17:46
yukarinさんへ

ダメ人間なのに憎めないところがある。
これを巧く描けるのがヴィンセント・ギャロの才能なんでしょうね。

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