2009年06月09日

『ボクサー』

ボクサージム・シェリダン監督にとって北アイルランド紛争は生涯における命題なんでしょう。『マイ・レフト・フット』『父の祈りを』に続き、3度目となるダニエル・デイ・ルイスとのコラボでも描かれているのはIRA、イギリス、アイルランド、そして北アイルランド紛争といった軽い気持ちでは決して見れないものばかり。でもだからこそ見終わった後に残る感動も凄く美しく感じるのだと思います。

イギリスでは古くから続いているというIRAによるテロ活動。その目的は北アイルランドをイギリスから奪還し、統一アイルランド国家を建設しようというナショナリズムだそうです。
我々日本人には遠い異国の難しいお話と思いがちですが、領土問題というのはどこの国でもあること。特に北方領土問題に関心を持っていない国民が多いこの日本とは違い、アイルランドなどの国々の領土問題というのは民族の悲願だったりするんですよね。それを考えるとこの映画が描こうとしていることは本当に崇高なことなんだと思います。

本来ならボクサーを主人公にした映画なら、『ロッキー』などのように全盛期を過ぎた主人公がボクシングだけに没頭して再起を図ればいいだけのはず。
でもこの映画の主人公ダニーはIRAのテロリストとして14年間も服役した後、出所してボクシングジムを開き、カトリックやプロテスタントなど宗教の違いをも気にせず誰にでもボクシングを教えるそんな人物。
もちろん元仲間のIRAの武闘派からは目をつけられるし、何かあればボクシングをすることさえできない事態に巻き込まれる危険性だってあります。

でも武装闘争に見切りをつけ、ヨーロッパでは大きな問題であるカトリックやプロテスタントの違いをも乗り越え、博愛精神の下で真摯にボクシングに向き合うダニーの姿を見ていると、復讐の連鎖では何も解決しないことを改めて思い知らされるんです。

北アイルランド紛争の歴史を紐解くと、どうやらイギリス側から仕掛けられたものらしいのですが、そうなるとアイルランド側にとって復讐よりも平和という路線を選択することは凄く厳しく辛いものだと思います。
だってそれは人間が持っている「怒」の感情の逆らうことでもありますし、ナショナリズムという考えにもそぐわないものですから。でもそれをこれまた人間が本来持っている「愛」の感情で塗り替えようとしているところが、何とも言えない凄く崇高なものを感じずにはいられませんでした。

ボクシングというのは相手との戦いというよりも、まず自分自身との戦いであるとよく言われますが、戦争に関しても相手との戦いよりもまず自分自身との戦いに勝利すれば平和は自然と訪れるのではないか。
若くない主人公2人の愛の話を絡めつつ、それでも未来を前途ある人たちに託そうとする幹部の最後の選択にもそんなことを感じました。

深夜らじお@の映画館は寝起きに関してはいつも自分自身との戦いに負けてます。

acideigakan at 18:31│Comments(0)clip!映画レビュー【は行】 

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