2009年10月26日

『ぼくを葬る』

ぼくを葬る人は何を残して死ぬのか。人は何を残さずに死ぬのか。人は何を持って旅立つのか。人は何を持たずに旅立つのか。
生きる者全てにとって永遠の命題である「生と死」を「生」ではなく「死」を基点に描いたフランソワ・オゾン監督のこの傑作。やはりこのフランソワ・オゾン監督が撮るフランス映画は最高の逸品です。

これまでもたくさん存在した「生と死」を描いた作品。でもそのほとんどが残された時間で人はどう生きるかを描いた、「生」を基軸にしたもの。
しかしこのフランス映画はもちろん主人公ロマンが死を迎えるまでを描いているのですが、その描き方がこれまでの作品とは違い、「死とは何なのか」から「生きるとはどういうことなのか」を描いているように思えるんですよね。
つまり「死が訪れるまで彼はどう生きたか」ではなく「どうやって彼は死を迎えたか」ということ。

当初は余命3ヶ月という宣告に怒り悲しむロマンも、唯一の相談相手である祖母に全てを打ち明けてからは、どことなくまるで自分の葬式の準備をするが如く動いているように見えてくるんですよね。
仲違いをしていた姉に公園で電話を掛けるシーンも、冷たく別れたゲイの恋人に再会して関係を求めてしまうのも、一度は断った子種の提供も、そして砂浜で静かに迎える日没も、どれもがロマンがこの世に何を残すか、何を持ってあの世に行くかをたった一人で選別しているかのようでした。

後悔は残したくない。だから人との繋がりをより求めてしまう。
愛は持って旅立ちたい。だから写真をたくさん撮っておきたい。

ラスト、海岸で幼い頃の自分に似た少年に出会えたことで自分に対する後悔を打ち消し、自分に対する愛をしっかりと心に留めたロマン。
その穏やかな寝顔で、まるでロウソクの火がゆっくりと消えていくかのような演出で日没を見せるフランソワ・オゾン監督の演出力。
そして波打ちの音だけをただ流すEDロール。

その全てに生き急ぎも死に急ぎもない、ゆっくりと生きるとかでもない、死を迎えるその日までにしっかりと何をこの世に残し、何をあの世に持って行くのか自分の心の中で整理してくださいと言わんばかりのメッセージを感じました。

フランス人映画監督、フランソワ・オゾン。彼だけは一生ハリウッドには行かずにフランスでフランス映画らしい傑作を撮り続けてほしいと思いました。

それにしても『まぼろし』や『スイミング・プール』でもそうでしたが、この監督は熟年女優の起用法がめちゃ巧いですよね。もしかしてそっち系なのかな?

深夜らじお@の映画館が自分自身を葬るときは海辺は寒いので他の場所を探すことにします。

この記事へのトラックバック

1. ぼくを葬る  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2009年10月26日 19:58
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7. 【DVD】『ぼくを葬る(おくる)』(2005)/フランス  [ NiceOne!! ]   2010年09月08日 07:42
原題:LETEMPSQUIRESTE/TIMETOLEAVE監督:フランソワ・オゾン出演:メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ダニエル・デュバル、マリー・リヴィエール<S...

この記事へのコメント

1. Posted by miyu   2009年10月26日 20:02
フランソワ・オゾン監督は確かゲイですよね。
熟女芸人ではなかったような(´▽`*)アハハ
死を見つめることは、生を見つめることなんでしょうねぇ。
死を描くと、どうしても命というものを感じさせられてしまいます。
2. Posted by にゃむばなな   2009年10月26日 20:36
miyuさんへ

やっぱりフランソワ・オゾン監督はゲイでしたか。

しかしこれだけ死を見つめ、生について静かに考えさせてくれる映画をあんな若さで撮っちゃうんですから、この監督は本当に凄いですよね。
3. Posted by ちゃぴちゃぴ   2009年10月26日 21:36
こんばんは〜
PCの調子はいいですか?
経験あるだけに、わかります。あの気持ち…。

この映画、好きなんですよ。
ラストがいいんです。
オゾン監督って、女性の描写がとても残酷なような気もしますが、好きですね。ものすごく女性をわかってらっしゃる。ゲイだというのを知って、私も納得してました。
4. Posted by にゃむばなな   2009年10月26日 21:58
ちゃぴちゃぴさんへ

PCは生き返りましたよ。今のところは順調です。

それにしてもこの映画のラストは素晴らしかったですね。
まさに言葉なんていらない!って感じでしたよ。
5. Posted by アイマック   2009年10月27日 23:09
こんばんは!
この映画見て、ガーンときました。
ラストの海岸のシーンは、印象的でしたね。
オゾン監督に興味もった作品でもありました。
6. Posted by にゃむばなな   2009年10月27日 23:29
アイマックさんへ

あのラストにオゾン監督の素晴らしさが集約されてましたよね。
本当に印象的なラストでしたよ。
7. Posted by latifa   2009年10月28日 23:08
にゃむばななさん、こんにちは!
>彼だけは一生ハリウッドには行かずにフランスでフランス映画らしい傑作を撮り続けてほしい
 全くもって同感です!!強くそれを望みます^^

オゾン監督の映画に出ているシャーロット・ランプリングが怖素敵で大好きです♪
8. Posted by にゃむばなな   2009年10月29日 08:18
latifaさんへ

シャーロット・ランプリングは今や世界から憧れられている演技派女優さんですもんね。

そんな女優の起用法も含めて素晴らしい監督がハリウッドに汚されることなく、これからも輝いていてほしいですよ。
9. Posted by ディープインパクト   2009年10月29日 11:03
実は僕はフランソワ・オゾン監督の映画を観るのは初めて。大昔ほどではないですが、フランス映画も小粒ながら良い映画を作りますね。 
 しかし、この映画の人間が余命を宣告された後、どう生きるかというテーマの映画は黒澤明監督の『生きる』を筆頭にたくさんあるだけに、テーマ自体は新しく無いと思っていましたが、この映画が死を基軸だとした映画と言うにゃむばななさんの意見は大変感心しました。
 これからもよろしくお願いします
10. Posted by にゃむばなな   2009年10月29日 20:20
ディープインパクトさんへ

そうなんですよね。この手のテーマの映画なんてたくさんあるのに、なぜかどの映画とも違う感じがする。
その理由を探っていくと、やっぱりこの映画は「生」ではなく「死」を基軸にしているとしか思えなかったんですよ。

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