2010年03月28日

『マンデラの名もなき看守』

マンデラの名もなき看守もし神様が歴史を変える偉人に使者を遣わすのなら、このジェームズ・グレゴリー氏もまたその一人でしょう。ネルソン・マンデラ元大統領が27年の投獄生活から解放されるその裏側に実在した一人の白人看守視点から描かれたこの映画は、『インビクタス負けざる者たち』を鑑賞後に見るとまた一味違う作品に見える映画でした。

ビレ・アウグスト監督ならではのきれいな映像と簡潔・丁寧な演出にも関わらず、非常に息苦しさを感じるこの映画の前半。その息苦しさは映画にではなく、ほんの小さなチョコレートをクリスマスプレゼントとしてマンデラ夫人に手渡しただけで、黒人贔屓としてここまで酷い差別を受けなければならない現実に、そしてアパルトヘイトという政策が人の心に及ぼす歪みに、まるで独房に収監されているような息苦しさを感じました。

でもそんな息苦しさから徐々に解放してくれたのは実は常に有意義な言葉を選び話すネルソン・マンデラ氏の紳士的で重みのある言動なんですよね。
看守であろうと囚人仲間であろうと関係なく常に敬意を持って接し、その結果ジェームズの息子が初めてマンデラに面会した時に「叔父に会ったような気持ち」と表したのもまさに彼の人徳を表現する最適の言葉だったと思います。

ちなみに劇中でジェームズとマンデラが棒術で遊ぶというくだりが出てきましたが、この映画ではあれがジェームズの中に眠る人種融和への思いの象徴として描かれる一方で、個人的にはマンデラが大統領に就任した際に人種融和政策として「スポーツ」を選んだ原点がここにあるのではないかと思いました。

それにしても史実とはいえ驚いたのが、このジェームズ・グレゴリーもまたネルソン・マンデラと同じく息子さんを亡くされたというあのくだり。
偶然とはいえ、こういう史実があると本当に神様が意図的にこの2人を出会わせたとしか思えなくなるんですよね。

それを特に強く感じさせるのがやはりジェームズの最後の「GOODBYE BAFANA」というセリフ。この映画の原題にもなっているこの言葉もよくよく考えてみれば、凄く重みがあるんですよね。だって名前を付けて別れの言葉を言う相手って確実に友人以上に大切な人だけですもん。
つまりこのセリフが言えたジェームズにとって「BAFANA」という懐かしき黒人少年の友人の名前はマンデラを始めとする黒人全てを表すものであると同時に、過去の自分を象徴するものであり、それに「GOODBYE」をつけることができたということは人種差別のない未来へ一歩踏み出そうとした彼なりの心の区切りをつける一言だったのでしょう。

この世に偶然はなく、あるのは必然。
「とある魔術の禁書目録」のアウレオルス=イザードのセリフからの引用ですが、やはりこういう史実を知ると本当に神様抜きには語れなくなると同時に、ネルソン・マンデラ大統領の偉業の影にジェームズ・グレゴリーという一人の看守の存在ありと思えてくるんですよね。
ですからよりジェームズが神様から遣わされた使者のように思える映画でした。

深夜らじお@の映画館は偶然よりも必然を信じます。

この記事へのトラックバック

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こないだ劇場鑑賞した「インビクタス〜」同様、 南アフリカ初の黒人大統領になったネルソン・マンデラの伝記で、 27年に及ぶ獄中生活を看守の目線で追った作品。

この記事へのコメント

1. Posted by ディープインパクト   2010年03月28日 20:41
 僕は『インビクタス/負けざる者たち』の前にこの作品を観ましたが、マンデラと看守の心の交流には感動しました。
 そして監督は『ペレ』のビレ・アウグスト監督らしい、映像的にも素晴らしい映画だと思います。
 それほど有名な作品では無いような感じがしますが、『インビクタス』を見た人もこの映画を観て欲しいと思います
2. Posted by にゃむばなな   2010年03月28日 20:59
ディープインパクトさんへ

この監督の作品って本当に地味な感じなんですけど、映像的にも演出的にもいい映画をたくさん送り出してくれる監督さんなんですよね。

そういえば『レ・ミゼラブル』もこの監督の作品でしたね。
3. Posted by 悠雅   2010年03月28日 22:10
>この世に偶然はなく、あるのは必然。
長い人生を過ごしていると、身を持ってそれを感じることが多々あります。
出会うべくして出会った主人公たち。
片方は囚人でありながら弁護士でのちの大統領。
片方は白人でも、無学で誠実な一看守。
彼らが出会ったのはやはり必然だったのでしょう。

巧い邦題の作品って、いい作品である場合が多いような気がします。
是非、いい作品の内容を知って観てもらいたいという願いが込められているようで、
好きな邦題(っていうのも変ですが)の1つです。
4. Posted by えい   2010年03月28日 23:08
こんばんは。

なるほど。今思い返すと、
あの棒術のシーンは、
『インビクタス〜』に繋がってきますね。
やはり、スポーツはひとつのキーワードかも。
5. Posted by にゃむばなな   2010年03月29日 17:45
悠雅さんへ

この邦題は巧いですよね。
特に「名もなき」という部分に、この物語があまり知られていないけど本当はもっとたくさんの人に知ってもらうべき物語なんだと訴えかけているようでした。
6. Posted by にゃむばなな   2010年03月29日 17:50
えいさんへ

『インビクタス負けざる者たち』を先に見ても、この映画の後に見てもいろいろな角度で楽しめる素晴らしさがありましたよ。
こういう映画もちょっと珍しいなと思いました。
7. Posted by yukarin   2010年03月30日 12:56
こんにちは♪
『インビクタス負けざる者たち』とセットで観て欲しい作品ですよね。
ひとりでも多くの人に観てほしいです。
8. Posted by にゃむばなな   2010年03月30日 17:38
yukarinさんへ

そうですよね。
特に今年は南アフリカでワールドカップが開催されるだけに、是非この時期に見ていただきたい映画ですね。
9. Posted by latifa   2010年03月30日 22:47
にゃむばななさん、こんばんは☆
グッバイ〜の部分、にゃむばななさんの見解、凄く参考になりました。
私は、そこの部分が、スカッと解らず、色々な人の意見など伺ったりしていました。

とある魔術〜、そういうエピソードがあるのですね。私はライトノベルは読むことは無いのですが、とらドラとか、こちらで載っている本関係にかかわる仕事をしているので、馴染みのある本がいつもあって、なんだか嬉しくなっています。
10. Posted by にゃむばなな   2010年03月31日 16:48
latifaさんへ

あのセリフの部分は凄く意味深な感じがしましたので、多分見る人によって様々な意見があると思いますよ。

ちなみに「とある魔術の禁書目録」も「とらドラ」と同じアスキー・メディアワークス社&電撃文庫作品なんで、ご興味があればアニメ化もされてますんで是非。

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