2010年04月21日

『天国と地獄』

天国と地獄時代を選ばない面白さ。まさにこれに尽きる名作だと思います。前半の心理劇、中盤の身代金引渡し、後半の真犯人逮捕への警察の執念という3つの違った緊迫感に圧倒される、黒澤作品の中でも特に高く賞賛されているのも納得の映画でした。本当に『七人の侍』もそうですが、黒澤作品は50年経っても全く色褪せないですよね。

誘拐されたのはナショナルシューズの重役・権藤の子供ではなく運転手・青木の息子であるというだけでも面白い設定なのに、ここに権藤が命運を掛けて株の買い増しをするという設定が、とてつもなく面白い心理劇を見せてくれるんですよね。
身代金3000万円を払えば子供は助かるが自分は破滅する。でも払わなければ子供は殺されるが自分は助かる。
この絶妙な揺れる権藤の心理を彼の言葉を中心に見せながらも、実は彼の周囲にいる妻や部下の川西、そして青木との関わり方で見せるというのが本当に面白いんですよね。正直これだけでも十分一本の映画として楽しめる前半でしたよ。

そして「こだま」に乗って繰り広げられる身代金の引渡し。ここで一番緊迫感があったのは鉄橋に差し掛かったシーン。もちろん列車の窓から厚さ7cmの鞄を投げ落とす緊迫感も素晴らしいのですが、それ以上にボースンたち警察がハンディカメラで犯人を映そうとする姿と川辺にいる犯人たちをまるでその場にいるかのようなカメラワークで見せてくれる。もうこのドキドキ感がたまりませんでしたね。あれは一級品のサスペンスシーンでしたよ。

さらに子供の解放後に戸倉警部を始めとする警察が執念で真犯人を追い詰めようとする姿もこれまた凄いこと。特にあの捜査会議での一丸となって権藤を救うため一刻も早く真犯人逮捕を!と意気込む姿、執念で掴んだ江ノ電の機械音、そして戸倉警部のマスコミを巧く利用した真犯人炙り出し作戦にハラハラドキドキですよ。
単に真犯人・竹内を捕まえればいいというのではなく、この非情なる犯人を極刑にするために余罪も追求するその警察の執念深さがもうたまりませんでしたよ。
あと有名な桃色の煙が上がるシーンはやはりいいですね。あのシーンには黒澤監督の映画に対する拘りを感じましたよ。

そしてあの秀逸なる、権藤と竹内が面会するラスト。ここには竹内の強がった言葉にこの世の天国を夢見ながらあの世の地獄に行く非情な人間の悲しさを、小さな会社を任されているという権藤の一言に一度はこの世の地獄を見たものの、人間としての尊厳を守った者が辿り着ける小さな幸せというこの世の天国を垣間見れるんですよね。
揺れる心理劇、緊迫したサスペンス、執念の捜査ときて、最後に見せる人間の尊厳と内なる闇。最後の最後で人間ドラマを持ってくるとは、もう参りました!でしたよ。

ちなみにどうやらハリウッドがこの映画をクリス・ロックが手掛ける脚本でリメイクするそうですが、時代も国境も選ばない面白さを持つ映画だけにいったいどんな映画になるのか、非常に楽しみです。

深夜らじお@の映画館はやはり黒澤映画が大好きです。

acideigakan at 18:00│Comments(2)clip!映画レビュー【た行】 

この記事へのコメント

1. Posted by ディープインパクト   2010年04月25日 21:04
 黒澤明監督作品の中でも現代劇の最高傑作として、またサスペンス映画として抜群に面白い映画ですね。
 それにしても、自分の息子ではなくタクシーの運転手が誘拐される事で、充分に成り立ってしまう誘拐事件。そしてタイトルの通り三船社長と山崎犯人の対比がタイトルの『天国と地獄』に掛っている所、また煙のパートカラーがフランシス・F・コッポラ監督の『ランブルフィッシュ』に影響を与えていたり、電車のシーンが他のミステリー映画に応用されていたり、本当に黒澤明監督の凄さがわかる作品ですね
2. Posted by にゃむばなな   2010年04月25日 21:40
ディープインパクトさんへ

全てにおいて本当に面白いんですよね。
というか、前半の心理劇、中盤のサスペンス劇、後半の人間ドラマで映画3本作れる勢いでしたもんね。

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