2010年05月03日

『女と女と井戸の中』

女と女と井戸の中これは本当に繊細で残酷なおとぎ話です。サスペンスとして見るよりも、現代版ダークファンタジーとして楽しむべき映画です。
北野ブルーを彷彿とさせるような独特の青い映像の中で見せる2人のレズビアンのやりとりと事の顛末。人の心の闇と明かされない真実を枯れた井戸に見立てたメタファーの巧さ。
個人的には映画好きの方よりも普段からミニシアター作品が好きの方にだけオススメしたい映画です。

年老いた父親と暮らす中年女性のヘスター。彼女の家に家政婦として住み込むようになった若い女性のキャサリン。まずこの2人がレズビアンであり親密な仲になるということで、『スミング・プール』のように「男が絡む女の嫉妬」で見せる映画ではないというところが興味深いです。
それよりもヘスターが父親が亡くなったことでことで、遺産である土地を転売し得たお金でキャサリンとヨーロッパ旅行を計画するなど、どちらかといえば中年男性がお金で若い女性の愛を必死に繋ぎとめようとするお話に似ているんですよね。しかも途中でキャサリンが仲のいい女友達の話をしたりなど、効果的にヘスターの「女が絡む女の嫉妬」を見せているところも巧いこと。

そしてある夜にキャサリンが酔っ払い運転で男性を轢いてしまい、ヘスターがその遺体を自分たちの家の前にある枯れた井戸に投げ落としたことから事態は一転。
2人が出かけている間に家の中に隠したヨーロッパ旅行のための資金は消えてなくなるわ、キャサリンは発狂して井戸の中に投げ落とした男が生きていると言い出すわ、その男のことが好きになったから助けてあげたいと言い出すわと、徐々にヘスターが冷静さを失っていくのですが、ここで映像的に面白かったのは若いキャサリンは井戸の中の男のことが好きになってからより瑞々しくなり、逆に疲弊していく中年のヘスターはより肌も雰囲気も枯れていくんですよね。

こうなると本当に発狂してしまったのかどうか分からないキャサリンの心の中と、暗くて底が見えない井戸の中にいる男が生きているのかどうか分からないことが見事にリンクしてくるんですよね。しかもここで井戸の蓋を不幸にも新調しなければならないという事態が起こるのも面白いこと。

そして最後に明かされるキャサリンの本当の姿。出所したばかりという設定が見事に効いていることもあって巧いオチだなとは思うのですが、ただ如何せん映画全体が物凄く地味なため、『真実の行方』などのような「あっ!と驚く」といったオチではないのが残念なところ。それよりも見る人によっては途中でオチが読めてもおかしくないんですよね。
それでもまぁ地味なミニシアター作品を見るというスタンスで見れば十分楽しめる映画なので、映画好きの方よりもミニシアター好きの方にだけオススメしたい映画なんです。

しかしそれにしてもこのサマンサ・ラング監督がこの作品の後に撮った『ポエトリー、セックス』でもそうなんですが、多分この監督もレズビアンなんでしょうね。とにかくこの監督が描く同性愛の世界観って本当に濃い。人によっては嫌悪感も感じるのではと思うくらいだけに、その辺りでこの作品に対する評価も大きく別れてくるのかもと思いました。

深夜らじお@の映画館は井戸があるとつい中を覗きたくなってしまいます。

acideigakan at 13:56│Comments(0)clip!映画レビュー【あ行】 

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