2010年06月05日

『孤高のメス』

孤高のメス命を繋ぐ。想いを繋ぐ。それが移植手術の本当の姿であり、医療に携わる者の本来あるべき純粋な姿。
当初は全く興味のない映画でしたが、原作者であり現役医師でもある大鐘稔彦先生が淡路島の方だと聞き、同じ選挙区の映画好きとしては是非見なければと思い映画館に足を運びましたが、これは本当に出会って良かったと素直に思える日本映画の秀作。是非一人でも多くの方にオススメしたい映画でしたよ。

これまで沖縄の孤島で奮闘する医師を描いた某ドラマを始め、医療を題材にした作品はたくさんありました。ですからこの映画もそんなドラマと同じく、手術時に都はるみをBGMにし、自分のお見合いにすら気付いていないような少し変わった当麻鉄彦医師の姿を描いた人間ドラマかと思いきや、この映画は基本的に人間ドラマで見せる作品ではないんですよね。

もちろん当麻医師や中村看護士たちの奮闘ぶりは描かれてはいます。でもこの作品がメインで描いているのは医療に携わる人間よりも、「目の前の命を何が何でも救う」という、医療に携わる者が持つべきどこまでも純粋な想い。
それを日本初の脳死肝移植に挑む当麻医師と関わる人たちの事情や想いとリンクさせることで、本当に混じりっけなしの純粋な想いとして見事に昇華させているんですよね。

特にそれを強く感じたのは余貴美子さん演じる武井先生が脳死した息子を肝移植手術に見送るくだり。
普段私たちもニュースなどで移植手術や臓器提供といった言葉を聞きますが、その言葉に直面している当事者の気持ちなど一度も考える機会などありませんでした。

でも今目の前にいる息子は脳死とはいえ、まだ体は温かく、「生きている」と言えないけど「死んでいる」とも言えない。そんな息子を移植手術に送り出せば確実に死んでしまう。けれどボランティア活動に熱心だった息子の想いを考えれば最後の人助けとして役に立たせてあげたい。命は潰えても想いはずっと残してあげたい。
そんな一人の母親の想い、その想いを繋ぐ当麻医師たちの想い、そして肝移植を受ける大川市長の想いを知ると、私の一人の人間として純粋に涙を流してしまうんです。

しかもそれまで中盤には少し退屈に感じることもあったこの映画の淡々とした描き方も、実はこの終盤での当麻医師たちの純粋な想いを本当にどこまでも混じりっけなしの純度100%の想いとして見せるための演出なんでしょうね。
そう思うとやはり人を動かすのは出世欲ではなく、どこまでも純粋な思いですよね。

顔の見える一人の患者を諦めて、まだ顔の見えない100人の患者を救うことも賢い意見です。でもそれは大人の理屈も含んだ意見です。
当麻医師の言葉のようにまだ顔の見えない100人の患者よりも今目の前にいる顔の見える一人の患者を何が何でも救う。それこそ本当に混じりっけなし、理屈もなしの純粋な想い。現役医師だけでなく、病院という敷地に足を踏み入れた者全てが持つべき想い。

硬派だけどお茶目な魅力もある堤真一さんと、体を震わせながら息子の想いと命を次へと繋ごうとする余貴美子さん。この2人の演技力と存在感に日本映画の底力を感じた映画でしたよ。これは本当に素晴らしい作品です。

深夜らじお@の映画館が住む選挙区は兵庫9区です。

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2011年09月18日22時54分00秒テレビ朝日日曜洋画劇場特別企画「孤高のメス」 時間は録画終了時間 原作は読んでいません。 時は1989年。 ある市民病院に外科医の当麻鉄彦が赴任してくる。 この市民病院...

この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2010年06月05日 22:40
この作品、原作の大鐘さんが実際に医師だけあって本当に説得力があります。原作では他にも救急医療、生体肝移植、エホバの証人の無輸血手術、大学と民間病院の力関係など、今の医療が抱える問題を広く深く描いていますが、映画では敢えて脳死肝移植一本に絞ったのは正解でした。
社会派作品ながら、多くの人が観られるロードショーになっている、こんなラッキーなことは余り無いです。是非多くの方に観て考えて欲しいです。
2. Posted by にゃむばなな   2010年06月06日 15:40
KLYさんへ

現役医師の原作だけあって、本当に医療に携わる人の本音が描かれていましたよね。
しかも医療従事者だけでなく、ドナーの家族や移植手術を受ける患者家族まで。
その辺りまできちんと描かれた作品を見たのは多分これが初めてのような気がしますよ。
3. Posted by rose_chocolat   2010年06月06日 17:40
医療監修がきちんとしており、映画が引き締まっていました。そしてどこまでもクールに描いてましたね。夏川さんの描き方もすごくよかった。

患者のためにベストを尽くす。こういうお医者さんに出会いたいものです。
4. Posted by にゃむばなな   2010年06月06日 18:22
rose_chocolatさんへ

医師はかつて聖職と敬われた職業でしたからね。
やっぱりこの当麻先生のようなお医者さんに我々も出会いたいものですよね。
5. Posted by えい   2010年06月13日 22:02
この映画自体も混じりっけのない映画という気がしました。
ギミックに走らず、ストレート勝負。
東映はそういう映画の方がいいですね。
6. Posted by にゃむばなな   2010年06月14日 16:47
えいさんへ

そうですね。映像もストレート勝負、手術シーンもきっちりと見せてくれてましたもんね。
ほんと、東映はこういう映画に専念すべきなのかも知れませんね。
7. Posted by kajio   2010年06月15日 04:45
汚れの無い…美しい肝臓でした…
8. Posted by にゃむばなな   2010年06月15日 10:11
kajioさんへ

確かに!手術中にも関わらず摘出された肝臓は汚れのない美しい肝臓でした・・・。
9. Posted by kajio   2010年06月15日 21:06
駿河太郎さんは、どこに出演していたかわかります?(^_^;
10. Posted by にゃむばなな   2010年06月15日 22:14
kajioさんへ

いや、全く分かりません。
というか、この映画に出演されていたことさえ知りませんでした。
また調べておきますわ。
11. Posted by えめきん   2010年06月29日 22:31
堤真一演じる当麻先生がとにかく格好良かったです。こうしたリアルな医療ドラマには似つかわしくないキャラクターではありますが、堤真一の演技力のおかげで凄く説得力が出ていました。

余貴美子さん演じる武井先生も素晴しかったですね。息子の命を繋ぎ止めたいという想いと、息子の意思を尊重したいという想いの葛藤と、そこから導き出された決意には胸を打たれました。

「命」というものに正面から向き合った秀作だと思います。
12. Posted by にゃむばなな   2010年06月30日 12:59
えめきんさんへ

余貴美子さんが演じた武井先生の存在が「命」について考えさせられる重要な存在になってましたよね。
本当にこれは日本映画の秀作ですよ。

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