2010年08月13日

『剱岳 点の記』

剱岳ただ地図を作るためだけ。ただ山に登りたいという人を山に登らせるためだけ。たったそれだけで命を危険にさらす男たち。
ただその男たちの執念が起伏のあるドラマとして描かれていないのが非常に悔やまれる映画でした。しかしCGに頼らない圧巻の剱岳の風景描写を見るだけでも十分価値のある映画ではないでしょうか。

撮影監督なのに降旗康男監督よりも意見が通ることで有名な木村大作監督の映画監督としての第一回作品であるこの映画。
まず空撮ではなく実際に山に登って撮影ポイントを探しに探した上で撮影したという風景シーンがとにかく凄いこと。まさに圧巻の一言とはこのことでしょう。
普段からよく使われる「雄大な自然」とか「時に人に牙を剥く大自然」とかを言葉ではなく映像だけでここまで見せるのか!と思わせる映像の数々は、まさにそれだけで十分見応えがあります。というか撮影ポイントを探すメイキングだけでも1本の番組になるのではないかと思わせるほどでしたよ。

ただ映像で起伏のある剱岳をしっかりと見せてくれるのに対し、肝心のストーリーに関してはさほど起伏がないのが残念なんですよね。
確かに軍命とはいえ誰も為し得なかった剱岳に登ることが戦争に行くことと同じことを分かっていながら挑む柴崎芳太郎や数々の困難を乗り越え人として成長していく生田信、陸地測量部に対抗心を燃やすも最後はライバルに同じ愛山家として最大限の賛辞を送る小鳥烏水など人間ドラマはどれも熱くなるものがあります。

でも何か今ひとつ盛り上がりに欠けるのか、もっと心を熱くさせて泣かせてくれてもいいのにって思ってしまうのも本音なんですよね。
特に案内人として陸地測量部の命と心を与かる宇治長次郎の「山に登りたいという人をただ登らせたいだけだ」という執念は、正直柴崎芳太郎や小鳥鳥水の剱岳の頂を目指す執念などとは比べ物にならないほどに凄まじいもの。

そこにはどんなに剱岳が危険で地元に人間からも地獄の山と恐れられていても、この剱岳に登りたいという人がいるなら自分はこの命どころかこの人生の全てを賭けてやる!という、もはや誰にも真似できないどころか、誰も近づけないくらいの凄まじさを感じるんですよね。
だからこそ、そんな凄まじさを感じるからこそ、その凄まじさを熱き涙に変えてほしかったんですよね。

まぁ木村監督も初監督作品ということで、雪崩で埋もれた生田信を救い出すシーンを実際に松田龍平さんを雪の中に埋めてから掘り出すという形で撮影したりなど、撮影に関しては執念を感じられたのですが、やはりヤン・デ・ボンやバリー・ソネンフェルドと同じく撮影監督は脚本よりカメラ重視なんでしょうか。ちょっとその辺りがもったいなくも感じましたよ。

でもこの映画を見て改めて地図を作ることがいかに大変なことかが分かりましたので、今後はもっと真摯な態度で地図を拝見するようにしたいと思います。

それにしても香川照之さんって本当にカメレオン俳優ですよね。とても「宇治長次郎」と「いちご娘」を演じていた俳優が同一人物とは思えないほどでしたよ。

深夜らじお@の映画館も久しぶりに天保山あたりで登山をしてみたいです。

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1. 劔岳 点の記  [ LOVE Cinemas 調布 ]   2010年08月13日 22:04
『八甲田山』や『鉄道員』など数え上げたらきりがないほどの作品を手がけてきた名カメラマン・木村大作の監督初挑戦作品。原作は新田次郎の同名小説。出演は最近では『鈍獣』が記憶に新しい浅野忠信、「20世紀少年」の香川照之を中心に、『ハゲタカ』の松田龍平、モロ師岡...
2. 劔岳 点の記  [ Akira's VOICE ]   2010年08月14日 10:19
ご苦労様です!  
3. 劔岳 点の記  [ Yuhiの読書日記+α ]   2010年09月03日 23:39
険しい山を舞台に、測量に携わる人たちの情熱と尊厳を描いた新田次郎の同名小説を映画化したもの。監督は木村大作、キャストは浅野忠信、香川照之、松田龍平、宮崎あおい他。 <あらすじ> 明治40年、日本地図完成のために立山連峰、劔岳への登頂に挑む、陸軍測量手の柴崎芳...

この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2010年08月13日 22:27
作品そのものに関しては言うことなしなんですが、私はエンドロールも好きでして。「仲間たち」と書かれて役者もスタッフもただずっと並んで流れるというのは、作り手の端くれとしては堪らなく感慨深いものがありました。
2. Posted by kajio   2010年08月14日 01:27
この映画の“仲間たち”の中で、2、3人は子猫物語のチャトランみたいになった人が確実にいそうな気はしますが、何もなかったなら何よりです。

シンプレのナベちゃんは、香川さんが荷物を背負ってからの歩き方が、完全に山で生きる人の歩き方になっているところがポイントだと言ってました。納得。
3. Posted by GAKU   2010年08月14日 06:50
私も先日TVで見ました。あの風景を見るだけでも十分価値のある作品でしたね。

松田龍平は子供が生まれるエピから、完全に死亡フラグが立ってたのに、それを簡単にしてしまわないとこにも好感がもてました。最近は感動=死亡で済ませる展開も多いですからね(^-^;
4. Posted by にゃむばなな   2010年08月14日 13:51
KLYさんへ

私はTV放送で見たのでそのEDロールは知りませんでした。
どうせならTV放送でもそこらの作り手の執念まできちんと放送してあげてほしかったですよ。
5. Posted by にゃむばなな   2010年08月14日 13:54
kajioさんへ

シンプレのナベちゃんはさすが見ているところが違いますね。なるほどって思いましたよ。
それと『子猫物語』のチャトランみたいな仲間たちは絶対にいたでしょうね。

しっかしチャトランとは懐かしいネタですな〜。
6. Posted by にゃむばなな   2010年08月14日 13:57
GAKUさんへ

あの生田信の立場的には死亡フラグが立っていてもおかしくなかったのですが、全員無事に下山というのは安易に感動を求めない作り手の気合がある証拠なんでしょうね。
7. Posted by latifa   2010年08月21日 10:16
にゃむばななさん、こんにちは。
私もこれTVで見ました。
テレビ画面でも迫力満点で、すばらしい映像だったので、映画館だったら、どれだけ凄かったことでしょうか・・

>「宇治長次郎」と「いちご娘」を演じていた俳優が同一人物とは思えないほどでしたよ。
ぐははは。確かに^^
8. Posted by にゃむばなな   2010年08月21日 20:00
latifaさんへ

この映画のあのダイナミズムな映像は是非スクリーンで見たかったですね。
それにしても香川照之さんの演技幅は本当に広いですよ。
9. Posted by ヒガシ   2010年08月22日 11:15
4 いつも別館ヒガシ日記など御世話なってます。

ライブドアからアメブロTB出来ますが
アメブロからライブドアにTB出来ない事が多く
コメント入れさして頂きます。

TBアル http://trb.ameba.jp/servlet/TBInterface/10548483868/3b8ecd9d ですので
是非ともTB&コメント待っております。

映像は満足なんですけど、ストーリーがイマイチでしたね。
10. Posted by にゃむばなな   2010年08月22日 14:56
ヒガシさんへ

まぁ木村監督の本業は撮影監督ですからね。
11. Posted by さすらい日乗   2016年07月22日 14:46
4 そんなにひどいとは思いませんが、晩年の黒澤明の悪さを引き継いだ映画だと思います。
各シーンのカット尻が長すぎること、音楽が非常に陳腐なことです。
まあ、よく撮ったとして評価して良いのではないですか。
12. Posted by にゃむばなな   2016年07月24日 00:48
さすらい日乗さんへ

日本映画の悪いところ、いいところ。
それが出ると、やっぱり拒否反応を示してしまうこともありますよね。

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