2010年08月25日

『狙った恋の落とし方。』

狙った恋心が解放されたような開放的な新しい中国映画。これまでの体制への批判や一般庶民の生活を描いた中国映画とは明らかに違う、ちょっと昔の日本のような懐かしささえも感じない、まさにチャイナマネーの影響を色濃く感じる映画でした。
もはや張芸謀や陳凱歌は古い世代の映画監督とまで思える、新しい中国映画でしたが、ただ新しいが故に粗も多少目立つのも事実でした。

先日神戸にオープンした元町映画館のオープニング作品として上映されたこの映画。
中国では大ヒットし、ロケ地である北海道に中国人観光客が押し寄せたことで北海道で先行上映が行われたほどでしたが、実際に映画を見てみるとそれも納得。これは現代中国に生きる人にとって、いやこれまでの規制が多かった中国に生きてきた人にとっては、凄く「心の自由」を感じる映画に感じられたのでしょうね。

例えば40代の主人公・秦奮が勤しんでいるのはネットで公募し、コンタクトを取って女性と会う、いわば婚活。その婚活での会話も墓用地の押し売りやら宗教やらセックスレスやらと、家系を大事にする中国らしさを見せつつも個人と個人の関係を最優先させるところなどはまさしく現代日本と同じ。

また秦奮と結果的に恋に落ちるスッチーの笑笑も既婚男性と不倫しているわ、その不倫の恋が忘れられずに秦奮とは「体はあなた、心は別の男性へ」という自分勝手な条件をつけて形だけの恋人になるわと、どう見ても甲斐甲斐しくない女性なんですよね。

でもこの2人が北海道に住む秦奮の友人と共に北海道を旅し続ける後半を見ていると、これまで多くの規制やら古い慣習やらで縛られてきた中国の人々にとって、秦奮と笑笑の北海道旅行はそんな心の縛りを全て忘れさせてくれる、本当の意味での「心の自由」が味わえるものであるような気がするんです。

もちろんせっかく日本に来たのだからお寺にお参りしたいと言ってヤクザの葬式に参列したりとか、中国語の通じない欧米人神父に6時間以上も自分の人生を語りながら告解するような方はいらっしゃらないと思います。

でも中国の原風景とは違い、森と田畑で構成される適度に人の手が加わった日本の田舎風景を見ていると、美人4姉妹が営む居酒屋だと思ったら表の看板の写真は40年前のものだったとかいう後悔も全て笑って過ごせるほど、何の縛りもない自由気ままな時間が羨ましく感じてくるんですよね。
そしてそれは中国の方なら日本人の私よりもより強く感じるはず。

失恋を癒すための旅行のはずが自殺未遂までしてしまった笑笑が失恋から立ち直ることで秦奮と恋に落ちるというラストも、古い慣習や規制から抜け出したい中国人の本音であり、それは裏を返すと今までの中国が息苦しかったということかも知れませんが、この映画が中国で大ヒットした今後はチャイナマネーが中国人をその息苦しさから解放してくれることが容易に予想できる映画でしたよ。

現代中国を描いた作品として10年ほど前に『スパイシー・ラブ・スープ』という映画がありましたが、そんな作品が描く現代などもはや遠い過去と言わんばかりの新しい中国映画。是非中国に興味のある方はご覧になってください。

ただ争い事のある2人のジャンケンする手を隠すだけの2つに割れる筒を「紛争解消機」というを天才的な発明品と称し、そんなモノを大金を叩いて買う資産家がいるという胡散臭さ満点のOPは今も昔も変らず中国映画だなぁ~と思いました。

深夜らじお@の映画館は再来月中国に行く予定です。

※お知らせとお願い
【元町映画館】8.21より開館!■【ABCアシッド映画館】の復活を!

acideigakan at 20:49│Comments(4)clip!映画レビュー【た行】 

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1. 狙った恋の落とし方。  [ LOVE Cinemas 調布 ]   2010年08月25日 23:41
天才的な発明品?を投資家に売り、一夜で大金持ちになった独身の中年男が婚活中に知り合った一人の女性に一目惚れするが、女の方は不倫中だった…。再会した2人は北海道を旅して回るのだが、一体2人の関係はどうなるのか?中国喜劇王と呼ばれるフォン・シャオガン監督が送...
2. 狙った恋の落とし方  [ Art-Millー2 ]   2010年08月31日 16:57
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3. mini review 10509「狙った恋の落とし方。」★★★★★★★☆☆☆  [ サーカスな日々 ]   2010年12月13日 02:44
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この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2010年08月26日 00:09
今実際に中国からの観光客を増やす方向で国も動いてますよね。
まったくほんのちょと前まで金持ちや文化人は強制労働の上処刑されてたお国とは思えませんよ。
張芸謀や陳凱歌が古い世代に見えますけどこの作品の監督は世代的にはほぼ同じですよね。いわゆる第6世代の監督の描くリアリティとはまた違った目線の作品だと思いました。
2. Posted by にゃむばなな   2010年08月26日 17:24
KLYさんへ

ファン・シャオガン監督も張芸謀監督たちと同じ第6世代なのに、本当に新しく感じるのは描くテーマが現代中国だからなんでしょうね。
本当に現代中国の勢いは凄いですよ。
3. Posted by ジョニーA   2010年08月28日 01:55
元町映画館、やっと行けました〜。
あのロビーの狭さじゃあ、オープニ
ング初日は大変だったでしょうねーw
外まで行列でした?
今夜観た最終回のお客さんの入りは5
人ぐらいでした♬
4. Posted by にゃむばなな   2010年08月28日 13:59
ジョニーAさんへ

オープニング前はロビー前の外で行列していたんですよ。
外で、しかも商店街の一角で並ぶというのもなかなか乙でいいものですよ。

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