2010年08月28日

『戦場にかける橋』

戦場にかける橋栄誉も誇りもない。戦場は皮肉を生むだけの場所。部下のため、自らの軍人としての誇りのため、そして人間としての尊厳のために誰よりも頑張ってきたニコルソン大佐が最後に架橋爆破のスイッチを押してしまうあのラストがあまりにも切ないこの映画。まさにクリプトン軍医のセリフ通り「Madness!」の一言に尽きる名作だと思いますよ。

イギリス軍史上最大の屈辱と言われたシンガポール陥落によるマレー半島での敗戦で捕虜となったニコルソン大佐率いるイギリス軍人たち。一方仮病を使い挙句に脱走するアメリカ海軍所属のシアーズ中佐。
アメリカの視点から見ると恐らくシアーズ中佐の行動は正義の行動だと見る方も多くいらっしゃるかも知れません。でもイギリスと同じく陛下の臣民としての誇りを持つ日本人からすると、シアーズ中佐の行動ってどうも好きになれないんですよね。

というのも日本軍の捕虜収容所々長・斎藤大佐がジュネーヴ条約を無視し将校も一緒になって労役に就けという命令に対し、とことん逆らい続けるニコルソン大佐はまさに人間としての尊厳を最後まで守ろうとする鑑です。営倉に何日も軟禁されようとも心が屈服することはなく、逆に橋を完成させることで部下たちに「生きがい」と「誇り」を与えようとするなんて、勇気以上の強い心がないと出来ないこと。
斎藤大佐が日露戦争戦勝記念の恩赦という理由で彼らに架橋建設の協力を仰いだのも、全てはニコルソン大佐の強い心がもたらせた粘り勝ち。

そんなニコルソン大佐に対してシアーズ中佐ときたら、セイロンの軍人病院で看護婦さんとイチャつくわ、実は生き残るために軍歴詐称していたわ、挙句の果てに病名詐称で逃げ帰ろうとするわと、ニコルソン大佐と比べると本当にケツが軽いこと。
もちろん彼のやったことは一人の人間として生き延びるうえでは決して間違っていないことです。でもそこに人間としての尊厳を、死した仲間の尊厳を守るという強気心は全く感じられないんですよね。

ですから余計にニコルソン大佐の頑張りと、敵ながらあっぱれ以上にニコルソン大佐に一人の人間として完敗したという表情が取れない斎藤大佐との尊厳を認め合う素晴らしさが際立つこと。
きっとこの根底には女王陛下や天皇陛下のために戦うという誇りを持ったイギリスと日本ならではの感覚があるからなんでしょうけど、彼らが敵味方や国境を越えて誇りを持って作り上げた戦場が完成したその日に爆破されるというのはあまりにも皮肉でしたよ。

まぁ戦争なんですから連合軍としては日本軍の要人が汽車で通るその時に架橋爆破しようとするのは当たり前のことなんですが、ただせめて1回くらいあの橋が橋としての役目を果たす瞬間をニコルソン大佐には見せてあげたかったですよ。

でも戦場はそんなことすら許してくれない場所。導線に気付き、イギリス・アメリカ・カナダの決死隊が架橋爆破を計画していたことを目の当たりにした時、ニコルソン大佐はいったい何を思ったのでしょうか。イギリス軍人として決死隊に協力すべきか、それとも部下の頑張りを無にしないために爆破を止めるべきか。そんな彼の決断を待つことなく、瀕死状態のまま結果的に爆破スイッチをニコルソン大佐が押してしまうというあのラストはあまりにも切なすぎます。

誇りを持ち栄誉のために戦えども、皮肉が全てを無にしてしまう戦場。そんな戦場に一瞬ではあってもイギリス軍と日本軍の間に友情という橋渡しをしてくれたあの「戦場にかかる橋」を爆破してしまったことは、平和への橋渡しをも壊してしまったことなんでしょうね。本当にあまりにも空しく切ない戦争映画の大作でしたよ。

深夜らじお@の映画館は永遠に戦争反対を貫きます。

※お知らせとお願い
【元町映画館】8.21より開館!■【ABCアシッド映画館】の復活を!

acideigakan at 16:34│Comments(2)clip!映画レビュー【さ行】 

この記事へのトラックバック

1. 戦場にかける橋  [ ☆彡映画鑑賞日記☆彡 ]   2010年08月28日 18:16
 コチラの「戦場にかける橋」は、第2次世界大戦下のタイとビルマの国境付近にある日本軍の捕虜収容所を舞台に、繰り広げられる人間ドラマを描いた作品です。  1957年のアカデミー賞で作品賞、監督賞、主演男優賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、編集賞の7冠に輝いた戦争映画の....
2. 「戦場にかける橋」は「アラビアのロレンス...  [ 映画と出会う・世界が変わる ]   2011年01月17日 20:11
この映画を見ると、デビッド・リーンが後に「アラビアのロレンス」を撮り、あれほどの傑作になった理由がよく判る。「戦場にかける橋」は「アラビアのロレンス」の先駆的作品であっ...
3. 「大脱走」と「戦場にかける橋」との両方に...  [ 映画と出会う・世界が変わる ]   2011年01月19日 09:28
「大脱走」も「戦場にかける橋」も共に収容所が舞台であるが、映画としてのトーンは全く違う。前者が、脱走を将校の義務である、これも戦闘の延長であるという考えが捕虜にも、収容...
4. 戦場にかける橋  [ 映画と旅行、にゃんぱらりんな日々 ]   2011年02月13日 23:18
午前10時の映画祭。行ってきた。名作を大きなスクリーンで見られる幸せ。さすがに観客は年寄りばかりだが、ちらほら若いカップルもいる。第30回アカデミー賞受賞。史実を元に作られて入るものの、まあ日本人はひどい人種に描かれている。実際にあの鉄道を設計したのも日...

この記事へのコメント

1. Posted by にいな   2011年02月13日 23:20
傑作でした。

人間ドラマだけでここまで戦争の愚かさを描いた作品はそうないでしょう。見ごたえだっぷり一時も飽きませんでした。ラストに今まで作り上げたものが、物質的なものも、目に見えない人間同士の思いや絆も全てがあの橋の爆破で無になったことがせつなく哀しかったです。
2. Posted by にゃむばなな   2011年02月14日 17:09
にいなさんへ

史実とはいえ、人種や国家を超えて人は繋がることができる。ただそれを壊してしまうのが戦争であるというのを見事に描いてますよね。
ほんと、これぞ傑作ですわ。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
昨日の訪問者数
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

※オススメです♪※
『KANO~1931海の向こうの甲子園〜』主題歌
ぷろふぃ〜る

にゃむばなな

Twitter始めますた
nyamu_bananaをフォローしましょう
livedoor 天気
ちょいとした広告掲載