2010年10月05日

『余命1ヶ月の花嫁』

余命1ヶ月の花嫁美談なのに、全く美談に見えてこない。個人的にこの物語の裏に潜む悪報を知ってしまったというのを差し引いても美談に見えてこない。それはこの映画が淡々としすぎているから。故人を忍ぶ気持ちが全く見えてこないから。
これは故・長島千恵さんの想いを全く伝えることのできていない、本当に困ったちゃんな映画でしたね。

ドキュメンタリー番組でも取り上げられていた、乳がんに冒され余命1ヶ月と宣告された故・長島千恵さんの最後の生き様を描いたこの作品。
お話の内容としては実話ということもあり美談ではあるのですが、映画があまりにも淡々としすぎているため、全く感動できる気配がないんですよね。

例えば前半はとにかく展開が早い、そして薄いこと。まぁこのお話のメインが千恵さんが入院されてからなんで仕方ないのですが、いざ千恵さんが入院してもその薄さは全く以って変らないまま。
お話が美談なんでかろうじて見れるものの、じゃあこの映画を見て千恵さんの生き様や想いが伝わってくるかといえば、そういうことが全然なく、むしろ最後に千恵さんが「がんと闘う自分の思いを同世代の人たちに伝えたい」と仰ったことも、この程度の演出ではきちんと伝えることはできていないだろうと残念に思うばかりでしたよ。

仮にこの映画が瑛太さん演じる太郎さんの回想録として、太郎さんのナレーションを随所に挟みながら映画を見せてくれたら、もっと感じ方が違っていたでしょう。
でもそういう演出がないので、いくら瑛太さんが相変わらずの素晴らしい演技を見せてくれても、いまいち太郎さんの千恵さんを忍ぶ気持ちというものが伝わってこないんですよ。
それよりもまだご存命のはずの太郎さんの存在も希薄というか、厳しく言えば千恵さんの隣にいるだけ。太郎さんが千恵さんの想いを今もなお伝えていこうとしている感じも全くしてこないんです。

やはりこの映画を見る人は、いやこの作品に触れる人は太郎さんが今もなお千恵さんのことだけを愛していると信じたい訳ですから、映画もそういう演出には特にこだわるべきだったはず。

しかしこの映画にはそんなこだわりがないので、女性医師が千恵さんのご家族や太郎さんに余命宣告をするシーンでも、その女性医師が足を組んだまま余命宣告をするという、あまりにも失礼極まりない映像を残してしまうんですよね。
普通に考えたら余命宣告するご家族の前で足を組む医師なんて最低ですよ。もし現実に医師がいたとしても映画ではそれを省くのが当たり前であって、それすらできていないということは製作者のこの映画に対する意気込みがたかがその程度と言われても仕方ないと思うのです。

まぁなぜ製作者がそこまで意気込みが低かったのか、その本当の理由は分かりません。
もちろん榮倉さんがアイドル系女優さんなんで事務所側の作品の本質無視の意向があったかも知れませんし、私が知ってしまった悪報を製作者も知ってヤル気を失くしたのかも知れません。

でもたとえどういう理由であれ、故・長島千恵さんの想いをきちんと描いてあげれないようでは日本映画のレベルもたかがそこまでですよ。このお話を映画化する際に生まれた責任感というものを理解できていないようでは、こういう映画は作らない方がまだマシです。

明日が来ることを幸せに思っていた故人の立派な想いを、明日が来ることが当たり前になっている人たちが邪な想いで無にしてしまう。
まさに美談台無しです。

深夜らじお@の映画館はこういうことがあるので日本映画に対する認識がなかなかよくなりません。

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acideigakan at 20:43│Comments(4)clip!映画レビュー【ま行】 

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この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2010年10月06日 02:02
余りにも現実が知られすぎている以上、そして本当の映像でドキュメンタリー番組まで出来ている以上、本来は映画はどうなのかと思います。事実に勝るものはありませんから。
千絵さんに関しては、自分を撮影した映像の部分が全てだと思いますし、それはそのまんまでした。でそこに手を加えるべきじゃないと思います。
しかし太郎君。こういうことに直面した彼の内面をもっと前面に押し出して欲しかったというのはありました。
何だろう、千絵さんが主人公なので彼は添えものといったら失礼なんだけど、添え物の方が素晴らしい演技なんで目線はそっちいっちゃうし…。
2. Posted by にゃむばなな   2010年10月06日 11:57
KLYさんへ

そうなんですよね。とある男女の愛の物語というよりも、美談を金に換えているだけみたいな雰囲気が消せていない。
もっと当事者の内面を見せるべきという不満だけが残る映画でしたよ。
3. Posted by PGM21   2010年10月07日 01:18
何時もお世話になっております。

現実にあった話を映画化するケースは確かに難しいものもあるし、実際にこの実話では1人の女性千恵さんが亡くなっているという事実がある訳ですけれど、私自身この話に対して美談という見方では観ずに普通の出会いをしたけれど、こういう現実に直面する事もあるという見方で観ました。
実際にこういう映画や24時間テレビで描いたり紹介しない限りこういう病気がある事すら知らずに暮らしている私たちもいる訳で、どんな経緯だったとしてもこの病気を知りこの病気を考え、そしてこの病気による現実を知れたという事で私は十分だと考えます。
4. Posted by にゃむばなな   2010年10月07日 17:04
PGM21さんへ

う〜ん、こういう病気で苦しんでいる方を描いた他の作品と比べてもちょっと淡々としすぎという感は否めませんでしたね。
千恵さんの生き様を描くために太郎さんをどう描くか。その点において弱い映画だと思いました。

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