2010年10月06日

『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』

ミレニアム3パンクな孤高の騎士に寄り添う様々な分野の騎士たち。そして最後の一手が揃った時に起こる法廷での大逆転劇。
リスベットの勝利と前2作で散りばめられた様々な伏線が回収されたことで味わえる爽快感がたまらないクライマックスと最後に見せるリスベットとミカエルの距離に、本当に返す返すこのシリーズが5部作でなく3部作で終わってしまうのが非常に惜しいと心から思える、見事なミステリー映画でした。

前2作とは違い、リスベット役のノオミ・ラパスがファーストクレジットされることで始まるこの映画。まずこの時点でこの3作目はリスベットのための映画であるという強い想いが凄く感じられるんですよね。

そんなリスベットは瀕死の重傷を負った身。しかもザラチェンコも一命を取り留めたということで、いったいザラとは今後どんな形で決着をつけるのかと思いきや、そのザラが秘密組織から派遣された老兵により暗殺されるという急展開。

さらにミカエルと一緒にリスベットを特集した「ミレニアム」を発刊しようとする編集長のエリカまで脅迫されるなど、この秘密組織が単なる一民間組織ではなく国家レベルの秘密組織、つまり警察など本来なら信用できるはずの組織内部にも侵食している可能性が捨てきれないため、誰が味方で誰が敵なのか分からないという怖さが物語を面白くしてくれるんですよね。

でもそんな組織に対して治療を担当してくれたヨナソン医師がテレポリアン医師の面会希望を尽く断ったり、ミカエルが元公安警察のビョルクに取材をして情報を引き出したり、ミカエルの妹であるアニカがリスベットの弁護士になってくれたり、リスベットの元上司アルマンスキーがミカエルに協力してくれたりと、それぞれが自分の担当分野でリスベットを擁護してくれるのですが、それでもまだ点の状態。

それでもストックホルム警察がミカエルと接触し始めてからはその点と点が徐々に線になっていき、やがては秘密組織に対抗しうるだけの「狂卓の騎士団」へと形を整えていく様が凄く気持ちいいんですよね。別にこの騎士団が組織立って動いている訳ではないのですが、でもリスベットを助けるという共通の目的で「集まった」ではなく「繋がった」騎士たちがそれぞれ得意分野で活躍していくたびに、さぁこれから逆転劇が始まるぞ!という高揚感が生まれてくるんです。

そしてついに始まった裁判。リスベットを精神病院に幽閉しようと目論むテレポリアンたちと戦うその法廷にリスベットはモヒカンにパンク衣装で現れるのですが、普通に見れば裁判という堅苦しい場に相応しくない格好も、過去2作でリスベットという女性の生き様を見てきた者からすればあの格好はまさに彼女なりの「鎧」であり、彼女がこの裁判で絶対に決着をつけてやる!という強い信念を存分に感じることができるんですよね。

とはいえ、リスベット側にとって不利な状況であるこの裁判。そう易々と逆転劇を迎えるのは不可能なんですが、ここでミカエルが入院中のリスベットに指示していた彼女の回顧録やビュルマンに虐待されたあのDVDといった伏線が見事に功を奏すと同時に、それら切り札を最大限活かすために最後の最後で疫病神が執念で取ってきたテレポリアン医師の秘密で「詰み」となった時のあの爽快感。もうこれがたまらなく気持ちいいこと。

しかも秘密組織全員を逮捕するというストックホルム警察の動きも同時進行で描かれているので、リスベット個人の勝利だけでなく少女買春や「ミレニアム」記者暗殺というミカエルたちの勝利まで一緒に味わえるのもこれまた凄く気持ちいいんですよね。

本当に思わず「よっしゃ~!」と言ってしまたいくらい、いやむしろ私が「勝訴」と書かれた半紙を持って裁判所からマスコミの前まで走っていきたいくらいの爽快感を味あわせてくれるために張りに張られた伏線の数々。これぞミステリーの醍醐味ですよ。

そして忘れかけていたニーダーマンとの決着のつけ方もリスベットらしく、まさかここであのバイク野郎たちを繋げてくるとはという面白さも素晴らしかったです。

でもやっぱり一番素晴らしいのはあのラストでのリスベットとミカエルの少ない言葉を交わすだけの距離でしょう。
何も聞かず、何も言わず。ただお互いを尊重しあうあの距離がリスベットとミカエルの絆の強さと信頼の深さを雄弁に物語ってくれているんですよね。
と同時に「ミレニアム」サーガは3部作で終わるけれども、リスベットとミカエルの物語は永遠に続くという監督たちの作品に対する熱い想いも感じられる、原作者とこの作品のファンに捧ぐ見事なラストシーンでしたよ。

深夜らじお@の映画館の得意分野は映画と下ネタです。

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この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2010年10月07日 00:04
全てはあのDVDに繋がる。切り札を生かすべくそれぞれが己の特技を活かして情報をあつめしかける。正に騎士ですよ。それにしてもつくづく凄いのは、この切り札のDVDが既に1で登場してるってこと。なんというプロットなのか。
リスベットとミカエルの距離感、私は本来あった4と5でその距離感がどうなるのかが心底観たかったです。
2. Posted by ともや   2010年10月07日 00:10
こんばんは、にゃむばななさん♪
「2」に続いて一気になだれ込むように展開する本作。
見応えのあるシリーズでした♪

今度AXNミステリー・チャンネルで「1」が30分、「2」が45分、「3」が55分の未公開映像を加えた「完全版」を放送するみたいなんですよね(「1」は10/18放送、「2」「3」は2011年放送予定)。
ともや家ではこのチャンネルを観られる環境ではないんだけど、この「完全版」すごく気になります〜。

この後に続く予定だった「4」「5」も気になる所ではありますが、とりあえずキチンと物語が完結して良かったですわん♪

3. Posted by YUKKO   2010年10月07日 00:14
憎々しいテレポリアンの末路に溜飲が下がりました。最後の最後にようやく見つけた証拠に「やったー!」とガッツポーズです。爽快!
本当に久々に考えぬかれたミステリーって感じでしたね。
ミカエルとリスベットの距離感がとてももどかしいです。結末がついた気がしません。
4. Posted by にゃむばなな   2010年10月07日 16:57
KLYさんへ

そうなんですよね。1作目で見せていたDVDをここで重要なアイテムとして使うんですもんね。
本当に練りに練られたプロットですよ。
そして改めて4作目5作目がないのが惜しいと思えてきましたよ。
5. Posted by にゃむばなな   2010年10月07日 17:01
ともやさんへ

私もその放送は見れないですね。
ただ完全版にしては追加時間が長すぎ!
6. Posted by にゃむばなな   2010年10月07日 17:02
YUKKOさんへ

そうですか。私はあの距離間こそが2人の適正な距離。あれで2人の間では十分結論がついたと思いますよ。

それにしてもこのミステリーの作品としての面白さはたまりませんでしたね。
7. Posted by mezzotint   2010年10月31日 21:03
にゃむばななさん
今晩は☆彡
これでお終いだと分かっているのですが。どこかでちょっと期待してしまう
ラストでした。そうですよね。
5部作まであったんですか。残念と
しかいいようありません(涙)
ノオミ・ラパス、ハリウッドに進出
らしいですね。彼女の今後に期待
したいと思います。
8. Posted by にゃむばなな   2010年11月01日 14:56
mezzotintさんへ

返す返す原作者がお亡くなりになられたことが惜しく思えるシリーズでしたね。
あの終わり方にはファンへの愛を感じましたよ。
9. Posted by ちゃぴちゃぴ   2011年02月10日 00:17
こんばんは〜
作品ごと趣が変えてあっての面白さもありましたが、3作見終わって、充足感とスッキリ感でいっぱいでした。
でも、やはり新たなリスベットとミカエルの話が、観たかったですね。残念でなりません。
見応えのあったシリーズでした!
10. Posted by にゃむばなな   2011年02月10日 15:56
ちゃぴちゃぴさんへ

この三部作を見ると、何かこの3作でまずはミカエルとリスベットの導入部分って感じがしただけに、ここから始める彼らの新しいストーリーがないのは非常に残念。
でも逆に考えると、そう思えるほどこのシリーズは見応えがあり、素晴らしいってことなんでしょうね。
11. Posted by yukarin   2011年02月25日 09:43
本当は5部作なんですね、全部観たかった残念ですね。
リスベットとミカエルの関係がいい感じなのであの後の二人も見てみたかったですね。
12. Posted by にゃむばなな   2011年02月25日 20:23
yukarinさんへ

ほんと、原作者がお亡くなりになられたのが悔しい限りですよ。
この続きは作品に触れた人の中でということなのでしょうね。
13. Posted by latifa   2011年03月17日 21:49
にゃむばななさん、こんにちは!
3作の感想拝見させて頂きましたー。
にゃむばななさんは、このシリーズがとても気に入られた様ですね。1のところでは、3時間でも大丈夫な位・・って書かれていましたもんね。確かにお家で見る時、2時間越えの映画は結構辛い私なのに、飽きることなく2時間半見れましたもん。

>前2作とは違い、リスベット役のノオミ・ラパスがファーストクレジット
おおお〜そうでしたか!細かい処まで、しっかり見ていらっしゃる(^o^)

ラストのミカエルとリスベットの、べたべたしないけれども、心が通じ合ってるシーンは控えめで、とても良かったですね。
14. Posted by にゃむばなな   2011年03月18日 16:33
latifaさんへ

こういう本格的ミステリーってやっぱり面白いですわ。
目新しさは特にないかも知れませんが、基本がしっかりしていることもあってか、本当に最後までじっくり楽しめましたよ。

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