2010年10月12日

『日本沈没』

日本沈没日本が沈没する前に、映画そのものが沈没してました。本当に人間ドラマもへったくれもない中身スカスカ、CGで描かれた災害シーン以外全く見所のない映画でした。
まぁ所詮は特撮専門の樋口真嗣監督ですから、ドラマ部分に全く期待はしていなかったものの、ここまで人間ドラマの欠片もない大作映画を撮れるというのはもはや才能以外の何物でもないですね。

旧作は「にほんちんぼつ」と読むのに対し、こちらのリメイク版は「にっぽんちんぼつ」と読むらしいのですが、正直それがどうした?という程度の映画でした。
しかもこれがまだバカ映画なら適当にツッコミを入れつつ楽しめるのですが、なまじ大作と銘打つだけの資金を掛けているものですから、バカ映画にもなりきれていない駄作なんですよね。ですから見ていて非常にしんどいこと。

例えばOPでハイパーレスキュー隊の玲子がターザンのように救出に現れるシーンも「あちゃ〜」ですよ。ガソリンに引火しての大爆発で普通はヘリもバランスを崩す中であのような格好だけのシーンをいきなり見せるなんて、映画的にセンス悪いことこの上なし。

さらに地質学者の田所先生が危惧するフォッサ・マグナによる日本沈没論にもこれといった危機感たるものが全くなし。で、次のシーンになれば地震が起こる、山々が噴火する、街が破壊されると矢継ぎ早にCGで描かれた災害シーンばかりを見せられるんですもん。

普通は『アルマゲドン』のようにNY壊滅というファースト・インパクトがあって、次に人間ドラマがあって、さらにパリ壊滅のようなクライマックスを盛り上げるためのセカンド・インパクトがあってと、広げた風呂敷を徐々に畳んでいくものなんですが、この映画はファースト・インパクトもなければ、これといったセカンド・インパクトもなし。

何かあれこれやってますわ程度で災害シーンやら一応人間ドラマなものを繰り返しているだけなので、樋口監督が一番見せたいそのCGによる災害シーンも「あぁ、映像は凄いね。でも全然怖くないわ。だって絵に描いた餅程度にしか見えへんから」という感想しか残らないんです。

なので結城が殉職しても諸外国から集めた潜水艇を集結させたんだから、次はそれらのどれかに乗ればいいやん!というツッコミを入れる気もないまま、小野寺が別の日本の潜水艇に乗ろうとしても何の盛り上がりもなし。
それよりも小野寺もこれが最後と決意しているなら玲子の「抱いて」という要望に応えたれよ!何が「今はできない」やねん。それでも男か!

しかも結城に続いて自分が潜水艇に乗る理由が「今まで好きなことばかりしてきたので云々」と言われましても盛り上がりませんねん。誰かを守りたいという強い想いもない主人公の映画を見て誰が感動するねん!ちゅう話ですよ。

ほんと、樋口真嗣監督の作品を見るたびに思うことなんですが、この監督は『ローレライ』の頃からずっと人間ドラマに重きを置かずCG映像ばかりに拘ってきた、特撮監督と映画監督の違いを理解できていない御方。そんなにCG映像に拘りたいなら、もう一度金子修介監督に「平成ガメラ」シリーズを撮ってもらうようにお願いしたらいいのにって思いますよ。

深夜らじお@の映画館はこの映画よりパロディ版の『日本以外全部沈没』の方が断然面白かったです。

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acideigakan at 18:30│Comments(8)clip!映画レビュー【た行】 

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この記事へのコメント

1. Posted by ジョニーA   2010年10月13日 03:05
なぜにこの方は特撮監督だけに留まっておかなかったんでしょう?向いてないことぐらい自分でわかるでしょうに・・。
『ローレライ』も、これも、ワチシは一生避けていきたいと思いますーw
2. Posted by kajio   2010年10月13日 06:15
リメイク版映画・日本沈没の制作と同時に、リメイク版の漫画の連載もスタートしてたんですけど、

漫画の方も、今回の映画のクライマックスだった

『プレートを大型爆弾で爆破して地盤を分裂させて〜』

の作戦を日本沈没阻止計画として決行はするのですが、小野寺はケルマディックに乗って人柱になろうとしたものの、いろいろあって乗れず。

作戦自体も科学的根拠に欠けていた為に、壮絶に失敗して新章に突入しました。

小松先生の胸中は横に置いといて、漫画版スタッフと編集部は、あのオチには相当頭に来ていたと思われます(苦笑)
3. Posted by にゃむばなな   2010年10月13日 18:03
ジョニーAさんへ

ほんと、不思議ですよね。特撮監督としては超一流なのに。
考えられる理由といえば、負けたくない誰かがいるか、持ち上げられているかぐらいですかね。
4. Posted by にゃむばなな   2010年10月13日 18:05
kajioさんへ

うわぁ〜、漫画版ではそういうことになっていたんですか。
多分小松先生の原作を読んで驚愕したファンの人たちにとっては、このオチは作品を侮辱しているのかという想いもあったかも知れませんね。
5. Posted by YUKKO   2010年10月13日 19:30
2006年私のワースト1位になった作品です。試写会で見てなかったら、切れてました。後で興行成績がまあまあと聞きひっくり返りました。本当に酷すぎ。大阪のグリコと奈良の大仏では、笑っちゃいました。
6. Posted by にゃむばなな   2010年10月13日 21:02
YUKKOさんへ

あの大仏の頭だけ残っているシーンは「お遊び?」って思いましたよ。
とにかく全体的に「何だかなぁ〜」の連続でしたね。
7. Posted by 氷雨@竜兄   2010年10月13日 22:22
個人的に一色さんの描いた漫画版はかなり好きなんですけど(特に小野寺が記憶を無くして蘇るまでの下りとか)、映画はさっぱりでしたね。にゃむさんに同じく日本以外沈没の方が面白かったです(笑)。うまい棒の超インフレ価格とかウケてしまいましたわ〜。
8. Posted by にゃむばなな   2010年10月14日 09:14
氷雨@竜兄さんへ

ありゃま、漫画版はそんな展開になるんですか。明らかに面白そうですよね。

それから『日本以外全部沈没』は本当に面白いパロディですよね。しかも筒井先生が小松先生に原稿を読んで了解を得てから出版しているんですから、これもまた面白い!

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