2011年01月22日

『60歳のラブレター』

60歳のラブレター夫から妻へ、妻から夫へ。86,441通の「60歳のラブレター」をヒントに3組の夫婦による群像劇として作られたこの映画。
長年夫婦として生きてきた男女にしか出せない味のあるエピソードと、子供や新婚旅行などの伏線の張り方もなかなか巧い映画ではありましたが、ただ中村雅俊さんと原田美枝子さんの橘夫婦のエピがちょっと格好つけすぎでしたね。

定年退職したその日にでさえ愛人宅に寄って帰るような傲慢夫とそんな夫に30年我慢してきた寡黙な妻、橘夫婦。
そんな妻が贔屓にしている魚屋の松山夫婦は健康のためアルコール摂取を控えている夫としっかり者の妻が互いに軽口を言い合える仲のいい夫婦。
そして魚屋の夫が看てもらっている担当医師佐伯は妻を亡くし、今は仕事で出会った翻訳家の長谷部が気になっている、お年頃の中学生の娘を持つ男。

まずこの映画は単純に3つのエピをバラバラに描くのではなく巧い具合に絡め同時進行で描きながら、田舎から出てきたと思われる石田卓也さん演じる謎の男がちょいちょい登場させることで、終始飽きさせない面白さがあるんですよね。

加えて佐伯と長谷部の若い頃のように勢いだけで突っ切れない大人の恋愛や橘夫婦の本音を言い合うようになるほど変化していく間柄に彼らの子供を巧く起用しているのも、夫婦という大人の男女を描いているからこその巧さと魅力を感じますし、さらに絵描き志望・香川への新婚旅行・GSのヴォーカルギター・へそくり・娘は英語が得意といった伏線をラストで巧く回収する巧さも素晴らしかったです。

ただ定年後に愛人の会社に入社しては若者の意見を聞かず、会社の危機に「こちらも刺し違える覚悟だ」と勤めていた会社に乗り込む橘はちょっと格好よく描きすぎ。しかも最後は北海道までラベンダーの絵を見せに行ってましたからね。
あれは中村雅俊さんだから絵になりますが、実際にあんなことをやっていたらただの自己満足男ですよ。そりゃ奥さんに愛想尽かされるのも当然ですわって話です。

でもそんな格好つけすぎのエピをかすめるほど、他の2エピソードがいいんです。
もちろん娘の英訳依頼の文で気持ちを伝える佐伯と長谷部の話もいいのですが、それ以上に直してほしいと言われていた襖を開けるとそこに夫が欲しがっていたギターが妻のへそくりで買われていたり、夫が妻が麻酔から目覚めるまでそのギターで夜通し歌い続けるといった松山夫婦が素朴で凄くいいんですよね。

やっぱり夫婦って手術前に看護士が「ステキなダンナさんですね」と言っていたように周囲からステキだと思われ、かつ自分たちがその言葉を素直に受け入れることができる関係というのが最高の形なんでしょう。

本当に60歳というある程度年齢を重ねた人たちだけが醸し出せる見事な味のある映画だなと思っていたら、なんと主要出演者6人の平均年齢が54歳という中、深川監督は33歳だとか!
作品の内容的に若い方が敬遠される傾向があるかも知れませんが、これは次世代を担う素晴らしい才能が作り上げた映画。一見の価値は十二分にありです。

深夜らじお@の映画館も60歳になるまでには結婚できるでしょうか。

※お知らせとお願い
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acideigakan at 17:16│Comments(6)clip!映画レビュー【ら行】 

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1. 60歳のラブレター  [ LOVE Cinemas 調布 ]   2011年01月23日 01:29
実際に行われた企画『60歳のラブレター』の映画化。何と8万通を越える応募があったそうです。団塊の世代を中心とした大人のラブストーリーだけに出演者もベテラン揃い。主演の中村雅俊、井上順、イッセー尾形という味のある俳優陣に原田美枝子、戸田恵子、綾戸智恵という...
2. 【60歳のラブレター】〜古沢良太脚本作品・制覇への道〜  [ ジョニー暴れん坊デップの部屋 ]   2013年05月08日 05:11
これは公開当時、CMなどを観て完全スルーしていた邦画だった・・・。判断ミスだったな〜 eiga.com 作品情報 『60歳のラブレター』 ■解説:長年連れ添った夫婦が、互いに言えない感謝の言葉を1枚のはがきに綴る企画「60歳のラブレター」に着想を得て製作された、熟

この記事へのコメント

1. Posted by latifa   2011年01月22日 18:22
にゃむばななさん、こんにちは☆
告白、はもう沢山の方々と喋り尽くされていらっしゃると思うので(^^ゞ、こちらに。

先日のTV放映で見ました。なかなか面白かったです。評判がよろしくないので、全く期待せずに見たのも良かった様です。中村雅俊夫婦の処は、やっぱり事前にありえん!という怒りの言葉を友人などから噂を聞いていた通りでしたが、それ以外の2カップルは、とても良かったです。飽きさせず、3組が繋がっている脚本も良かったです♪
2. Posted by にゃむばなな   2011年01月22日 20:35
latifaさんへ

ほんと、中村雅俊のエピソードだけはちょっと浮世離れとまではいきませんが、他の2エピソードと明らかに空気が違ってましたよ。
でもこの映画は評判悪いのはやはりこの橘夫婦のせいなのかも?

あと当ブログではいただいたコメントも情報の一つと捉えておりますので、『告白』に関するコメントは移動させていただきました。ご了承くださいませ。
3. Posted by KLY   2011年01月23日 23:06
こんにちは。
実はこの作品、結構前に観たんで記憶も曖昧なんですが、やっぱりそれでも英語の手紙は強く印象に残ってます。それと、おじさんおばさんばかりでしたが、上手い芝居ってそれだけでも人を惹き付けるなぁと思ったのを覚えてます。もちろんそこに上質な脚本や撮影とかが加わってってのはあるんですけどね。^^
4. Posted by にゃむばなな   2011年01月24日 20:09
KLYさんへ

確かに芝居の巧い役者が揃うだけでもいい映画になりますもんね。
この映画はその典型的な例なのかも知れませんね。
5. Posted by ジョニーA   2013年05月08日 05:11
古沢良太脚本ということで遅ればせながら
DVD鑑賞しましたー♪
3組3様の見せ方がうまかったデスワー
特に、『ラヂオの時間』での名コンビ、
井上順さん&戸田恵子さんの組み合わせに
ニンマリできましたー!
6. Posted by にゃむばなな   2013年05月08日 22:20
ジョニーAさんへ

ほんと、この映画は3組3様の見せ方が上手かったですね。
決して中村雅俊夫婦だけを綺麗に描かないところが良かったですよ。

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