2011年02月23日

『戦火の中へ』

戦火の中へ史実だから仕方ないのか、全てが予定調和すぎて新鮮味がない。
せっかく話題になっている戦闘シーンも、この人間ドラマではもったいない。
1950年8月11日浦項女子中学校で北朝鮮軍の進撃を11時間も足止めした71人の学徒兵の実話を描いたこの映画ですが、『シルミド』『ブラザーフッド』ほど熱いものを感じることはありませんでした。

予告編を見た時から1959年の西ドイツ映画『橋』のように、戦争に巻き込まれていく少年兵の哀愁を期待して見に行ったのですが、まずこの映画は話題になっている通り、戦闘シーンがリアルに凄かったです。
これまでの戦争映画と違い、銃撃戦よりも爆破とその爆破で吹き飛ばされていく兵士たちを何度も見せてくれることもあってか、「人が人を殺す戦争」というよりは「人が殺される戦争」を強烈に印象付けてくれるんです。

しかもOPは劣勢の韓国軍と攻勢に出る北朝鮮軍との市街戦ということもあって、常に目の前で人が殺されている時間が続くのが戦場だと言わんばかりの緊迫感と悲惨な光景。これは戦争映画史に残る戦闘シーンだと思います。

ただこの映画は人間ドラマがあまりよろしくない。特に学徒兵たちの人間ドラマはちょっと薄く感じましたね。
修学旅行気分から一転、2回の戦闘で16人の仲間が戦死してから徐々に戦争の影が彼らの心を蝕み始めるのですが、ガプチョは自分のタバコのせいで仲間が死んだことに悔やまないわ、経験・陣形・技術・度胸の全て北朝鮮軍に劣っている自分たちの現状を大きく変えようとしないわと、最後までこの学徒兵たちが精神的に大人になりきれていない感じがしたんですよね。

もちろん戦争とは格好良く死ねるものではなく兄に弟の命を絶つ引き金を引かせるような無情なものだと描いたりしているのはいいのですが、ただ最後の戦闘に挑むまでのこの学徒兵たちに『シルミド』のように勝てないと分かっている戦いに挑む男たちの切なさもなければ、『ブラザーフッド』にこの戦争が終わったら家へ帰ろうという平和を希求する悲しさもない。

それよりも学生であっても戦場で銃を持った以上は大人扱いする非情の中に人情を見せる北朝鮮軍のパク少佐と、学徒兵として大人扱いしたけれどやはり未来の担い手である若者の命は守ってやりたいと洛東江から援軍に駆けつける韓国軍のカン大尉の対比が良かったこともあってか、最後の戦闘シーンも凄くリアルさがあるにも関わらず散っていく学徒兵の姿に涙することはなかったんですよね。

結局一度離隊したガプチョが舞い戻ってくるシーンやらが予定調和すぎて感情的に熱くなれなかったのか、それとも『シルミド』『ブラザーフッド』が素晴らしすぎる戦争映画の傑作だったからなのか、それとも浦項を唯一攻撃していた北朝鮮軍766部隊を全滅させているのにEDロールで「11時間足止めした」というのはどやねん?と思ってしまったからなのか、最後まで「う〜ん、もったいない」という思いが私の中から消えることはありませんでした。

ちなみに学徒兵に関しては確か『ブラザーフッド』でも少し触れられていたので知っていましたが、どこの国でも戦争で学生兵や少年兵が動員されるというのは悲しいことですよ。

深夜らじお@の映画館は最近韓国映画で涙してません。

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acideigakan at 20:58│Comments(6)clip!映画レビュー【さ行】 

この記事へのトラックバック

1. 戦火の中へ/T.O.P(チェ・スンヒョン)、クォン・サンウ  [ カノンな日々 ]   2011年02月23日 22:05
一時期、日本でもクォン・サンウ人気は物凄かったのにこの映画の宣伝ではあまり触れらていないのは何故なんでしょう?主演はBIGBANGのT.O.Pで彼の人気ももちろんあるとは思いますけど ...
2. 戦火の中へ  [ LOVE Cinemas 調布 ]   2011年02月24日 00:14
1950年の朝鮮戦争当時の実話を映画化。韓国軍学徒兵71人が北朝鮮正規軍を前に必死で立ち向かう姿を描いた戦争ドラマだ。『私の頭の中の消しゴム』、『サヨナライツカ』のイ・ジェハン監督が監督を務めている。主演は大人気アイドルBIGBANGのT.O.P。共演に『悲しみより
3. 劇場鑑賞「戦火の中へ」  [ 日々“是”精進! ]   2011年02月24日 06:25
「戦火の中へ」を鑑賞してきました公開2日目でも先着特典のポストカードをゲット。「私の頭の中の消しゴム」「サヨナライツカ」のイ・ジェハン監督が、朝鮮戦争における驚きの実話...
4. 戦火の中へ  [ 映画と旅行、にゃんぱらりんな日々 ]   2011年03月06日 22:39
悲しい。軍服ではなく学生服で戦う学徒兵。まだあどけない表情で、銃の撃ち方も、戦略も何も知らない彼らが、敵に降伏することなくたいした武器もない中、最後まで死を覚悟して戦う姿に涙が出る。いや死を決するまでの時間があまりに短く、死を覚悟する時間などなかった...
5. 『戦火の中へ』 ここだけの話  [ 映画のブログ ]   2011年05月27日 07:38
 あえて『戦火の中へ』の問題を指摘するなら、面白すぎることだろう。  この映画は、朝鮮戦争を戦った学生たちの実話を基にしている。  今でこそ、38度線でにらみ合ったまま休戦状態となっているが、19...

この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2011年02月24日 01:00
監督がイ・ジェハンだけに、ドラマを狙い過ぎてしまった部分が逆に整いすぎになってしまった部分はあるかもしれません。もう少し最初の戦争シーンのトーンでリアルさを優先しても良かったかもというのは私もちと感じました。
ただ、私たちが観るのと違って、実際に現在進行形の戦争を描いた作品だけに、韓国での受け取り方は自ずから私たちとは違うのだろうななんて思ったりもしました。
2. Posted by BROOK   2011年02月24日 07:02
戦闘シーンは迫力があったのですが、
たしかに人間ドラマは薄かったと思います。

主人公のエピソードをもっと見せて欲しかったような気もしますが、
時折挟まれる母親とのフラッシュバックで、勝手に妄想していました。
3. Posted by にゃむばなな   2011年02月24日 16:40
KLYさんへ

確かに朝鮮戦争は休戦状態で終結してませんから、韓国の方が見ると違ってくるんでしょうね。
劇中何度も北朝鮮国旗を印象深く見せていたのもそのためなんですね。
4. Posted by にゃむばなな   2011年02月24日 16:41
BROOKさんへ

母親とのフラッシュバックは個人的にはもう少し見せてほしかったんですよ。
それで私も号泣したかったです。
5. Posted by にいな   2011年03月06日 22:42
クォン・サンウがどう思い込んでも学生に見えなかったのが残念です。

でも学生服のまま戦う姿にはやっぱり涙ポロポロでした。多くの命が犠牲になったのにも関わらずいまだに朝鮮は分断したまま・・・。皮肉ですね。
6. Posted by にゃむばなな   2011年03月07日 11:59
にいなさんへ

どの国でも学生が徴兵されるって悲劇は悲しいものですよね。
ましてや朝鮮半島に至っては、それがまだ南北分断という形で残っているのですから。

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