2011年03月23日

『トゥルー・グリット』

トゥルー・グリット尊い犠牲を払う者だけが本物の勇者になれる。そして本物の勇者は決して見返りを求めない。
第83回アカデミー賞で最多10部門にノミネートされていながら無冠に終わったこの作品ですが、これは素直に面白いと思える映画でした。ただコーエン好きとしては皮肉などのブラックジョークが少なかったのがちょっと残念でした。

資本主義の代名詞的存在、アメリカ。その歴史は今も昔も変わらず、努力して夢を叶えることをアメリカンドリームとして賞賛する一方で、他者を蹴落としては我がの利益だけを追求し、司法の世界であろうとどこででも常に取引が行われている社会。

この映画の前半でもマティが父の仇を討つ前段階として裁判・弁護士・判事などの言葉を持ち出しては馬屋の主人ストーンヒルと、憎きチェイニーを捕まえることのできる保安官を雇うべく50ドルを片手にルースターと交渉という名の取引をしてばかり。
そのマティの姿は父の仇を討つべく奔走する少女として見えはするのですが、同時に我がの利益優先のために他者を丸め込むアメリカ社会そのものでもあるんですよね。

ただそのマティがルースターを追うべく馬に乗ったまま川を渡りきる姿を見て、お仕置きタイムに勤しむテキサスレンジャーのラビーフに銃を向ける辺りから、この映画は徐々にマティ、ルースター、ラビーフを巧く用いてアメリカ社会を皮肉っているところが、さすがコーエン兄弟。

特にルースターとラビーフが銃の腕前を競って自慢しあった挙句にラビ−フが離脱するくだりや、お尋ね者ネッドを狙った夜の山小屋での銃撃戦後にルースターにボロカス言われて負傷したラビーフが去るくだりなどは、まさに他者を気遣うことよりも蹴落とすことを優先するアメリカ社会の暗部そのもの。

でもそんな幼稚な張り合いをする大人たちの間にいながらも、ルースターやラビーフを気遣い、川でチェイニーを見つけたら銃をぶっ放し、お尋ね者ネッドを前にしても怖気づかないマティこそが本来アメリカが目指している姿であり、本物の勇者を生み出す社会でもあるんでしょう。

ですからマティを救うために戻ってくるラビーフと、ネッドとの対決に挑むルースターによる西部劇的銃撃戦はもはや賞金を山分けするための戦いではなく、夢を叶えるために頑張っている少女を助けるための戦いなんですよね。だからこそこの正義の戦いは凄く見応えがあって面白い!

と同時に、ここで格好いい!と思えたルースターとラビーフがヘビに噛まれて瀕死のマティを救うために取る行動こそ、本物の勇者に相応しいものだと思うのです。
賞金よりもマティを救うためルースターに馬を譲り一人残るラビーフ、星空の下で力の限り必死に走り命尽きるリトル・ブラッキー、そして人生の全てを賭けてマティを抱え必死に走るルースター。
それぞれが尊い犠牲を払ってまでマティを助けようとする。しかもマティが助かった後も一切の見返りを求めずに姿を消す。その姿こそ、まさに本物の勇者ですよ。

そして25年という時を経てルースターを訪ね、連絡の取れないラビーフを気遣うマティも、左腕という尊い犠牲を払った本物の勇者。
そんな14歳の少女が25年後に辿り着いたビターテイストなハッピーエンド。これはコーエン兄弟ならではのセンスだと思いましたよ。

深夜らじお@の映画館は現代アメリカに必要なのはウエシマ作戦だと思います。

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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2011年03月23日 21:35
ライブドアブログの一部にTBが全く飛びません。
コメントのみになってしまい、申し訳なく・・・。


たしかにブラックジョークは少なめでしたね。
スピルバーグが製作に参加しているからなのかもしれません。


今作の一番の注目はやはり星空のシーンですよね。
もう胸が熱くなり、涙が出そうになりました。
名シーンとなりそうです。
2. Posted by にゃむばなな   2011年03月23日 23:50
BROOKさんへ

あの星空のシーンは最高でしたね。あれほど映像もストーリーも綺麗なシーンは滅多にありませんもんね。
3. Posted by KLY   2011年03月24日 00:06
BROOKさんと同様にlivedoorさんの一部にTBが飛ばないようです。人によってはコメントも飛ばないですが、にゃむばななさんのところはどうかな?

コーエン風味は出しつつも、オリジナル脚本では無い分いつもよりはまろやかになってましたね。
それにしてもヘイリーちゃん。オーディションで無名の子がポーンと出てくるんだから凄いですねぇ。
オリジナルも面白いですのでもしご覧になって無いようでしたらおススメです^^
4. Posted by にゃむばなな   2011年03月24日 08:17
KLYさんへ

オリジナルの評価の高さを見ていると、こりゃコーエン版と見比べるためにも見ておかないとあきませんね。
是非見てみますよ。
5. Posted by rose_chocolat   2011年03月24日 20:06
そうなのよ! 私もBROOKさんと同じ。
ライブドアに飛ばず。
なので入ってないだろうなあ。 今問い合わせしてるんだけど、もしかしたら楽天→ライブドアがTB全滅かも。

これ、観ている時はいいんだけど、終わってよく考えると、すーっと過ぎてしまった感がありました。
が、やっぱりヘイリー・スタインフェルドですかね。 うまかったです。
6. Posted by にゃむばなな   2011年03月24日 21:11
rose_chocolatさんへ

確かにこの映画は後に残るものがあるかと聞かれれば、ヘイリーちゃん以外はやっぱり印象が時間が過ぎると共に薄くなるところがありますよね。
それがオスカーで無冠に終わった要因なのかも?
7. Posted by ノラネコ   2011年03月24日 22:33
オリジナルが大好きなので期待しましたが、これは見事に超えていました。
未見でしたら是非見比べてみてください。
全く変わらない部分と、40年の時の流れを感じさせる部分がはっきりとわかると思います。
8. Posted by YUKKO   2011年03月25日 00:03
ヘイリーちゃんが可愛くって素敵。あとはインパクトなかったです。
ただ、ラストの哀しみは良かったです。
切ないです。
9. Posted by にゃむばなな   2011年03月25日 16:10
ノラネコさんへ

おぉ〜、オリジナルはそんなに面白いのですか。
是非このリメイク版と見比べるためにも見てみますよ。
10. Posted by にゃむばなな   2011年03月25日 16:14
YUKKOさんへ

ここまでヘイリーちゃんが魅力全開ですと、今後の彼女がどうなるかが注目ですね。
女優として大成するのか、それとも子役は大成しない路線を歩むのか。
11. Posted by SOAR   2011年03月26日 00:31
思ったほどクセのないストレートな作品で、そこがよかったと思います。
満点の星空のシーンは引き込まれました。ジェフのカッコよさが際立ちましたね。
12. Posted by にゃむばなな   2011年03月26日 12:43
SOARさんへ

一般的にはクセのない方が好まれるからこそ、この映画もオスカー候補になったのでしょうね。
でも逆にコーエンらしさが薄まってことが、無冠に終わった理由だったのかも。
あの星空のシーンが良かっただけに、無冠は少し淋しいですね。
13. Posted by えい   2011年03月27日 22:10
こんばんは。
確かに、コーエン風味のブラックな部分には欠けていましたね。
何も知らずに観たら、
彼らの映画と当てられなかったかも。
そう言えば、初期の『ミラーズ・クロッシング』も
そんな感じだったような…。
14. Posted by オリーブリー   2011年03月27日 23:54
こんばんは。

男性の方、皆さん評判が良い!
クセがなくストレートで分かりやすかったけど、いまひとつ乗り切れませんでした。
ホント、リトル・ブラッキーにはウルウルでした。
15. Posted by にゃむばなな   2011年03月28日 08:11
えいさんへ

『ミラーズ・クロッシング』の時はまだコーエンファミリーが出演してくれていた分、多少コ−エン色はあったと思いますが、今回はそれもなかったですからね。
確かに何も知らずに見ると分からないですよ。
16. Posted by にゃむばなな   2011年03月28日 08:15
オリーブリーさんへ

西部劇は男性受けすることが多いですからね。
その辺りも多少高評価に繋がったとは思います。
リトル・ブラッキーの活躍に関しては星空の冷たさと見事にリンクしてましたよね。
17. Posted by yukarin   2011年03月31日 12:50
TB全くだめですね^^;
西部劇はやっぱりだめでした。
前半1時間寝ましたもん。
少女のために頑張るおじさん2人は良かったんですけどね。
18. Posted by にゃむばなな   2011年03月31日 16:59
yukarinさんへ

ほんま、いつになったらTBは元に戻るんでしょうね。

で、西部劇はダメでしたか。まぁ勧善懲悪型の分かりやすいストーリーでなかったこともあったのかも知れませんね。
19. Posted by ジョニーA   2011年04月05日 05:23
トラバさせてもらいます。
マット・デイモンだって、言われなきゃ
気付きませんでしたよ。最初ずっと、
マット・ディロンかと思ってましたしw
デイモンも、もうすっかり猿臭が消えま
したネェ〜〜〜〜〜
20. Posted by にゃむばなな   2011年04月05日 22:17
ジョニーAさんへ

ほんま、マット・デイモンを「アメリカのジミー大西」と言っていた頃が懐かしいですよ。
いつか猿が進化して人間になるように、マット・デイモンも進化してマット・ディロンになるのでしょうか?
21. Posted by えふ   2011年04月23日 21:00
マティが必死に河を渡った後から、
ルースターやテキサス・レンジャーの態度に
変化が現れたあたりから見入ってしまいました。
特に最後にルースターがマティを抱えて必死に走る姿は感動でした。
22. Posted by にゃむばなな   2011年04月23日 21:11
えふさんへ

あの星空の下でのシーンは感動的でしたね。
もちろんそこに至るまでのああいう物語があったからなんでしょうけど、何か心に来るものがありましたよ。
23. Posted by ノルウェーまだ〜む   2011年06月05日 01:34
やっぱりさすがにゃむばななさんです☆
私はコーエン兄弟らしさが出てないなぁーと思って見ていたのですが、なんの、しっかりアメリカ社会を皮肉って、静かに笑っていたのですね。
他人を蹴落としてばかりのアメリカが、真の勇者として目覚める時は来るのでしょうか・・・?
24. Posted by にゃむばなな   2011年06月05日 13:09
ノルウェーまだ〜むさんへ

コーエン好きとしてはもう少しブラックジョークがほしかったのですが、まぁこれはこれでといった感じでしたね。
しかしアメリカもそろそろ「真の勇者」としての本格的な道を歩むべきですよね。

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