2011年04月16日

『神々と男たち』

神々と男たち修道士として生きることに意味があるのか。殉教者として死ぬことに意味があるのか。
1996年にアルジェリアで起きた過激派イスラム集団によるフランス人修道士誘拐及び殺害事件を映画化し、2010年カンヌ国際映画祭ではグランプリを、セザール賞では作品賞などを受賞したこの作品。フランス映画らしく淡々とした描き方に退屈に感じるシーンはあれど、これを映画化したことに深い意義を感じる映画でした。

フランス映画といえば、ハリウッド映画とは違い、時に説明不足に感じるほど淡々と描きつつ、なおかつ分かり易く観客に感情移入させるような描き方をしない作品が多いですが、この映画もまた「これぞフランス映画」と言わんばかりの淡々さ。
なので、それを退屈と感じてしまうと楽しめない映画ではあります。

ただイスラム教徒である村人から慰留を求められるほど修道士として立派に生きていたあの7人もまたテロリストの脅威に晒されると死を恐れる普通の人間であり、そんな彼らが村人から慕われる修道士と死を恐れる一人の人間との間で自分たちは「どうすべきか」よりも「どう生きるべきか」で悩み苦しむ姿を見ていると、不思議と多少退屈に感じようが睡魔が襲ってくることがないんですよね。

死ぬために修道士になったのではない。
殉教者として死ぬことに意味があるのか。
生きるために修道士になったのだ。
アルジェリアを去りフランスに戻るべきか。
自分はまだ成すべきことをしていない。
村人と共にこの地に留まるべきか。
修道士として最後まで神に仕えるという信念を貫くのか。

そして彼ら7人が一つのテーブルを囲み出した「残る」という結論と、「白鳥の湖」を聞きながら取る文字通り最後の晩餐となった食事。
この時、ワインというキリストの血を飲み、涙を流し震えていた体を静かに落ち着かせ、死を覚悟したこの7人の心の中は神への信仰心で満たされていたのでしょう。

クリスマスの夜に、手当てが必要な仲間のために医師や薬を要求するも大人しく引き上げた過激派たちとの交流を見る限り、キリストを信じていようがアラーの神を信じていようが、神を信じる心が同じであれば殺し合いはなくなるはず。
ですから彼らの出した「残る」という結論は神に仕える者として出した「平和への希求」でもあったのでしょう。

深夜らじお@の映画館は彼らの美しい賛美歌に聞き惚れました。

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acideigakan at 21:27│Comments(8)clip!映画レビュー【か行】 

この記事へのトラックバック

1. 神々と男たち  [ LOVE Cinemas 調布 ]   2011年04月16日 21:51
1996年にアルジェリアで起きた武装イスラム集団によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を映画化。命の危険に恐怖し、逃げ出したい気持ちとの間で揺れる修道士たちの心の葛藤を描いた作品だ。主演は『華麗なるアリバイ』のランベール・ウィルソン、監督は俳優でもあるグザ
2. 【TIFF 2010】『神々と男たち』 (2010) / フランス  [ Nice One!! ]   2011年04月16日 22:22
原題:Of Gods and Men / DES HOMMES ET DES DIEUX 監督:グザヴィエ・ボーヴォワ 出演:ランベール・ウィルソン マイケル・ロンズデール オリヴィエ・ラブルダン フィリップ・ロダンバック ジャック・エルラン ロイック・ピション グザヴィエ・マリー...
3. *『神々と男たち』* ※ネタバレ有  [ 〜青いそよ風が吹く街角〜 ]   2011年04月16日 23:17
2010年:フランス映画、グザビエ・ヴォーヴォワ監督、ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデイル、オリヴィエ・ラブルダン、 フィリップ・ローデンバック、ジャック・エルラン出演。
4. 神々と男たち  [ 象のロケット ]   2011年04月18日 05:47
1990年代、北アフリカ・アルジェリアの小さな村で、フランス人のカトリック(シトー会)修道士たちが質素な共同生活を送っていた。 彼らはイスラム教徒の地元民とも友愛関係を築き、診療所も運営している。 しかし内戦により、イスラム過激派とアルジェリア軍との衝突は激
5. 神々と男たち 【DES HOMMES ET DES DIEUX】  [ 映画と旅行、にゃんぱらりんな日々 ]   2011年04月21日 17:40
「アーメン・イッシュラー」修道士クリスチャンは教会にやってきたテロリストにコーランを引用し、キリスト教徒とイスラム教徒は隣人同志であると説く。 異なる宗教であれ、互いを尊重し理解を深めることはできるのだと知らしめたシーンの素晴らしさ。それなのにやってくる...
6. 「神々と男たち」梅田ガーデンシネマ  [ YUKKOのI LOVE MOVIES ]   2011年05月05日 20:51
1996年アルジェリアで起きた武装イスラム集団によるとされるフランス人修道士の誘拐事件を題材にした映画です。第63回カンヌ映画祭審査員特別グランプリを受賞しました。エンタメ性 ...
7. 神々と男たち  [ 新・映画鑑賞★日記・・・ ]   2011年10月23日 23:37
【DES HOMMES ET DES DIEUX/OF GODS AND MEN】2011/03/05公開 フランス PG12 120分監督:グザヴィエ・ボーヴォワ出演:ランベール・ウィルソン、マイケル・ロンズデール、オリヴィエ・ラブルダン、フィリップ・ロダンバッシュ、ジャック・エルラン、ロイック・ピション...
8. 神々と男たち  [ いやいやえん ]   2011年11月12日 09:04
アルジェリアで実際に起きた原理主義者によるフランス人修道士誘拐・殺害事件を題材にした作品。 内戦のさなか、質素に穏やかな共同生活を送っていた修道士と地元民たち。ところがイスラム過激派によるテロが激化し、フランス政府からは帰国命令が。帰るべきか、留まる

この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2011年04月16日 21:53
あの白鳥の湖に乗せたアップのカット。音楽しかないけれど、彼らの想いが伝わる衝撃的なカットでした。
私はあれ観たさにもう1回行ったんですが、2度目も絶句するほどの感動がありましたよ。
2. Posted by にゃむばなな   2011年04月16日 22:13
KLYさんへ

あのシーンで初めて「白鳥の湖」がこんなにも悲しい曲だと知りましたよ。
あれは本当に音楽の使い方といい、俳優陣の表情の見せ方といい、素晴らしいの一言でしたね。
3. Posted by rose_chocolat   2011年04月16日 22:26
gooの方がまだまだ工事中なんですけど、これだけ間に合わせました。まだまだ時間かかります〜

これ本当に「神々」なんだなあと思いました。
決断した時、彼らの魂もそれほどに純粋になりきったように思えて。
素晴らしかったです。
4. Posted by にゃむばなな   2011年04月17日 19:53
rose_chocolatさんへ

この7人はたまたまキリスト教の修道士であっただけで、キリスト教もイスラム教も深く言及しようとしていないところがいいですよね。
本当に神に仕える者としての決断の前に宗教は関係ないんだと思いました。
5. Posted by にいな   2011年04月21日 17:39
最後の晩餐のシーンでは私も我慢できずに号泣でした。
覚悟はしていたとはいえ、怖かったんだろうと思います。神に仕えるものと言っても人間ですから。静寂の中でゆっくりと進むストーリーに見ている私もいろいろなことを考えました。
いい作品でした。
6. Posted by にゃむばなな   2011年04月21日 20:16
にいなさんへ

神に仕える者といえども一人の人間。死に対して恐怖するのは当たり前。
その辺りもきちんと描いていた映画でしたよね。
7. Posted by YUKKO   2011年05月05日 20:47
修道士たちの作り上げた清貧な共同体の絆の強さに心を打たれました。最後の「白鳥の湖」が悲しくて雪の中の彼らのシーンでは涙が止まりませんでした。
8. Posted by にゃむばなな   2011年05月05日 21:20
YUKKOさんへ

修道士として自分たちはどうすべきか。その覚悟を決めた彼らの強さと美しさが本当に素晴らしい映画でしたよね。

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