2011年05月26日

『再生の朝に−ある裁判官の選択−』

再生の朝にたった2台の車を盗んだ罪で死刑を宣告される青年。血の通っていない法律を遵守する裁判官。もうすぐ死刑になる青年から腎臓の移植を待つ社長。
中国の刑法が大幅に改正され、そして香港が中国に返還された1997年に実際に起きた事件を元に描かれたこの人間ドラマ。とても静かな作品ですが、じんわりと心に響く映画でした。

盗んだ金額が3万元以上だったら死刑になるという中国の旧刑法。もちろん窃盗はダメなことですが、それでもたかが車を2台盗んだだけで死刑というのはあまりにも人間軽視で、血の通っていない法律。

そんな旧刑法と同じく、この映画も終盤まで淡々と描かれるのは血の通っていない中国の人間模様。
例えば裁判官ティエンは判決の報復行為で一人娘を殺されてしまい、付き合いのある警察関係者から「父親の仇のため判決を重くしてくれ」という要求を蹴れば恨まれる始末。
適合する腎臓が少ないことに焦りを隠せないリー社長も、死刑囚チウ・ウーに遺族に2万元を支払う誓約書を書いて腎臓を予約するなど、どれも自分の利益ばかりを優先した思いやりのないものばかり。

そして極めつけはティエンがマンションで飼っている犬を巡るくだり。警察が1ヶ月以上前から告知しているのにティエンが届出を出していないので犬を引き取るとモメるくだりも、日本ではティエンが娘を亡くした事情などを考えれば現場判断で「1日待つから明日中に届出を出すように」となるところを、中国の警察は一切引き下がらないんですよね。
これは見方によっては仕事に真摯にも見えますが、やはり人としては血の通っていない冷たい対応。

法律とは基本遵守しなければならないものですが、同時に現場レベルで血の通ったアドリブを入れる必要があるもの。法律は常に人情ありきで存在するものだと思うのですよ。

ですから車2台を盗んだだけで死刑になるチウ・ウーの刑執行直前になってティエンが意義を唱えるくだりは凄く血の通った雰囲気が映画全体を包み込むんですよね。
特にティエンが「勝手にしろ」と一度は投げやりになるところなどは、これまで怜悧冷徹に法律を遵守してきた裁判官が初めて口にした血の通ったセリフ。決して正義感に溢れるセリフではないものの、人間性が軽視されていた中国で不意に見えた人間らしいセリフだと思いました。

街も徐々に新しくなっていくのに、人命に対する意識はなかなか新しくならない中国。そんなもどかしさに心を痛めても、悲しいことに人は空腹になり食事をするしかない。その食事を拒むことは希望の光を捨てること。
それをティエン夫婦の食事シーンやチウ・ウーが獄中で食事を拒むシーンを何度も見せることで強調するリウ・ジエ監督は、さすが評判通りの実力派。

血の通った人間でいること。それが美味い食事を味わうために最も必要なこと。
これから先、血の通った中国がこれまで以上に美味い中国料理を提供してくれることを祈るばかりです。

深夜らじお@の映画館は昨秋に中国を訪れてからは初めての中国映画です。

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acideigakan at 21:02│Comments(0)clip!映画レビュー【さ行】 

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