2011年07月02日

『あぜ道のダンディ』

あぜ道のダンディこんな時代に見栄を張ったおじさんをやっている。それがダンディだ。
団塊の世代を父親に持つ者としては、まるで自分の父親を見ているかのような映画でした。そう、不器用で見栄張りで素直じゃないのだけれど、どんな時にも子供の前では意地張って「大丈夫だ」と言ってくれる父親はみな郷ひろみよりもダンディなのです。

光石研さんにとって俳優人生33年ぶりの主演映画となった本作。しかも共演が田口トモロヲさんということで見た目は本当に輪を掛けて地味。でもそれがどこにでもいる団塊の世代オヤジって感じがして凄くいいんですよね。

例えば妻を亡くしたとはいえ宮田が年頃の息子・俊也や娘・桃子とロクに会話がないところを始め、プリクラもPSPも「機械」の一言で括ってしまうところ、特に知識もないのに分かっているふりをして失敗するところなど、どれもまるで自分の父親を見ているかのような親近感があっていいこと。

特に腹痛を訴えて「自分はガンだ」と勝手に決め付けて落ち込んだり、「店員に聞かずとも分かる」と意地張って対戦ゲームの本体を間違って買ったりなどは、本当に何してんの!と15年前の私なら思ってしまうのですが、石井裕也監督と同じく30歳前後の年頃になった今の私なら、そんな見栄を張りたい父親の気持ちも分かってしまうんです。

だって男という生き物は守るべき者のために生きている存在。誰かに勝つとかではなく、自分の全てを賭けて何よりも大切な家族をあらゆる不安から守り抜く戦いに身を投じてきた存在。
ですからその歴戦の雄姿を知れば知るほど、未だにあらゆる不安から家族を守るために安月給でも戦っている戦士の小さな失敗など、微笑みで軽く流してあげたくなるんですよね。そういう失敗するところも含めてダンディなんだと思いたくなるんですよね。

ダンディというのは「格好良く生きる」のではなく「自分が格好良いと思って生きる」こと。個人的にはそう思っているので娘の援交友達に「メスブタ」と言っちゃう宮田だけでなく、宮田とは正反対に意地を張らずに俊也と遊園地で遊んだり、桃子とプリクラを撮ったり、宮田に何度言われようが似合わぬ帽子を被り続ける真田も別の意味でダンディなのかも知れませんね。

そんなダンディたちが父親と同じような沸点を持つ俊也と父親のことを考えてセキュリティがしっかりした部屋を選んだ桃子を東京に送った後に酌み交わす酒もまた味があっていいこと。
例え真田が見送ってくれた直後にトラックで事故り子供たちにフォローされようとも、ダンディであることに意地を張る姿がまたダンディである彼らが酌み交わす酒はダンディに生きている者にしか味わえない最高の美酒のはず。

宮田が突然「うさぎのダンス」を踊りだすくだりで亡くなった妻までも参加するなど蛇足部分も多いコメディ映画でしたが、ただ団塊の世代の父親を持つ30代の我々には自分の父親もまたダンディだ!と思えた映画ではなかったでしょうか。

ちなみに「今更父親にどう感謝の気持ちを伝えたらいいのか分からない」と言っていた俊也のような人には、毎年父の日と誕生日にお酒などを贈る形で感謝の気持ちを伝えることをオススメします。
私は数年前から紫蘇・わさび・トマト・牛乳といった変り種の焼酎を贈ってます。さて次はどんな変り種焼酎にしましょうか?何かオススメとかありますか?

深夜らじお@の映画館にとってダンディといえば坂野さんより郷さんのイメージが強いです。

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この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2011年07月03日 22:41
プレゼント、いいですね。
でも多分貰ったからと言って子供の前で大喜びはしないですよね。一言「おう、ありがとう。」で済ますんだろうな。でもきっと心の中ではめちゃくちゃ嬉しいんだと。
そんなオヤジの生き様を追いかけて成長してきたけれど、きっと永遠に親父のカッコよさには追いつけないだろうなと思います。
2. Posted by にゃむばなな   2011年07月04日 12:31
KLYさんへ

そう、貰っても分かり易い大喜びはしないですが、嬉しそうなのは子供を30年もやってると容易に見て分かりますね。
多分我々の父親ってそういう格好良さで生きてきた世代であり、息子にとっては永遠に超えることのできない、でも追いかけ続ける存在なんでしょうね。
3. Posted by えい   2011年07月13日 16:38
真田が宮田の息子に、
父親の気持ちを説明すると
「そんなこと、分かってますよ」と
食ってかかるところがなるほどな…と。
いまの若い人たちのクールな一面が
なんとも言えませんでした。
4. Posted by にゃむばなな   2011年07月13日 19:40
えいさんへ

現代っ子ってクールに見せているだけで実はチキンな人間ばかり。
自分の言いたいこともきちんと言えていない。
でもやっぱり熱いモノは持っている。
そんな感じがするシーンでしたよ。
5. Posted by 悠雅   2012年01月25日 23:15
他人から見たら「?」と思うことでも、
自分が信じて貫こうとしているダンディズムと、そんな、かっこいいのか悪いのかわからないオジサン。
ほとんど同年代の女から見たら、超かっこいいとは言えないけれど、可愛い存在に思えます。
最初はどうなるかと思っていた子供たちでしたが、
両親に愛されて育ったことがよくわかる言動が見えてきて、とっても安心しました。

6. Posted by にゃむばなな   2012年01月26日 09:05
悠雅さんへ

同世代であれ、親であれ、この世代のオッサンたちを知っている人間には何とも言えないものがこの映画にはありますよね。
不器用でもきちんと愛は子供に伝わっている。それがいいんですよね。
7. Posted by ジョニーA   2012年03月24日 02:40
田口トモロヲさんの方を主役に据えて、光石
さんがフォローに回るヴァージョンの「あぜ
道のダンディ2」も観てみたいです〜。
ワチシ的には、ウサギのダンスシーンがあっ
て何とか印象に残る作品になった感じがしま
す。もしなかったら・・・ダンディ坂野の
ように、アッっちゅう間に記憶から忘れ去ら
れる一発屋芸人みたいな映画になってたカモ!
8. Posted by にゃむばなな   2012年03月24日 09:12
ジョニーAさんへ

そのヴァージョンもいいですね。似合わないと言われてもあの帽子をかぶり続けるダンディを描くのも。
あとあのウサギのダンスは亡くなった妻まで出ていたのが凄く違和感を覚えましたね。
そこまでする必要はないのではないか?って。

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