2011年08月19日

『BOX 袴田事件 命とは』

BOX袴田事件命とはこの世で最も重い罪、冤罪。
無実の人間の人生を破滅に追い込み、正義を守るはずの組織を犯罪組織に変え、そして冤罪を犯した者は裁かれることのない、この世で最も憎むべき罪。
1966年に静岡県清水市で起きた袴田事件を、一審の静岡地裁で死刑判決文を書いた熊本典道元裁判官の2007年の告白を元に描かれたこの映画は、裁判員制度が導入されているこの時代だからこそ、もっと注目されるべき作品だと思いました。

熊本典道元裁判官と袴田巌死刑囚の生い立ちを描くOPは白黒映像で始まり、1966年6月30日に起きた袴田事件からカラー映像になるこの映画。
まずこの白黒からカラーになる演出で、「この袴田事件は過去のものではない。今もなお続いている事件なのだ」という強烈なメッセージが受け取れます。

そしてそこから次に見えてくるのは冤罪が今もなお無くならない理由の数々。
例えば警察の取調べに至っては、もはや犯罪組織の拷問と同じ。連日行われる12時間以上の取調べ、袴田氏への睡眠妨害、取調室での暴力行為。さらに1年後に味噌樽から証拠衣類が見つかったという捏造としか思えないことも平気で行う。

本来正義を守るはずの警察が自らの保身のため、犯罪組織化して無実の人間を犯罪者に仕立て上げるなんて、同じ冤罪事件でもある足利事件で無罪が確定した菅家氏が「当時の警察担当者にも謝罪してほしい」と仰られたのも、この犯罪組織化した警察の取調べを見れば納得です。
逆にこれほどの犯罪行為が行われておりながら、それが立証されるどころか、罪にも問われないことが恐ろしすぎますよ。

また自らの保身のため、一人の人間の命が掛かった裁判を多数決で決める裁判官も犯罪者と同じ。結局裁判官も人を裁く立場にいることに傲慢になった人間でしかないのか。裁判所が正義を司る最後の場ではなかったのか。そんな苛立ちしか覚えませんでしたよ。

周防正行監督の『それでもボクはやってない』でも描かれていましたが、一人の命や人生が掛かっているにも関わらず、「忙しい」とか「保身のため」とか「傲慢なプライドのため」といった下らない理由で、警察や裁判官が正義を見失い犯罪組織化することで繰り返される冤罪事件。

仮に冤罪を犯した警察担当者や裁判官が重罪に問われる制度があれば、冤罪事件もなくなるのかも知れません。しかし現実ではそんな制度もなければ、取り調べの可視化に反対する警察関係者も少なくない中で、裁判員制度によって冤罪を減らそうという努力しかなされていないんですよね。
つまり最後の正義は裁判官から裁判員に移ったと考えてもいいということではないでしょうか?そしてそれは司法制度の根本を揺るがす重大なこと。

ただこの映画はあくまでも熊本典道元裁判官の視点で描かれた作品です。それが限りなく真実に近いものであっても、100%真実であると断定できない部分も含んでいる作品です。
でも冤罪に関わった自分を「死刑にしてくれ」と妻に泣きながら懇願する熊本元裁判官の姿を見ていると、これをどこまでが真実と捉えるかはこの作品を見る人の正義を守る心次第。

あなたなら、死刑と言えますか?

正義心の強い警察官や裁判官に巡り合えるのはもはや宝くじに当たることと同じようになってしまった昨今、正義を守れるのはもはや一般市民だけ。
もはや冤罪は他人事ではない時代に私たちは生きているのです。

深夜らじお@の映画館は袴田事件に関しては絶対に死刑とは言えません。

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acideigakan at 22:01│Comments(4)clip!映画レビュー【は行】 

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1. BOX 袴田事件 命とは  [ LOVE Cinemas 調布 ]   2011年08月19日 22:16
1966年に起きた「袴田事件」、実際にまだ袴田死刑囚は45年近い長きの間を拘置所の中で恐怖におののきながら生きている。本作はその裁判を担当した3人の裁判官の内の一人で、納得が行かないまま判決を下してしまった熊本裁判官の苦悩を描き出している。主演の裁判官を

この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2011年08月19日 22:21
難しいところですよね。日本の刑事裁判は起訴されたら99%有罪。これって恐ろしい数字ですよ。ただ、逆に言うと被害者からすれば実に心強い数字になる訳です。アメリカのように司法取引で被害者家族が血の涙を流すような悔しさを味わうこともないし。
だからこそ裁判官は尋常ならざる心で己を律する必要があるのでしょうが、そこを信じるのか信じないのか…私は中々言いづらいです。
2. Posted by にゃむばなな   2011年08月20日 16:36
KLYさんへ

起訴されたら99%有罪になるこの数字の裏側で、冤罪だけはこの数字に含まれずという事実があるんですよね。
冤罪を犯した者も罪に問うべき。
私はこの映画を見て、強くそう思いましたよ。
3. Posted by にいな   2011年08月20日 23:42
今だ苦しんでいる袴田さんのことを思うと本当にやるせない気持ちです。

どうみても検察側の捏造証拠を何故覆せないのでしょうか?
一体誰の為の人権なんでしょうか?検察官も裁判官も「良心の呵責」を感じていないのです。
4. Posted by にゃむばなな   2011年08月21日 19:35
にいなさんへ

検察や警察の捏造を裁判官が守っていると考えるのが、この映画を見ると妥当だと思えてきますよね。
所詮警察も裁判官も人間。良心の呵責よりも出世を選ぶんでしょうね。
それでよく正義云々を語れるなと思いますよ。

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