2011年08月31日

『神様のカルテ』

神様のカルテ医者が向き合うのは病気か、それとも患者か。そのどちらかを選ぶかで、その医者が人生で何を残すのかが決まる。
長野県在住の現役医師が書いた小説にして、本屋大賞にもノミネートされた原作の映画化ということで、公開1ヶ月以上前から各大手書店で予告編を流しまくっていたこの映画。その大々的な宣伝に見合うだけの感動はありませんでしたが、それでも普通にいい映画だと思いました。

『60歳のラブレター』の深川栄洋監督の最新作ということで少しは期待していたのですが、正直なところ前半はもう半テンポ速く!と思うほど、のんびりしすぎ。
加えて櫻井翔・宮崎あおい・池脇千鶴といった若手にあまり魅力が感じられずでした。

でもこれは別に若手3人に魅力がないのではなく、加賀まりこ・西岡徳馬・柄本明といったベテラン勢が素晴らしいうえに、また深川監督も若手よりベテラン勢を撮るのが巧いんですよね。
特に恐らくこの演技で来年の日本アカデミー助演女優賞を受賞するだろうと思われる加賀まりこさんが登場してからの映画の締まり具合を考えると、私が邪推するに深川監督は熟女好きだと思われす。

さてそんな私の邪推はともかくとして、この映画を見ていると医者もまた特別な職業ではないように思えました。
というのも画家が絵を残すように、作家が文章を残すように、写真家が写真を残すように、医者もまた治療法という「形あるもの」を残す一方で、絵を見て感動するように、文章を読んで感動するように、写真を見て感動するように、医者もまた治療行為を通じて患者に感動という「心」を残しているんですよね。

本来なら新しい治療法を見つける研究をして多くの人の命を救うのが医者の使命かも知れません。
でも患者に感動を与えるのも医者の仕事。絵を見る人に感動を与えるのが画家の仕事であるのと同じように、読者に感動を与えるのが作家の仕事であるのと同じように、写真を見る人に感動を与えるのが写真家の仕事であるのと同じように、患者に最後の幸せな時間を感じてもらうのも医者の大切な仕事なのでしょう。

そして教師が教えながら生徒からも教えられることがあるように、どんな職業でも誰かに感動を与えることは同時にその誰かから自分を大いに成長をさせる「心」を与えてもらっていることなのでしょう。

画家や作家、写真家がファンからの手紙でさらにいい作品を生み出すように、医者もまた患者からの感謝という「心」で成長していくもの。
そしてその「心」での成長には定年も能力的限界もなく、それどころか死を迎えてもなお誰かの心に残ることで成長を続けていくもの。

ですから「万歳」という門出を祝う言葉も、もしかしたら「1万歳になるまで成長してほしい」という願いを込めた言葉なのかも知れません。
桜が咲き誇る様も友人たちから掛けてもらう言葉も形には残りませんが、心には一生残るもの。
そんな桜満開の下宿先から「万歳」という言葉を送られ出て行く学士殿のシーンが個人的にはクリちゃん先生と安曇さんのやりとりよりも強く印象に残りましたよ。

てな訳で前半のアルコール依存症患者を診察するシーンで、とある患者に対してだけ「この人はアルコール依存症に見せかけて、裏でゴルフ仲間を透明にしているに違いない!」と思ってしまったのは私だけではないはずと思えた映画でした。

深夜らじお@の映画館は古狸先生の「クリちゃん」発言がある限り、この映画はTV放映できない気がします。

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11-58.ゴーストライター■原題:The Ghost Writer■製作年・国:2011年、イギリス・ドイツ・フランス■上映時間:128分■鑑賞日:9月10日、ヒューマントラストシネマ渋谷(渋谷)■料金:1,800円□監督・脚本・製作:ロマン・ポランスキー□原作・脚本:ロバ

この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2011年08月31日 20:03
たしかに“普通にいい映画”だったと思います。
大きな感動という感じではなく、観終わってみたら、心にスッと入っていたような・・・。

古狸の“栗ちゃん”発言は、私も気になりました。
2. Posted by にゃむばなな   2011年08月31日 21:22
BROOKさんへ

大手書店であれだけ推していたので、まさか本当に普通にいい映画で終わるとは思いもしませんでしたよ。
でもまぁ普通にいい映画でも十分だと思いますけどね。
3. Posted by KLY   2011年08月31日 23:56
加賀さん上手かったですねぇ。
若手2人も良かったですが流石でしたよ。というより加賀さんが櫻井くんの演技を引き出していたようにすら思えました。
ありがちな医療ドラマでも難病どらまでもなく、言葉こそ風変わりでしたがとても現実的なお話だと思いました。
4. Posted by かのん   2011年09月01日 07:16
東宝映画で宣伝も派手でしたので意外な地味さに戸惑いましたが「普通にいい映画」はこの映画に対しては良い褒め言葉かもしれませんね。

私も加賀まりこさんの演技は助演女優賞をとれるかもと思いながら観てました。
5. Posted by AKIRA   2011年09月01日 11:04
あのアル中患者は怖かった!(爆

人間同士の触れ合いが丁寧に描かれていて,
そこからハートを感じましたね。

良い作品でした。
6. Posted by にゃむばなな   2011年09月01日 20:28
KLYさんへ

そうそう、難病とかではなく、どこにでもあるお話にしているところがこの映画のいいところなんでしょうね。
だからこそ風変りな言葉も面白く見れるのかも知れませんね。
7. Posted by にゃむばなな   2011年09月01日 20:32
かのんさんへ

派手な宣伝のために多少作品の評価が下がっているのでは?とちょっと心配してますが、それでもそこそこ評判はよろしいようですね。

ただ来年の日本アカデミーでは大々的に評価されるんでしょう。そして加賀さんが助演女優賞を受賞するんでしょうね。
なんと分かりやすい賞なことか!
8. Posted by にゃむばなな   2011年09月01日 20:34
AKIRAさんへ

世間の目は誤魔化せても、我々映画ファンの目は誤魔化されませんぞ!なアル中患者さんでしたね。
あの患者さんがもう少し絡んでくると、個人的にはちょっと評価が上がったかも?です。
9. Posted by FREE TIME   2011年09月01日 23:01
こんばんは。
自分も鑑賞して来ました。
出演者達の好演も光っていて、見応えのある作品に仕上がっていました。
医師という立場の難しさも認識する映画だったと思います。
10. Posted by kajio   2011年09月02日 09:54
なるほど、深川監督は熟女好きだったんですね(笑)

前半のテンポがゆっくりなのは、地方都市が舞台だから有りだと思うんですけど、

人の命を直接扱う現場が舞台なのに、皆良い人に見える様にまとめられていたのはちょっとなぁ、と思いました…
11. Posted by mori2   2011年09月02日 12:49
確かに、ベテラン陣が効いてましたね〜。
大作ではないけれど、夏の終りにホッコリできる“佳作”って気がしました。

>「クリちゃん」発言
↑う〜ん、どうでしょうね〜?(^^;
12. Posted by にゃむばなな   2011年09月02日 14:23
FREE TIMEさんへ

医者という立場上、どちらを選んでも間違いでないというのが辛いところですよね。
でもどちらの立場も必要なもの。
クリちゃん先生の選択もまた正しいということなのでしょう。
13. Posted by にゃむばなな   2011年09月02日 14:24
kajioさんへ

確かに『孤高のメス』のように悪役が必要だったと私も思います。
悪役がいた方がよりお話が締まりますからね。
14. Posted by にゃむばなな   2011年09月02日 14:26
mori2さんへ

ベテラン勢の活躍は素晴らしかったですね。

で、櫻井クンが主演ならTV局もその辺りは完全無視して放映しますかね?
15. Posted by YUKKO   2011年09月08日 08:09
深川監督の映画なんで、期待したのですが、トロかったですね。時代が今でないようでしたね。なんか、ファンタジー映画みたいでした。
16. Posted by にゃむばなな   2011年09月08日 17:28
YUKKOさんへ

確かに時代が一昔前のような感じはありましたね。
その辺り設定が曖昧だったのも事実。
まぁ製作陣もどこか櫻井翔・宮崎あおいありきで作った部分もあったのでしょう。
だからトロく感じるのかも?
17. Posted by えめきん   2011年10月12日 08:12
こんにちは。返信遅れて申し訳ありません。

山場が少なくて、救急医療の緊迫感があまり感じられなかったのが残念でした。主人公をはじめとした登場人物たちも、なんだか漫画っぽくてリアリティが感じられなかったです。

嫌いではないんですが、どうにも刺激不足な印象でした。
18. Posted by にゃむばなな   2011年10月12日 12:54
えめきんさんへ

いい話なんですが、そう、刺激が足りないんですよね。
全体的に薄味。どこかで濃い味を出してもらわんとね〜。

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