2011年09月01日

『未来を生きる君たちへ』

未来を生きる君たちへ人は憎しみの連鎖から逃れることが出来るのだろうか。
第83回アカデミー賞で外国語映画賞を見事に受賞したこの作品は、現代に生きる全ての大人が見るべき映画です。未来ある子供ではなく、子供に未来を託している大人が見なければならない映画です。
それを強く感じさせる静かなる秀作でした。

殴られたら殴り返す。仲間を殺されたら、怪我をした敵を殺す。その憎しみの連鎖で今もなお争いが続いているこの世界。
しかもそれはパレスチナ、イラク、アフガニスタン、とあるアフリカの地といった紛争地域から、ニューヨーク、日本、デンマークといった見かけでは平和と言われている場所まで、人がいる場所全てで日々繰り返される悲しき連鎖。

その悲しき憎しみの連鎖から逃れるにはどうしたらいいのか。
単純にバカな人間を相手にしなければいいのかも知れませんが、でも死人を罵倒するビックマンや暴力修理工ラースのようなバカな人間は憎しみの連鎖から逃れようとしている人に対して汚い言葉と暴力で、再び憎しみの連鎖に引き戻そうとしてくるもの。
いくらアントン医師がビックマンを一人の患者として診ていようとも、ラースを一人の大人として接していても、バカな人間にはそれすら伝わらないのか。

ではそんなバカな人間を排除できれば、憎しみの連鎖から逃れられるのかといえば、それもまた正解ではないのがこの世界。
ビックマンを殺しても難民に及ぶ危害が減る訳でもない。ラースの車を爆破してもアントン医師に平和が訪れる訳でもない。
それどころか、爆破に巻き込まれた母娘の命が失われれば、また憎しみの連鎖が増大して、さらに逃れられなくなる。

つまりイエス・キリストが「右の頬をぶたれたのなら、左の頬を差し出しなさい」と仰られたように、相手を受け入れることでしか憎しみの連鎖から逃れることはできないということなのでしょう。

アントン医師のように「相手はバカだから」と逃げてもダメ、マリアンのように相手の謝罪の言葉を受け入れないのもダメ、エリアスのように逃げてばかりでもダメ、クリスチャンのように復讐を考えてもダメ、クラウスのようにきれいごとばかりを並べていてもダメ。
憎しみの連鎖から逃れるには和解が成立した後のイジメっ子ソフスのように、「一緒に行かないか」と相手に歩み寄ることが何よりも必要なんですよね。

人類の歴史は憎しみの連鎖から逃れようとしてきた歴史。多くの先人たちが憎しみの連鎖から逃れようと努力してきた歴史。
1000年前の世界と比べても現代は少しは憎しみの連鎖から逃れることができるようになった世界になったはずですが、それでもまだ完全に憎しみの連鎖から逃れることはできていないのが現実世界。

だから未来を生きる子供たちへ。いつの日か「昔の人は憎しみの連鎖で争いごとをしていたなんてアホみたい」と言える日が来るように、現代を生きる大人たちも憎しみの連鎖から逃れるように頑張るから、君たちもそれを受け継いでくれ。

いつの時代も子供は逃げない大人の背中を見て育っているのです。
私たちもまたそうやって育ち、大人になったのです。
今、大人が最も忘れてはいけないこと。それをこの映画を見てもう一度思い出すべきではないでしょうか。

深夜らじお@の映画館は改めて謙虚さがいかに大事かをこの映画を通して学びました。

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暴力。応酬。赦免。

この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2011年09月01日 22:48
綺麗ごとでは済まされない現実を突きつけられた作品でした。無論私たちとてこの憎しみの連鎖から解き放たれる解答を持ち合わせているわけではありません。しかしそれでも子供と共に話す必要はあるのだと思いました。きっとその子供たちはまた子供たちへと、連綿と語り継ぐ必要があるのでしょうね。いつのひか完全に解き放たれるためには。
2. Posted by ノラネコ   2011年09月01日 23:21
人間が文明を持った瞬間から抱え込んだジレンマを、ストレートに問いかけた秀作でした。
簡単に答えの出るテーマではありませんが、映画を観た人は少なくとも考えざるを得ないでしょう。
中学生位の学校の授業で観せても良い作品だと思います。
3. Posted by にゃむばなな   2011年09月02日 14:20
KLYさんへ

我々の親世代も、そのまた親世代もこうやって憎しみの連鎖から逃れようと努力いてきたんですよね。
でも未だに世界はこの有様。
だからこそ我々も次の世代のためにも努力を続けなければならないんですよね。
4. Posted by にゃむばなな   2011年09月02日 14:21
ノラネコさんへ

私が見た上映回でも中学生の男の子がいましたが、彼らがこの映画を見てあれこれ考える以上に、我々大人はもっと考えなければならないんですよね。
中学生の授業に大人も混じって見るべき映画なのかもしれませんね。
5. Posted by オリーブリー   2011年09月05日 12:06
こんにちは。

これまでのビア作品と比べると、テーマが普遍的だからでしょうか、ちょっと物足りなさはあったのですが、まずは家族の関係や絆を保ち、日常から気をつけなくちゃと思いました。
6. Posted by にゃむばなな   2011年09月05日 17:30
オリーブリーさんへ

確かに過去の作品と比べると無難な内容になっているきらいはありますよね。
でも東日本大震災があった今年だからこそ、アメリカ同時多発テロから丸10年の今年だからこそ、何か特別に感じるものはありましたね。
7. Posted by かのん   2011年09月14日 23:09
普遍的なテーマと言ってしまえば簡単ですけど、重い問題をとても身近な視点で考えさせてくれる作品だったと思います。

いくつかの暴力のケースとそれぞれ違う登場人物たちの行動はこのテーマの奥深さを実に上手くとらえ描いていたように思いました。
8. Posted by にゃむばなな   2011年09月15日 19:41
かのんさんへ

こういうテーマって遠い世界のことと思われがちなところを、きちんと身近なこととして描いているのが素晴らしいですよね。
悲しみの連鎖は世界のどこでも続いているんでしょうね。
9. Posted by dai   2011年09月17日 07:59
>未来ある子供ではなく、子供に未来を託している大人が見なければならない映画です。

本当にそうなんですよね。全ての大人がこういう問題から逃げずに向き合っていくことこそ、子供に対しての本当の教育になるのではと思いました。
10. Posted by にゃむばなな   2011年09月17日 10:10
daiさんへ

子供は大人の背中を見て、態度を見て育ちますからね。
だからこそ大人がこの映画を見て、今自分が何をすべきかを考えないとダメですよね。
11. Posted by laifa   2012年03月05日 22:14
にゃむばななさん、こんばんは!
で、この映画。
凄く考えさせられる内容でした。

>イエス・キリストが「右の頬をぶたれたのなら、左の頬を差し出しなさい」と仰られたように、相手を受け入れることでしか憎しみの連鎖から逃れることはできないということなのでしょう

難しいですねー。
私なんかは、到底自分に嫌な事した人間を、簡単に許したり、受け入れられそうも有りませんもん・・・。
12. Posted by にゃむばなな   2012年03月05日 22:29
latifaさんへ

自分にとって嫌な人間を受け入れられないのは人として当然のことですが、それで全てが解決する訳ではないのがこの世の中なんですよね。
憎しみの連鎖から逃れるためには、受け入れるべきものは受け入れるしか仕方ないのでしょう。

それとチョン・ジヒョンちゃん結婚のへコメントを移動させていただきました。
じっくりとコメントのお返事を書きたいもので。
13. Posted by 悠雅   2012年10月10日 23:32
的はずれな邦題が多い中、
この邦題はテーマを意訳したユニークなものでした。
憎しみの連鎖を断ち切ることの難しさを重々承知しながらも、
それでも、理想に向かって僅かでも進んで行ってほしい。
未来を生きる子供たちに託すために、
今を生きるわたしたちが成すべきことを見失わないでいなければ、と思います。
14. Posted by にゃむばなな   2012年10月11日 17:36
悠雅さんへ

ほんと、この邦題は巧いですよね。
だからこそ、憎しみの連鎖を断ち切るための人類の長い戦いの中に自分たちもいることを実感させてもらいましたよ。

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