2011年09月02日

『日輪の遺産』

日輪の遺産この映画の製作陣に戦争で命を落とした先人を敬う気持ちはあるのでしょうか。
こんなヌルい映画で亡くなった19人の少女と野口教諭の想いを語れると思っているのでしょうか。
浅田次郎先生が初めて自由に書いたという原作を映画化したこの作品ですが、個人的に佐々部清監督作品のヌルさと浅田次郎先生作品の予想を覆さない展開があまり好きでないこともあってか、あまり楽しめない映画でした。

まずこの映画は終戦前後のことを描いているのに現代劇が長い長い。もちろん一人生き残った金原久枝と日系アメリカ人のイガラシ元中尉の2人の回想録として語られるストーリーなので、現代劇が必要不可欠なのは分かります。
でもOPの卒業式シーンも後半のイガラシ老人の話も長い長い。「できちゃった結婚じゃないのか?」「一応教師ですから」なんて会話をしている暇があるなら、とっとと本題に移れ!って思いましたし、そもそも一人の回想録にせず別々の2人の回想録にする必要があったのか?というのも大きな疑問でしたよ。

で、その本題である真柴少佐・小泉中尉・望月曹長と森脇女学校生徒20人・野口教諭との、マレーの虎がマッカーサーから奪った900億円の財宝を敗戦後の祖国復興のために隠匿するくだりはそこそこ面白いのですが、ただ軍人3名と民間人21名のほっこりとした交流は巧く描けているのに、真柴少佐が任務完了後の冷血命令撤回に奔走するくだりでの緊迫感が全くなくヌルいこと。

さらに帝国軍人が敗戦の言葉を聞きたくないからという理由はまだしも、級長が風呂掃除を理由に玉音放送を聞かないとは何たることか!
「七生報国」の鉢巻をした19名の少女が青酸カリで自害する理由はまだ理解できます。自害する理由は違えど、あの時代なら敗戦に悲観したり、日本帝国の魂を守るためという理由で多くの人が自ら命を絶たれたことでしょう。
でも金原久枝が玉音放送を聞かない理由って、もはや望月曹長と夫婦になってもらうための無理矢理な展開としか思えないんですよね。それ以外にあの時代において一女学生だけが玉音放送を聞かない理由がありますか?

また少女たちの想いを守るためなら、小泉中尉も日本語ではなく英語でマッカーサーの前で泣き叫ぶべきですよ。少女たちへの想いから日本語で泣き叫んだと言いたいのでしょうが、マッカーサーにその思いを伝えれないのなら何の意味もなし。
結果的にマッカーサーに伝わったからいいものの、あれは展開的に酷いです。

そしてこの映画で一番酷すぎるのは老女・金原久枝が家族と共に思い出の壕を訪ねるラストシーン。
まずアメリカ軍施設とはいえ、いきなり背景がレベルの低い合成映像ってどないやねん!製作陣にヤル気はあるのか?
次に孫娘の涼子は何故にあのタイミングでデキちゃった宣言してんねん!しかも結婚どころか恋も満足にできなかった19名の少女が眠る場所で言うべきことか?
そして何で涼子や婚約者の後藤にまで野口教諭や19名の少女の姿が見えてるねん!
久枝おばあちゃんに19名の級友たちが見えるのは分かりますが、涼子や後藤は直接関係ないやん!あのシーンは「きっと今おばあちゃんの目には級友たちが見えているんだろうね」やろ!

あの時代を生きていた人の想いも、あの時代に命を落とした人の想いも、今の平和な日本にとってはかけがえの無い大事な遺産。
その遺産に対してこんなヌルい映画を撮っていていいのか!
世間では評判がよろしいようですが、個人的にはもっと深みのある映画にしてほしかったですよ。

深夜らじお@の映画館はもっと真柴少佐の人柄を深く掘り下げてほしかったです。

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この記事へのコメント

1. Posted by BROOK   2011年09月03日 06:39
たしかに現代劇の部分が長いと思いました。
その辺り、原作ではどうなっているのか、気になるところではあるのですが・・・。

私も最後の級友たちが孫たちにも見えていたのは、どうも納得出来ません。
やはりあれは久枝だけに見えて欲しかったです。
2. Posted by 悠雅   2011年09月03日 09:11
原作は、たくさんの視点から謎解きの方式で真実に迫るという形で構成されている小説なので、
まだこれでも語り手が整理されているほうなのです。
直接関係のない語り手が何人も登場して、もっと関係なさそうな話にもなる。
でも、やがてじんわりと繋がるものを感じ取るという形なので、
小説を未読で、というか、映画化するのであれば、視点はどっちかでええやん、というご意見も当然なんだろうと思います。
映画化に向きそうに思える浅田作品って、実は映画向きではないのだと思う昨今です。
3. Posted by SOAR   2011年09月03日 14:28
現代パートを使って回想録として語らせるスタイルにしては少々長くてしつこかったかもしれませんね。
導入の一手法として安直に用いているわけではない点はよかったと思うのですが。
あーでも、あのチャラいデキ婚エピは確かに不要ですねぇ。
4. Posted by にゃむばなな   2011年09月03日 19:20
BROOKさんへ

肝心なのは昭和20年の話と戦後の話なのに、現代劇があそこまで長い理由がよく分からないんですよね。
そんな時間があるなら、もっとあの当時の真柴少佐たちを深く描いてほしかったですよ。
5. Posted by にゃむばなな   2011年09月03日 19:23
悠雅さんへ

原作は相当ややこしい作りになっているみたいですね。
映画化する際は原作通りにするのも大事かも知れませんが、ややこしいものを分かりやすくアレンジするのも監督たちの仕事。
しかしそれにしても浅田作品って映画化に向いていないんでしょうね。
6. Posted by にゃむばなな   2011年09月03日 19:24
SOARさんへ

あのデキ婚エピソードは必要だったのでしょうかね?
別にあのエピがなくても作品としては十分成り立つと思うんですよね。
7. Posted by たいむ   2011年09月04日 09:08
浅田作品の映画の評価は、どうもパッキリ分かれるような・・・(^^;

2人の回想には??となりましたが、ひとりの視点では無理がある内容とおもったら納得できましたが。
8. Posted by にゃむばなな   2011年09月04日 19:46
たいむさんへ

一人の視点で無理だからこそ複数の視点にするのは分かるのですが、それを映画的にもう少しまとめてほしかったですね。
個人的にはまとまりの悪い感じがしましたよ。
9. Posted by yukarin   2011年09月05日 12:52
こんにちは♪
見終わったあとは結構良かったなと思ってたんですが、よく考えるとツッコミどころが出てきました^^;

ラストの少女たちが現われるシーンはやはり久枝おばあちゃんだけにして欲しかったですね。
10. Posted by にゃむばなな   2011年09月05日 17:46
yukarinさんへ

どんなにいい映画でも一度入り込めないとダメになるのは誰にでもあることですが、個人的にはOPからの現代劇の長々しさでダメになってしまいましたよ。
そしてあのラストの久枝おばあちゃん以外にも見えるってねぇ…。
11. Posted by kajio   2011年09月07日 18:10
イガラシが取材を受ける形で振り返るエピソードは確かに違和感がありましたが、

『この世はすべて舞台〜』

の台詞で、まだ着地はできていた様な気はしますが、できちゃった婚のアレは…

佐々部監督には『俺が流した涙を返せ』と言いたいです。
12. Posted by にゃむばなな   2011年09月07日 21:20
kajioさんへ

原作を読まれた方の話ではもっと多くの視点で語られるそうなのですが、久枝とイガラシで絞ったのはまだ理解できるとしても、やっぱりデキ婚のアレはねぇ〜。
個人的には佐々部作品ってどうも好きになれませんわ。
13. Posted by latifa   2011年09月09日 10:32
にゃむばななさん、こんにちは^^
見ていて、疑問に思ったり、なんかなぁ〜って部分が、こちらに的確に書かれていたので、確かに!って何度もうなずいちゃいました。

>OPの卒業式シーンも後半のイガラシ老人の話も長い長い。「できちゃった結婚じゃないのか?」「一応教師ですから」なんて会話をしている暇があるなら、とっとと本題に移れ!って思いましたし、そもそも一人の回想録にせず別々の2人の回想録にする必要があったのか

あと、特にココですよ。
>級長が風呂掃除を理由に玉音放送を聞かないとは何たることか!
14. Posted by にゃむばなな   2011年09月09日 20:38
latifaさんへ

世間では好評らしいこの映画ですが、個人的にはどうもダメでしたね。
特にあの時代を描いているのに、現代劇が長いやら、玉音放送を聞かないやら、ツッコミどころが多すぎるのもダメダメでしたわ。
15. Posted by FREE TIME   2011年09月19日 19:36
こんばんは。
自分もラストの部分には不満で、ちょっと興ざめしてしまいました。
でも、実際に沖縄のような悲劇もあったので、決してフィクションとして捕らえられない作品である事も考えさせられます。
途中で現代シーンに戻る部分は、「おひさま」でも意識していたのでしょうか(笑)
16. Posted by にゃむばなな   2011年09月19日 20:08
FREE TIMEさんへ

どうなんでしょうね〜。「おひさま」を意識しましたかね。
戦時中の悲劇を描くのなら、現代劇など不必要なものを極力減らすべきなのに、どうしてこんな映画になってしまったのでしょう。
特にあのオチは最悪ですよね。

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