2011年09月07日

『ブラッド・シンプル』

ブラッド・シンプル浮気妻アビー、その相手レイ、嫉妬に狂う夫マーティ、そして汚い仕事を頼まれた私立探偵。この4人が見せる哀しいほど滑稽な殺人事件。
コーエン兄弟のデビュー作にして最高傑作と評するファンも多いこの映画。悲劇へとひた走るどうしようもない人間の可笑しさや哀しさ、そして映像の美しさ。コーエン兄弟の全てがここに詰まっていると断言できる素晴らしさでした。

『ファーゴ』『ノーカントリー』を始め、小さな計算違いや思い込みが雪だるま式にどんどん取り返しのつかない方向へと人間を導いていく様を描くのがとにかく巧いコーエン兄弟。
その人間の可笑しくも哀しい悲劇をシンプルにたった4人の人間関係だけで見せ切るこの作品は、とにかく全てがシンプルであるがゆえに予想不可能の連続なんですよね。

例えば真夜中の道路で死んだはずのマーティが息絶え絶えながらレイの車から逃れようとするくだり。
一度はマーティにトドメを刺そうとスコップを振り上げるレイが、対向車でやってくる巨大トレーラーを見てマーティを抱え上げる。もしかしてマーティを轢き殺しにするのかと思いきや、自分の車に押し込めるドキドキ感。
さらにトレーラーがレイの横を通過する時にあたかもマーティの足がレイを蹴り飛ばすのでは?と思わせるカットも入れるなど、本当に終始予測不可能の連続。

しかも生き埋めにしたため死んだかどうかの確認が取れないマーティが復讐に来るのではと怯えるレイがアビーと話している時に唐突に投げ込まれる新聞やレイたちの緊張感が高まる時により耳に響くシーリングファンの風を切る音など、日常では当たり前の光景や自然音を効果的に使っているのも巧いこと。

そして『ノーカントリー』のモーテルのシーンの原点は改めてこの映画だったのだと思わせる、レイが私立探偵に殺されてからのアビーと私立探偵のせめぎ合い。
特にナイフで串刺しにされた私立探偵の手、私立探偵が発砲したことで空いた壁の穴から漏れる光、そしてまるで串刺しにされた右手とナイフを抜き取ろうとする左手が別人であるかのように思わせるあの映像がたまらなく素晴らしいこと。

今この場所ではマーティの命を奪ったレイが殺され、そしてアビーと私立探偵が命のせめぎ合いをしているというのに、そんなことなど微塵も感じさせないようなあの美しい構図。
さらに私立探偵がアビーと顔を会わせることもなくドア越しに撃たれて倒れるあのラスト。
まるでどうしようもない人間の哀しくも滑稽な殺人で流れる血は、水道管についた露よりも無駄に流れている。誰にも知られずに流れ消えていく。
そんなブラックユーモアを感じさせる終わり方がまたコーエンらしくて素晴らしかったです。

てな訳でやはりコーエン作品は過去に遡れば遡るほど、その作風は素晴らしいと思える映画でした。これをコーエン兄弟の最高傑作と評するファンが多いのも改めて納得できる素晴らしさでしたよ。

深夜らじお@の映画館はコーエン兄弟が大好きです。

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acideigakan at 22:08│Comments(0)clip!映画レビュー【は行】 

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