2011年11月19日

『アントキノイノチ』

アントキノイノチ人は生きているのではない。生かされているのだ。
第35回モントリオール国際映画祭で革新的な質の高い作品に贈られるイノベーションアワードを受賞したこの作品。
さだまさし原作ということで『眉山』と同じく予想範囲内の展開しか迎えない作品ですが、ただ自分は誰の「アントキノイノチ」で生かされているのかを考えさせられる映画でした。

現代社会は本当に歪です。誰もが他人との繋がりを求めながらも、他人を出し抜くことを考え、他人の気持ちを考えずに自分勝手なことを言いながらも、他人からの評価を気にして本音が言えない。
本来なら他人との縁を求めるなら他人の縁の下の力持ちになるように努力すべきですし、自分勝手でも本音を言うなら他人の評価ではなく気持ちを考えるべきなんですよね。

なのに杏平に2度も助けられたのに感謝しない松井も、自分への陰口さえ黙殺してきた杏平も、親友に裏切られたと勝手に思い込んで自殺した山木も、そして現場に立ち会うことなく遺品整理を依頼するだけの遺族もみんな自分のことばかり。
だからストレスが溜まり、その結果、陰湿なイジメを繰り返したり、鬱病になったり、ナイフを持って暴れたり、身内の遺品の受け取りを拒否したりするんだと思うのです。

でも戦場で戦友を亡くした先人たちがみな「自分は生かされている」と語られるように、人は誰もが誰かの命のおかげで生かされているもの。誰かの命を意識することで生かされているもの。
言い方を変えれば「命が繋がり、受け継がれている」になるのですが、子が親の命のおかげで生かされているように、ゆきは流産した子供の命のおかげで、杏平は親友・山木の命を意識することで生かされているんですよね。

私も5年前に亡くなった愛犬のことを想うと、いくら犬の寿命が人間より短いとはいえ、愛犬との家族という絆が自分を「私が生きている限り、愛犬が生きていたことはこの世から忘れ去られることはない」という存在として生かせてくれているんですよね。
つまりある意味私も愛犬の遺品なんです。

夫婦茶碗や留守番電話、写真などは言葉をもって語りませんが、それでも数多くの遺品は確かにここで生きていた人のことを雄弁に語ってくれます。
その言葉にならない言葉を拾い集めるのが遺品整理のお仕事。名優・原田泰造が演じた佐相のように、優しい表情と言葉でされるお仕事。

自分は誰かの「アントキノイノチ」で生かされている。それを感じて初めて人は優しく生きることができるはず。
言い換えれば「アントキノイノチ」をムダにしないように生きていこうと思える者だけが優しくなれるはず。
その想いがあれば、猪木大先生の「元気があれば何でもできる」は凄く深い意味をなす名言にも思えると同時に、その想いを呼び起こすのがもしかしたらあの「元気ですかぁぁ!」なのかも知れませんね。

深夜らじお@の映画館は時々天邪鬼になるので「いくぞー!1,2,3」と来ると「ハッスル!ハッスル!」と言いたくなってしまいます。

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この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2011年11月19日 21:27
ハッスルゆーたら台無しじゃないですかw
冗談はさておき思ったより硬派なドラマでした。にゃむばななさんが言うとおりで、命のリレーなんですよね。我々の親が私たちに繋ぎそれをまた次世代に繋いでゆく。そしてそれは全てアントキノイノチなんですね。
色々見方はあるでしょうけども、私は結構気に入ってます。
2. Posted by にゃむばなな   2011年11月19日 21:52
KLYさんへ

そうそう、台無しになる分、そこでコケてもらうんですよ。いわゆる小ボケですわ。

まぁそれはさておき、ほんと思ったよりも硬派な作品でしたね。
こういう映画を見て命の大切さを考えてくれる人が増えることを祈るばかりですよ。
3. Posted by SOAR   2011年11月27日 22:57
「あのときの命」が「アントキノイノチ」になっちゃうんだよ、のシーン。「元気ですかぁ!」に至るまでの流れがなんともほほえましかったです。
二人の間にある重苦しい空気がさっと晴れるような感じでしたよね。

だからこそ、できればその後の悲劇は見たくなかったなあと。
4. Posted by にゃむばなな   2011年11月28日 09:13
SOARさんへ

海岸で叫ぶというのがまた閉塞感からの脱却を意味していて良かったですよね。
でもなぜに最後にああいう悲劇を持ってくる必要があったのか、ちょっと疑問ですよ。

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