2012年01月02日

『永遠の僕たち』

永遠の僕たち人はどこで生と死の線引きをするのだろうか。
命の終わりだけでは線引きできない「生きている死」と「死んでいない生」。それを臨死体験をした少年、余命3ヶ月の少女、そして特攻青年の幽霊で描いたガス・ヴァン・サント監督の優しさ溢れる演出に、改めて日本の礼節が持つ深い意味を感じました。

居眠り病と男娼を描いた『マイ・プライベート・アイダホ』、悲観と友情を描いた『グッド・ウィル・ハンティング〜旅立ち〜』、差別と不屈を描いた『ミルク』など、これまで「生きている死」と「死んでいない生」を何かに置き換えて描いてきたガス・ヴァン・サント監督。

この映画でも両親の死を心の中で整理できずに他人の葬式巡りをするイーノックを「生きている死」、余命3ヶ月の命でも悲観することなく人生を楽しむアナベルを「死んでいない生」と描いている一方で、その両方を兼ね備えた存在としてヒロシという特攻青年を描いているところになぜか不思議な温かみを感じるんですよね。

それは監督なりの新たな死生観なのか、それとも彼がゲイだとカミングアウトするまでの心の葛藤の具現化なのかは分かりませんが、このヒロシという存在に生と死の線引きは一つではない、どこで線引きするかで何もかもの感じ方が変わってくるような気がしてくるのです。

というのも例えばヒロシが遺した愛する女性への想いや劇中で掛かるビートルズの楽曲など、亡くなった方が遺した想いは時間が経つにつれ自然と温かみを増すものです。その想いを発信した人は既に死んでいるのに形のない想いだけは永遠に死なずに生きている人たちに温かなものを残しながら生き続けています。
逆にイーノックのように目標もなく生きている人はまさに「生きている死」、言い換えれば「生きているのか死んでいるのか分からない存在」そのもの。こういう存在は不思議と死を好み、自殺や殺人に走る傾向も強いと歴史が語っています。

つまりこの「死んでいない生」と「生きている死」を踏まえて、改めて生と死の線引きをするとどうなるでしょうか。
「死んでいない生」は永遠に語り継がれては多くの人に生きる意味を与え、「生きている死」は生きている者に死という魅力を語り始める。
逆に「生きている死」は生きている者に命が続く温かさをもう一度感じさせ、「死んでいない生」はやがて訪れる永遠の別れという恐怖を語り始める。

生きていることを当たり前と感じるのか、それとも有難いと感じるのか。死を別れと捉えるのか、それとも旅立ちと捉えるのか。
お辞儀や挨拶、死者を敬うなど日本人が大切にしてきた礼節。それはある意味生と死の線引きをする行為。
別れを告げる式を書く告別式もまさに生と死の線引きをするための儀式。その儀式をもって死者を旅人に変え、死者との思い出を永遠のものにする。

ラスト、アナベルの告別式で彼女との思い出を語らずに思い出し笑みを浮かべるイーノック。その彼の表情は生と死の線引きを行い、心の整理をした者の表情。
あの表情ができなければ、故デニス・ホッパー閣下の伝説も伝説にならずに消え去っていくだけなのです。

深夜らじお@の映画館の2012年最初に見た映画はこの作品です。

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これは好みのタイプの映画でした。4つ☆

この記事へのコメント

1. Posted by オリーブリー   2012年01月02日 23:14
明けましておめでとうございます。
今年もどうぞ宜しくお願いします。

独自の空気感の中、ヒロシの存在が効いていましたね。
加瀬さんが良かったし、若い二人の役者さんの今後が楽しみになりました!
2. Posted by にゃむばなな   2012年01月03日 09:12
オリーブリーさんへ

こちらこそ今年もよろしくお願いします。

ほんと、加瀬さんの柔らかな存在感が良かったですよね。
普段なら軽い扱いにされることの多い日本人俳優さんがこういう風に活躍していることは素直に嬉しいですよ。
3. Posted by KLY   2012年01月03日 13:06
しかしなんとも不安定で壊れそうで心がざわめく作品でした。日本人としては加瀬君が好演していたのが嬉しいところです。彼のタイプからしていわゆるハリウッド大作には呼ばれないかもしれないけれど、こういった作品には日米問わずはまりますね。
4. Posted by q 不安定さが素敵   2012年01月03日 16:48
ヾ(≧ω≦【☆ぁけましておめでとぅ☆】
今年も、のんびりのほほん記事upの私だけどよろしく
.:*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚
ヒロシへ
君に出会った頃の僕は抜け殻だった 僕は彷徨っていた。
僕は心も身体も何処かに投げていた 自分でも何か解っていなかった
言うなれば全てが不安定 崩れ果てて行きそうだった
でもねヒロシ、救われたよ アナベルは僕をゆっくり溶かしたよ
そしてヒロシ、君は僕の心をコトリと動したよ
生死が全てでは無いというコト 人は残す側も残される側も辛い
誰もが死は苦しい。切ない。 でも思い出は素敵なものにも変わる
君は教えてくれたね 僕はゆっくりと気が付いた
ねぇヒロシ。 愛する気持ちは永遠だ 死して姿や言葉は失せても
「愛しいと思う自分の気持ち」 それは永遠なんだね
あ、そうそうヒロシ。愛しい人への手紙 ちゃんと渡せたかい?
5. Posted by にゃむばなな   2012年01月03日 21:02
KLYさんへ

ほんと、彼にはこういう作品が凄く似合いますよ。
これからも演技派として世界中の作品で活躍してほしいものですよ。
6. Posted by にゃむばなな   2012年01月03日 21:05
qさんへ

ヒロシへの想いがこの映画の肝でもあるんでしょうね。
7. Posted by YUKKO   2012年01月03日 22:12
私はこの作品が2011年の最後の作品でした。ヒロシが最後にアナベルをモーニングで迎えに来た時に安心とともに涙がでました。生きている事は素晴らしいと思ってしまいました。
8. Posted by にゃむばなな   2012年01月04日 09:11
YUKKOさんへ

最後のモーニング姿のヒロシには優しさが溢れてましたよね。
ほんと、生きているって素晴らしいですよ。
9. Posted by yukarin   2012年05月17日 18:25
こんにちは♪
なぜ特攻青年?と思いましたけど、確かにこのヒロシの存在が温かみを出してましたよね。
加瀬さんはぴったりの役どころでしたね。
10. Posted by にゃむばなな   2012年05月17日 20:20
yukarinさんへ

加瀬さんのキャラクターのおかげもあって、この映画にはピッタリの役でしたよね。
彼もこれから大作などに出演していくのかな〜。
11. Posted by 悠雅   2012年06月21日 22:53
曖昧な境界線の上にいる人たちの側に立った視線と、
台詞は多くを語らないのに、観た人にたくさんのものを感じさせる表現が素晴らしいですね。
DVDでしか観れなかったのは残念だけど、特典も良かったので、これはこれでいい出会いだったと思いました。
主役の若い2人の瑞々しさと、日本人らしい佇まいの加瀬亮のコンビネーションも良くて、
一気に、大好きな作品の1本になりました。
12. Posted by にゃむばなな   2012年06月22日 20:30
悠雅さんへ

この映画って、どこか日本的な雰囲気がありますよね。
だからヒロシの存在に違和感を感じないのかも知れませんね。
13. Posted by latifa   2012年07月08日 11:26
にゃむばななさん、こちらにも^^
これ、にゃむばななさんが、今年、2012年最初に見た映画だったんですね。
最近は、映画によっては、結構早くDVD化しますね・・・。

この映画の雰囲気や映像、好みでしたー。確かに、どこか日本的な雰囲気のある作品でしたね。
14. Posted by にゃむばなな   2012年07月08日 15:48
latifaさんへ

このどこか日本的に感じる雰囲気のおかげで、ヒロシの存在に違和感を感じなかったのかも知れませんね。

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