2012年01月14日

『マイウェイ 12,000キロの真実』

マイウェイ生きるという信念。走るという信念。それを貫くために着た日本・ソ連・ドイツの3つの軍服。
京城からノモンハン、ジュコーフスキーを経てノルマンディーまでの12,000キロを共に歩んだ長谷川辰雄とキム・ジュンシクを通して描かれる日本と韓国のあるべき姿。ここに我らがカン・ジェギュ監督の熱い魂に感涙せずにはいられませんでした。

『シュリ』の衝撃をリアルタイムで経験した映画ファンには今でも特別な存在であるカン・ジェギュ監督。
民族統一を夢見た映画を撮りつつ、『ブラザーフッド』以来6年ぶりとなったこの新作では12,000キロの数奇な運命を共にした日本人と朝鮮人の姿を描いていますが、その裏には日本と韓国のみならず、韓国と北朝鮮の関係にも通じる「恨み合う過去を捨て、共に高めあう未来を生きよう」というメッセージが込められているような気がするんですよね。

というのも、ノモンハンで野田に虐げられていたジョンデがシベリアの収容所では班長アントンになったことで逆に日本人を虐げていたように、満州を日本に侵略された中国が現代では尖閣諸島を侵略しようとしているように、人間という生き物は状況が変われば立場も変わりますが、なぜか恨み合う心だけは何ら変わらない悲しい生き物です。

本来なら出逢った頃の辰雄とジュンシクのように状況や立場など関係なく切磋琢磨しあえる関係が望ましいはずなのに、戦争中であろうと見かけは平和になった現代であろうと恨み合う心だけは全然変わっていないんですよね。

それを時に辰雄とジュンシクを鏡写しのように描いたり、時に走り続けるジュンシクの信念と走ることをやめた辰雄の迷いを対照的に描いたりすることでより強調する演出の巧さはさすがカン・ジェギュ監督。

特にジュコーフスキーで退却しようとする兵士を銃殺するロシア人将校を見て、辰雄がノモンハンでの自分の姿を重ね合わせるくだり。そこには辰雄が自分の愚かさと非道ぶりを知ると同時に「井の中の蛙」が恥ずべき姿である、つまりは狭い見識ほど愚かで恥ずべきものはない、それは現代の日韓関係だけでなく、南北関係にも通じることだと言っているようにも思えるのです。

ですから冬山を越えてからの生き別れを経て、お互いを思いやれるようになった2人がノルマンディーで再会を果たすくだりでは、片耳が聞こえないジュンシクのために辰雄が気遣う姿もあってか、不思議と温かな雰囲気を感じるんですよね。

大陸の東端・京城の街中で走ることで切磋琢磨し合ってきた2人が大陸の西端・ノルマンディーの砂浜で走ることで友情を深める。そんな2人が見る海に沈む夕陽がどれだけ美しいことか。12,000キロという距離がどれだけ故郷や友人を愛しく思わせるものか。

そしてノモンハンでのソ連軍を彷彿とさせるノルマンディー沖から押し寄せるアメリカ軍との戦いに身を投じる2人が最後の最後で生きるために、祖国に帰るために走る姿。もうそこには日本も韓国もない。切磋琢磨し友情を深め合ってきた2人が自分の命のために、友の命のために必死に走る。もうその姿に号泣ですよ。

さらにキム・ジュンシクが最後に見せる命を賭けた友情。辰雄がこれからも走る続けるように、自分の分まで走り続けるようにという想いを込めた友情。これにも号泣号泣ですよ。

ラスト、キム・ジュンシクとなった長谷川辰雄がジュンシクと一緒に「2人で」走るロンドンオリンピック。
奇しくもそのロンドンオリンピックが再び開催される2012年は辰年。キム・ジュンシクや長谷川辰雄と同じ想いを持った選手たちが平和のために走るロンドンオリンピックに心から本当の平和を願いたいと思います。

深夜らじお@の映画館にとってカン・ジェギュ監督作品は特別です。

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うーーん・・・。すいません、1つ★半・・・くらいかな・・・

この記事へのコメント

1. Posted by ノルウェーまだ〜む   2012年01月15日 01:04
にゃむばななさん、こんばんは☆
号泣号泣だったのですね。
ラストのオリンピックでのシーンは、映画の全てを物語ってくれているようで感動的でした。
監督の熱い思いを感じます。
それにしても当時の彼らには、まさか他国の国籍をわざわざ取ってオリンピックに出る時代が来るとは思ってなかったでしょうね。
2. Posted by BROOK   2012年01月15日 06:31
「シュリ」はレンタルで、「ブラザーフッド」は劇場で鑑賞しました。
今回の「マイウェイ」…カン・ジェギュ監督の集大成といっても過言ではないと思いましたね。
彼の演出…私も好きです。

日本人と朝鮮人…
敗北により立場が逆転したりと、展開が面白かったです。
人間なら誰しも持っている“要素”を上手く描いていました。
3. Posted by にゃむばなな   2012年01月15日 09:04
ノルウェーまだ〜むさんへ

OPでキム・ジュンシクが走っているのに、ポスターでは長谷川辰雄が泣き叫んでいるのを見て「?」と思ってましたが、なるほど、ああいう感動を呼ぶための演出だったんですよね。
それにしても、ほんと、他国の国籍を取ってまでオリンピックに出場する時代なんて、当時の彼らからすれば信じられないことでしょうね。
4. Posted by にゃむばなな   2012年01月15日 09:07
BROOKさんへ

いやいや、カン・ジェギュ監督はまだまだやりますよ。
これが集大成というのは、ちと早いでしょう。

勝者と敗者、上に立つ者と下で従う者。
状況なんていつ変化するか分からないからこそ、他人に優しくすることが何よりも大切だと改めて思いましたよ。
5. Posted by たいむ   2012年01月15日 10:37
冒頭の説明で実話と思い込む人が少なくないんじゃないかなって。

ロンドンと辰年の組み合わせはなるほど気が付かなかったです。
でも、韓国に辰年ってあるのかな?
6. Posted by にゃむばなな   2012年01月15日 17:41
たいむさんへ

調べましたら、韓国の干支にも辰はあるそうで、しかも2012年は日本と同じ辰年!
これは偶然なのでしょうか、それとも意図したものか…。
7. Posted by KLY   2012年01月15日 22:24
この作品を単に反日的な描き方をしていると捉える人は、作品の本質が全く見えていない人だと思うのですが、恐らくは日韓ともに少なからずいるのだろうなと。
カン・ギジェ監督はむしろ未来志向で作っているのだと思いました。これからの日韓のあり方に可能性を見出せるような。
8. Posted by にゃむばなな   2012年01月15日 22:29
KLYさんへ

全くもってその通りだと思います。
この映画は過去を描いてますが、間違いなく未来へのメッセージを描いている映画。
その本質を読み取れない人だけが反日映画だなんて盲目的なことを言っているのでしょうね。
こういう人たちの考え方が改まる時代が来ることを切に願います。
9. Posted by AKIRA   2012年01月16日 17:52
「生きるという信念」
に徹したシンプルな映画でも,
しっかり見応えを提示して,
しっかり泣かせる監督に拍手でした。


10. Posted by にゃむばなな   2012年01月16日 21:15
AKIRAさんへ

ほんと、信念のある映画でしたよね。
やっぱりカン・ジェギュ監督は素晴らしい監督さんですわ。
11. Posted by えい   2012年01月16日 22:48
この監督は一作ごとに
スケールアップしながら
大味になることなく
映画のスペクタクル性を
ダイナミックに描いていく。

ぼくはひそかに
韓国のデビッド・リーンとなるのではないかと
期待をしています。
12. Posted by にゃむばなな   2012年01月17日 09:03
えいさんへ

デビット・リーンとはごっつい名前が出てきましたね〜。
でもあながちそれもありえるかもですよね。
13. Posted by yukarin   2012年01月23日 10:42
こんにちは♪
確かに未来へのメッセージが込められた作品ですね。
そうそう日本と韓国で同じ辰年なんですよね。しかもロンドンオリンピック!!
そう考えるとより印象に残る作品になりました。
14. Posted by にゃむばなな   2012年01月23日 17:48
yukarinさんへ

オリンピックという未来を夢見る猛者たちがロンドンに集まるこの年に、このような映画に出会えたことが凄く嬉しいですよ。
監督の未来に向けたメッセージをより多くの人が理解してくれますように。

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