2012年02月22日

『マシンガン・プリーチャー』

マシンガン・プリーチャーもしあなた方の子供や家族が誘拐されそれを私が助けると言ったら、その手段を選びますか?
実際に南スーダンで十字架よりもマシンガンで、武装組織LRAに誘拐された子供たちを救うために戦っているマシンガンを持った牧師サム・チルダースのこの言葉に全てが要約されている。
なのに、世界はまだ彼の行動を見ているだけでいいのか。

アメリカ公民権運動の際に非暴力を掲げたキング牧師と報復主義を唱えたマルコムXがいたように、どんな世界でも話し合いで解決を求める人がいれば、その話し合いが行われるまでの間に失われる命を守りたいと思う人は必ず存在するものです。

この映画で描かれるサム・チルダース牧師もマルコムXと同じく暴力でしか対抗できない暴力があることを目の当たりにしてきた人。
しかも生まれながらの善人とは正反対の、出所した当日から暴力・麻薬・殺人未遂を犯すような悪人でありながら、自分が犯した罪を悔いる機会を得て改心した異色の牧師。

そんな彼がとある牧師の話をきっかけにウガンダを訪れて悲惨な現状を目の当たりにし、子供を守るためにマシンガンを持つというのは凄く理解できます。
また豪華なパーティを開いても150ドルしか寄付しない無関心セレブや自分で建てた協会での説教が徐々にトゲトゲしくなることで孤立し、娘のプロムのリムジン代を出さないなど家族と関係も悪化していく様からも、彼の焦りや悔しさが滲み出ているのもよく分かります。

でも世の中にはそんな彼の行動をよく思っていない人が存在するのも確かなんですよね。それがウガンダで医療行為を行っていたあの白人の女性活動家。
彼女が「あなたは傭兵と同じ。正当な理由を見つけて人を殺したいだけ」とサムを非難する言葉の意味も分かりますが、ただ彼女の言葉って酷い言い方をすれば世間知らずなんですよね。

もちろん暴力では何も解決しないという彼女の言葉は正しいです。でもそれを車に乗せることができなかった子供たちが数時間後に銃殺されたうえに焼死体の山となって見つかった状況を目の当たりにして言えますか。LRAの夜襲に怯えていた子供たちが建物の中で眠れるだけで笑顔を見せる状況を見て言えますか。自分を襲撃したスナイパーを銃殺したら子供だったという結末を見て言えますか。

そもそも話し合いというのは知力のある人間同士が行うもの。日本やアメリカのように全国民に一定の教育が行き届いている先進国なら相手が誰であろうと話し合いができるという常識が通じても、この南スーダンや北部ウガンダのような教育がほとんど行われていない地域ではそんな常識すら通用しない。
その話し合いすらもできない相手は、話し合いをしようと車を降りきた女性活動家を銃で殴り、無抵抗な大人を殺して恐怖に怯える子供に銃を持たせ、そして今日も親を亡くした子供の命さえも何の躊躇いもなく奪うのです。それが悲しいけれども、紛れもない「現実」。

弟を探し続けるウィリアム少年の「心を憎しみで満たしたらヤツら勝ちだよ」という言葉に救われたサムが自分の目に映る子供達だけでも助けようと今日もまたマシンガンを持つ理由。
それがEDロールで本物のサム・チルダースが問う「もしあなた方の子供や家族が誘拐されそれを私が助けると言ったら、その手段を選びますか?」に要約されている。

別に彼の行動を肯定も否定もしようとも思いませんが、ただ一人の人間として純粋に子供の命を救おうと戦い続ける彼を応援したくなる気持ちが湧き立ってくることだけは絶対に否定はできません。
だからこそ、私はこの映画を見終わった後に声を大にして叫びたい。
なぜこの映画を上映する映画館にサム・チルダース牧師を支援するための募金箱がないのだ!

深夜らじお@の映画館は本物のサム・チルダースはデニス・ホッパー似だなと思いました。

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この記事へのコメント

1. Posted by KLY   2012年02月23日 01:08
その通りです。私もかれの行動を全面的に肯定できないし、否定もできないです。綺麗事だけでないのも事実ですし、それで救われた子どもたちがいる前では理想論は無力かと思いますから。
別に彼に対する募金じゃなくても、例えば今丁度日本は南スーダンにPKOを派遣してるんですから、それで募金箱ぐらいおいたっていいですよねぇ。
2. Posted by にゃむばなな   2012年02月23日 10:12
KLYさんへ

暴力・非暴力という議論は平和な世界にいる人間が現場のことを最優先に考えずに行うことですから、まずは最前線でこういう活動をされている方に何らかの支援をすべきなんですよね。
もちろん彼に直接支援というのが何かしら問題あるのなら、KLYさんが仰るように自衛隊への募金箱でも設置してほしかったですよ。
3. Posted by ノラネコ   2012年02月23日 21:06
募金箱はごもっとも。
いや〜しかし強烈な人物ですね。
何というか、善悪という概念ではなく、行動している人ならではの説得力があります。
私も肯定も否定も出来ないけど、重い問いを突き付けられた様な気分になりました。
4. Posted by にゃむばなな   2012年02月23日 21:19
ノラネコさんへ

そうそう、善悪とかの問題ではなく、彼の行動そのものには凄く説得力があるんですよね。
少なくとも何も行動していない人間にとやかく言われる筋合いはない!というくらいに。
5. Posted by にいな   2012年02月23日 23:34
確かに!!

募金箱はいいアイデアですよ。映画鑑賞後なら思わずいれちゃいます。

にゃむばななさんの言うように話はあいというものは知力のあるもの同志が行うもの!という言葉に納得です。LRA相手に話し合いに行ったら殺されますからね。
6. Posted by にゃむばなな   2012年02月24日 17:10
にいなさんへ

話ができる相手であるという常識が通用しない世界があるというのが恐ろしいですが、それ以上にそんな世界があることを知ろうとしない人がいるのも恐ろしいことですよ。
だからこそ、それを知らしめる行動を配給会社もせなあかんと思うんですけどね。
7. Posted by えい   2012年02月24日 23:14
映画って、事実を描いたものとは限らず、
その作者のフィルター通していると思うので、
このモデルの人がほんとうにそうかどうかは、
誇張もあるし、
すべてを信じる立場には立てないのですが、
それにしても強烈な人間像でした。
一度っきりしかない人生−−
という、ありふれた言葉が頭をぐるぐる回転。
その人生をこのような形で送っているということに、
自分とはまったく違った大きな器を感じます。
8. Posted by にゃむばなな   2012年02月25日 20:44
えいさんへ

もちろんこの映画で描かれている姿が必ずしもサム・チルダース牧師の全てではないですが、でも少なくとも彼が子供を助けているのだけは事実。
一度しかない人生をどう使うか。
彼の人生はその究極の答えだと思いますよ。
9. Posted by たいむ   2012年06月30日 14:10
やっぱり世界を救えるのは神様しか居なくって、そんな神様はどこにもいない、ってことなのかなーと。
人間って本当に自由ですよね。
10. Posted by にゃむばなな   2012年06月30日 20:18
たいむさんへ

ほんと、こういう映画を見ると本当に神様って存在するのか疑問に思ってしまいますよね。
11. Posted by ETCマンツーマン英会話   2014年08月03日 10:37
>日本やアメリカのように全国民に一定の教育が行き届いている先進国なら相手が誰であろうと話し合いができるという常識が通じても、この南スーダンや北部ウガンダのような教育がほとんど行われていない地域ではそんな常識すら通用しない。

教育は命を救うことに結びついているのですね。スーダンの現状を知ることができた素晴らしい作品との出会いに感謝です。

12. Posted by にゃむばなな   2014年08月03日 11:05
ETCマンツーマン英会話さんへ

教育の大切さは戦後日本の復興を見ても納得ですよね。
発展途上国の多くはこの教育水準の低さが現状をそのまま映し出していますからね。
13. Posted by ETCマンツーマン英会話   2014年08月05日 18:09
にゃむばななさん、お返事ありがとうございます。

>教育の大切さは戦後日本の復興を見ても納得ですよね

なるほど。あの復興は教育のおかげでもあったのですね。日本の歴史も今一度しっかりと学びたいと思いました。
14. Posted by にゃむばなな   2014年08月06日 22:46
ETCマンツーマン英会話さんへ

ドイツにしろ日本にしろ、教育がしっかりしている国は敗戦国になっても立派に復興出来るんですよね。
逆に何十年経っても復興できない国は揃って教育を疎かにしている。これは事実だと思いますよ。

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