2012年07月20日

『苦役列車』

苦役列車この憎めないダメ男をナメんなよ!
友ナシ、金ナシ、女ナシがナンボのもんじゃい。ろくでナシがナンボのもんじゃい。夢がないヤツよりは数百倍マシな人生を送っとるわ!
ダメ男になった経験がある男性なら誰しもこの北町貫多の気持ちが少なからず理解できる、男のリビドーを描いたこの作品。逆に言うと、この映画に共感できない男性は幸せな人生しか送っていない幸せ者ですたい!

第144回芥川賞受賞作を若者の等身大の姿を描くのが巧い山下敦弘監督が映画化したこの作品ですが、まずは何といっても森山未來さんのダメ男っぷりが素晴らしいこと。
役作りのために安宿に泊まり、朝まで酒を飲み、二日酔いのまま撮影現場に遅刻してきただけあるその山下監督が問答無用で太鼓判を押す演技は、清潔感ゼロで汚くコンプレックスの塊で面倒臭い、金には無頓着、プライドなく土下座するけど男の小さなプライドだけは立派にある、なのに事故を見てはビビり人足に戻るヘタレといった実際に存在する数多のダメ男の要素を全てスクリーンに映し出しているかのよう。

でも不思議なのが「こんなヤツと友達になりたくない」と思いつつも、貫多の友達になった上京組の専門学生・日下部正二よりもなぜか貫多に共感してしまうんですよね。それは多分私もダメ男を経験したことがあるからなんでしょう。

実は私もダメ男時代はよく喫煙と風俗に明け暮れてました。恐らくタバコという形あるものを跡形なく壊していく喫煙は「破壊」という男のプライドを満たす行為であり、自分のイチモツで女性がよがる姿を見て満足するセックスは「征服」という男のプライドを満たす行為なんだと思うんですよね。
そして同時に他に何も誇れるモノがないダメ男にとってはこの「破壊」と「征服」こそが自分が男であり続けるための心理的要素でもあると思うのです。

けれど「破壊」と「征服」は所詮ちんまい男のプライド。そんなモノの繰り返しでは自分がより男として惨めになるだけ。
だからこそ男にとって一番大切にしなければならないのは「誰にも迎合せず自分が自分であり続ける」というプライドを満たすこと。それが多くの場合は「夢を諦めない」ことに繋がっていくと思うのです。

世の中を見渡せば「誰にも迎合せず自分が自分であり続ける」というプライドを捨てた男はゴマンといます。
サブカル通ぶるゆで卵みたいな顔をしたバカ女に迎合する専門学生にしても、何かと渋谷だの世田谷だのに住みたがる地方出身者にしても、男なら己の信念以外に何も頼るな!形ではなく中身で勝負せんかい!ですよ。それを生粋の江戸っ子としてバカ女と正二に説教を垂れる貫多は男として凄く格好いいですし、あれだけスレておきながら自分のことを終始「俺」ではなく「僕」と言い続けた貫多の男としてのプライドを捨てなかった強さを見事に具現化したセリフだと思いましたよ。

またダメ男というのは決して「ダメな男」ではなく「今はダメなだけの男」であることを貫多が証明していくラストも何だか不思議と心地いいこと。
例え古本屋でバイトする女子大生・桜井康子の手を握手した際に舐めたり、雨の日に道端で押し倒そうとしたりしても、それは単にリビドーが溜まっているだけで、そのリビドーが何らかのきっかけで「夢を追いかける」燃料になれば、男という列車は誰にも止められない勢いと強さで走り続けることができる。
ブリーフ一丁で空から落ちてきても、事故で足の指を失おうとも、物語を書き続ける男の背中は、好きな歌を歌い続ける男の姿はこれ以上にないほど格好いいもの。

男は背中で語る生き物。無言でも生き様で人生を語る生き物。
ダメ男はこれから男として格好よく生きる準備をしているだけ。
だからこそ、ダメ男をナメんなよ!

深夜らじお@の映画館はこの作品の客層の年齢幅の広さにどの世代にもダメ男はいるものだと改めて思いました。

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この記事へのトラックバック

1. 苦役列車/森山未來、高良健吾  [ カノンな日々 ]   2012年07月20日 21:39
芥川賞受賞時の会見がとても風変わりで印象的だった西村賢太さんのその受賞作である「苦役列車」を森山未來さんを主演に山下敦弘監督が映画化した作品です。山下敦弘監督といえば ...
2. 『苦役列車』  [ ラムの大通り ]   2012年07月20日 22:54
----この映画、原作は芥川賞受賞だけど、 かなりエグイ内容だよね。 見るからに不潔そうなんだけど…。 「うん。でも作っちゃった。 この映画は、映画とは何かをあらゆる方向から 考えさせてくれる ぼくにとっては刺激的な作品だったね」 ----あらゆる方向からって? 「 そ..
3. 苦役列車  [ だらだら無気力ブログ! ]   2012年07月21日 01:09
う〜ん、全く共感できる部分が無かったので、面白く思えなかったけど、森山未來の演技が凄い。
4. 本音むき出しの猥雑な生き方が強烈 映画;苦役列車”  [ 映画とライトノベルな日常自販機 ]   2012年07月21日 03:15
★★★★平穏な暮らしのレールに乗れなかった中卒の日雇い人足の青年が、本心丸出しで生きる姿は強烈であり、とてもそんな風にはなれないよなって思います。そんな青年を演じた森山未來の役作りはお見事です。 貫太のどうしようもなさというか、サイテーっぷりというか、ダメ
5. 映画「苦役列車」感想  [ タナウツネット雑記ブログ ]   2012年07月21日 21:25
映画「苦役列車」観に行ってきました。第144回芥川賞を受賞した西村賢太の同名私小説を実写映画化した作品。映画のタイトルに反して、作中に列車の類は一切出てきません(苦笑)...
6. 『苦役列車』  [ 京の昼寝〜♪ ]   2012年07月23日 12:14
□作品オフィシャルサイト 「苦役列車」□監督 山下敦弘 □脚本 いまおかしんじ□原作 西村賢太 □キャスト 森山未來、高良健吾、前田敦子、田口トモロヲ、マキタスポーツ■鑑賞日 7月16日(月)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★ (5★満点、☆は0.
7. 俺はわるくない/Trash 〜『苦役列車』  [ 真紅のthinkingdays ]   2012年07月24日 11:25
 19歳の北町貫多(森山未來)は、父親の犯した性犯罪のために一家離散、中卒 以来日雇い人足で生計を立てる孤独な青年。読書が唯一の趣味で、古書店でア ルバイトする女子大生・康子(前田敦子)に憧れを...
8. 苦役列車  [ 映画的・絵画的・音楽的 ]   2012年07月26日 04:40
 『苦役列車』を渋谷TOEIで見てきました。 (1)本作は、私小説作家・西村賢太氏の芥川賞受賞作(2010年)を映画化したものです。  19歳の主人公・北町貫多(森山未來)は、父親が性犯罪を犯したことから故郷にいられなくなり、東京に出てきて日雇い労働者として働いてい...
9. 苦役列車  [ 銀幕大帝α ]   2013年01月13日 01:12
友ナシ、金ナシ、 女ナシ。 この愛すべき、 ろくでナシ −感想− 尿瓶片手にゲラ笑いするマエアツ。 手の甲を舐められて「ちょ、何!?」と引きまくるマエアツ。 サヨナラの挨拶代わりに頭突きを食らわすマエアツ。←すげぇ音したぞ そして森山未來とキスを交わすマエア

この記事へのコメント

1. Posted by えい   2012年07月20日 22:55
こんばんは。
ぼくもダメ男の青春だったのですが、
同じダメ男でも
『男おいどん』に近かったな…。
にゃむばななさんにいただいたコメントの中の
“ブリーフ”から、あのマンガの記憶が甦りました。
女にも縁遠かったけど、フーゾクに行く度量もなかったな…と。
2. Posted by kajio   2012年07月21日 12:22
ビジネスには繋がらない西村さんの いやごとはともかくとして…

マエアツといい、サブカルを語るゆで卵みたいな子といい じゃがいもといい、時代背景にマッチしていた女優さんのキャスティングもなかなか良かったんじゃないでしょうか。

男優だけではなく女優さんも生かした辺りからして『マイ・バック・ページ』から山下監督の手腕は確実に進化していると思いますが、今作が大コケした以上、ネクストチャンスが回ってくるのはいつの日か…?
3. Posted by にゃむばなな   2012年07月21日 14:37
えいさんへ

「男おいどん」ですか。明石出身の松本零士先生の作品とはいえ、私は全く知りませんでしたので、今度勉強しておきます。

それにしてもやっぱり男はみなダメ男の青春を経験しているのかも知れませんね。
なら、もっとこの映画がヒットしてもいいのに。
4. Posted by にゃむばなな   2012年07月21日 14:39
kajioさんへ

ほんま、女優さん選びに関してはこの山下監督は本当に巧いです。
なのにヒットしないのがねぇ〜。
原作本の中身に対する認知度が低いというのもあるかも知れませんけど、ちょっと残念です。
5. Posted by KLY   2012年07月22日 01:19
あの説教はとてつもなく痛快でした。
いやまあ客観的には僻み根性丸出し以外のなにものでもないのですが、でも私も貫多に賛成でしたもん。それでなくたって、くだらねぇことをぺちゃくちゃぺちゃくちゃくっちゃべるバカ女と、やたらそれに理解を示すバカ男にイラついてましたから(苦笑)
6. Posted by にゃむばなな   2012年07月22日 16:24
KLYさんへ

そうそう、薄っぺらいことを知ったかぶって話しているのが我慢ならんのですよね。
しかも友達のはずの正二もあの有り様ですもん。
あそこでの貫多の説教は痛快でしたわ。
7. Posted by ノラネコ   2012年07月24日 22:46
自称現役ダメ男である私的にはちょっと痛い映画でした。
主人公とはほぼ同級生なので、この時代の空気も懐かしかった。
いつか背中で語れるオトコになりたいものです(苦笑
8. Posted by にゃむばなな   2012年07月25日 22:14
ノラネコさんへ

そうですね。やっぱり男は背中で語れるような存在になれないと…と思ってしまいますからね。
いつか我々もダメ男を卒業しましょう。
9. Posted by ジョニーA   2012年07月30日 01:16
「貧乏」を異世界のことのようにしか思えない現代の若者には、1ミリも面白くない話なんだろうな〜〜〜〜。
前田敦子は子犬のような可愛さがありました♪
10. Posted by にゃむばなな   2012年07月30日 18:35
ジョニーAさんへ

そうでしょうね。「貧乏」とか「本当の金欠」とは無縁の世代には完全な異世界でしょうね。
これも時代の変化なのかな〜。

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