2012年10月24日

『北のカナリアたち』

北のカナリアいくつになっても生徒を羽ばたかせるのが先生の仕事。
湊かなえ先生の原作「往復書簡」の一遍「二十年後の宿題」を映画化したこの作品。吉永小百合をストーリーテラーに進む前半はマンネリ化したエピソード数も多く少々疲れてしまうのですが、松田龍平の登場を皮切りに全ての真実が明かされる後半に思わず涙腺を緩めてしまいました。

まずこの映画で特筆すべきなのは湊かなえ先生のお話の構成力、松田龍平と森山未來の演技力、そして子供たちの歌声以上に素晴らしい木村大作大先生が撮る北海道ならではの猛吹雪や短い春に咲く草花、荒れ狂う海といった映像の数々。

特に木村大作大先生の撮る映像はどれも壮観でありながら、どのカットも登場人物の心理状態と見事にリンクしているので、正直なところ時折阪本順治監督が挟む映画音楽が邪魔に感じることもちらほら。やはり日本を代表する撮影監督の実力はハンパないですわ。

さて映画的には吉永小百合先生が20年前を回想しながら殺人容疑を掛けられた森山未來の居所を探すため、教え子の満島ひかり・勝地涼・宮崎あおい・小池栄子を訪ね歩く前半がちょっと退屈。
だって教え子に会う度に「先生に謝らなければならないことがあるんです」が4回も繰り返されるんですよ。そりゃ謎解きより告解が優先されれば3人目からは「もうええわ」と思ってしまいますもん。

しかし「この人が出てくると映画が締まる」でお馴染みの松田龍平が登場すると映画が徐々に締まり始め、そして森山未來が真実を話し始めた時、つまり教え子6人全ての告解が集まった時、初めてこの先生の旅が「告解」ではなく「贖罪」の旅であったことが分かると、自然と涙腺が緩んでくること。

死を目前にした病魔に苦しむ夫、人質を助けれず生きる意味を見失った警官の間で「自分だけ生きている」ことに苦しんでいた先生。そして村中に流された心無い噂で島を出て行ったことを後悔している先生。

そんなはる先生が教え子を訪ね歩いた旅は殺人容疑を掛けられた教え子を探すためではなく、教え子の告解を聞いては前に進むために背中を押すという、教師としての職責を最後まで果たそうとする贖罪の旅。

廃校になった分校で森山未來が泣き叫び、勝地涼・松田龍平・宮崎あおい・満島ひかり・小池栄子と共に20年ぶりに6人で歌う。それは彼らにとっては大好きなはる先生と一緒に出席したかった卒業式。

護送船に乗ったダメ男演技が素晴らしい森山未來を5人の仲間が思いを叫びながら見送る。それは6人が羽ばたく姿。前に向かって進もうとしている姿。
そんな教え子たちの背中を優しく押したはる先生には実はもう一人、優しく背中を押し羽ばたかせた生徒がいた。それがあの警官だったというラスト。

生きている。
先生にとってこれ以上にない教え子からの嬉しい便り。そして教え子にとってはこれ以上にない恩師への感謝の気持ち。

「先に生きる」を書いて先生と読むこの職業。その職責は勉学よりも「生きなければならない」ことを教えるものだと深く心に残ったこの映画。
いやはや、湊かなえ先生のミスリードを生むこの構成力に見事にやられましたよ。

深夜らじお@の映画館は一番お世話になった高校時代の恩師にちょっと会いたくなってしまいました。

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湊かなえさんの原作ですが、これ脚本が微妙だなあ。 吉永小百合さんだから不倫もきれいなことのように感じるのもなんかなあ。吉永さんのイメージからして、死にゆく夫と若い警官の間で揺れる役どころってなんか合わないというか…どうしても女の情感よりも優等生的なと

この記事へのコメント

1. Posted by 映画屋   2012年10月28日 15:29
4 キャメラマンが目立つならば駄作。
演技が素晴らしく泣けたなら、役者と演出の力。
小耳に挟んだところ、原作と映画は別物なので、storyが良ければ、脚本家の力!では、ないのでしょうか
2. Posted by にゃむばなな   2012年10月28日 15:44
映画屋さんへ

キャメラマンが「目立ちすぎたら」駄作だと思いますが、まぁ詳しくは実際に見て下さい。
見ずにあれこれ言うのは映画に失礼ですからね。
3. Posted by BROOK   2012年11月03日 16:07
20年前と現在とを同時進行させ、“真相”が見えてくる展開は素晴らしかったです。
伏線の回収は絶妙でした。

北海道の厳しい自然と、
“生きるということ”をテーマにしたストーリー、素晴らしいの一言です。
4. Posted by にゃむばなな   2012年11月03日 20:54
BROOKさんへ

6人の告解が揃った時には「なるほどな〜」と思いましたよ。
このミスリードの巧さには参りました。
5. Posted by AKIRA   2012年11月03日 21:19
映像のチカラと、
役者、演出のチカラが融合。

見応えがありましたね。

終盤の見事さにやられました。
6. Posted by にゃむばなな   2012年11月04日 13:13
AKIRAさんへ

邦画としては久しぶりに力作を見た感じがしましたよ。
特に映像の素晴らしさは圧巻でした。
7. Posted by かのん   2012年11月08日 21:55
観る前は、過去作品の印象もあってどうしても吉永小百合さんありきの映画かなという先入観がありましたが、さすがは湊かなえ作品でしたね。

木村大作さんをはじめ監督、スタッフ、出演者たちが皆が実にいいお仕事をされそれが実った作品だったと思います。
8. Posted by にゃむばなな   2012年11月09日 18:43
かのんさんへ

これは本当に日本映画界の才能が結集したというような映画でしたね。
特に木村大作大先生の映像は凄かったですわ。
9. Posted by PGM21   2012年11月11日 07:54
何時もお世話になっております。

本当ははる先生のやった事は犯人隠匿に当たってしまうのですが、それも教え子ゆえにした事で最後には20年前の誤解と真実を解る年齢になった教え子に伝えた事で再び絆を取り戻したラストの合唱シーンは心に伝わるものがありました。
10歳前後でははるがどうしてあの人の事を受け止めたのは理解するのは困難ですから月日が必要だったのは十分理解しますし、信人の事件も個人的には情状酌量の余地がある事件だと感じます。
子供たちにとっては先に生きている人が先生ですが、大人になると先に知っている生きた知識を教える人が先生ですからね。
個人的には教師じゃなくても人生に影響を与えた人がその人にとって先生だと伝えています。
10. Posted by にゃむばなな   2012年11月11日 17:45
PGM21さんへ

教師という職業は凄いですよ。
なんせ他人の人生に多大なる影響を与えるのですから。
だからこそ時間を掛けてでもしなければならないことがある。
そこがこの映画のいいところかも知れませんね。
11. Posted by q  上手いねぇ   2012年11月15日 22:28
5 過去現在と細かい描きが段々と
「あ゛?話それ?で良いの?」となるのは実は狙いだった 
サスペンス展開なのに
ど・ストライク「ヒューマンもの」で、んもー涙ボロボロ泣いた〜
ヘビーなムードと厳寒の北海道の画像が素晴しい
そして。彼の叫び声にウルウル拍車
20年の月日に「センセーどうしてるかな〜」と
観終わると思い出して、またウルウルしてたの私
.:*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚:.。*゚..:。*゚..:。*゚
 
 業務連絡
 コメント「悪の教典」の記事で→q 人は費用利←とミス打ち失礼
 表裏と書きたかったの

12. Posted by にゃむばなな   2012年11月16日 20:18
qさんへ

この映画は見終わった後に、恩師に会いたくなる時点で成功だと思いますよ。
高校時代にお世話になった先生もどうしておられることやら。
13. Posted by kajio   2012年11月20日 20:13
エヴァQ公開の前日に観てきました。

吉永小百合さんも良かったんですけど、森山未來くん、そして松田龍平くんも素晴らしかったです。

実績のある宮崎あおいと小池栄子が、ワキ扱いながらもここまでオイしいところを持っていけなかった出演作は今後あるかどうか…

という意味で貴重な経験をしました。
14. Posted by にゃむばなな   2012年11月20日 22:04
kajioさんへ

ほんと、実績のある女優が完全脇役でしたからね。
こういう映画は他にないかも知れませんね。
15. Posted by FREE TIME   2012年11月26日 00:29
こんばんは。
自分も湊かなえさんの話の作り方には脱帽です。
「告白」とは違った良さがありました。
でも、主人公のはるは、教師なのに軽率な行動が多かったのが個人的には引っかかる部分でした。
16. Posted by にゃむばなな   2012年11月26日 09:16
FREE TIMEさんへ

後から考えれば「なるほど」とも思えるのですが、確かにあの先生の行動にはちょっと教師としては軽率なところはありますよね。
それでもこう見せ切るのは原作者だけでなく、監督や撮影監督の技量が大きいのでしょうね。

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