2012年10月28日

『終の信託』

終の信託尊重すべきなのは命か、幸せか。
これは『それでもボクはやってない』の周防正行監督が尊厳死をテーマにした「それでも私はやってない」なのですが、どうも説得力に欠けているというか、見終わった後に尊厳死やそれに関わる法律に関して何かを考えるまでには至らない映画でした。やはり女医・折井綾乃と患者・江木秦三の関係性が弱かったからかなぁ。

延命治療は行わないと望む重度の喘息患者を安楽死させたことは医療行為か、それとも殺人か。
同じく尊厳死を扱った『海を飛ぶ夢』でも描かれていましたが、本人が死を望もうとも尊厳死に対して深い理解がない現行の法律では尊厳死を手助けした人間は殺人罪に問われてしまう。患者本人の気持ちなど汲み取らず、まるで周囲の目を気にするかのように第三者から見た状況が真実になってしまう。

こういう法律の未熟さの中で折井女医が江木から延命治療を行わないように依頼されながら、承諾書など一筆書かせていないのがどうも気になってしまうんですよね。
もちろん失恋による自殺未遂で心がズタボロになった折井女医が勧められたオペラをきっかけに心を通わせていくことで親近感を抱くのは分かるのですが、でも医療のプロとしてはやはり患者家族のことも踏まえたうえで患者本人の意思を明確にしておくべきだと思うのです。

なのでそういうところが甘い分、折井女医が江木のために安楽死させようと薬を多用する気持ちは分かるのですが、同時に江木の真意を知らない第三者からは異常な行為に見えてしまうのは仕方ないとも見えてしまうのです。
またその医療のプロとしての甘さは、立件したいがために意図的に誘導しようとする出世欲の強い検事に反論する内容にも説得力がないように見えてしまうのです。

確かに折井女医の訴えたいことは分かります。江木のことを考えれば彼女の行為は医療行為とも言えるでしょう。
でも江木が望んだという第三者が見ても分かるモノが何もない。闘病日誌の最後の一文だけでは解釈が分かれてしまうが故に説得力がない。そうなると殺人行為である可能性を捨てきれない。医療行為であることを証明する方がより困難になってしまう。

一人の人間として、家族なのに愛する夫の苦しむ姿であっても最後の姿を目に焼き付けようとしない江木の妻よりも折井女医の方がずっと素晴らしいのですが、でも医療のプロとしては折井女医の行動は素晴らしいとは言い難い。

折井女医も医師である前に一人の人間ですが、でもその理屈は患者の前では通用しない。この映画はその辺りが弱い分、どうも説得力に欠けるように思えたんですよね。

それにしてもこの映画を見てちょっと気になったのは、周防監督が奥様である草刈民代さんのおっぱいポロリだけでなく揉み揉み舐め舐めまで描くは、ゲロを吐く次は鼻にチューブを差し込まれるシーンも描くは、イヤミな男に言葉攻めされて泣きじゃくる様子を描くなど、どこか『スウェプト・アウェイ』のガイ・リッチー監督に通ずるものがあるように思えたこと。
まぁ私も他人の性癖が云々と言えるような性癖の持ち主ではないのですが、果たして真相はどうなのでしょうか?

深夜らじお@の映画館は今年クレーム処理の仕事ばかりしているような気がします。

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うーん・・・3つ★

この記事へのコメント

1. Posted by 悠雅   2012年10月28日 22:00
これは、観る人の立場や年齢によって、
また、登場人物の誰の視点で観るかによって、
考える題材がたくさんある作品ですね。
わたしも、江木の意思を口約束だけで受けるのか?と何よりそれが気になりました。
また、長年連れ添った妻の立場で言えば、
状況がどうであれ、庇われるばかりで信頼の絆がなかったり、
「溺れるような恋をしたことがない」と余所の女に言われてしまうって…
もし、こんな時わが夫婦なら、わが家族ならどうだろうと、結構真面目に考えてしまいました。
2. Posted by にゃむばなな   2012年10月28日 22:04
悠雅さんへ

そうそう、立場によってこれは見方が大きく変わる作品でしょうね。
個人的にはどうもこの女医さんに感情移入できなくて。
あと妻の立場はやはり既婚女性にしか分からないものでしょうね。
3. Posted by たいむ   2012年10月28日 22:25
「甘さ」をすごく感じますよねぇ、やっぱり。
精神的不倫のような現状と言うか、恋愛感情が邪魔をしたのかなぁと考えてみるものの、明らかに逸脱した行為にみえるところもあるしねぇ。

そういうところも含めて見応えはありました。


4. Posted by にゃむばなな   2012年10月29日 20:10
たいむさんへ

折井女医の気持ちは分かるんですけど、やっぱり医者として逸脱しすぎてましたもんね。
見応えがある映画だけに、もう少し何とかならなかったのかと。
5. Posted by BC   2012年10月29日 21:57
にゃむばななさん、こんばんは。

実際に起きた“川崎協同病院事件”をもとにした映画化らしいけど、
女医の出身大学は実際と映画では違っていたみたいですし、
人物設定は脚色されているようにも感じました。
女医が不倫で失恋して、病院の当直室で自殺未遂して患者達にも知れ渡っているのに、
その時点でクビになったり左遷されたり何らかの処分がないのも解せないし、
細部にリアリティ欠いていて社会性が感じとれなかったですよね。
6. Posted by にゃむばなな   2012年10月29日 22:04
BCさんへ

なるほど、実在の事件を基にしているんですね。
そうなると、ほんと、細部にリアリティを欠いてますよね。
7. Posted by FREE TIME   2012年11月23日 00:28
こんばんは。
女医と検事の意見の応酬は見応えありましたが、肝心の尊厳死については伝わり方がイマイチでしたね。
自分も何で承諾書のようなものを準備しなかったのかと疑問に思いました。
どっちにしても後味の悪さを感じてしまうラストでしたね(汗)
8. Posted by にゃむばなな   2012年11月23日 14:04
FREE TIMEさんへ

そうそう、検事と女医のやりとりは面白いのですが、細部がねぇ〜。
ほんと、後味のよろしくない映画でしたね。
9. Posted by latifa   2013年10月25日 14:21
にゃむばななさん、こんにちは!
うーん・・・確かに。
映画監督の、自分の作品で使う女優の奥さん、というのは難しそうですねー。
そこまで見せんでも(見せてくれなくても)良いのに・・と私も思いました(^^ゞ

でも、周防監督は大好きな監督さんなので、また次回作を楽しみに待っています。
10. Posted by にゃむばなな   2013年10月26日 15:56
latifaさんへ

監督と女優の関係なので妻をどう撮ろうが勝手なのですが、それよりもまず映画の脚本の方を何とかしてほしかったですね。
さて周防監督の次回作はどうなることやら。

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