2012年11月05日

『ゴーン・ベイビー・ゴーン』

ゴーン・ベイビー・ゴーン「行方不明になった少女は死んだ」なのか、それとも「行方不明になった少女は失踪した」なのか。それが明確になった時に見えてくる現代アメリカの闇。そこに法律で裁ける正義は存在するのか。
ベン・アフレック監督の処女作でありながら、日本では劇場未公開となったこの作品。多くの方が高く評価されるのも納得の秀作サスペンスでした。

ボストンで私立探偵業を営むパトリックとアンジーの元に舞い込んできた、とある少女の失踪事件。
前半は麻薬の運び屋をやっていたネグレクトな母親が犯人か、それとも大金を持ち逃げされた大元のチ−ズによる報復誘拐なのかと、オーソドックスながらもベン・アフレック監督の正統派な演出のおかげもあって十分楽しめるサスペンスだったのですが、まさか後半でこんなにも心に重いものが残る作品だとは思いもしませんでした。

特に中盤での人工湖や少年誘拐犯宅での銃声を皮切りに徐々に真実が見えてくる、いや映画の色合いがサスペンスから重厚な社会派作品へと変わっていく演出はお見事。
一度は湖の底に沈んでしまったと思われた真相がニック刑事の殉職を機に、誘拐事件でも殺人事件でもなく、少女の人生を憂う男たちによる計画と判明する面白さ。そしてそこから見えてくる現代アメリカ社会の闇と、法律だけが正義ではない歪な現状。

法律を遵守するならパトリックが言う通り、少女は彼女を産んだ母親の元に帰すべきでしょう。母親の更正を誓う言葉も信じるべきでしょう。
でもそれは法律という観点から見ただけの正義。少女の人生を憂う一人の人間としての観点から見た正義は含まれていないんですよね。

ですから少女の人生を本当に憂うのならば、ネグレクトな産みの親と少女の人生を本気で考えている育ての親のどちらが少女を幸せにしてくれるのか。
それは娘が失踪しても酒浸りだった母親の姿と、他人の娘のために命まで失ったブレサント刑事の覚悟を考えれば誰にでも分かったはず。
でもパトリックは州警察への通報を選んでしまったのは、ある意味彼の心の弱さを象徴していたのかも知れませんね。

正義は不幸をもたらす。

自分に言い寄る男に早く会いたいがためにベビーシッターが到着する前に家を出て行くどころか娘に挨拶のキスさえしないあの母親の姿を見て、パトリックは自分の選択に自信を持つことはできたのでしょうか。

まだあの母親が更正しないとは言い切れないものの、逆にあの少女が不幸にならないとも言い切れない。
ただ確実に言い切れるのは一人の子供の人生が自分の選択に委ねられた時、そこに必要悪になる覚悟を持てない者に親になる資格はないということ。

そう考えると、個人的にはパトリックの選択は法律的には正義でも倫理的には正義とは言えない気がしました。

深夜らじお@の映画館は倫理的な正義を選ぶ人生を送っていきたいです。

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acideigakan at 21:43│Comments(6)clip!映画レビュー【か行】 

この記事へのトラックバック

1. ゴーン・ベイビー・ゴーン  [ いやいやえん ]   2012年11月06日 09:41
ベン・アフレックが監督、弟ケイシーが主演した作品です。これ予告で期待し凄く観たかった作品なんです。 うーん面白い。派手ではなく、渋めのかなり良質の作品でした。正直、ベン・アフレックやるなあ…と思ってしまった。 主役のケイシー・アフレック、刑事役のエド・
2. ゴーン・ベイビー・ゴーン  [ 晴れたらいいね〜 ]   2012年11月06日 23:02
これ、未公開だったんですか?この映画の存在は知ってました(題名は覚えられてなかったけど)アフレック兄弟が「ミステリック・リバー」の原作者のんを映画化っていう話題、あと ...
3. ゴーン・ベイビー・ゴーン/Gone Baby Gone  [ 我想一個人映画美的女人blog ]   2012年11月07日 00:44
名作なのに日本公開ならず 最近は俳優業よりも監督やプロデュースで忙しいベン・アフレック、初監督作品 第80回アカデミー賞助演女優賞を始めとする多数の映画賞に受賞・ノミネートされて 気になってたんだけどいつの間にか(9月)DVD化されてた〜 気づくの遅っ! ...
4. ゴーン・ベイビー・ゴーン  [ 銀幕大帝α ]   2012年11月07日 01:26
GONE BABY GONE/07年/米/114分/ミステリー・サスペンス・ドラマ/劇場未公開 監督:ベン・アフレック 原作:デニス・レヘイン『愛しき者はすべて去りゆく』 脚本:ベン・アフレック 出演:ケイシー・アフレック、ミシェル・モナハン、モーガン・フリーマン、エ...

この記事へのコメント

1. Posted by ちゃぴちゃぴ   2012年11月06日 23:06
こんばんは〜♪
この映画、未だによく覚えてます。子供にとって、どちらが幸せだったのかということについても色々コメントし合ったりしましたし。
俳優ベン・アフレックは、当時好きじゃなかったんです。この映画を観てから、監督ベン・アフレックには信頼を持ってます。巧いです。
明日、アルゴを観にいってくるつもり♪
2. Posted by 一夫巣   2012年11月07日 12:42
こっちは手堅くまとまっていると思いました。(ザ・タウンもそう)。イーストウッドみたいになれば良いですね←ベン君
俳優の彼はあまり良くない評価が目立つようですが、あまりにもくだらないと思いつつ繰り返し見てしまう「世界で一番パパが好き」そして80年代の「ライジングサン」かと思えるほどの日本に対する変な解釈にあふれる「パールハーバー」を私は大好きだったりします。「アルゴ」の次に本当期待してます。
3. Posted by にゃむばなな   2012年11月07日 15:34
ちゃぴちゃぴさんへ

この監督の力量は凄いですよね。
正統派らしい面白さをきちんと描いてますもん。
これからも凄く楽しみです。
4. Posted by にゃむばなな   2012年11月07日 15:35
一夫巣さんへ

あぁ〜何となく分かりますわ。
俳優として凄いとは思いませんが、でもなぜか見たくなる役者さんって結構いますもんね。
ベン・アフレックもその一人なのかも知れませんね。
5. Posted by mig   2012年11月14日 10:35
あ、ここにコメしたんですが入ってなかったですねー

ベンの作品は全部観てるんですが
全部いい。
これはほんとに公開できたと思える良作でしたよね。
もう1度観たいのでまた借りようと思ってマス
今後もどんどん、面白くていい映画作って欲しいですね。


6. Posted by にゃむばなな   2012年11月16日 20:14
migさんへ

ベン・アフレック監督の作品は本当にどんどん面白くなってますよね。
次の作品も楽しみになりますし、これまで見た作品もまた見たくなりますよ。

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